94《ギャップか中だるみか》

平塚中等教育学校
校長室の窓から
2015年(平成27年)2月9日
vol.94
持っている力というのは、使い切ったときに伸びるもののようです。大してない力
でも、ありったけ使うと、またどこかからわいてくるのです。誰かが哀れに思って、与えてくれるのではないかと思うほ
どです。ですから、少ししか使わないと、力は伸びない、生まれてこないようです。かわいそうになるほど、持っている
力をみな使ってしまうことが、次の力を得るもとになるのだと思います。
(大村 はま著「灯し続けることば」より)
(
)
2月3日、県内の国公立中高一貫校の入学検査(入
学者決定検査)があった。本校でも、入学を志願す
るたくさんの小学6年生が、適正検査Ⅰ・Ⅱとグル
ープ活動検査に挑戦した。
本校は今年4月で7年目を迎え、新入生が7期生
になる。今年の受検生が小学1年生の時に開校した
中等教育学校でもある。
右写真は、入学検査当日、
校舎入口からピロティー
に進み、自分の検査会場を
確認している受検生の様
子。ほとんどの受検生は、
一度は校舎に足を運んで
いるはずで、校舎慣れしている様子もあった。
平塚中等入学時には右も左も分からない“つい最
近までの小学生”が、1年生の半ば頃には、
“この生
徒たちは、つい最近まで小学生だったんだ”
、という
ぐらい、身体的にもそうだが、学習面、生活面でも
ビックリするぐらいの大きな成長がある。
さて、文部科学大臣の諮問機関の中央教育審議会
は、平成26年12月22日に、「子供の発達や学習者
の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な学習シス
テムの構築について」を答申し、小中一貫教育の制
度化の必要性等について示した。
(文部科学省ホーム
ページ「中央教育審議会」より)
その答申の中で、
「いわゆる『中1ギャップ』への
対応」について触れている。各種調査によれば、い
じめの認知件数、不登校児童生徒数、暴力行為の加
害児童生徒数が中学校1年生になったときに大幅に
増えるなど、児童が小学校から中学校への進学にお
いて、新しい環境での学習や生活に不適応を起こす
いわゆる「中1ギャップ」が指摘されている。■
この「中1ギャップ」や「高1ギャップ?」に陥
らないようにと、中高一貫校への入学を親子で考え
悩んだ末の挑戦もあったかも知れぬ。
ちなみに、高1ギャップについて触れている記事
がある。手取り足取り丁寧に、親切に教えてくれる
中学に比べ、高校は自分で考え、学ぶ姿勢が問われ
る。中学の勉強に慣れた子どもたちは、
「急に放り出
された感」でいっぱいになっているのだろう。
「高校
の先生方は、みんなを大人扱いしてくれているって
ことだよ」と説明しながら、
「中1ギャップ」ならぬ
「高1ギャップ」の存在を強く感じる。
(朝日デジタ
ル 教育【放課後の子どもたち】「高1ギャップ」乗
り越えよう)
神奈川県立平塚中等教育学校
TEL 0463 (34) 0320
FAX 0463 (34) 3866
中高一貫校である本校は、2つの“ギャップ”と
いう言葉が身近に感じられる。だが、文部科学省の
国立教育政策研究所は、生徒指導リーフで、「中1
ギャップ」の真実、というタイトルで、「中1ギャッ
プ」という用語の問題点を指摘している。
「中1ギャップ」の語は、いわゆる「問題行動等調
査」の結果を学年別に見ると、小6から中1でいじめ
や不登校の数が急増するように見えることから使わ
れ始め、今では小中学校間の接続の問題全般に「便
利に」用いられています。
しかし、いじめが中1で急増するという当初の認
識が正しいのか、不登校の中1での増加にしても
「ギャップ」と呼ぶほどの変化なのかについては、慎
重であるべきです。なぜなら、必ずしも実態を表現
しているとは言い切れないからです。とりわけ、そ
の語感から、中1になる段階で突然何かが起きるか
のようなイメージや、学校制度の違いという外的要
因が種々の問題の主原因であるかのようなイメージ
を抱くと、問題の本質や所在を見誤り、間違った対
応をしかねません。
便利な用語を用いることで、目の前で起きている
問題を理解した気になってはなりません。実際に何
が起きているのかを冷静に捉えることから始めま
しょう。
「中1ギャップ」という語に明確な定義はなく、
その前提となっている事実認識(いじめ・不登校の
急増)も客観的事実とは言い切れない。
「中1ギャッ
プ」に限らず、便利な用語を安易に用いることで思
考を停止し、根拠を確認しないままの議論を進めた
り広めたりしてはならない。
“いじめは、中1で急増
するのか?”学校が報告する「問題行動等調査」の結
果(認知件数)からは中1でいじめが急増するよう
に見えますが、児童生徒対象の質問紙調査の結果か
らは異なる実態が見えてきます。①いじめは、中1
で急増するのか?→児童生徒のいじめ経験率は、小
学生のほうが高い、②不登校は、中1で増加するの
か?→小6から中1への増加率は1.3倍前後、③中学
校で顕在化する問題も、実は小学校から→小学校か
らの連続性に着目することで、中学校の問題点を解
消する、⑤「中学進学への不安感が不登校を急増さ
せる?」は仮説自体に無理がある、というようなこ
とが検証数値により説明されている。
本校3年生へのあるアンケートで、
「平塚中等に入
学した理由は」の質問に対して、57%が「親に勧め
られたから」と答えている。いずれにしても、自立
力を身につけねば。
平塚中等 校長 鈴木 靖
〒254-0074 平塚市大原1番13号
URL http://www.hiratsuka-chuto-ss.pen-kanagawa.ed.jp/