新生ストラテジーノート 第 208 号 2015 年 12 月 14 日 調査部長 江川 由紀雄 [email protected] (03) 6880-6035 バーゼル委員会が信用リスクの標準的手法見直し第2次市中協議 外部格付けの利用を許容、住宅ローンは LTV のみでリスクウェイトを決定 バーゼル銀行監督委員会は、2015 年 12 月 10 日、日本時間昨晩遅く、信用リスクの標準的 手法に係る第2次市中協議文書を公表 1した。約1年前の 2014 年 12 月に公表された前回の市 中協議文書(便宜的に「第1次市中協議」と呼ぶ)に対して提出された意見 2等も踏まえ、案を修正 し、ふたたび一般の意見を募るものとなっている。意見提出の締切日は 2016 年 3 月 11 日とさ れている。 第1次市中協議では、銀行や企業向けのエクスポージャーにつき、格付会社の格付け(外部格 付け)を参照してリスクウェイト等を決める方式の完全撤廃を提案していたが、その案を第2次市 中協議では撤回した。格付けの利用が認められている法域では、外部格付準拠方式を引き続き 認めるとする案になっている。 住宅ローンのリスクウェイト決定方式が大胆に変わる。第1次市中協議でバーゼル委員会は、 住宅ローンのリスクウェイトについて、LTV 3と DSC (業界用語の DTI 4と同じ)を組み合わせたマト リクスでリスクウェイトを決定することを提案していたものの、第2次市中協議では、住宅ローンを 含む不動産担保与信につき、LTV のみを用いてリスクウェイトを決定する方式を提案している。住 宅ローン(residential mortgages)については、LTV が 40%以下ならリスクウェイトは 25%、 1 BCBS, Revisions to the Standardised Approach for credit risk - second consultative document, 10 December 2015 http://www.bis.org/bcbs/publ/d347.htm. 2 第1次市中協議文書に対して提出された意見書は、提出者が非公開を希望しているものを除き、 BCBS のウェブサイト上で公開されている。 BCBS, Comments received on the "Revisions to the standardised approach for credit risk - consultative paper" http://www.bis.org/bcbs/publ/comments/d307/overview.htm 業界では一般的に “loan-to-value” と呼ばれているものを、バーゼル委員会は 3 “loan-to-valuation” ratio と呼んでいる。担保(評価額、査定額、取得価格等)に対する貸出 残高の比率(いわゆる融資比率)のことである。 4 業界では一般的に DTI (“debt-to-income”) と呼ばれている収入に対する元利払いの額の 比率(字義通りの借入額に対する収入の比率の意味ではない)を、第 1 次市中協議でバーゼル 委は DSC (“debt service coverage”) と呼んだ。語句の用法と意味の点では、バーゼル委の 方が正しいと言えよう。 1 1 新生ストラテジーノート 新生証券株式会社 調査部 80%超 90%以下なら 45%、90%超 100%以下なら 55%とされており、LTV 100%超は与信 先に対する無担保エクスポージャーと同じ扱いとしている。住宅ローンの借手が「規制上のリテー ル(regulatory retail)」の定義を満たせばリスクウェイト 75%、同じく「SME」の定義を満たせば リスクウェイトは 85%とする案となっている。 第1次市中協議では、不動産担保ローンであっても、現行規制では内部格付手法の体系のみ に置かれている「特定貸付債権」に該当するものであれば、「特定貸付債権」として別途の扱い (たとえば、リスクウェイトを一律に 120%または 150%とするもの)を提案していたが、第2次市 中協議では、不動産担保ローンについては、標準的手法においては「特定貸付債権」に該当しな いよう定義を修正したうえで、「不動産エクスポージャー」の範疇で取り扱うことを提案している。 自己居住用の住宅ではない不動産担保で、返済が対象物件からの賃料収入に大きく依存しな いエクスポージャーについては、LTV が 60%以下であれば、リスクウェイトは 60%または与信 先に対する(無担保エクスポージャーに適用するべき)リスクウェイトのうち、どちらか低い方が適 用される。この場合に、LTV が 60%を超えるものについては、与信先に対する無担保のエクスポ ージャーと同じ扱いになるとする案となっている。 2 実施時期については明示されていない。 (調査部長 江川 由紀雄) 2 新生ストラテジーノート 新生証券株式会社 調査部 3 名称 :新生証券株式会社(Shinsei Securities Co., Ltd.) 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第95号 所在地 :〒103-0022 東京都中央区日本橋室町二丁目4番3号 日本橋室町野村ビル Tel : 03-6880-6000(代表) 加入協会 :日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 資本金 :87.5 億円 主な事業 :金融商品取引業 本書に含まれる情報は、新生証券株式会社(以下、弊社)が信頼できると考える情報源より取得されたものですが、弊社 はその正確さについて意見を表明し、または保証するものではありません。情報は不完全または省略されたものである ことがあります。本書は、有価証券の購入、売却その他の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。本書は、 特定の商品やサービスの勧誘・提供を行う目的で作成されたものではありません。本書で言及されている投資手法や取 引については、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、これらの投資手法や取引について は、金融市場や経済環境の変化もしくは価格の変動等により、損失が生じるおそれがあります。本書に含まれる予想及 び意見は、本書作成時における弊社の判断に基づくものであり、予告なしに変更されることがあります。弊社またはその 関連会社は、本書で取り扱われている有価証券またはその派生証券を自己勘定で保有し、または自己勘定で取引する ことがあります。弊社は、法律で許容される範囲において、本書の発表前に、そこに含まれる情報に基づいて取引を行う ことがあります。弊社は本書の内容に依拠して読者が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。本書は 限られた読者のために提供されたものであり、弊社の書面による了解なしに複製することはできません。 信用格付に関連する注意 本書は、金融商品取引契約の締結の勧誘を目的としたものではありません。本書で言及ま たは参照する信用格付には、金融商品取引法第 66 条の 27 の登録を受けていない者による無登録格付が含まれる場 合があります。 3 著作権表示 © 2015 Shinsei Securities Co., Ltd. All rights reserved.
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