千葉大学人間生活工学研究室卒論概要(2006) 卒業研究区分:論文 人の視線情報を用いた紙面レイアウトの評価 キーワード:レイアウト、視線軌跡、読書方向 人間生活工学教育研究分野 03T0121X 大山 ■研究の背景 現在、ファッションビル等の大型商業施設が多く出来て おり、便利である一方で目的の店に辿り着くのも大変にな 達也 から下へと視線を移動して店舗リストを読んでいた。具体 例は図1で示した通りである。 また、実験を開始して店舗リストから店舗名を見つける り、施設の案内が非常に大きな役割を担っていると言える。 までの時間(t1)、その後、平面図で実際の店舗の場所を確 ■研究の目的 ファッションビル当の商業施設におけるフロアガイドの レイアウト等が紙面の判読性に与える影響を実験から考察 し、実用に堪える提案をしたい。 ■研究の方法 まず、実際に使われているフロアガイドを収集、分類し、 それらのうち2つについて、実験者が指示した店舗を見つ 認するまでの時間(t2)の値を分散分析にかけた結果、いず れも、model4(縦位置で、店舗リストが左、平面図が右に配 されたもの))で有意に時間が短かった。 主観評価の分析では、Q6“自然な 流れで探せたと思うか”という質問 で、model1,4 の値が model2,3 に比べ 有意に大きくなった(図2)。 けるまでの時間、その間の視線軌跡を記録する実験を行っ た。しかし結果からはデザインと視線軌跡の関係をつかむ ことは出来ず、フォント、文字組み、レイアウトなど多岐 にわたるデザイン要素を一元的に扱うことは非常に困難で あると考え、評価の対象とする要素をレイアウトに絞るこ ととした。 レイアウト以外の要素を統一したフロアガイドを4パタ ーン制作し、タスク後の主観評価も加えて再度実験を行っ 図2 ■ 考察 図1で示したように、全ての被験者が左から右、上から 下へと視線を移動して店舗リストを読んでいた。これは多 くの視線解析の研究に沿うものである。 た。実験に用いたモデルは平面図と店舗リストの2カラム t1 の値が model4 で小さくなったのは、店舗リストが左 に分かれたもので、店舗リストが上、右、下、左の順に 側に配されていることから、左側から読んでいく読書方向 model1〜4 とした。被験者はまず店舗リストから店舗名を と関係しているかもしれない。 見つけ、それに付されたものと同じ番号を平面図から見付 t2 の値も model4 で小さくなった。これは、店舗リスト けることになる。図1に記録された視線軌跡の例を示す。 から平面図へと視線を移す際の視線移動が水平方向である 時、より短時間で目的の店舗の場所を見つけていることを 示唆する。 また、Q6 に関しては model2,3 と model1,4 の間に有意な 差が認められた(図 2)。これに視線軌跡を踏まえ、店舗リ ストから店舗名を見つけて平面図に視線を移す際、model2 では右から左、model3 では下から上と、一般的な読書方向 とは逆行しており、このとき、被験者は自然な流れではな かった、と感じていると言える。 ■ まとめ 図1−実験に用いたモデルは以上の2つとこれらの上下、あるいは 以上の考察を踏まえ、垂直方向の大きく急速な視線移動 左右を入れ替えた縦横2通りずつである。被験者は店舗リストか を必要としない縦位置で、かつ左から右への視線移動に沿 ら店舗名を見つけ、対応する番号を平面図から見つけた。 ったレイアウトが望ましいと言える。そこで、左側に店舗 ■結果 リスト、右側にそれに対応した平面図を配した縦位置のレ 視線軌跡を解析した結果、全ての被験者が左から右、上 イアウトが読み手に取って最も自然であると提案する。
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