15 . 脂質制限及び運動負荷による肝内カルニチン動態と 脂肪性肝炎病態の変化 -脂肪性肝炎モデルマウスを用いた検討- 順天堂大学 医学部 消化器内科 今 一義、池嶋 健一、渡辺 純夫 【目的】NASH 治療の第一選択は食事運動療法だが、肝病態に寄与する 機序は十分に解明されていない。本研究では脂肪酸β酸化で必要とされ るカルニチンの動態を中心に、脂質制限・運動負荷による脂肪性肝炎の 病態への影響を解析した。 【方法】肥満・インスリン抵抗性を自然発症する KK-Ay マウス(雄性 8 週 令)に高脂肪食を 4 週間摂取させ、対照群とした。その後、一部の群は低 脂肪食に変更して脂質制限を負荷し、一部の群ではトレッドミル装置を 用いた運動負荷 を掛けてさらに 4週間飼育した。次の検討として、高脂 肪食4週摂取後にカルニチン水溶液を 4 週間与えて効果を見た。 【結果】対照群では高度な肝脂肪沈着お よび肝細胞アポトーシスを認め た。その後高脂肪食を継続した状態で運動負荷を掛けた群では、脂肪肝 およびアポトーシスのいずれも有意な改善は認められず、SREBP1 c、 TNFα、CPT 1αのmRNAの発現も変化しなかった。筋肉中のカルニチ ン量は運動負荷によって増加したが、肝組織内のカルニチン量は 変化し なかった。一方、低脂肪食への変更後に運動負荷を掛けると脂肪肝の有 意な改善および肝細胞アポトーシスの減少が得られ、SREBP1c、TNFα、 CPT1αの mRNAは有意に減少し、筋肉中および肝組織中のカルニチン はいずれも増加した。次に、カルニチンを摂取させた群では高脂肪食継 続群でも肝脂肪沈着および肝細胞アポトーシスが抑制され、カルニチン と低脂肪食を併用すると、脂肪滴および肝細胞アポトーシスはほぼ消失 した。 【結語】脂質制限の状況 では運動負荷によって肝組織内のカルニチンが 増加し、脂肪肝および肝細胞のアポトーシスが抑制されたが、高脂肪食 摂取を継続している状態では肝内カルニチンは増加せず、脂肪肝および 肝細胞アポトーシスも有意な改善効果は得られなかった。高脂肪食によ り肝内カルニチンが減少している状況下では脂肪性肝炎の病態の改善は 得られ難く、運動負荷による脂肪性肝炎の改善には脂質制限による肝内 カルニチンの増加が重要であることが示唆された。
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