大腸癌術後多発肺転移に対する3rdライン化学療法としてbevacitumabを

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日本大腸肛門病会誌(年間1−10号)第61巻第9号 2008年9月・第63回学術集会抄録号
02−087FOLFOX後に手術を行った大腸癌症例の検討
02−086大腸癌術後多発肺転移に対する3rdライン化
学療法としてbevacitumabを使用した一例
東京逓信病院第一外科
日本医科大学付属病院外科
山本哲久,梅谷直亨,森田博義寺島裕夫
佐々木順平,鈴木英之,菅 隼人,鶴田宏之,
松本智司,秋谷行宏,進士誠一,松田明久,
化学療法の奏功率上昇に伴い,従来は切除不能または適
寺西宣央,田尻 孝
応外とされた進行度の大腸癌切除例が増加すると予想
2007年6月から進行・再発大腸癌に対しbevacitumab
FOLFIRI施行した大腸癌26例中,化学療法後に切除を
される.2006年4月から当科でFOLFOXまたは
が保険適応となり,全国的に使用経験が増加している.
行った2例の手術適応と経過について検討した.
今回我々も,再発大腸癌に対して3rdライン化学療法と
【症例1】69歳,男性.2006年4月,下行結腸癌イレウ
してbevacitumabを使用し,奏功した例を経験したの
スによる穿孔性腹膜炎に対し,横行結腸人工肛門造設術
で報告する.症例は58歳女性.既往歴家族歴共に特記事
を施行.小腸と回盲部に播種塊をみとめ,回腸上行結腸
項はなし.術前病期診断でStageIIlaの上行結腸癌に対
バイパス術を併施.予後不良と見込まれinformの結果,
して結腸右半切除術を施行した.術後病理診断では高分
TEGAFIRI(UFT450mg,CPT−11200mg)が選択され
化腺癌,大腸癌取り扱い規約第6版でstageIIlbであっ
た.8クール施行後,CEA40.8ng/m1(術前117)と低下
た.術後補助化学療法としてIFL療法を6サイクル施行
したが再上昇.mFOLFOX6に変更して8クール施行
し,その後予防的にUFT内服療法を続けた.その間再
後,CEA214と低下.新たな転移再発が出現しないのを
発・転移の兆候はみられなかったが,術後4年後(46
確認の上,2007年7月原発巣の切除および人工肛門閉
ヶ月後)に腫瘍マーカーの上昇を認め,胸部単純X線と
鎖術を施行.その後もmFOLFOX6を施行したが,肝転
胸部CTで多発性肺転移を認めた.肺転移に対して1st
移出現したため,2007年12月RFA施行,FOLFIRI
ライン化学療法としてmFOLFOX6療法を開始し21サ
施行中にマーカー再上昇し,PETにて回盲部播種巣か
イクル施行した.効果判定はPRだったが,経過中にア
らの腹壁浸潤と診断.2008年5月腹壁切除術を予定し
ナフィラキシーを認めたため,2ndラインとして
ている.
FOLFILI療法に変更した.13サイクル施行した時点で
【症例2】59歳,男性.1992年盲腸癌に対し回盲部切除
PDと判断し,3rdラインとしてFOLFILI療法に
術.2002年7月肝転移に対し肝部分切除術.2003年12
bevacitumabを加えたregimen(FOLFILI+BV)に変更
月肺転移に対し左上葉切除術.2005年5月肺転移再発
した.7サイクルを施行した時点で,腫瘍マーカーの減
および腹膜再発に対し,mFOLFOX6を6クール,CPT−
11320mgbiweeklyを11クール施行するもPDのため
腫瘍内科医からBSCとされた.secondopinion目的当院
少(CEA134→48ng/m1)やCT上での病変の縮小を認
め,効果判定はSDでありbevacitumabの併用効果が認
められた・報告の時点まで有害事象はbevacitumab特
を受診.total informの結果,2006年6月腹膜再発に対
有の高血圧を認めているものの,その他食欲不振や白血
し,回腸上行結腸吻合部摘出術,幽門側胃切除術,肝部
球減少などにおいてはmFOLFOX6療法,FOLFIRI療
分切除術を施行.左肺転移と縦隔リンパ節再発に対して
法と同等であった.患者コンプライアンスも良好であり
は放射線照射を施行.TS−180mg(/UFT400mg),CPT−
現在も外来通院継続中である.一般的にbevacitumab
11200−160mgbiweekly投与している.その後,腹腔内
は効果不良の化学療法regimenに対する付加効果は疑
問視されているが,今回の症例のように優れた腫瘍効果
再発の徴候はみとめないが,2008年4月現在,肺転移お
を示す場合もあり,今後の化学療法における重要な役割
2症例ともに延命効果は不明の非治癒切除であるが,PS
を担うと思われた.
Oを維持している.非切除から化学療法後に切除へ至っ
よび肋骨転移が徐々に進行している.
た症例1や,化学療法に反応しない再発巣切除を行った
症例2のような,化学療法後の手術適応拡大は今後検討
されるべきと考える.