ステロイド薬と同じ作用機序を持ち 広範囲に効く ステロイド薬と同程度に強力で 副作用の少ない 副作用の少ない ペプチド抗炎症薬 ペプチド抗炎症薬 聖マリアンナ医科大学 生化学 准教授 岡本 一起 1 これまでのステロイド療法とその問題点 これまでのステロイド療法とその問題点 ステロイド薬の受容体であるグルココルチコイド 受容体(GR)は炎症反応の要を担う転写因子 NF-κBと直接相互作用し、その転写活性を阻 害する。これによりステロイド薬は種々の炎症 を強力に抑える.(図1) 同時にGRは炎症部位以外のところで、ホルモ ン作用を発揮する。これがステロイド薬の副作 用である.(図1) NF-κB の 転 写 活 性 を 直 接 阻 害 し 、 同 時 に 副作用のないNF-κB阻害薬が望まれている. 2 図1.ステロイド受容体(GR)の抗炎症作用と 図1.ステロイド受容体( )の抗炎症作用と 副作用の機序 ステロイドの抗炎症作用 抗炎症以外のステロイドの作用 GRがNF-κBの転写活性を抑える GRが標的遺伝子の転写を促進する NF-κB GR GR GR GR coactivator preinitiation complex κB site preinitiation complex 炎症 DNA 強力な抗炎症作用 GRE ホルモン 作用 DNA 全身でホルモン作用 副作用 3 MTI-Ⅱ Ⅱを利用した抗炎症剤 • 核内酸性タンパク質(MTI-Ⅱ)は GRと同様にNF-κBに直接相互 作用して、その転写活性を阻害 する.(図2) A-region B-region • MTI-Ⅱを利用した抗炎症剤は、 ステロイド薬のようなホルモン作 用がないため、理想のNF-κB阻 害薬、抗炎症薬となりうる. 1 A-region 35 B-region NLS C-region NLS MTI-Ⅱ NLS: 核移行シグナル. 74 C-region 101 中央酸性アミノ酸領域(NF-κB阻害活性) 4 図2.ステロイド受容体(GR)と 図2.ステロイド受容体( )とMTI-Ⅱ Ⅱの )と 抗炎症作用と副作用の機序 ステロイドの抗炎症作用 抗炎症以外のステロイドの作用 GRがNF-κBの転写活性を抑える GRが標的遺伝子の転写を促進する NF-κB GR GR GR 副作 coactivator 用 GR preinitiation complex κB site preinitiation complex 炎症 DNA GRE ホルモン 作用 DNA MTI-Ⅱの抗炎症作用 抗炎症以外のMTI-Ⅱの作用 MTI-ⅡがNF-κBの転写活性を抑える MTI-Ⅱは転写活性を持たない NF-κB MTI-II MTI-II preinitiation complex κB site preinitiation complex 炎症 DNA GRE ホルモン 作用 DNA 5 図3.MTI抗炎症剤 抗炎症剤 図3. MAID = MTI-Ⅱ Ⅱ全長+細胞導入ペプチド(PTD 全長+細胞導入ペプチド(PTD) PTD) MPAID = MTI-Ⅱ Ⅱ作用部位+PTD 作用部位+PTD 6 図4.MTI抗炎症剤の抗炎症作用(急性炎症) 抗炎症剤の抗炎症作用(急性炎症) 図4. カラゲニン足浮腫(左図)と血糖値( カラゲニン足浮腫(左図)と血糖値(右図) と血糖値(右図) *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 vs. Control 腹腔内 投与 足容量増加率(%) 200 合成 ステロイド 腹腔内 (腹腔内) 投与 (16時間絶食) 株式会社 ケー・エー・シー 提供 MTI 抗炎症剤 MTI 抗炎症剤 ** 合成 ステロイド 150 100 * ** *** Control デキサ メサゾン H11RM HM11R Control デキサ H11RM HM11R メサゾン デキサメサゾン投与では血糖値の上昇が認めら れたが、MTI抗炎症剤では認められなかった. 7 図5.MTI抗炎症剤の抗炎症作用(急性炎症) 抗炎症剤の抗炎症作用(急性炎症) 図5. クロトン油誘発結膜炎 **p<0.01 ***p<0.001 vs. Control 上部眼瞼結膜重量 ( mg ) 25 局所投与 (点眼) 20 株式会社 日本バイオリサーチセンター 提供 合成 ステロイド 15 *** MTI抗炎症剤 *** ** 10 5 0 Control デキサ H11RM HM11R メサゾン 8 化学合成 図6.MTI抗 抗炎症剤とMPAIDの の抗炎症作用(慢性炎症) 図6. 炎症剤と アトピー性皮膚炎(左図)と副作用の検証(右図) アトピー性皮膚炎(左図)と副作用の検証(右図) (A) 300 35 (B) * * 塗布投与 250 glucose (mg/dL) 200 150 100 50 * 30 WBC (cell x 100/µL) *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 vs. Control *** 25 20 15 10 ** 5 0 0 NC 株式会社 ケー・エー・シー提供 Beta metha sone MAID (Low) MAID (High) MPAID MPAID (Low) (High) NC Beta metha sone MAID (Low) MAID (High) MPAID (Low) MPAID (High) 1000 (C) corticosterone (ng/mL) 800 (A)血糖値 (B)白血球数 (C)コルチコステロン 600 400 ** 200 0 NC リンデロン投与群には重篤な皮膚萎縮 (ステロイド薬の副作用)が認められた. Beta metha sone MAID (Low) MAID (High) MPAID (Low) MPAID (High) 9 図7.MPAIDの の抗炎症作用(慢性炎症) 図7. コラーゲン誘導関節炎(左図) コラーゲン誘導関節炎(左図)と副作用の検証( 誘導関節炎(左図)と副作用の検証(右図) と副作用の検証(右図) *p<0.05 ***p<0.001 vs. Control 腹腔内 投与 (A)血糖値 (B)白血球数 (C)コルチコ ステロン PBS MPAID 28日間連続投与後の腹腔内で 肝臓、膵臓、腎臓及び腸管や血管 の怒張や萎縮は認めらなかった. 10 MTI抗炎症剤(MAIDs)、MTIペプチド抗炎症剤(MPAID)から さらに短いMTIペプチド抗炎症剤(sMPAID)の開発 MTI抗炎症剤 (MAIDs) (101+11 アミノ酸) 動物実験で抗炎症作用を確認 副作用の少ないことを確認 カラゲニン足浮腫、結膜炎モデル、アトピー性皮膚炎モデル 製薬会社のFAQ:化学合成できませんか? MTIペプチド抗炎症剤(MPAID) (40+8 アミノ酸) 動物実験で抗炎症作用を確認 副作用の少ないことを確認 アトピー性皮膚炎モデル 、リウマチモデル さらに短いMTIペプチド 抗炎症剤 (sMPAID) (10 アミノ酸未満) メリット 抗原性の低減→より安全 コンタミがない→より安全 より安価で安定供給 プロテアーゼに抵抗性→内服薬 11 図8.sMPAIDの開発 の開発 40アミノ酸→12 12アミノ酸 図8. アミノ酸 40アミノ酸 (MPAID) 30アミノ酸 EVVEEEENGAEEEEEETAEDGEDDDEGDEEDEEEEEEEDE EVVEEEENGAEEEEEETAEDGEDDDEGDEE EENGAEEEEEETAEDGEDDDEGDEEDEEEE EEEEEETAEDGEDDDEGDEEDEEEEEEEDE EVVEEEENGAEEEEEETAEDG 20アミノ酸 EENGAEEEEEETAEDGEDDD EEEEEETAEDGEDDDEGDEE ETAEDGEDDDEGDEEDEEEE GEDDDEGDEEDEEEEEEEDE EEEENGAEEEEEE NGAEEEEEETA 12アミノ酸 ETAEDGEDDDEG GEDDDEGDEED DEEDEEEEEEEDE 12 図9.sMPAIDの のin vitro抗炎症作用 抗炎症作用 図9. MPAID EVVEEEENGAEEEEEETAEDGEDDDEGDEEDEEEEEEEDE 20A-1 EVVEEEENGAEEEEEETAEDG 20A-3 EEEEEETAEDGEDDDEGDEE 20A-5 GEDDDEGDEEDEEEEEEEDE 14 20A-1 100.8% p = 0.4285 12 69.0% p = 1.3E-07 8 κB-Luc2P/TK-hRLuc κB-Luc2P/TK-hRLuc 10 MTI-II 6 12 20A-3 10 66.6% p = 2.0E-07 MTI -II 8 6 20A-5 10 105.5% p = 0.119 κB-Luc2P/TK-hRLuc 12 78.7% p = 8.7E-08 MTI-II 8 56.1% p = 1.0E-10 6 4 4 4 2 2 2 0 0 TNFα ー + ー + ー + 0 TNFα ー + ー + ー + TNFα ー + ー + ー + 13 図10.sMPAIDの のin vitro抗炎症作用 抗炎症作用 図10. 300 hr after TNFα (A) COX2 0 2 4 6 8 140 (C) COX2 / 20A-5 (D) GAPDH / 20A-5 120 250 10 100 80 150 100 NC 20A-5 50 0 2 4 6 8 60 NC 20A-5 40 20 0 hr after TNFα (B) GAPDH % of 0 min % of 0 min 200 0 0 10 5 hr after TNFα 10 0 300 5 hr after TNFα 10 140 (F) GAPDH / 12A-3 (E) COX2 / 12A-3 120 250 100 20A-5と12A-3はNF-κBの COX2誘導を阻害するが、 GAPDHには影響しなかった. % of 0 min % of 0 min 200 150 100 60 NC 12A-3 40 NC 12A-3 50 80 20 0 0 0 5 hr after TNFα 10 0 5 hr after TNFα 10 14 図11.sMPAIDの開発 の開発 12アミノ酸 6アミノ酸 図11. アミノ酸→6 アミノ酸 sMPAID 12A-5 1. 6A-1 2. 6A-2 3. 6A-3 4. 6A-4 5. 6A-5 ETAEDGEDDDEG ETAEDG EDGEDD GEDDDE EDDDEG DEEDEE z 15 図12.sMPAIDペプチドの ペプチドのin 抗炎症作用 12. ペプチドの vitro抗炎症作用 ペプチド12A-3と6A-3は共に、添加したペプチドの濃 度依存的にNF-κBの転写活性を阻害した. すなわち、12A-3と6A-3は抗炎症剤として働きうる. 16 MTI抗炎症剤(MAIDs)、MTIペプチド抗炎症剤(MPAID) さらに短いMTIペプチド抗炎症剤(sMPAID)(20 アミノ酸以下) → NF-κBとの共結晶化でNF-κB阻害薬(低分子化合物)の開発 MTI抗炎症剤(MAIDs) (101+11 アミノ酸) 動物実験で抗炎症作用を確認 副作用の少ないことを確認 カラゲニン足浮腫、結膜炎モデル、アトピー性皮膚炎 製薬会社のFAQ:化学合成できませんか? 動物実験で抗炎症作用を確認 長期投与でも副作用の少ないこと を確認 アトピー性皮膚炎、リウマチ 化学合成MTIペプチド抗炎症剤 (MPAID)(40+8 アミノ酸) 18候補中3つ当たり さらに短いMTIペプチド抗炎症剤 in vitroで抗炎症作用を確認 (sMPAID) (20, 12, and 6 +8 アミノ酸) 消化酵素への抵抗性 内服薬・半減期 の長い抗炎症剤 ルシフェラーゼアッセイ、COX2 ウエスタンブロット 共結晶 共同研究実施中 NF-κBとの作用ポイントを解析すれ ば、全く新しいNF-κB阻害薬ができる. 製薬会社のFAQ 17 想定される用途 確認済み: 血糖値上昇なし、白血球減少なし 副腎機能減退なし、皮膚萎縮なし 血管の怒張・収縮なし • ステロイド薬に代わる抗炎症剤. • 特に副作用が少ないので、長期ステロイド治療 が行われる重度のアトピー、喘息、リウマチ、全 身性エリテマトーデスなどに有効である. • 軽微な炎症治療や家庭での使用も可能である. • 感染症の炎症やステロイド抵抗性の炎症にも使 用できる. • ステロイド薬と併用して、ステロイド薬の投与量 を減らすことができる. 18 MTI抗炎症剤 抗炎症剤の他のバイオ医薬品に対する 抗炎症剤の他のバイオ医薬品に対する 優位性 • 抗原性が非常に低い. (低分子化で抗原性をさらに下げることが可能) • 常温でも安定、軟膏基剤と混合しても失活しない. • 高次構造、ドメイン構造や分子内SS結合を持たな い.翻訳後修飾も不要. • 化学合成可能. 19 実用化に向けた企業との連携 大学の分担 • In vitro, in vivo でのスクリーニングと評価. • 薬効メカニズムの解析. • 共結晶構造の解析. 企業の分担 • 製剤化の実施. • ペプチド・ミメティクスによる化合物の最適化. • 薬理試験や安全性試験の実施. 20 本技術に関する 本技術に関する知的財産権 に関する知的財産権 • 発明の名称 :ペプチド、ポリヌクレオチド、 ベクター、形質転換体、NFκB阻害剤、及 びNFκB亢進性疾患の治療剤 • 出願番号 :特願2014-257827 • 出願人 :聖マリアンナ医科大学 • 発明者 :岡本一起 21 お問い合わせ先 問い合わせ先 MPO株式会社 〒216-8512 川崎市宮前区菅生 2-16-1 Tel: 044 979 1631 Email : [email protected] 22
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