病棟内内観療法・家族同時内観療法・ レジリエンス療法を経験した 思春

病棟内内観療法・家族同時内観療法・
レジリエンス療法を経験した
思春期症例の報告
○丹野万樹 高橋優貴 時岡かおり
根本忠典 太田耕平
2015.2.22. 日本心身医学会北海道支部会、北大臨床大講堂
症
例 提 示 ①
症
例:10代後半 男性
 主 訴:頭痛 昼夜逆転 不登校
 家族歴:精神神経疾患の遺伝的負因なし
 既往歴:小児期の検診では言語・運動発達
の異常は指摘されず。小中学校でも知能・
行動上の問題指摘されず
 生育歴:同胞2人中第1子として道内で生
育。父母弟の4人家族。両親の役割分担
がはっきりせず母親優位
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症
例 提 示 ②
現病歴:X-1年、部活リーダーに選任され
たが、部員をまとめることや、教員、親の
会との交渉、部活会場手続等の負担から、
頭痛を訴えはじめた。徐々に昼夜逆転し、
不登校となった(2カ月間)。脳外科、眼科
では異常を認めなかった。数軒の精神科で
適応障害の治療として薬物療法(エスシタ
ロプラムシュウ酸塩、塩酸セルトラリン、
クロチアゼパム)を受けたが奏功しなかっ
た(10カ月間)。X年、当院を初診した。
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初
診 時 現 症
 素直に、遊び療法、
YG・エゴグラム検査
などに応じ、時折笑
顔も見られるが、入
院治療で治癒するの
か不安を吐露した
 心理検査結果は治療と
自己理解に利用した
 エゴグラムはCPとFC
が低く、ACが高い。
YGはE’型だった
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入 院 治 療 経 過 ①
 入院第1病日:遊び療法、犬介在療法、箱庭療法
からはじまり、「自分を100褒める」実施した
 入院第2病日:病棟内内観療法を開始。入院治療
の必要性に懐疑的な様子だった
 入院第3病日:早朝の犬介在療法と高齢者介護体
験(三色シロップ水、アイスモナカ療法)で速やかに
昼夜逆転は改善したが、早起きが負担と述べた。
院内学校での学習(数学、英語、化学)では、患
児が小中学生に教える場面もあった
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入 院 治 療 経 過 ②
 入院第6病日:薬局の職場見学で「進路を考える
参考になった」と述べた
 入院第7病日:レジリエンスの会(フランクル
の三価値を見直す会)で「環境に恵まれてい
たことに気付け、内観療法を経験して良かっ
た」と述べた
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入 院 治 療 経 過 ③
 入院第10病日:家族同時内観療法実施。「初めは
実施する必要性を感じていなかったが、親の気
持ちが聴け感謝を伝えることができ良かった」
と、明るい表情で述べた
 家族同時内観ではそれぞれ、下記の気づきを述べた
本人「親の厳しさは、愛情によるものだった」
父 「患児の苦悩に気付けず感情的に叱った」
母 「患児への期待が本人の負担になっていた」
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入 院 治 療 経 過 ④
 入院第11病日:早朝の犬介在療法と高齢者介
護体験(三色シロップ水、アイスモナカ療
法) で「早起きの習慣がついた」と述べた
 入院第12病日:頭痛や昼夜逆転が消退、抑う
つ気分が軽快し、退院した
 退院3カ月経過:高卒認定を取得し、大学受験
を予定している
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考
察
①内観の奏功機序
回復過程を次の3つの視点から考察
《反省》リーダーシップを発揮できず、頭痛を
呈した頃の記憶が体を委縮させ、起床できなく
なった。不登校になり、父との口論が増えた。
それを聞いている母にもストレスをかけた
《感謝》子どもの頃に親がさせてくれた経験が
自分を形成する大事な一部になっている
《報恩》家では犬の散歩や雪かきなどをするこ
とで、共働きの両親に貢献したい
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考
察
②
 病棟内内観療法で自他受容が促され、抑うつ
気分が改善したと考えられる
 家族同時内観療法で家族相互理解が深まり、
家族関係が改善したと考えられる。家族内観
の有効性を再確認した
 レジリエンスの会(フランクルの三価値を
見直す会)でリーダーの負担が癒された。
部活リーダーは孤立しやすいため、教員や親
の会がリーダーをサポートするシステムが必
要であると考えられる
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お わ り に
本症例では、病棟内内観療法における自
他受容や家族同時内観療法での相互理解
を深めるアプローチが有効だった
また、集団精神療法でリーダーシップ
を再学習することが有効だった
参考文献:佐々木智城.眞継真輔.太田秀造.社交不安障害を背景とした不登校
生徒と家族への対応.第36回日本心身医学会北海道支部例会.2011
2015.2.22. 日本心身医学会北海道支部会、北大臨床大講堂