南アトンネル本格着工リニア長野工区契約２０２７年に東京（品川）― 名古屋間の開業を目指すリニア中央新幹線について、ＪＲ東海は９日、南アルプス（長野、静岡、山梨県）の山岳トンネル（全長約２５キロ）の長野県側の工区（約８・４キロ）で、大手ゼネコン鹿島（東京）を中心とする共同企業体（ＪＶ）と工事契約を結んだと明らかにした。契約締結は８日付、工期は９日から２６年１１月３０日まで。県内路線５２・９キロで工事契約を結ぶのは初めて。同社は工事契約を「着工」と位置付けており、リニアルートで最難関とされる長大トンネルの本格工事が県内で始まることになる。９日、名古屋市のＪＲ東海本社で開いた記者会見で柘植康英社長が説明した。社長は鹿島をはじめ飛島建設（東京）、フジタ（同）の３社のＪＶと契約を結んだとした上で「今年夏ごろにトンネル工事に着手したい」と述べた。下伊那郡大鹿村から掘削する長野工区について、ＪＲ東海は昨年８月から工事業者を公募し、今年１月１５日まで見積書の提出を受けた。同社は今後、工事用車両が通る県道松川インター大鹿線の改良工事に関する地元説明会を県と合同で開催する予定。その後、ＪＶとは山岳トンネルの工事説明会を開き、施工方法や工事用車両の通行ルート、安全対策などを示した後、工事に入っていく。柘植社長は、鹿島を中心とするＪＶの選定理由を「これまでの工事の経験などを勘案して決めた」と説明。長野県での工事の本格開始に当たり「工事の安全と環境の保全、地域との連携を大切にしながら計画を着実に進めたい」と述べた。南アトンネルは、３千メートル級の山脈の地下深くを掘り進み、長野・静岡県境付近では地下１４００メートルに達する。地中の圧力が高く、複雑でもろい断層を横切るため大量出水も予想される。山梨工区（約７・７キロ）については昨年１２月に山梨県早川町から工事に着手。大成建設（東京）など３社のＪＶが工事を担当している。残りの静岡市内の区間約８・９キロについては、工事業者の契約手続きを始めていない。