平成26年度LCA日本フォーラム・日本LCA学会共催セミナー 「環境マネジメントに関する国際規格、海外の動向」 ISO ウォーターフットプリント 2015.3.18.Wed. 株式会社東芝 環境推進室 小林由典 [email protected] © 2015 Toshiba Corporation 水資源リスク 需要増加や気候変動に 伴うローカルな水リスクは 貿易を通じて世界に波及 http://www.wri.org/our-work/project/aqueduct/aqueduct-atlas 出典:水ビジネスの国際展開に向けた課題と具体的方策 http://www.env.go.jp/water/virtual_water/img/img_big.jpg © 2015 Toshiba Corporation 2 国内のウォーターフットプリント事例(一部) 製品 企業名 うるち米, ピーマン イオン(株) MicVac調理品(肉じゃが) 大日本印刷(株) 自然栽培野菜 (一社)エコ食品健究会 珈琲ドリッパー, 珈琲メーカ 大紀商事(株) ポテトチップス (株)湖池屋 給食用食器 三信化工(株) 電子レンジ用魚焼きパック・調理用パッケージ 凸版印刷(株) 一般用点眼薬包装材 参天製薬(株) シャンプー, ホテル宿泊者用石鹸 (株)資生堂 事務服, ユニフォーム用ジャケット (株)チクマ 冷蔵庫, 洗濯乾燥機, 複写機 (株)東芝 RECO-View RFタグ (株)リコー 切バラの花 MPSジャパン(株) ペットボトル無菌充填システム 大日本印刷(株) 炊き出しグランプリ (一社)エコ食品健究会 参考:ウォーターフットプリント算出事例集/環境省 ウォーターフットプリント実践塾/エコ食品健究会 等 © 2015 Toshiba Corporation 3 ウォーターフットプリント算定事例集 環境省・ウォーターフットプリント算出に関する研究会(H25/1~H26/3) 《算定事例集》 委員 沖(東京大学)、伊坪(東京都市大学)、田原(AIST)、中島(東京大学)、中谷(東 京大学)、東芝、イオン、三信化工、資生堂、大日本印刷、チクマ、日本ハム、JEMAI 目次 1.ウォーターフットプリントとは 1.1 ウォーターフットプリントの概念 1.2 ウォーターフットプリントの開発経緯と国際規格化の議論 1.3 ウォーターフットプリント評価の目的と手法の関係 2.ウォーターフットプリント算定手法 ~衣類製品を対象としたケーススタディ~ 2.1 目的と調査範囲の設定 2.2 インベントリ分析 2.3 ウォーターインパクト評価 2.4 結果の解釈 3.評価事例集 3.1 農作物/食料品(うるち米、ピーマン、MicVac調理品(肉じゃが)、豚肉) 3.2 工業製品(給食用食器、事務服(ベスト)、洗濯機、冷蔵庫、 シャンプー(植物由来プラスチック容器を使用)) 4.データベース/算定ツールの紹介 http://www.env.go.jp/water/wfp/attach/jireisyu.pdf © 2015 Toshiba Corporation 4 ウォーターフットプリントの活用 • 情報開示 – 社外に対し、自社の取り組みや製品が水環境へ及ぼす影響を示す。 • リスク分析・内部改善 – 社内の生産管理や製品や経営の企画を担当する者等に対し、自社の取 り組みや製品が水環境へ与える影響が大きな工程や改善可能な工程を 示す。 – 評価のシステム境界を自社内に閉じず、サプライチェーンの上下流に拡げる ことで、サプライチェーン全体におけるホットスポットを特定するために実施する • 国民の水環境保全意識の啓発 – 学校等における環境教育の教材としての利用、製品ラベリング等 © 2015 Toshiba Corporation 5 ISO 14046 © 2015 Toshiba Corporation 6 ISO/TC207(環境マネジメント) TC(技術委員会)207は1993年に設置。1996年にISO14001発行。日本を含め73か国が 参加。 6つのSC(分科委員会),1つのWG(作業部会),TCG(用語調整グループ) 及びCAG(議長諮問グループ)で構成。 ISO TC207 環境マネジメント 国内審議団体: (財)日本規格協会 ☆(一社)産業環境管理協会 カナダ CAG 諮問グループ TCG 環境用語 カナダ SC1 環境マネジメ ントシステム SC2 環境監査 ☆ SC3 環境ラベル オランダ オーストラリア ☆ SC4 環境パフォーマンス 評価 ノルウェー SC5 LCA ☆ WG8 日本 MFCA ☆ ☆ SC7 GHG管理 フランス カナダ アメリカ イギリス WG5:ISO14001 改正 WG1:フットプリン トコミュニケーション WG6:ISO14004 改正 WG2:Type1 WG3:PCR WG4:環境情報 WG5:環境技術 実証(ETV) WG8:ウォーターフットプリント WG4:ISO140641改正 WG5:ISO140642改正 WG6:ISO140643,14065改正 © 2015 Toshiba Corporation 7 ISO14046 Environmental management — Water footprint — Principles, requirements and guidelines • 経緯 WG 開催場所 ステータス 第1回 2009/11 スウェーデン PWI 第2回 2010/7 メキシコ →PWD2 第3回 2011/1 スイス →PWD3 第4回 2011/6 ノルウェー →WD 第5回 2011/11 ブラジル →CD 第6回 2012/6 →CD2 タイ 第7回 2012/12 イタリア →DIS 第8回 2013/6 ボツワナ →DIS2 第9回 2014/5 パナマ →IS ※FDISはパス 2014/7/24発行 © 2015 Toshiba Corporation 8 最近の動向(2013年) • DIS投票(2013年6月) 否決 – Pメンバー国による賛成投票 73%(33/45)(可決の条件:2/3以上) – 全体投票数のうち反対投票 31%(16/52) (可決の条件:1/4以下) – 反対投票 • アルゼンチン、バーレーン、ブラジル、中国、エジプト、インド、モーリシャス、 ウルグアイ 他 • ボツワナ会合(2013年6月) – インドによるネガティブキャンペーン、途上国を中心に反対意見多数 – 反対意見が出たポイントにフォーカスしてWGのポジションペーパーを作成 • コミュニケーション、大気排出、特定手法の推奨・・・ – コメント533件のうち、技術的な課題50件程度を処理 – DIS2に移行することで合意 © 2015 Toshiba Corporation 9 最近の動向(2014年) • DIS2投票(2014年2月) 可決 – Pメンバー国による賛成投票 82%(33/40)(可決の条件:2/3以上) – 全体投票数のうち反対投票 19%(8/43) (可決の条件:1/4以下) – 反対投票 • アルゼンチン、バーレーン、ブラジル、中国、エジプト、インド、モーリシャス、 ウルグアイ • パナマ会合(2014年5月) – FDIS段階を省略し、IS化することで合意、SC5にも承認された – DIS2投票における413件のコメント処理を行った。技術的な内容について は合意済みとし、規格の読みやすさを重視した小変更のみ反映されたのみ であり、多くのコメントは却下された。 – 並行して進めている「TR(事例集)」についてはISO14046に沿っていな い事例があることや構成が分かりにくいこと等が指摘され、構成を見直した WD3を発行し、継続議論とした © 2015 Toshiba Corporation 10 2015年、今後の動き • スイス会合(2015年1月) – WD3 TR14073 Illustrative examples on how to apply ISO 14046 のコメント処理 – 全体構成:多様な事例で構成。日本からの提出事例2件 – 技術的な課題:組織のWF、季節性の考慮、ベースライン、蒸発散、酸性 化等による水質影響 • インド会合(2015年9月上旬) – WD4回付(6月)、コメント〆切(8月) – コメント処理 • TR完成(2016年 予定) © 2015 Toshiba Corporation 11 ISO14046の構成 • Scope(適用範囲) • Normative Reference(引用規格) • Terms and definitions(用語・定義) • • • • • Principles(原則) Methodological framework(方法論の枠組み) Reporting(報告) Critical review(クリティカルレビュー) Annex A Additional requirements and guidelines for organizations • Bibliography © 2015 Toshiba Corporation 12 Scope(1) • ISO Water footprint assessment – – – – – – LCAベース(ISO 14044に準拠) モジュラー(WFを加算可能) 水に関わる潜在的な環境影響を特定する 時間的、空間的な側面を有する 水利用量および水質の変化を特定する 水文学的知識を活用する © 2015 Toshiba Corporation 13 Scope(2) • Water footprintの活用 – 水利用に関する潜在的な環境影響を評価 – 製品、プロセス、組織のライフサイクルにわたり、上記影響を削減する機会を 特定 – 戦略的水リスクマネジメント – 水利用効率の向上、マネジメント最適化 – 環境影響を意思決定者に伝える – 科学的、信頼性の高い情報を提供 © 2015 Toshiba Corporation 14 Scope(3) • WF単独では総合評価足りえない • WF単独で「reporting」可能であり、LCA(総合的な環境影 響評価)の一部としても利用可能 • WFは影響評価の結果を指す • 「Reporting」は「communication(*)」とは異なる – *environmental labels or declarationsであり、本規格のスコープ 外とする © 2015 Toshiba Corporation 15 Principles • • • • • • • • • • • • Life cycle perspective Environmental focus Relative approach and functional unit Iterative approach Transparency Relevance Completeness Consistency Accuracy Priority of scientific approach Geographical aspects and resolutions(地域性) Comprehensiveness(包括性) © 2015 Toshiba Corporation 16 Comprehensiveness 《水の利用可能性》 Water Availability 土地利用 水の利用可能量 水利用 water scarcity 活動 人間健康 資源 排水 大気汚染物質 排出量 水質汚染 統合化 生態毒性 water degradation © 2015 Toshiba Corporation 17 Water Footprint 出典:環境省・ウォーターフットプリント算定事例集 © 2015 Toshiba Corporation 18 ISO14046 Methodological framework(1) • Water Footprint Inventory – The following data related to water should be considered for data collection. • 水使用量(インプットとアウトプット) • 水源(雨水、地表水、地下水、海水、) • 水質 • 土地利用変化に伴うフローの変化 • 利用形態(蒸発散、製品含有、等) • 取水/排水の地点 • 季節変化 – The following shall be considered if relevant to the impact categories selected. • 水質に影響のある大気排出 • その他影響評価項目 © 2015 Toshiba Corporation 19 1 ISO14046 Methodological framework(2) • Water Footprint Impact Assessment – 影響領域の選定/定量化: Water footprint impact assessment methods shall consider the potential environmental impacts due to change in water availability and change in water quality. • Water Availability Footprint(利用可能性) – 淡水消費量のみに限定せず、複数の指標で構成してもよい – 「量」のみを扱う場合、「Water Scarcity」と呼ぶ • Water Degradation(水質劣化) – 酸性化、富栄養化、水域生態毒性など、目的に応じて選定 – 一つの影響領域で表現する場合、qualifierを付ける • Water Footprint Profile – 影響領域ごとに異なる指標で示す – 一つの指標に統合化することも認める(weighted water footprint) © 2015 Toshiba Corporation 20 WD3 TR 14073 © 2015 Toshiba Corporation 21 WD3 TR14073 構成 • Scope • Terms definitions and abbreviations • Procedures for choosing the type of water footprint study • Examples of application – – – – インベントリ分析 Water availability(Water Scarcity) footprint Water degradation footprint Comprehensive Water footprint • Issues arising in water footprint studies – 大気排出/酸性化の水質影響、ベースライン、季節性の考慮、蒸発散 等 © 2015 Toshiba Corporation 22 WD3事例一覧 カテゴリ 特徴 対象 Single Category 事例A Water Scarcity Footprint 特性化係数(WSI) 稲作 事例B Water Scarcity Footprint 特性化係数(降水量) - 事例C Water Scarcity Footprint 季節性考慮 貯水池 事例D Water Scarcity Footprint - 水供給 事例E Water Eutrophication Footprint 大気排出含む トウモロコシ 事例F Water Degradation Footprint 特性化係数(Critical Water Volume) 顔料 事例G Water Footprint Profile ミッドポイントとエンドポイント 厚紙 事例H Water Footprint Profile 統合化(WSI, 環境影響で統合化) 農業生産 事例J Water Footprint Profile グリーン, ブルー,グレー 事例K Water Footprint Profile WSI, 富栄養化, 酸性化, 生態毒性 事例L Water Footprint Assessment LCAの一部として 段ボール 事例M Water Footprint Inventory 影響評価なし 稲作 Profile 事例I その他 WSI; Water Stress Index © 2015 Toshiba Corporation 23 日本事例 • 特性化係数 – Water scarcity footprint事例 – 一定量の水を得るために必要な土地面積(または時間)で、場所と水源 の違いを表現 – 全球平均降水量は約1,000mm/年であることから、1m2における1m3を 基準状態として、対象地点における水資源量を面積換算 – これまでに大きな反論なし • モンスーンアジアにおける農業水利用 – Water Footprint Inventory事例 – 農工研開発の分布型水循環モデル – 農地の流出の平坦化機能、水田の持つ地下水涵養機能、河川への還元 機能 – 「LCA的ではない/影響評価がない」とのコメントあり © 2015 Toshiba Corporation 24 影響評価例(1) • 水源や地域による水不足の度合いを評価 (Water Scarcity Footprint) 影響評価係数(国全体) 国名 河川水 平均値 ニュージーランド オーストラリア 中国 地下水 分散 平均値 影響評価係数(cropland) 雨水 分散 平均値 河川水 分散 平均値 地下水 分散 平均値 雨水 分散 平均値 分散 1.9 1.5 3.6 1.3 0.8 0.4 2.6 1.9 4.0 1.4 1.1 0.4 41.1 50.8 55.6 51.3 2.5 1.3 10.1 8.2 13.3 8.5 2.2 0.6 552.6 2,216.9 8.9 17.9 9.5 16.4 12.3 15.9 1.7 1.3 550.9 2,217.2 マレーシア 0.7 0.3 2.6 0.4 0.4 0.1 0.9 0.2 2.8 0.4 0.4 0.1 フランス 2.0 0.8 3.5 0.8 1.0 0.2 2.1 0.6 3.6 0.5 1.1 0.1 ウルグアイ 2.3 0.6 4.9 0.7 0.7 0.1 0.8 0.1 1.9 0.4 4.5 0.5 日本 1.4 0.5 3.2 0.6 0.7 0.2 1.3 0.4 3.1 0.5 0.7 0.2 • 水消費と水質汚染を人間健康被害などに換算して統合 (ex:LIME) © 2015 Toshiba Corporation 25 影響評価例(2) • 水質汚染を「水量」に換算して統合 (Water Footprint Network) WFgrey 環境負荷( L) 水質環境基準値(X max )-受水域における自然値(X nat ) 【課題】 環境基準値として何を使うの か? 左図の場合、 ケース1 水道1級レベル ケース2 工業用水1級レベル © 2015 Toshiba Corporation 26 課題など • 影響評価の活用 – ISO-WFは、インパクト評価の結果を指す – 水質劣化を量に換算するのか、人間/生態系影響でみるのか – 内部利用であれば様々な手法を活用してみるが、情報開示でいえば、どの ような手法が好ましいのか – それを支えるインベントリデータの充実が必要不可欠 • 総合評価/環境フットプリント – 水資源の側面だけでなく、温暖化含めた総合的な評価へ © 2015 Toshiba Corporation 27 ご清聴ありがとうございました © 2015 Toshiba Corporation 28
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