2015/05/22 第2章 現代心理学の4つの源流 第2章 現代心理学の 4つの源流 (1)哲学 (2)医学 (3)社会科学 (4)進化論 ・「心理学は、短い歴史と長い過去を持つ」 (エビングハウスの言葉) 心理学の歴史は複線的で、一つの源から諸分 野が派生したのではない。最低でも4つの異 なる源流がある。これらがその後に複雑に融 合したのである。 第2章 現代心理学の4つの源流 (1)哲学:認識論的源流 精神医学・精神分析学(ドイツ) 経験主義哲学→実験心理学→行動主義心理学 (イギリス) (ドイツ) (アメリカ) 社会科学(アメリカ) 進化論と社会ダーウィニズム(イギリス) • 認識論(epistemology)= theory of knowledge • episteme(ギリシア語)=真の知 (古代ギリシア以来の問い) (1)哲学:認識論的源流 (1)哲学:認識論的源流 • 哲学史上有名な対立 • 「大陸合理論」:経験から独立した生得観 念の存在を主張。デカルト、ライプニッツ。 • 「イギリス経験論」:経験に先立つものはな いと考える。 • • • • 人間は物事を正しく知ることができるのか。 どのようにして誤った考え方を抱くのか。 ある考え方が正しいかどうかを確かめる方法はあるか。 人間にとって知り得ないこと(不可知のもの)があるか。 • *「心理学」という語は、17世紀頃から文献 に登場する。「自己の体験を省察し、記述 する」という哲学用語。 • テーテンス:意識は、以下の3つの構成要 素からなる。 • 知(知識) • 情(感情) • 意(意志) 1 2015/05/22 (1)哲学:認識論的源流 • イギリス経験主義哲学(17c) • Hobbes, Locke, Berkeley, Hume, Mill など。 • 人間は生まれたときは「タブラ・ラ サ」であり、感覚体験がその上に心 的内容を書き込んでいくと考える。 =経験主義。 • 人間の複雑な精神内容は、単純な 構成要素に分解できると考える。= 構成主義。 • Millの思弁的心理学=「心的化学 Mental Chemistry」 John Locke, 1632-1704 (1)哲学:認識論的源流 • 18-19世紀は化学が錬金術を捨てて大発展した 時期である。 • 19世紀初めにドルトンやアボガドロによって近代 的な原子論が提唱され、1869年にメンデレーエフ が周期律表を提唱。 • 複雑な物質は構成要素へ分解でき、また構成要 素の結合によって複雑な化合物を生成できる。 • 心的化学=複雑な意識体験も、比較的単純な構 成要素へ分解できるのではないか? John Stuart Mill, 1806-1873 (1)哲学:認識論的源流 • 心的化学を、哲学者の思弁でなく、実証科 学として実行しよう!=実験的哲学、科学 的認識論としての心理学のはじまり。 • 経験主義によれば、複雑な意識内容の源 はすべて単純な経験に由来する。 • それならば、まず感覚のインプットがどのよ うに処理されるのかを研究することが、科 学的認識論の出発となる! (1)哲学:認識論的源流 • Helmholtzの感覚生理学 • 色覚の三原色説 • 聴覚のハープ説 これらは、単純な感覚をさらに単純な 構成要素へ分解しようとする努力。 しかし当時は脳についてはほとん ど何もわかっておらず、ヘルムホル ツの研究も感覚器に限定されて いた。 • 神経の情報伝達速度の 測定も。 Herman von Helmholtz, 1821~1894 (1)哲学:認識論的源流 • 経験主義哲学を背景に、19世紀にドイツ 語圏を中心として新たな「認識の科学」が 誕生する。 • Helmholtzの感覚生理学 • Fechnerの心理物理学 • Wundtの実験心理学 この感覚・知覚研究を中心とする流れは、 現代の実験系心理学までストレートにつ ながっている。 (1)哲学:認識論的源流 • Donders(1868):(オランダの生理学者) • 神経伝導速度研究に触発されて人間の実験を 構想:認知心理学の先祖 • A:ランプ1つ、ボタン1つ • B:ランプ2つ、ボタン1つ • C:ランプ2つ、ボタン2つ • A=もっとも単純な処理時間を反映 • B-‐A=刺激の選択を反映 • C-‐B=反応の選択を反映 2 2015/05/22 (1)哲学:認識論的源流 • Fechnerの心理物理学 • 感覚強度(心理量)を刺激 強度(物理量)の関数とし て表現。 • 恒常法、極限法、調整法 など、感覚知覚研究の基 本的な方法論を確立。 • 「心理学でもっとも成功した 分野」とさえいわれる。 (1)哲学:認識論的源流 • Wundtの実験心理学 • ヘルムホルツの弟子を経て、 1879年にライプチヒ大学の 哲学科内に心理学実験室 を創設。=心理学の誕生。 (1)哲学:認識論的源流 • 「意識」の構成要素 • 純粋感覚(五感) • 簡単感情(鎮静ー興奮、 快ー不快、緊張ー弛緩) • ヴントの研究室は近代的心 理学の世界的センターとな り、多くの留学生が学んだ。 • 20世紀初頭に、ゲシュタル ト心理学と行動主義によっ て批判される。 3
© Copyright 2024 ExpyDoc