要旨現代中国におけるPR戦一戦略的PRと略の一考察戦術的PR一全明哲本論文の課題はなぜ中国でPR戦略が重要かである。研究方法は以下の通りである。第1章では、まず、本来のPRの概念を明らかにする。その方法として、PRと似た概念であるIRやマーケティングなどとの異同点について分析する。その次、中国で行われているPRに関する評価活動を紹介しながら、中国におけるPR戦略の現状について考察する。第2章では、中国におけるPR戦略に関する教育・研究を簡潔に紹介したい。その方法として、中国の主要大学の工商管理学院の学部生、或はMBA課程で必修科目、そして中国の50万人の学生が学んでいる公共関係学について簡潔に紹介する。第3章では、具体的にサムスンの事例を考察しながら、企業におけるPR戦略の実態をやや詳しく考察したい。その方法として、中国で「最も尊敬される企業」に連続5年ランクインしたサムスンを事例として考察する。中国サムスンの中長期ビジョン、中国におけるサムスンのPR戦略について具体的に分析しながら、その成果を考察する。以上の考察を通じて、以下のようなことが明らかになった。まず、第1章を通じて、本来のPR概念と中国におけるPR戦略の現状が明らかになった。本来のPRとは自社の事業活動に関るすべてのステークホルダーと良好な関係を築き上げることである。中国における PR戦略の現状は、中国消費者の意識が高まって来ると同時に、様々なサービスを求めてきた。また、様々な不祥事も起こっている。それにともなって、中国で「最も尊敬される企業」や「中国の公共関係に最も成功した100人」などの評価活動が行われるようになっている。中国ではますます公共関係活動を重視するようになっていることが明らかになった。そして、第2章を通じて、中国では主要大学の工商管理学院の多くで、公共関係学を必修科目として教えていることが明らかになった。そこで教育されている内容は戦略的公共関係と戦術的公共関係に分かれ、それぞれまた5類型に分けられていた。さらに、第3章の事例研究を通じて、中国におけるサムスンのPR戦略の概要が明らかになった。中国を含め世界中で、デザインとスポーツに焦点をあてたPR戦略を行っている。中国国内について見てみると、「PublicService」というPR活動を行っている。その一環として、「教育支援」、「社会福利」、「農村支援」、「環境保護」などの活動を行っている。また、中国本社を第2本社と位置づけ、中国政府に向けてもPR活動を行っている。こういう積極的なPR活動を長年続けた結果、中国において5年連続でブランド順位が 1位で、中国で「最も尊敬される企業」という評価活動にも5年連続でトップ25社にランクインされている。このような点から、サムスンのPR戦略は中国において成功していると評価できることを指摘した。しかしながら、本論文での考察は以下のような点で課題を残している。PR戦略を通じて企業の知名度が上がること、そしてブランドカが向上することは明らかとなったが、一般的な指摘にとどまっている。どのような活動がどれくらいの効果をもたらすかという点では不十分なままである。サムスンの事例の考察では、戦略的公共関係の内の維持型公共関係と、戦術的公共関係の内の社会型公一122一要旨共関係という視角から考察した。しかし、公共関係学には他の4類型の戦略的公共関係や4類型の戦術的公共関係も含まれており、公共関係学の事例の研究としては不十分である。今後、他の事例も含め、考察を深めていく必要がある。龍谷ビジネスレビューNα11-123一