論文審査の結果の要旨

様式
1
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 お よ び 担 当 者
学 位 申 請 者
論 文 担 当 者
持 田 菜 穂 子
主
査
小川
啓恭
副
査
越久
仁敬
副
査
玉置
知子
Live births from isolated primary/early secondary follicles
Following a multistep culture without organ culture in mice.
学 位 論 文 名
(マルチステップ培養法によるマウス 1 次および初期 2 次卵胞から
の産仔の誕生)
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
卵巣には生殖細胞が豊富に存在するが、女性が生殖年齢にある間に排卵に至るのは、
そのごくわずかにすぎない。一部の不妊症女性や、若年にしてがん治療を経験する女性
の中には、生殖年齢にもかかわらず卵巣機能が低下し、難治性の排卵障害による不妊症
に陥ることがある。このような場合に、卵巣から卵子が枯渇する前に出来る限り初期発
育卵胞の段階で採取し、卵母細胞を体外で発育させ、成熟卵子に成長させ、引き続き体
外受精により受精卵を作出できれば、妊孕性の温存ならびに新たな不妊治療法の開発に
繋がる。
申請者は、ヒトに応用するまでの基礎研究として、マウスの卵巣から初期発育卵胞を
単離し、これを体外発育・体外成熟させる培養システムの開発を行った。
具体的には 6 日齢マウス卵巣から 1 次および初期 2 次卵胞を単離し、マルチステップ
培養法と名付けた合計 17 日間の体外培養を行った。第 1 ステップでは卵胞をコラーゲン
ゲルに包埋し、微小滴培地中で 9 日間培養を行い、続いて第 2 ステップではコラーゲン
コート膜に移して 8 日間培養を行った。その後、体外成熟、体外受精・胚移植を実施し
た。卵胞径により採取した卵胞を 3 群に分けて培養したところ、培養開始時の卵胞の直
径が大きいほど、卵胞発育率は有意に高率であった。ただし採取した卵胞の直径にかか
わらず、発育した卵胞の成熟率には差がなかった。得られた成熟卵子の受精率ならびに
胚発生率にも差を認めなかった。続いて得られた胚を偽妊娠マウスに移植して産仔の誕
生にも成功し、性成熟後の妊孕性も確認できている。
このように申請者はコラーゲンゲルとコラーゲンコート膜を段階的に用いるマルチス
テップ法を開発し、マウス初期発育卵胞を効率よく発育誘導できることを示した。