HPV ワクチン接種に関する MSD のステートメント

2015 年 9 月
MSD 株式会社
HPV ワクチン接種に関する MSD のステートメント
9 月 17 日の第 15 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成 27 年度
第 4 回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会では、HPV ワクチン接種
後に何らかの症状が報告された 2,584 人の追跡調査結果が議論されました。追跡調査では、
発症日・転帰等が把握できた 1,739 人のうち、大多数の方が回復または軽快し、通院不要で
あることが分りました。報告されている症状と HPV ワクチンとの因果関係は明らかになって
いませんが、今回の検討部会では、積極的勧奨再開の結論には至りませんでした。
検討部会資料は、こちらからご覧いただけます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000097690.html
日本では、HPV ワクチンの安全性について 2 年以上にわたり議論がなされています。すでに
ある世界中の知見による科学的エビデンスと、国内で毎日約 10 人の女性が子宮頸がんで亡く
なっている現状を踏まえ、MSD は日本の女性が世界各国と同様の HPV ワクチン接種環境を
享受できるよう、HPV ワクチン接種の積極勧奨の速やかな再開を強く要望いたします。
MSD は医薬品およびワクチンの安全性を最優先しており、国をはじめ関係各方面に「ガーダ
シル®」の安全性モニタリング情報を提供してまいりました。HPV ワクチン接種の勧奨中止
以降、国内の HPV ワクチン接種者数は激減していますが、その一方で厚生労働省のがん対策
推進基本計画の中間報告※1 によると、5 大がんのうち子宮頸がんの死亡率だけがさらに増加
していることからも、
子宮頸がん予防対策は公衆衛生上の重要課題と MSD は考えております。
世界保健機関(WHO)
、米疾病対策予防センター(CDC)、カナダ保健省、欧州医薬品庁(EMA)、
オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA)など世界の主要な保健機関は、HPV ワク
チンのベネフィットとリスクを評価した上で、HPV ワクチンの使用を引き続き支持していま
す。EMA は、複合性局所疼痛症候群(CRPS:complex regional pain syndrome)や体位性頻
脈症候群(POTS:postural orthostatic tachycardia syndrome)に関するレビューを行ってい
ますが、EMA は、このレビューは HPV ワクチンのベネフィットがリスクを上回ることに疑
いを投げかけるものではないとしています。また、オーストラリア、英国、デンマークなど
HPV ワクチンの接種を広く実施している国では、HPV 感染や子宮頸がんの前がん病変の発症
が減少してきています。
HPV ワクチンとの因果関係は明らかになっていませんが、接種後に生じた症状の診療につい
ては、全国 47 都道府県に協力医療機関が設置されるとともに、今年 8 月には日本医師会と日
本医学会から「HPV ワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」が発行され、HPV
ワクチンの接種環境が整備されてきました。
今年 8 月末には、日本産科婦人科学会が「子宮頸がん予防ワクチン(HPV ワクチン)接種の
勧奨再開を求める声明」を発表しています。声明では、今後も HPV ワクチン接種の勧奨中止
が継続された場合、世界の中で日本だけが将来も子宮頸がん罹患率の高い国となる可能性が
あると懸念を示した上で、HPV ワクチン接種の勧奨再開を強く要望しています。
日本産科婦人科学会
「子宮頸がん予防ワクチン(HPV ワクチン)接種の勧奨再開を求める声明」
http://www.jsog.or.jp/statement/statement_150829.html
子宮頸がんは、日本では女性特有のがんとしては、乳がんに次いで罹患率が高く、特に 20~
30 代の若い女性で急増しています。毎年約 10,000 人もの女性が新たに子宮頸がんにかかり、
約 3,000 人が亡くなっています※2。HPV ワクチン接種は、子宮頸がんの予防に重要な役割を
果たします。子宮頸がん検診の受診率は OECD 加盟国の大半で 60~80%ですが、日本では
37.7%にとどまっており※3、子宮頸がんは予防できる病気でありながら日本人女性の主な死
因のひとつとなっています。
厚生労働省の平成 25 年度第 6 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の
データでは、HPV ワクチンの国内販売開始以降、予防接種により回避することができた子宮
頸がん罹患者数は 13,000 人〜20,000 人、死者数は 3,600 人〜5,600 人と推計されています。
「ガーダシル®」は世界 129 カ国で承認されており、2006 年 6 月に初めて承認されて以来、
1 億 9,000 万本以上が世界で提供されています。WHO、CDC、カナダの予防接種諮問委員会
(NACI)、欧州医薬品庁(EMA)
、オーストラリア予防接種技術諮問団(ATAGI)など世界の
主要な保健機関が、
「ガーダシル®」に関するあらゆる安全性情報を検証した上で、引き続き
接種を勧奨しています。
国内においても、HPVワクチンのベネフィットとリスクを再度確認するために必要な情報は
そろい、診療体制なども整備されました。MSDはHPVワクチン接種の積極勧奨の速やかな再
開を強く要望するとともに、安全で有効なワクチンの開発・提供と子宮頸がん予防の啓発活
動により、日本人女性の健康にさらに貢献できるよう努めてまいります。
※1 平成 27 年 6 月 10 日開催 第 51 回がん対策推進協議会資料 2
※2 厚生労働省 子宮頸がん予防ワクチン Q&A より
※3 Health Care Quality Indicators Project, OECD 2011. OECD Health Data 2011 (cervical
cancer screening)