伝統野菜の可能性

ばれ、最近注目されること
来作物とも地方野菜とも呼
にも数多くの伝統野菜が存
にあり、もちろん東北各県
が、それ以外にも全国各地
この伝統野菜、京野菜や
加賀野菜などは特に有名だ
異なる。現在流通している
ている野菜とは成り立ちが
ような、現在一般に流通し
この伝統野菜、スーパー
マーケットなどで見掛ける
の野菜を作る農家は、種を
る。 従 っ て、「 F 1 品 種 」
た「F1品種」が浸透した
になって、その要請に応え
率の良さが求められるよう
不揃いを嫌い、均質性や効
境を維持する基盤づくり、
この指針では、①山形の
特徴ある生産技術・生産環
ている。
に沿って県全体の
針」を策定、それ
統野菜』展開指
に「『 や ま が た 伝
は既に、平成
年
である。山形県で
立って多い山形県
の数が東北でも際
を含め、伝統野菜
は、この温海かぶ
用が進んでいるの
において「売れないもの」
算をつけて行う特産品開発
想 』」 の 中 で、 自 治 体 が 予
創 生 が で き る と い う『 幻
氏は東洋経済オンライン
に寄稿した「特産品で地方
る。
躍している木下 斉氏であ
域活性化伝道師」として活
関わり、内閣官房でも「地
おこしに当事者として深く
自身も各地の町づくり、町
を鳴らしている人もいる。
おこしをという発想に警鐘
しかし一方で、特産品で町
るという、その「メッセー
しかし、伝統野菜が地域
の良さや独自性を伝えられ
ことは難しいに違いない。
れる商品」として活用する
いかないで一足飛びに「売
る。そこの事情を考慮して
とであったりするわけであ
通経路が確立していないこ
収量の問題であったり、流
それ相応の事情があるから
一般に流通していないのは
い。そもそも、伝統野菜が
でいくというプランである。 自 体、 簡 単 な こ と で は な
内で「伝統野菜シンポジウ
年は山形県内で「全国伝統
途上にあるようである。昨
注目し、活用を図っていく
あれ、各県とも伝統野菜に
幸い、先に挙げた山形を
始め、東北は程度の大小は
在もあるわけである。
に、栽培の手間であったり、 日夜努力している農家の存
で、それは先に書いたよう
ム
美味しいせりを作るために
してまた、そこには根まで
る機会にもなっている。そ
ったということを再認識す
地元にこのような食材があ
日本の各地には伝統野菜
がある。この伝統野菜、在
が極端に少ない、自家消費
が増えてきたように思う。
在している。定義が定まっ
毎年種苗会社から購入して
れているもの、④現在、種
ある。
統野菜が相当数あるようで
統野菜を「広める」情報発
②「山形の宝」としての伝
な現状に触れ、そこに、①
がどんどん生みだされがち
きである。例えば、最近仙
ジ性」には大いに着目すべ
たようである。伝統野菜、
され、それぞれ盛況であっ
基準としている。
これに対して伝統野菜は、 わけである。
生育時期や形、大きさなど
取り組みを展開し
種第一代」または「一代交
が揃わないなど、栽培に手
秋田」が相次いで開催
認できる伝統野菜が、少な
配種」とも言う、交配によ
間が掛かったり、均一さが
一般に流通している
野菜との違い
子や苗が手に入るもの、を
どの理由で見つけにくい伝
のみで市場に出回らないな
伝統野菜について明確な定
ていないために、正確に何
野菜は、そのほとんどが「F
栽培している。
伝統野菜の可能性
義は今のところないが、概
1品種」と呼ばれるもので
東北の伝統野菜
ね各地で古くから栽培・利
種類あるのか把握するのは
ある。「F1品種」とは「雑
野菜サミット」が、秋田県
用されてきた野菜の在来品
みたところでは、名前が確
種のことを指すようである。 難しいのだが、私が調べて
、岩手
って作られた新しい品種の
現在でも種子や苗があり、
県に由来しているもの、③
名がついているなど、秋田
れていたもの、②地名、人
年代以前から県内で栽培さ
統野菜について、①昭和
た だ、 例 え ば 山 形 県 に
は、一説には160ほど伝
ることが分かった。
140、福島県には
秋田県には
県には
くとも青森県には
掛け合わせて、まったく同
異なる性質の種を人工的に
って生き延びてきた品種で
に適応して、何世代にも亘
「優性の法則」を利用して、 一方でその土地の気候風土
性だけが現れるメンデルの
あり、地域の食材として根
みられなくなって栽培され
に押されて、伝統野菜が顧
ものではない。「F1品種」
付いた作物と言えるような
あり、決してその土地に根
での認知度を高めていく品
地域内需要に対応し、県内
流通促進していく品目、②
統野菜を、①県外・全国に
基本的な考え方として、伝
伝統野菜の施策展開に係る
ぐ」活動の展開、の3つを
を守り、次の世代に「つな
信の強化、③地域の食文化
てプロジェクトが進められ、 番美味しいという人も多い。 の伝統野菜を活用すること
どの「勘違い」を前提にし
のものが日本一うまい」な
拠がないのに「自分の地域
して埋没してしまう、②根
強豪の多い商品市場に参入
れてしまいがちなもので、
ーまたは「流行」に左右さ
商品自体が成功商品のコピ
られる。ばかりか、根が一
「仙台せり」は根まで食べ
物 だ が、 こ こ で 使 わ れ る
ためのとてもシンプルな鍋
けで、まさにせりを味わう
外には鶏肉が入っているだ
な っ た「 せ り 鍋 」。 せ り 以
台でよく食べられるように
発見する手掛かりとしてこ
その地域に住む人自身が再
良さや食文化の多様さを、
駆けてまずは、その地域の
てよいと思うが、それに先
もちろん今後の視野に入れ
域に売り込んでいくことは
それを大都市圏など他の地
伝統野菜をどう活用
するか
一代目のことである。異な
生産物が手に入るもの、の
統野菜があるとのことなの
付き、食文化の一翼を担っ
、宮城県には
3つの事項を満たす品目を
じ形質の野菜ができるよう
はあ
、山形県には
る形質をかけあわせると優
前提とされる流通に向かな
し か し、「 F 1 品 種 」 は
かったりという面があるが、 すなわち一代限りの品種で
た固有の野菜、穀物、果樹
地域で栽培・利用されてき
また、山形県では、①その
つけられなかった。ちなみ
のだが、残りについては見
の「F1品種」である。
の種の特性は親と同等であ
ろん種は自家採取でき、そ
は個性的かつ多様で、もち
てきたという面もある。味
野菜に合った栽培方法など
であると思う。また、伝統
多様性の面からもマイナス
なくなることは、食文化の
生産の充実・生産量の拡大
に区分する。その上で、①
保存していく品目、の3つ
目、③種子の掘り起こし、
といって地元にある原材料
はなく「地域資源だから」
から原材料を選択するので
「売れる最終的な商品像」
から商品を考えてしまう、
「F1品種」は生育の速
さ が 均 一 で、 耐 病 性 も つ
③「新技術を導入すれば売
けやすいなど栽培しやす
(需要を満たす生産量の確
れる」と「技術頼み」にな
に、山形県のホームページ
は、その地域の文化そのも
保)、②流通経路の確立(生
っていて、それが価格に転
で紹介されている山形県内
る。
産者と実需者との新たな流
など、②自家採種により品
の伝統野菜は
通 形 態 の 形 成 )、 ③ 需 要 拡
さや風味も均一で、単位面
海町地域に伝わる温海かぶ
先に秋田県と山形県の伝
のであるとさえ言える。例
統野菜の定義を紹介したが、 えば、山形県鶴岡市の旧温
種、系統が維持されてきた
もの、③年代は概ね昭和
それ以外にも恐らく生産量
そ れ ぞ れ「 昭 和
種類である。 く、収穫された野菜の大き
年以前(戦前)から栽培さ
積当たりの収量も大きいの
年代以
で、大量生産や大量輸送に
栽培されているものと規定
い か ぶ だ が、 こ れ は 今 も
漬けにするととても美味し
は、赤色が鮮やかな、甘酢
の方向で施策を展開してい
野菜の認知度向上、の4つ
ンの実施、④やまがた伝統
大につながるプロモーショ
ている。
つの問題点があると指摘し
のかを考えていない、の3
嫁することが可能なものな
の割合で劣性形質が
この、根まで美味しいせり、 を考えたい。
に品種改良されたものがこ
38
71
Facebook
されているのは、この「F
400年前から伝わる焼畑
年以前」から
「F1品種」から採種され
年代以降
くとしている。
向いている。しかし一方で、 前」、「昭和
たF2世代の種は、今度は
1品種」が昭和
自然農法で作られている。
し、
だだちゃ豆はその味で全国的に知られる
20
50
30
https://www.facebook.
com/kouhei.ootomo
メンデルの「分離の法則」
の高度経済成長期に市場を
8月に行われる火入れは、
いわば品目ごとにアプロ
ーチの仕方を変え、可能な
に対
席巻し始めたことと関係が
この地域の夏の風物詩とも
によって、優性形質
あるのではないかと考えら
確かに、伝統野菜の活用
まずは地域の人がそ
の良さを再認識する
ところから
現れるために一部が親とは
て県外に積極的に売り込ん
ものについては特産品とし
東北で最も在来野菜の活
なっている。
20
の流れの中で、農産物にも
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執筆者紹介
大友浩平
(おおともこうへい)
奥州仙臺の住人。普段は出
版社に勤務。東北の人と自
然と文化が大好き。趣味は
自転車と歌と旅。
「東北ブログ」
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違った形質となってしまい、 れる。大量生産、大量消費
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形や味が均一にならなくな
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20
http://blog.livedoor.jp/
anagma5/
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、
in
温海かぶは甘酢漬けにして
売られている
伝統野菜があることになる
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伝統野菜と位置づけている。 で、実際にはもっと多くの
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明確な定義はないと書い
たが、例えば秋田県では伝
2015 年 (平成 27 年) 3 月 16 日 (月曜日) 第 34 号 http://tohoku-fukko.jp/