201 5 年度数学基礎考究2 (落合) 確認小テスト解説 (11/19) [1] f(X

201 5 年度 数学基礎考究2 (落合) 確認小テスト解説 (11/19)
[1] f (X) = a0 + a1 X + · · · + an X n ∈ K[X], A ∈ Mn (K) に対して f (A)
で a0 1n + a1 A + · · · + an An ∈ Mn (K) を表すとき, A ∈ Mn (K) に対す
る最小多項式 φA (X) ∈ K[X] の定義を述べよ.
解答 f (A) = 0 をみたす最高次の係数が 1 である多項式 f (X) ∈ K[X]
のうち次数が最小のものを最小多項式という.
注意 f (A) = 0 をみたす多項式 f (X) ∈ K[X] は必ず最小多項式 φA (X)
で割り切れる. また, A に対して最小多項式 φA (X) は一意に定まる.
[2] f (X) = a0 + a1 X + · · · + an X n ∈ K[X], A ∈ Mn (K), P ∈ GLn (K)
とするとき, f (P −1 AP ) = P −1 f (A)P を証明せよ.
証明 (P −1 AP )k = P −1 Ak P が勝手な非負整数 k で成り立つ. また,
B1 , B2 , . . . , Bk ∈ Mn (K) に対して,
P −1 (B1 + B2 + · · · + Bk )P = P −1 B1 P + P −1 B2 P + · · · + P −1 Bk P
が成り立つ. よって,
P −1 (f (A))P = P −1 (a0 1n + a1 A + · · · + an An )P
= a0 1n + a1 P −1 AP + · · · + an (P −1 AP )n
= f (P −1 AP )
となる.
[3] A ∈ Mn (K), P ∈ GLn (K) とするとき, φP −1 AP (X) = φA (X) を証
明せよ.
証明 最小多項式のの定義より φP −1 AP (P −1 AP ) = 0 が成り立つ. また,
[2] の結果より φP −1 AP (A) = P φP −1 AP (P −1 AP )P −1 = 0 である. よって,
φA (X)|φP −1 AP (X) となる. A と P −1 AP の立場を逆にして, 同様の議論
で φA (P −1 AP ) = P −1 φA (A)P = 0 である. よって, φP −1 AP (X)|φA (X)
となる. f (X), g(X) がともに最高次の係数が 1 の多項式で f (X)|g(X)
かつ g(X)|f (X) ならば f (X) = g(X) であることより φP −1 AP (X) =
φA (X) が従う.
[4] A ∈ Mn (K), P ∈ GLn (K) とする. A の固有多項式を ΦA (X) と記
すとき, ΦP −1 AP (X) = ΦA (X) を証明せよ.
証明 固有多項式 ΦA (X) は
ΦA (X) = det(X1n − A)
と定義される (教科書 p. 112 を参照). 勝手な n 次正方行列 B ∈ Mn (K)
と勝手な n 次の正則行列 P ∈ GLn (K) に対して,
det(P −1 BP ) = det(P −1 B · P ) = det(P · P −1 B) = det(B)
である. B = X1n −A にこれを適用する. P −1 (X1n −A)P = P −1 X1n P −
P −1 AP = X1n − P −1 AP より ΦP −1 AP (X) = ΦA (X) が従う.
[5] A ∈ Mn (K) に対するケーリー・ハミルトンの定理の主張を正確に
述べよ.
解答 1 A の最小多項式 φA (X) は A の固有多項式 ΦA (X) を割り切る.
解答 2 A の固有多項式 ΦA (X) に対して ΦA (A) = 0 が成り立つ.
[6] 「勝手な実係数行列 A ∈ Mn (R) は Mn (C) において (上半) 三角化
可能」である. この主張を丁寧に記せ (主張を正確に記すだけでよい.
証明はしなくてよい).
解答 A ∈ Mn (R) を勝手な実係数行列とするとき, ある複素係数正則行
列 P ∈ GLn (C) が存在して P −1 AP ∈ Mn (C) は上半三角行列となる.
(
)
a b
[7] 次の上半三角な 2 × 2 行列 A =
∈ GL2 (C) の最小多項式
0 d
φA (X) と固有多項式 ΦA (X) を記せ. 結果だけでよいが, 必要に応じて
a, b, d の値に関する場合分けを行うこと.
解答 ΦA (X)
 = (X − a)(X − d),
X − a
a = d かつ b = 0 のとき,
φA (X) =
(X − a)(X − d) それ以外のとき
コメント ただ, 計算してもわかりますが, 対角化やジョルダン標準形
の理論に照らし合わせて理解しておくのも大切でしょう.