卒業論文結果の報告 専修大学文学部心理学科 4 年次 津田洋祐 1.挨拶 この度自分の研究に参加していただいた皆様、ご協力ありがとうございました。皆 様から得られましたデータについて分析が終了いたしました。簡単ではありますが、 結果を報告させていただきます。 2.本研究の目的 本研究の目的は、非公式集団の成員の内集団アイデンティティ(以下 ID)獲得のモデ ルを構築することでした。非公式集団とは、組織の中で自然発生的に生まれる人間関 係で、縦割り関係にもとらわれず、随意的に生じてくる仲間関係のことをいいます。 集団内の ID 獲得については様々な議論がなされていますが、未だに一定の見解は得 ていません。そのため本研究では、縦割り関係にとらわれず、随意的に生じてくる非 公式集団における成員同士の心理的紐帯(結びつき)と集団内における目標の達成と いった課題性に注目し、それらの要素がどのように内集団 ID に影響を及ぼすかにつ いて検討し、内集団 ID 獲得モデルを構築しました。 3.調査結果 本研究では大学生を調査対象とし、集団を統制するために、扱う集団を「学部学科 の友人仲間」 「バイト先のメンバー」 「部活またはサークル」の 3 つに分けて調査しま した。 予備調査を行い、非公式集団においてメンバーはその集団において、ど のような場面でその集団の一員だと感じているかを調べました。その結果、それぞれ の集団間の中で成員同士における「提供」と「享受」の関係を見出すことができまし た。以下に例を示します。 教える⇔教えられる 提供する⇔提供してもらう 協力する⇔協力してもらう 1 得られた結果を集団ごとにまとめて項目化し、これらの項目を「成員性・内集団 ID 獲得尺度」としました。分析の結果この尺度は「学部学科での友人仲間」では交 流、協力、信頼、被相談・信頼、被交流の 5 つ、 「バイト先のメンバー」では信頼、激 励、仕事、被信頼、被激励、被仕事の 6 つ、 「部活またはサークル」では激励、役割、 企画・応援、被激励、被役割、被企画・応援の 6 つに大別できました。 本尺度に、課題性を測る尺度、成員同士の心理的紐帯を測る尺度、内集団 ID を測 る尺度を加え、内集団 ID 獲得モデルを構築した結果、以下のようになりました(図 1,2,3)。図中の矢印は、影響を及ぼしている方向を表しています。 交流 被交流 心理的 紐帯 信頼 内集団 ID 課題性 被相談・ 信頼 協力 図1. 「学部学科における友人仲間」における内集団ID獲得モデルの解析結果 2 激励 被激励 被信頼 信頼 心理的 紐帯 内集団 ID 課題性 仕事 被仕事 図2. バイト先のメンバーの内集団ID獲得モデルの解析結果 激励 企画・ 応援 被激励 被企画・ 応援 心理的 紐帯 内集団 ID 課題性 役割 被役割 図3. 部活またはサークルの内集団ID獲得モデルの解析結果 3 各モデルの検討の結果、バイト先のメンバーと部活またはサークルにおいては、内 集団 ID の獲得には課題性から心理的紐帯の媒介する間接的な効果が重要であること が考えられます。学部学科における友人仲間については、課題性は内集団 ID につい て影響を及ぼさず、成員性・内集団 ID 獲得尺度の因子から心理的紐帯を媒介する間 接的関係が影響を及ぼしていました。 「バイ また、 「学部学科における友人仲間」では内集団 ID と心理的紐帯において、 ト先のメンバー」「部活またはサークル」では全ての要因において享受と提供の対の 関係で影響を及ぼしていました。また、心理的紐帯に影響を及ぼす因子においては享 受→提供という返報モデルが見られ、内集団 ID については、その集団の成員から何 かを与えられる、という享受の関係が内集団 ID に影響を与えると考えられます。 以上で簡単ではありますが、調査の報告を終わります。最後になりましたが、本調 査に御協力いただき、誠にありがとうございます。 4
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