「知の知の知の知 」第2694号 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
診療所
あまみ
中
中 央
事務局
研究所
しらさぎ
つなぐの
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2694 号 2015.10.29 発行
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『異才発掘プロジェクト』
関西テレビ ワンダー 2015 年 10 月 22 日
ずば抜けた能力がありながら、人付き合いが苦手だったり漢字が書けなかったりして、
今の教育環境になじめない子どもたち。
そんな不器用な子どもたちの才能を伸ばしていこうという取り組みがあります。
それが『異才発掘プロジェクト』。
参加している、大阪の少年を取材しました。
機体の隅々まで細かく描かれた飛行機。
少年の想像の世界が表現されています。
その世界に登場するのは…。
(Q:これは何?)
【山下泰斗くん】
「カリーニンです。オリジナル
キャラクター、頻繁に出てくる」
細かい配線まで作り込まれたこの飛行機にも、
設計図はありません。
材料は、空き箱など自宅で使わなくなったもの
ばかり。
作ったのは、大阪府内に暮らす山下泰斗くんで
す。
【山下泰斗くん】「次から次にいろんなのが浮か
んでくるから、これどうやったかなとか覚えてな
い。妙な生活感を出すというのが好き」
泰斗くんは14歳ですが、学校には行っていませ
ん。
その代わり、月に一度通っているのが…、東京
大学です。
【プロジェクトに参加する少女】「今、社会、周
りの人たちに対して変わってほしい、求めている
ことってありますか?」
【東
大先端研・福島智 教授】「あなたはどうです
か?あなたは何かある?」
【少女】「まずは学校に行かないといけないみ
たいな風潮がなくなるといいなと」
【福島教授】
「そうだね!」
バリアフリー学の第一人者・福島智教授と意
見を交わす子どもたち。
ここは東京大学などが去年12月から始め
た学びの場、
『異才発掘プロジェクト』
、通称ロケットです。
(Q:異才とは?)
【プロジェクトディレクター 東大先端研・中邑賢龍 教授】「変な子です。よく天才を集
めているのかと言われるけど、そんなのわかりません。どの子もいろんな方向に走ってい
ける可能性があるのに、僕らが型にはめてそれを強制しようとする中で、本当に伸びる部
分がつぶされているような気がする」
人付き合いは苦手。学校にも通えていない。
それでも、次々と小説が浮かぶ。誰にも描けない絵が描ける。
そうした突出した部分があるのに学校になじめない子どもたちの才能を伸ばしていこう
としています。
ロケットの講師は、ロボットクリエイターの高橋智隆さんや、陸上の元オリンピック選
手の為末大さんなど、様々な分野のトップランナーです。
さらに、子どもたちにはユニークなミッションが与えられます。
≪Mission 〜イカを解剖して、パエリアを作れ!〜≫
≪Mission 〜古い椅子を修理せよ!〜≫
教科書はなく、方法は自由。
興味が湧いたらどこまで突き詰めてもかまいません。
自分で考え、自分で行動することが尊重されます。
(提供:日本財団)
(Q:今までの学校生活ってどうだった?)
【山下泰斗くん】
「やっぱりしんどかった。予想外の事態に対処するとか、人に合わせると
か、苦手というか…、できるけど人より疲れる度合いが大きいというか…、苦手というか、
燃費が悪いというか」
泰斗くんは、音や環境の変化に敏感です。
地下鉄では工事現場にいるように感じ、ザワザワとする教室移動だけでも疲れが大きく
出てしまいます。
人が受け流せることにこだわってしまい、言葉にしなくても理解し合える”暗黙の了
解”も苦手です。
集団という枠組みの中での生きづらさを理解
してもらうのは難しく、中学校に通えなくなり
ました。
【泰斗くんの母親・雅子さん】
「精神的にしん
どいという部分が大きいので、そこを汲み取っ
てやるのにどこで線引きをしたらいいのか…。
もうちょっと頑張らせた方がいいのか、本人が
言っているから頑張らせたら駄目なのかで、こ
れだけ長いこと親として接しているのに、いま
だに判断付きづらい」
【泰斗くんの父親・泰さん】
「ロケットも我々
も”枠”が無くて試行錯誤。これが何になるん
だろうと正直思うところもありましたけど、自
分で考える自分でする、やりたいことがあれば
やればいいよ、やりたくなければやらなくてい
いよ、フォローはするけどどうしなさいこうし
なさいは言わないよ、っていう場が泰斗には合った。合う場所が見つかればいいなという
こと思う」
この日、泰斗くんは少しイライラしていました。
ロケットで学んだ事を、みんなの前で発表することになったからです。
(Q:プレゼンテーションやったことある?)
【泰斗くん】
「いや〜、ない、ないはず」
(Q:みんなの前で発表するのは得意?)
「苦手、苦手のはず。苦手というか嫌」
泰斗くん、お父さんと一緒にどんな発表にするの
か考えますが…。
【父・泰さん】「これこのページにして、その次
のページ、これにしてらええやん」
【泰斗くん】「どうせえっていうねん。パワーポ
イントでやったらいいやんっていうけど、やり方分からんのに簡単に言わんといて!嫌や
な〜、嫌や。何でこんなことしなアカンねん、腹立つ」
いらだつ泰斗くんですが、お父さんに見守られ、少しずつ考えをまとめていきます。
【泰斗くん】
「持ち味というか、そんな感じやんな?」
【父・泰さん】
「絵が持ち味やもんな」
【泰斗くん】
「ちょっと希望が見えてきた」
【父・泰さん】
「希望が見えてきたな」
発表の日。
映像を使ったり、作品を披露したり、思い思い
の発表が続きます。
【プロジェクトに参加する少年】「字の汚さや、
漢字の書けなさばかり指摘されたが、ここでは私
自身を見てくれた」
【プロジェクトに参加する少女】
「私はやっぱり変だけど、変っていうのも悪くないと思え
るようになってから、生きていくのがずいぶん楽
になりました」
人生で初めてのプレゼンテーションに、緊張し
ている泰斗くん。
【山下泰斗くん】
「え〜っと…、スカラー候補生
の山下泰斗です。
「プロジェクト・椅子」ではデ
ンマークの椅子を直す予定だったんですけど…」
選んだ発表の方法は、得意の「絵」を使う事。
イラストの力を借りて、椅子を修理したミッシ
ョンの様子を発表します。
泰斗くんが注目したのは、修理の方法…、ではなく「接着剤」。
伝統的な接着剤が現在はあまり使われていないということから、大きな結論を導きまし
た。
【山下泰斗くん】
「ニカワ(接着剤)は、メリットがありながらも、解体修理が出来ても新
品買った方が早い、塗るのが難しいとかですたれてしまった。こういう現代社会では、時
間がかかったり扱いにくかったりするものが滅びていく、ゆとりがない社会じゃないかと
思う。ゆとりのない社会はキツキツですから非常に生きづらい。僕も実際生きづらいです
から。結論!「プロジェクト・椅子」はゆとりある生きやすい社会への第一歩である」
【プロジェクトディレクター 東大先端研・中邑賢龍 教授】「変わっている部分を「変え
なさい、変えなさい」は無理。少し周りの人が譲歩してくれるといい。それを意識しない
で生きられる社会にしてくれたらいいと本当に思いました。「堂々と生きろ!堂々と変に生
きろ!!」それを僕たちも支援する」
【山下泰斗くん】
「同じような人間っているん
だと思ったら、世界がちょっと広がった、いろ
んな意味で」
(Q:“変わっている”とは?)
「悪いこともあるけど、いいことだと思いたい
です」
”人とは違う才能”をどう伸ばすか。
見方を少し変えることで、可能性は広がりま
す。
知的、精神、発達障害者ら職員採用試験の対象に 明石市 神戸新聞 2015 年 10 月 28 日
兵庫県明石市は28日、来年1月に行う障害者向けの採用試験の対象に、知的、精神、
発達の各障害者らも加える、と発表した。これまでは身体障害者だけが対象だった。市に
よると、身体以外の障害者を募集するのは兵庫県内で初めて。全国でも珍しいという。
泉房穂市長は会見で「市役所の仕事は幅広い。住民の理解を得られる人を採用し、活躍
してもらって、障害者の自立や社会参加を促したい」と述べた。
障害者枠の定員は2人程度。難病など障害者総合支援法が定める332の病気の患者も
含む。
正規職員または任期付き職員とし、採用後は適性や能力を踏まえて事務職か技能労務職
に配置。技能労務職の場合、違法駐輪の取り締まりや公園の管理などの仕事が想定され、
必要な場合は別の職員が支援する。
採用は来年4月1日。高校以上の学校や特別支援学校高等部を卒業、修了し、同日現在
で35歳以下の人。詳細は同市人事課TEL078・918・5006(井原尚基)
読売療育賞
最優秀賞に「聖隷おおぞら」
読売新聞 2015 年 10 月 29 日
入所者について話し合う田口さん、松本さん、冨田さん(左から)
重症心身障害者施設で働く職員の優れた実践研究に贈
られる第11回読売療育賞(読売光と愛の事業団主催)
の最優秀賞に、「聖隷おおぞら療育センター」(浜松市北
区三方原町)が選ばれた。人の声やさまざまな音に対し
て、入所者がどのような反応を示したかをまとめた研究
で、同センターは「入所者により適切な対応ができる」
として、研究成果を現場で生かすつもりだ。
研究をまとめた生活支援員の松本悦子さん(38)は「日常の業務に自主的な研究を並
行して行うのは、両立が大変だったが、努力が認められてうれしい」と受賞を喜んだ。他
に研究に携わったのは、冨田道子さん(38)、田口結実さん(38)
、川上恵さん(35)
、
看護師の堀内純子さん(48)の4人。
重症心身障害者は、発達の段階により聴覚に差がある。5人は入所者それぞれが声や音
に対して、どのような反応を示すかに注目した。
研究では、重い知的障害と身体障害を併せ持つ1~82歳の入所者82人を対象に、施
設で生活する様子を観察しながら、障害の程度によって異なる声や音に接したときの反応
をまとめた。その結果から、聴覚からの刺激や情報に対する入所者の受け止め方の違いを
評価する表を作った。
研究の成果について、田口さんは「入所者が日々の生活で、声や音の刺激をどのように
感じているかを理解することで、生活支援員がより適切な対応ができる。入所者の生活の
質が高まれば」と話した。
千葉)障害者らの力で野菜の栽培・加工・販売
白井
朝日新聞 2015 年 10 月 29 日
「ちば起業家大賞」を受賞したニッポン食堂社長の宇賀俊之さん(左)
と従業員ら=白井市谷田の「OMOしろい店」
千葉ニュータウンに残る自然環境を生かし、障害者らの力
を借りて、野菜の栽培から加工、販売まで一貫した環境を整
えよう――。そんな計画が今月、県が初主催した起業家を応
援するコンペで最優秀賞に輝いた。白井市の会社が実現に向
けて挑む。
取り組むのは、白井市で2009年に設立した株式会社ニ
ッポン食堂(宇賀俊之社長)。県内や茨城県でこだわりの野菜
を作る農家から商品を仕入れて、消費者や飲食店に販売、宅
配をするほか、13年7月には新鮮な野菜を生かした料理を
提供する「農cafe&shop O(お)MO(も)しろい店」をオープンした。
開店当初、人手不足ということもあり、軽い障害の疑いがある20代後半の男性を試験
的に雇った。野菜の箱詰めなど出荷作業を中心に任せたところ、半年が過ぎた頃から目を
見張るような働きぶりに。
高齢者らの生活いろいろ支援
たつの市が冊子「お助け帳」産経新聞 2015 年 10 月 29 日
たつの市内の宅配や訪問サービスを提供する事業者が掲載された
冊子=たつの市役所
高齢者世帯や一人暮らしの障害者など、自力では外出
が困難な人たちを支援しようと、たつの市は、宅配や訪
問のサービスを利用できる市内の食料品店、美容・理容
店などを掲載した冊子「生活いろいろお助け帳」をまと
めた。同市高年福祉課は「外出が困難な高齢者らの生活
の質を上げ、地域とのつながりを生むきっかけにしたい」
と話している。
冊子には、
「日用品・薬品」
「食品・食材」「訪問理容・美容」など10の分野に、市内5
2業者が掲載されている。連絡先や営業時間、扱う商品とともに、提供しているサービス
内容を記載。例えば、理容店では自宅に訪れて散髪やシャンプーをし、電器店では自宅に
商品を運んだり、訪問修理を行ったりする。ほしいものや食べたいもの、受けたいサービ
スなどに応じて掲載業者に直接電話をかけ、「お助け帳を見た」と告げれば、利用できる。
一方、掲載業者は、宅配や訪問サービスで高齢者らの元を訪れた際、会話や表情などか
ら異変を感じた場合、市に情報提供する協力もするという。
同課の山崎加奈副主幹は「冊子を利用することで高齢者らが外とのつながりを持ち、生
活に張りを感じられるようになればうれしい」と話している。
冊子は、1200部を市内各地区の民生委員・児童委員が高齢者らに直接配布し、市の
地域包括支援センターや各総合支所でも受け取ることができる。
【わかやま大会】全国の選手団が離県 ボランティアがお見送り
産経新聞 2015 年 10 月 28 日
「また きよしよ 紀の国 和歌山へ」-。全国障害者スポーツ大会「紀の国わかやま
大会」に出場した全国の選手団が27日、帰途についた。駅や空港などではボランティア
らが横断幕などを持って見送り、手を取り合って別れを惜しむ姿もあった。
アーチを作って選手を見送るボランティアたち=JR和歌山駅
選手らを支える「サポートボランティア」には県内の
看護学校の生徒ら約1200人が参加し、22日から荷
物の運搬や道案内などを担ってきた。この日、JR和歌
山駅では、ボランティアらが選手らに「お疲れさまでし
た」「ありがとう」などと声をかけ、ホームでは手を振
って見送った。
大分県選手団の平川奉也監督(28)は「地元の方々
の温かい支えがありがたく、心強かった。選手も不安な
く競技に打ち込めた」と笑顔。和歌山看護専門学校2年の伊藤紗也加さん(27)は「障
害があっても頑張る姿を見て、努力の大切さを感じた。これからもこの経験を思い出し、
頑張っていきたい」と話した。
障害者差別通じ「真の共生」学ぶ
人権問題講座
佐賀新聞
2015 年 10 月 28 日
自身の体験をもとに共生社会の実現を訴える山田定之さん=佐賀
市の自治労会館 さまざまな人権問題の視点を教育現場に
生かそうと、教育関係者を対象にした講座(佐賀部落解
放研究所主催)が27日、佐賀市で開かれた。障害を理
由に就労や居住などの不当な扱いを禁じた「障害者差別
解消法」が来年4月に施行されることから、共生社会の
あり方について考えた。
元久留米市議で障害者支援に取り組むNPO法人「久
障支援運営委員会」の代表理事・山田定之さんが講演。
自身も車いす生活で、学生時代には障害を理由に教師か
ら進学先をあきらめるよう説得された経験に触れ、
「障害にかかわらず希望をかなえられる
社会の実現を」と訴えた。
障害者差別解消法については「十分な理解が進んでおらず、手放しでは喜べない。罰則
規定もなくどれだけ実効性があるか疑問」と指摘した。会場には教師ら約70人が訪れた。
高木団地で「きてみんしゃいカフェ」 ともしび
佐賀新聞 2015 年 10 月 28 日
■三世代交流の新モデル
先日、佐賀市の高木団地で2回目の「きてみんしゃいカフェ」が開かれた。サークルの
親子にも呼びかけがあり、行ってみると、「就労支援事業所みのり」の手作り野菜などが販
売されていた。
カフェでは総菜やカレー、ケーキなどすべて100円で、「NPO法人ライフサポートは
る」利用者がおもてなし。地域のお年寄りが食事やおしゃべりを楽しんでいた。親子にも
皆さんが笑顔で話しかけてくれ、子どもたちは少し恥ずかしそうに母親に抱かれていた。
自治会長の後藤春一さんは「地域住民が気楽に集まり話ができる場があればと企画した。
子どもたちも参加してくれてうれしい」と笑顔で話し、親子も「また来たい」と笑顔だっ
た。
地域のお年寄りや親子が交流でき、事業所の利用者がおもてなしすることで障害者の社
会参加にもつながる。三世代交流の新しいモデルだと感じた。(中村由美子・佐賀女子短大
非常勤講師)
いじめや事故死…「誰もが被害者に」 遺族ら21人が手記を自費出版
東京新聞 2015 年 10 月 28 日
スイミングスクールで亡くなった国本考太さんの遺影に手
を合わせる母親=大阪市都島区で
全国の小学校で二〇一四年度に把握されたいじ
めの件数が、過去最多になった。教育現場で起きた
いじめや事故で亡くなったり、深刻な被害を受けた
子どもの親ら二十一人は、手記「問わずにはいられ
ない-学校事故・事件の現場から」を自費出版し、
「誰もが被害の当事者になり得る。その時にどうす
ればいいか、考える手助けになれば」と願う。 (上
田千秋)
「学校や教育委員会は批判を恐れて必ず隠蔽(い
んぺい)に走る。最終的に守ってあげられるのは親しかいない」
。執筆者の一人で、兵庫県
在住の男性(52)が話す。
男性の長男は神戸市立小学校の五年生の時、壮絶ないじめを経験した。同級生十三人の
標的になり、殴る蹴るの暴行を受けて「死ね」
「消えろ」と罵声を浴びせられ続けた。
次第にエスカレートし「金を持ってこい」と脅された長男は、男性が趣味で集めていた
旧札の一万円などをこっそりと持ち出すようになった。金額が五十万円を超え、ようやく
気が付いた男性が訴え出ても学校は事実を認めようとせず、転校させるしかなかった。今、
長男は立ち直り、大学に通っている。
男性は「全国学校事故・事件を語る会」(兵庫県)のメンバーとして、他の被害者の相談
にも応じる。
「いじめでは先生に相談した後に自殺するケースが非常に多い。勇気を振り絞
って打ち明けたのに、何もしてもらえず絶望してしまうからだ」と訴える。
「自分の子どもが生きた証しを世に残したい」。そんな親たちの願いをかなえたいと、男
性は会の活動などを通じて知り合った遺族らに執筆を呼び掛け出版が実現。手記を寄せた
のは、いじめのほか、教員の過剰な指導を苦に自殺したり、部活動中に顧問が適切な対応
を取らなかったために熱中症や事故で命を落としたりした子どもの保護者らだ。
一三年八月、発達障害と知的障害があった大阪市都島区の国本考太さん=当時(24)
=は、NPO法人が運営する障害者向けのスイミングスクールで水泳中、熱中症のため亡
くなった。国本さんの母親(56)も手記を寄せた一人。「コーチがハードメニューを課さ
なければ、考太は突然に命を落とすことはなかった」と無念を記している。
手記を編集した取次代理店「L.C.研究所」(兵庫県尼崎市)代表の田原圭子さん(4
9)は「子を持つ親だけでなく、教員も手に取って、学校現場と世の中の常識は違うこと
を知ってほしい」と話している。
二百五十四ページ、定価千二百円(税抜き)
。ネット書店のアマゾンで購入できる。問い
合わせはL.C.研究所=電06(6430)9306=へ。
「不安を明確にし対策を」
ひきこもりの中高年養う親の生活設計
東京新聞 2015 年 10 月 29 日
長期間、自宅以外の生活の場が失われる「ひきこもり」。全国では十五~三十九歳の約七
十万人が、その状態にあるとされる。中高年に差し掛かり、社会復帰の可能性が低くなる
と、親には「自分たちが死んだら、うちの子はどうなるのか」と不安が増す。働くことが
難しい場合、どのような生活設計を立てればいいのか。ファイナンシャルプランナーの浜
田裕也さん(37)に聞いた。 (砂本紅年)
「子どもが四十~五十代という親からの相談が目立つ。親は六十~七十代。両親のどち
らかが亡くなっている場合も多い」と浜田さん。
ひきこもりになったきっかけは人それぞれだが、学校のいじめや不登校が多い。後に発
達障害や精神的な病気だったと分かる場合もある。高学歴の人も少なくないという。
ひきこもりが長期化し、子どもが中高年の場合、今後も働くことが難しいという想定で
生活設計することを浜田さんは勧める。まずは親の預貯金、不動産、死亡保険金などを洗
い出し、ローンなどの負債も一覧にすることが出発点。財産や収入支出の見通しが分かる
「キャッシュフロー表」=表=を作ると分かりやすい。
今の生活がいつまで続
けられるかを把握し、途
中でお金が底を突くと分
かったら、収入支出の見
直しや住み替えなどを検
討。預貯金額などに不安
があれば、ぎりぎりまで
生活保護を受けなくて済
むよう、親の財産の範囲
内でやりくりする方法を
考える。
「将来の不安をは
っきりさせて覚悟を決め、
今からできる対策を知っ
てほしい」と、浜田さん
は呼び掛ける。
可能なら、子どもにお
金の話をしてみるのもよい。表を見せると、子どもが障害年金や精神障害者保健福祉手帳
などを申請したり、求人雑誌を読み始めたりしたという例も。公的な福祉支援を受けるよ
うになったケースもあるという。
「母親が子どもの個人年金をこつこつためていたことが分かり、子どもの暴言や暴力が
減ったり、二年後に貯金が底を突くことが分かり、子から小遣いの減額を申し出たり、子
どもの意識が変わったという家庭もある」と浜田さん。
ただ、他人に対し強い恐怖心を持っている人が多く、働くことへのハードルは高い。ま
た、生活にまつわるごく一般的なことを知らないということもあり、両親の死亡後、ライ
フラインが止められないよう対応しておくことも大切だ。親が生きているうちに、電気、
ガス、水道、インターネットなどの料金の口座振替先は子ども名義に変更しておく。事前
にまとまったお金を振り込んでおくと、滞納の心配も少なくなる。
最低限、ご飯の炊き方や現金自動預払機(ATM)の使い方の訓練はしておきたい。ま
た、外出できない場合、買い物にも行けないので、ネットスーパーでの注文の仕方や、宅
配便が届いたときの対応、そうした場面で話さなければならないことはメモにする。自治
体の窓口や自助団体など、困ったときに相談できる連絡先は見えるところに張り「相談し
ても怒られることはない」と伝えておく。
生活資金は信託財産が三千万円以上あれば、子どもが年金形式で定期的にお金を受け取
る生命保険信託の商品も。民間の個人年金保険や自治体の窓口で相談する「心身障害者扶
養共済制度」なども検討したい。
浜田さんは、本ページで「お金の話」を交代で執筆している畠中雅子さ
んら四人とともに、ひきこもり、ニート、障害のある子どもをもつ家族の
家計を考える「働けない子どものお金を考える会」=電03(6324)
8999=を設立。有料で相談を受け付けている。留守番電話の場合は、
用件を吹き込む。
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行