様式 １ 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 お よ び 担 当 者 学 位 申 請 者 論 文 担 当 者 武藤 太一朗 主 査 山西 清文 印 ○ 副 査 竹島 泰弘 印 ○ 副 査 筒井 ひろ子 印 ○ The role of basophils and pro-allergic cytokines, TSLP and 学 位 論 文 名 IL-33, in cutaneously-sensitized food allergy (経皮感作食物アレルギーにおける好塩基球と TSLP、IL-33 の役割) 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 「経皮的に食物アレルゲンに曝露されると感作が成立し、適切な量とタイミングで経 口摂取された食物は、むしろ免疫寛容を誘導する」という二重抗原曝露仮説の機序につ いて、経皮感作食物アレルギーマウスモデルを作製し、Th2 免疫応答に重要な役割を果た す好塩基球とそれを活性化するサイトカインである thymic stromal lymphopoietin (TSLP)、IL-33 について検討が行われた。食物抗原として卵白アルブミン（OVA）を皮膚 に塗布して感作させ、その後に OVA による経口チャレンジを行う実験系において、皮膚 感作で抗原特異的な IgE 抗体価上昇が認められ、その後の経口チャレンジでは IgE 依存 性の全身性アナフィラキシーが発症した。あらかじめ OVA を経口投与したマウスでは、 皮膚感作が起こらず、アナフィラキシーも発症せず、好塩基球除去マウスや TSLP 受容体 欠損マウスでは、抗原特異的 IgE 抗体の産生は生じなかった。IL-33 欠損マウスでは、抗 原特異的 IgE は産生されたが、アナフィラキシーの発症はなかった。OVA で感作した正常 マウスでも OVA 経口投与の直前に IL-33 阻害抗体を投与すると、アナフィラキシー症状 を完全に抑制することができた。これらのことから、経皮感作食物アレルギーの感作（誘 導相）には TSLP と好塩基球が中心的な役割を果たし、一方、発症（効果相）には IL-33 が重要な因子として関与していることが明らかとなった。以上より、今後、TSLP-好塩基 球を標的とした阻害薬はアトピー性皮膚炎や乳児湿疹などアレルゲンに感作されやすい ヒトに対して、IL-33 を標的とした阻害薬は感作が成立したヒトに対して、それぞれ食物 アレルギーの発症を予防する治療法となる可能性がある。 本論文の内容は、アナフィラキシーに対する TSLP-好塩基球・IL-33 を標的とした阻害 薬の開発につながる優れた研究成果であり、学位論文に値すると判断した。
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