農学 ・工学系日本語論文の 「緒言」における接続表現と論理展開

専 門 日本語 教育 研究 第6号2004
論文
農学 ・工学系 日本 語論文の 「
緒 言」 にお ける接続表現 と論理展 開
村 岡貴子,米 田由喜代,大 谷晋也
後藤一章,深 尾百合子,因 京子
本論 文では、理系論文の論 理展開 の方法 を探 るた めに、 「
緒言」に出現す る接 続表現 に着 目し、文章の論理展開 の様相 を記 述 した。
農 学 ・工学系6雑 誌 の 日本語論文か ら緒言が3段 落構成の論文の文章90編 を選び、緒言文章 コーパス を作成 し、それ を用 いて接
続 表現 とそれ を含む文 を、作成 したプログラムで検索 した。調 査の結果 、どの分野で も頻繁に用い られていた 「しか し」と 「
そこ
で」 は、出現状 況に特徴が見 られ、文章の論理展開 に寄与 していた。 「しか し」は、その文の文末に動詞等 の否定形か否定的 な意
味の表現 が共起 しや す く、先行研究の不足や、別の視 点の導入 と新たな提 案等を導 いていた。 また、 「
そ こで」 は緒言文章 の第3
段落 に集 中的に出現 し 「
本研 究では」等 の表現 と共起 し、論文概 要の紹介 の開始を明確 に 示していた。 さ らに、農 学系は、第3段
落での 「
そ こで」の出現 頻度の高 さ、お よび その文末動詞 「
タ形」 との共起 率の高 さに より、工学系 よ りパ ター ン化が 明確 に認 め
られ た。
キー ワー ド:農
1.は
学 ・工学系 日本語論文、緒言、接続表現、論理展開、共起表現、文末動詞
じめ に
理 系 留学 生 に対 す る専 門 日本 語教 育 を効果 的 に行 う
く行 われ て きた有 用 な語彙 ・表 現 等 の選 定 に加 え、論
文文 章 の論 理展 開 に注 目 した指 導 が 求 め られ る4)。
た め には 、論 文 の 作成 等 に 日本語 が必要 な分 野 を特 定
この よ うな観 点 を含 ん だ数少 ない先 行 研 究 と して 、
し、か っ 日本語 使 用が必 要 な留 学生 の現 状 を把 握 した
文献5)と 文 献6)を あ げ る こ とが で き る。 文 献5)は 、
上 で、 有効 な教 育 デザ イ ン を検討 す る必 要 が あ る。 筆
工学 系 学術論 来14編
者 らは、理 系 留学 生 の学位 論 文使 用言 語調 査1)、 お よ
の レベル で の機 能 の分析 か ら、論 述事 項 の配 列 の型 を
び留 学 生指 導 教員 へ の イ ン タ ビュー 調査2)を 行 った。
ま とめた結果 、 序論 の構 成 方法 に決 ま った型 が見 出せ
そ の結果 、理系 の特 定 分野 で 日本 語 が比 較 的多 く用 い
る展 望 を得 て い る。 また 、そ の決 ま っ た型 が どの程 度
られ る こ とが 明 らか にな った。本 研 究 は、上 記 の指 導
の普 遍性 を持 つ ものか 、他 分野 の多数 の資料 を用 い て
教 員 か ら推薦 され た、研 究遂 行 上重要 な学術 雑 誌(以
分析 し、 日本 語教 材 作成 のた め に検討 す る こ とを課 題
下 、雑 誌)の 日本語 論文 を対 象 と して 、接続 表 現 と論
と して い る。次 に、文 献6)は 、専 門分 野 の論 文 を作成
理展 開 につ いて 分析 す る もので あ る。
す る必要 の あ る 日本 語 学習者 を対 象 に 開発 され た教 材
の序 論 を対 象 に 、文 お よび 文段
ところで 、専 門 日本語 に よる話 し言 葉 で あ る卒業 論
で あ り、各専 門分野 にほ ぼ共通 す る専 門 日本 語 の 土台
文 発表 の序論 部 に つい ての談 話 構造 と語 彙 ・表 現 の調
の部 分 が扱 われ て い る。 現 状 で は、大 学 院進 学 を 目ざ
査 ・分析3)に お いて は、留学 生 の語 彙 ・表 現 の習 得 が
す 日本語 学習 者 を対 象 と した 日本 語予 備 教 育等 におい
談 話 上 の適切 な使 用 や談 話 の構成 化 に結 びつ かな い現
て 、細分 化 され た専 門分野 別 に論 文 作成 の指 導 を行 う
状 が 指摘 され て い る。 明快 な論理 展 開 が求 め られ る 口
こ とは事 実 上不 可能 で あ り、 まず は 上記 教材 の主 旨に
頭 発 表 の場 面で は 、限 られ た時 間 内で 、必要 な語彙 ・
あ るよ うに、分 野 に共 通す る専 門 日本 語 に着 目 した指
表 現 を適切 な順 序 で配置 し、ま とまっ たテ キ ス トを構
成 す るこ とが必要 で ある。論 文 にお い て も同様 に 、紙
導 が求 め られ る。
一方で
、 専 門分野 は多岐 に わ た り、例 えば 、一般 に
面 の制約 の も とで書 くべ き内容 を厳 選 し、 それ を明快
理系 と認 め られ る分 野 で も、 学 際的 な領 域 は ます ます
な表現 と論 理 展 開 で示す こ とが肝 要 で あ る。 した が っ
増 加 し、 さらには 、論 文 を掲載 す る雑 誌 に よって も論
て、 専 門 日本 語教 育 の観 点 か らは、従 来 か ら比 較 的多
文 の構 成 や論 理 展 開 を含 む 文体 的特徴 が異 な る部分 が
存在 す る と推測 され る。
表1調
査 対象 と した 分 野 と雑 誌
そ こで、論 文 作成 方 法 に関す る研 究 お よび教 材開発
の今 後 の課題 は、論 文 の論 理展 開 とそれ に寄与 す る表
現等 が持 つ 、専 門分 野 間で の共 通 点 と相 違 点 を明 らか
に し7)、そ の知見 を も とに 、教 材 開発 注1や自律 的 な学
習 の 支援 方法 を検 討 す る こ とで ある と考 え られ る。
筆者 らは 、
理 系論 文 の論 理展 開 の方 法 を探 るた め に、
まず 「
緒 言」 の文 章 を選 択 し、 そ の文章 構造 の分析 を
2.2接
進 めてい る。 緒言 部 分選 択 の理 由は、論 文 の 冒頭 に位
2.2.1接
置 す る重 要 なセ ク シ ョンで 、研 究 の位 置 付 けや 意義 を
続表 現 の抽 出 と コーパ ス作 成
続表 現 の抽 出
文頭 に出現 した全 ての接 続 表現 を抽 出 し、そ の 中で 、
論 理 的 に、簡 潔 かつ 十分 に述 べ るこ とが求 め られ る こ
どの分野 に も出現 し、 かつ多 く用 い られ て い るもの を
とか ら、 専 門 日本 語 に よ る作 文 の指 導 が必要 と考 え ら
特 定 した。 なお 、今 回 は、文 章 の論 理 展 開 に寄与 す る
れ るた めで あ る。
接 続表 現 を対 象 とす るた め 、文頭 で はな く文 中に出現
本 論 文 では 、特 に 、そ こに出現 す る接続 表 現 に着 目
した。 限 られ た接続 表 現 が緒言 文 章 の特 定位置 に出現
し、典型 的 な論 理 展 開パ ター ン の構 成 に寄 与す る もの
する 「
また」 等 の接続 表 現 は、 文 中で の並 列 を示 す機
能 が あ る と考 え、対象 か ら除 外 した。
抽 出に あた っ ては、 一般 に接 続 詞 と認 め られ る 「し
との仮説 を立 てた。 そ こで 、形 式段 落(以 下 、段 落)
か し」等 の表 現 だ けで な く、 副詞 的 な機 能 も認 め られ
で位 置 を特 定 しな が ら接 続 表現 の出現 状況 を示 し、文
る 「さ らに」や 、そ の他 「
以 上 の こ とか ら」といっ た、
章 の論 理 展 開 の様相 を記 述 した。
接 続詞 と同等 の機 能 を果 たす表 現 も全 て取 り出 した。
次 に、そ れ らの接 続表 現 の緒 言 文章 中で の 出現場 所
2。 調 査 の 対 象 お よ び 方 法
2.1対
を、以下 の コーパ ス を用 いて段 落 の位 置 か ら特 定 した。
象
調査 対象 と した理 系雑 誌 は 、留学 生指 導教 員 よ り推
薦 され た2)農 学 系 と工学 系 の もの で表1の 通 りで あ る。
予 備 調 査8)で は、表1の 雑 誌 の うち、 『土壌 肥 料学
2.2.2コ
ーパ ス 作成
ま ず 、調 査 対 象 と し た90編
全 て の 緒 言 文 章 をOCR
で 読 み 取 り、 十 分 に校 正 した 。 次 に 、 そ れ らテ キ ス ト
雑 誌 』 を除 いた5雑 誌 の2001年 また は2002年 の1年
を 、EXCELの
ソ フ トに よ り1文 ず つ に 分 け 、 改 行 さ
間 に発行 され た論 文 の合計100編 を対 象 と して 「
緒言 」
れ る箇 所 は1行
あ け て 段 落 変 更 部 分 が 明 示 され る よ う
文 章 の段落 数 を調 べ た。 その結 果 、3段 落 構成 の文章
編 集 し コ ー パ ス を 作 成 した 。
が最 も多 く、次 い で4段 落 構成 の文章 が 多い こ とが わ
か った。 どの分 野 で も両者 で全 論 文数 の 半数 ま たは そ
れ以 上 の割合 で出現 して いた。
そ こで、本 論 文 では 、表1に 示 した6分 野 の、2002
年 か ら2003年
2.2.3接
続 表現 の検 索
上記 コー パ ス を用 いて、 高頻 度接 続 表 現 が 出現 す る
文 が検 索 で き るプ ログ ラム を作成 した。プ ログ ラム は、
に刊 行 され た雑 誌 に掲載 され た原 著 論
特 定 され た接続 表 現 を検索 し、6分 野 の緒 言文 章 ご と
文 か ら、3段 落構 成 の緒 言文 章 を各 々15編 ずつ 、無 作
に各 接続 表 現 につ き、 次 の表2の 情報 を含 むテ キス ト
為抽 出法 に よ り抽 出 し、
合 計90編 につ いて接 続表 現 を
ファイル が完 成 す る よ う作成 した。
調査 した。
表2に つ いて 項 目番号 順 に例 を示 して補 足す る。
なお 、1年 あ た りの発行 回数 お よび掲載 され る論 文
まず 、90編の論 文 文章 に は雑 誌 別 に1∼15の 番 号 が
数 は雑誌 に よっ て異 な る注2。今 回 は 、農 学系3雑 誌 は
付 け られ て い る。例 えば 、『
化 学 工 学論 文集 』の3段 落
2年 間 、
工 学 系3雑 誌 は1年 間 に掲載 され た論文 か ら、
構 成 の 文 章 の1番
上記 対象 を決定 した。
3-1.txt」 とい う名称 が付 され て い る。
目は 、 次 の 表2の
よ うに 「
化学
表2コ
ーパ ス を活 用 した接続 表 現情 報 の
テ キス トフ ァイル
3,2共
3.2.1「
起 す る表 現 と論 理 展 開 へ の 寄 与
しか し」 と文 末 共 起 表 現
文頭 に 「しか し」 が 出現 した文 は 、 どの分 野 で も、
6∼7割
の文 末 が、 動詞 、形 容 詞 、 あ るい は形 容 動詞
の否 定 形 で あ るか 、 ま たは 、問題 となる現状 等 へ の言
及である 「
非 常 に困難 であ る」 とい った、 明 らか に否
次 に 、 例 え ば 接 続 表 現 「しか し」 の 出 現 状 況 を調 べ
そ の 例 文 を抽 出 す る た め に 、 「
化 学3・1.txt」 の 文 章 を
プ ロ グ ラ ム で 検 索 す る と、 「しか し」が 用 い られ た 全 て
の 文 と上 記1、2、3の
情 報 が 付 加 され た 結 果 の 一 覧
が 示 され る。 な お 、3段
落 構成 の文章 を対象 としてい
る た め 、 段 落 番 号 は1、2、3の
いず れ か で ある。
定 的 なニ ュア ン ス を伴 うもので あ った。 こ こで は、 そ
れを 「
否 定 的表 現 」 と便 宜上 呼ぶ こ と とす る。
表4よ り、農 工両 分野 の65.2%の
文 末 表現 が否定 形
か否 定 的表現 の どち らか で あっ た。以 下 に例 を示 す 。
なお 、文 の最後 の()は
、各 分野 の雑誌 か ら抽 出
した こ とを 、簡 略化 した雑 誌路 に よ り示 し、 かつ 出現
した段 落 を番 号 で示 す もの で あ る。 下線 は全 て筆者 ら
3.結
果 と考 察
3.1高
に よる(以 下 同様)。
頻度 接続 表 現 の出現 状 況
調 査対 象 と した90編 の3段 落 構成 文 章 で、全6分 野
に高頻 度で 出現 した接続 表現 の上位3位 まで を表3に
(1)し か し,有 機質 土壌 で あ る泥炭 土 につ い て は,土
壌 溶 液 の採 取方 法 が検 討 され た例 は ほ とん ど見 ら
れ ない,(土 壌:2)
示す 。農 学 系 と工学 系 とで は全 体的 な頻 度数 や それ に
(2)し か し,印 刷 イ ンキや 高濃 度 ス ラ リー な どの不 透
よる順位 は極 めて類 似 して お り、分 野 に よ る差 異 は な
明な 降伏応 力 流 体 で は槽 内 の流動 状態 を観 察 す る
い と認 め られ た。以 下 、
全 体 的 な出現 状況 をま とめ る。
こ とがで き ない.(化 学:2)
表3の 通 り、全 体 的 に最 も頻 度 の 高か っ た接続 表 現
は 「しか し」で あ り、特 に第2段 落 に51と 最 も高頻 度
で出現 してい た。 「しか し」は、若 干 の 「しか しな が ら」
も含 む 。 「
そ こで」は、第3段 落 に集 中的 に 出現 して お
り、 出現段 落 の限 定 され た特徴 的 な現 れ方 で あ る と言
(3)し か し,早 播 き した イ ワイ ノダイ チ の品種 特 性 や
栽培 技術 は十分 に解 明 され て いな い.(作 物:2)
(4)し か しこの炭 酸 カル シ ウム成 形体 は建材 と して広
く使 用 され るまで に は至 らなか った.健
築:1)
上記(1)か ら④ の 例 の よ うに、 「しか し」 の文 には 、
える。以下 、 「しか し」 と 「
そ こで 」につい て 特 に観 察
否 定形 を伴 う文 末 表 現 が見 られ た。 これ らは 大 き く2
され た 共起 しや す い表現 等 、特徴 的 な文 法 現象 や 文型
つ のパ ター ンに分類 可能 で あ る。1つ は、(1)と(3)の
につ い て言及 し、具 体 的 な例 文 を引用 して説 明す る。
よ うに、実 際 に先行 研 究 が少 な い こ と、 あ るいは 、 当
表3出
現段 落別 の高 頻度 接続表 現
該事 項 が十分 に調査 ・解 明 され てい ない こ とを指摘 す
るケー スで あ る。 も う1つ は、(2)と(4)の よ うに 、 あ
る手 法や 方法 論 で は不 可能 で あ るか 問題 が残 る こ と、
ま たは あ る事 柄や 現 象 が 問題 を有 す るた め に予測 通 り
に実 現 しな か った こ とを指 摘す るケ ース で あ る。
次 に、否 定 的表 現 を文 末 に含 む 文 の例 を示 す。
表4「
しか し」 が用 い られ た文 の文 末表 現
(5)しか し,硫 酸 銅 水溶 液 でR/FR比 を大 き くす る方 法
はモ デル 実験 と して実 用 可能 で も,設 置 コス トや使
用 後 の硫 酸銅 水溶 液 の回収 コス トが か か る点 か ら,
実 用化 は困難 で あ る.(園 芸:1)
(6)し か し,こ れ ま で に考案 され てい る静 電 フ ィル タ
はいず れ も外 形 寸法 の 割 には処 理 速度 が遅 い とい う
短 所 を有 してい る.(機 械:1)
以 上 の よ うに 「しか し」 を伴 って、 現状 で の 問題 を
用 い られ て いた。
(10)の よ うに 、 「しか し」の後 件 に含 まれ る情 報 が多
指摘 す る文 は 、表3に 示 した よ うに、 第1段 落 か第2
くなれ ば、文 が長 くな り文 の構 造 も複雑 にな る こ とが
段 落 に 出現 して い た。 つ ま り、緒言 文 章 の論理 展 開 に
予 想 され る。 そ の場合 には 、必 ず しも文 末 表現 に否 定
おい て 、まず 、現状 認識 に基づ い た、研 究 の背 景 や 問
的な表 現 が 出現す るわ けで は ない こ とを指 摘 して お く。
題 意識 を明確 に し、そ の こ とが論文 を発 表 す る意 義 に
(10)の例 で は、 「
ポ ラパ ッ クQカ
結び つ く流れ を構成 す るもの と考 え られ る。
て、他 の方 法 との比較 の結果 か ら、特定 の条件 の も と
なお 、上記 例 文(6)の
「
短所 を有 してい る」 とい っ
ラム濃 縮 法」 につ い
では 品質 管理 に適 用 可能 で あ る こ とが言 及 され て お り、
た例 にあ る よ うに 、論 文調 と も言 え る文体 的 特徴 が反
その こ とは否 定 的な表 現 とニ ュア ンス で伝 え られ て い
映 され た表 現 も散 見 され た。他 に も、 分野 を問 わず 、
る もので は ない。
「
問題 点 を含 んで い る」 「
十 分 に解 明 され てい ない の
なお 、1文 に含 まれ る情 報 の多 さは文 の構 造 や文 の
が現 状 で あ る」 「
研 究 はまだ な され てい ない 状況 で あ
長 さを規 定 しや す い が、ま だ不 明 な点 が多 い。つ ま り、
る」 「
∼ とは言 い難 い」 「
困難 な段 階 に来 てい る」 とい
先 に示 した よ うに、一方 では 、 「しか し」を含 む1文 が
っ た多様 な表 現 が観 察 され た。 「しか し」 とい う接続
比 較 的短 く、文 末 に否 定 的 な表 現や 否定 形 が 出現す る
表現 で導 かれ る論理 展 開 の場 で は、現 状 の問題 点 を単
もの で、 その前 件 で あ る文 か文 章 との 関係 性 が 明快 に
に「
∼ こ とが で きない 」等 の簡 明 な表 現 だ けで は な く、
示 され る場 合 が あ る。 他 方で は、 因果 関係 や 目的等 が
この よ うな多様 な文 末 表現 で示 してい るこ とを、論文
副詞 節 等 で示 され るた めに 「しか し」 を含 む1文 が、
作成 指 導上 考慮 すべ き点 と して指摘 してお きたい 。
(10)の よ うに長 くな る場 合 も ある。 この よ うな場 合、
さ らに、表4に 示 した よ うに、3分 の1程 度 出現す
る 「
そ の他 」 は、上 記 の よ うに明確 な否 定 が表 明 され
た もの で はな かっ た。以 下(7)か ら(10)に 例 を示す 。(9)
著者 に よって は文 を途 中で切 っ て2文 にす る場 合 も あ
り得 る。
したが って 、情 報 量 、文 構造 の複 雑 さの程 度 、お よ
の末 尾 に あっ た引用 文献 は省 略 す る。
び論 理展 開の観 点 か ら見 た文 章全 体 の 明快 性 には 、分
(7)し か し,一 方 で は、精度 向上 のた め の研 究 的 ア プ
野や 雑誌 の傾 向だ けで な く著者 の判 断 と選 択 も影 響 す
ロー チ も継 続 され てい る.(機 械:1)
(8)し か し,合 理 的 な補 強設 計 法 と して は,鋼 板 に よ
る こ とが予想 され 、種 々 の観 点 か らの分析 が必要 で あ
る と考 え られ る。
る拘束 効 果 を考 慮 して鋼 板補 強 柱 の変形 性能 を評価
で き るこ とが望 ま しい.(建 築:2)
(9)し か し,有 機 物 を連 用 した栽 培 で は,化 学 肥料 の
3.2.2「
表3に
そ こで」 の特 徴 的な 出現 状況
示 した よ うに 、 「
そ こ で 」 は 、46文 中38文
が
み に頼 る慣 行農 法 よ りも収 量 が高 い とい う報 告 もあ
第3段
る.(作 物:1)
に 集 中 的 に 見 られ た 。 デ ー タ は 割 愛 す る が 、 「土 壌 」
(10)しか し,ポ ラパ ックQカ
ラム濃縮 法 につ い て も,
落 に 出 現 し て お り、82.6%も
「園 芸 」 「化 学 」 の3分
の割合 で最終 段 落
野 で は 、 「そ こ で 」 は 第3段
落
他 の2法 と比 べて ピー ク検 出力 が低 い ものの操 作 が
の み に 出 現 して い た 。 つ ま り、 そ れ らの 分 野 で の 「そ
迅速 ・
簡 便 で再 現性 も きわ めて 良い こ とか ら,ペリラ
こ で 」 は 、 論 理 展 開 に 、 著 者 に よ る他 の 文 体 的 個 性 が
アル デ ヒ ドな ど数個 の主要 香気 成分 のみ を対象 と し
反 映 され る こ と な く、 緒 言 文 章 の 非 常 に 限 定 され た 位
た分 析 な らば簡 易法 として 品質 管理 に十 分 適用 可 能
置 に し か 出現 しな い 統 一 的 な 用 法 を 示 す も の で あ る。
で あ る と報告 して い る.(園 芸:3)
ま た 、 最 終 段 落 は1文
で構 成 されて い る こ とも多 々
以 上 の よ うに 、 「
そ の他 」に分 類 され た 「しか し」を
あ り、 「
そ こで 」を 含 む 文 が 第3段
落 に 出 現 した 例 で は 、
含 む文 は 、別 の視 点 の導入 、 あ るい は、 そ の上 で の新
緒 言 文 章 の 最 後 の 文 か 、 そ の1文
前 の文か の いず れ か
た な必 要性 の提 案 、 さ らには 、先行 研 究 を も とに議論
で あった。
を開始 、 あ るい は補 足説 明 を加 え る とい っ たケー スで
3.2.3「
そ こで」 の共 起表 現
表5「
そ こで」 の 出現段 落別 共 起表 現 の頻 度
「
そ こで」 には 、特 定 の段落 で 限 られ た共 起表 現 が
存 在す るこ とが わか った。集 中的 に 出現 した第3段 落
にお け る 「
そ こで」 の共起表 現 と文末 動詞 を見 る と、
「
本研 究 で は」や 「
本 論文 で は」 とい った表 現 と共起
しや す い こ とが 明 らか とな っ た。 表5の 通 り、 「
そこ
で」 が 出現 した文46の
うち、80.4%に 相 当す る37の
文 に、それ らの共起 が見 られ た。第3段 落 で 「
そ こで」
に続 き 「
本 研 究で は」 が圧倒 的 に多 い。他 に も、論 文
や 報告 、 実験 、試 験等 の表 現 が若干 認 め られ た。
表6第3段
落 に 出現 した 「
そ こで 」 の文 の 文末 動詞
農学 系 では 、上 記 の共起表 現 は 、 いずれ も6∼7例
が第3段 落 の み に出現 し、工学 系 に比 べ る と高い共 通
性 が認 め られ た。機 械 で2例 、建 築 で3例 、 化学 で8
例 と、工学 系 で は、上 記共 起表 現 の 出現 にや や ば らつ
きが あ った。 ち なみ に、 出現段 落 が第1か2段
落であ
った例 は、機械 の4例 と建 築 の1例 が該 当 した。
以上 の こ とか ら、特 に農 学系 で は顕 著 で あ るが 、最
終 段落 に 「
そ こで 」 が出現 す る と、 その直 後 に、論 文
の概要 紹介 が行 わ れ るパ ター ン化 が 明確 で あ る と言 え
る。つ ま り 「
そ こで」 の前件 では 、 問題 点 の指摘や 課
題 の設 定 が行 われ 、 それ らを受 けて後 件 で は、 当該 論
文 の具 体 的 な内容紹 介 が行 われ る展 開方法 であ る と言
え る。 なお、例 文 は次 の3.2.4で
示す 。
以 下 、例 文 を示 しな が ら説 明 を 加 え る。ま ず 、 「タ形 」
文 末 動 詞 の 例 を 次 の(11)か
(11)そ
ら(13)に 示 す 。
こ で 本 研 究 で は,養 液 栽 培 に よ る イ チ ジ ク の 周
年 生 産 シ ス テ ム を 確 立 す る た め の 第1段
3年 間 養 液 栽 培 を 行 っ て き た4年
3.2.4「
生 樹 を用 い て 二
そ こ で 」 と文 末 動 詞
「
そ こで」 が 出現 す る文 に は、共 起 しや す い文末 動
期 作 栽 培 を 試 み る と と も に,高
生 産 の 可 能 性 を検 討 した.(園
詞 とその活 用形 が存 在 した。 表6は 第3段 落 での 「
タ
形 」文 末動 詞 の 出現状況 を示 した もので あ る。
まず 、農 学系 は 工学 系 に比べ て か な り出現傾 向に共
通 性が認 め られ た。 農 学系 の3分 野 とも第3段 落 に7
例 ずつ タ形 が 出現 し合 計21と な ってい る。そ の うち最
も多 く出現 した動詞 は 「
検討 した 」で7例 見 られ た。
一方
階 と して 、
、 工学系 で は、 「
建 築 」 に タ形 が全 く出現 せず 、
第3段 落 には 、
ル形 での 「
行 う」 「
考察 す る」が 見 られ 、
そ の他 の 「
検 討 した もので あ る」 とい っ た形式 名詞 の
文末 表現 も、 この分 野 での み例 外 的 に観察 され た。
活 用形 は異 な る場 合が あ る もの の、 工学 系 で も語 彙
的 には 「
行 う」 「
検 討 す る」 「
調 べ る」とい った動 詞 が、
農 学 系 と同様 に用 い られて い た。
(12)そ
芸:3)
こ で 本 研 究 で は,シ ン ク サ イ ズ と光 合 成 速 度 を
変 え る 処 理 を 行 い,器
加 量 を調 べ た.(作
(13)そ
収 量 ・高 品 質 果 実
官 別 の 暗 呼 吸 速 度 と乾 物 増
物:3)
こ で 本 研 究 で は,セ ピオ ラ イ トに ヒ ドラ ジ ン複
塩 を 添 着 して 製 造 した 吸 着 剤 に ア セ トア ル デ ヒ ド
を 吸 着 させ,そ
の 加 熱 分 解 ・離 脱 特 性 を解 析 し,
吸 着 した ア セ トア ル デ ヒ ドの 反 応 に つ い て 検 討 し
た.(化
学:3)
(11)か ら(13)の 例 の よ うに 、 第3段
落の 最後 に は、
実 際 の研 究 行 動 が 「タ 形 」 を 用 い て 具 体 的 に示 され て
い る。これ らは 全 て 緒 言 の 末 尾 文 で あ り、こ の 後 は 「
材
料 お よ び 方 法 」 とい っ た 次 の セ ク シ ョン に 展 開 す る。
一方
、 以 下 の(14)(15)の
例 で は 、 い ず れ も文 末 動 詞
が 「
ル形 」 で あ るが、 上記(11)(12)(13)が 研 究行 動 を
や 活 用形 で 見 られ 、 「
材 料 お よび方 法 」 とい っ た第2
具体 的 に示 してい る様相 と全 く同様 で あ る と言 え る。
セ ク シ ョンへ の橋 渡 しの文 に現 れ や す か っ た 点 も指
(14)そ こで 、本 論 文 では 、上記 手法 に よ り柱頭 注脚 接
摘 で き る。 「
そ こで」 は、 そ の文 にか か わ る語 彙 ・文
合 部 の必 要接 合 耐力 算 定式(以 下 単 に 「
算 定式 」
法 、 串現位 置 、お よび 論理 展 開 の観 点か ら、緒言 文 章
と呼 ぶ)を 導 き、実 験 と数値 解 析 に よ りその検 証
の 中で は か な り限 定 的 に用 い られ る接 続 表 現 で あ る
を行 う。(建 築:3)
と言 える。合 わせ て、段 落 とい う、視 覚 的 に文章 の ま
(15)そ こで,本 研 究 で は,レ シ ピに関す る情報 とプ ラ
とま りと位 置 を示す 指標 が、 こ の よ うな理 系 学術 論 文
ン トに関 す る情報 か ら,レ シ ピで与 え られ る処 理
の典 型 的 な文 章構 成 と論 理 展 開 に 一 定 の 役 割 を果 た
順 序 を実 現す るプ ラン トの操 作手 順 を求 め るこ と
して い る もの と推 測 され た。
を 目的 と し,そ のた め の一 つ の方 法 を提 案す る。
(化学:3)
た だ し、 「
そ こで」 の分析 にお いて 、第3段 落 で の
出現頻 度 と文 末動 詞 の タ形 との 共起 率 にお い て農 学 と
これ らは分野 、雑 誌 、 あ るい は著者 の文 体 的個 性 が
工 学 で差 の あ る ことが 明 らか とな った。 つ ま り、農 学
見 られ る部 分 だ とい う可能 性 が あ るが、第3段 落 にお
で は、 対象 と した3雑 誌 全 てに おい て、 「
そ こで」 の
い て接続 表 現が 導 く論理 展 開 の流 れ は、 いず れ も共通
出現段 落 が第3段 落 に集 中 して いた の に対 し、 工学 で
した もので あ る と考 え られ る。
はや や ば らつ きが 見 られ た。 ま た、文 末動 詞 も、語 彙
的 には農 学 と工学 とで類似 性 が あ った もの の、農 学 で
4,ま
とめ
は 工学 とは異 な り、 「
検 討 した」 といっ た 「タ形 」 の
本論 文 で は、特 に 「しか し」 と 「
そ こで 」 を取 り上
み が用 い られ て い た。 この結果 に基 づ き、 農 学 では 工
げ、 その 出現 状況 と具体 的 な例文 を分析 す るこ とに よ
学 よ りパ ター ン化 が明確 に認 め られ る こ とか ら、論文
り、緒 言文 章 の論 理展 開 を探 っ た。 そ の結 果 、 この2
指 導 に は、農 学 の方 が よ りパ ター ン化 して い るこ とを
つ の接続 表 現 は各 々 、段落 の位 置 か らパ ター ン化 され
考 慮す る こ とが重 要 で あ る。
た 出現傾 向に あ り、 かつ 、緒言 文 章 の論理 展 開 の一部
従来 、専 門 日本 語 の調 査 ・分析 の ほ とん どは、 分野
を担 う重 要 な機 能 を果 た して い る こ とが わか っ た。つ
別 に行 われ て き た。本 論 文 では 、留 学生 の 日本 語使 用
ま り、対象 と した農 学 系お よび工 学系 の緒 言 文章 で は 、
率 の高 い分 野 にお け る留 学生 指導 教員 か ら推 薦 され た 、
これ らの接続 表 現 が用 い られ や す い位置 が比較 的 明 ら
研 究遂行 上 重要 な学術 雑誌 で あ る農学 ・工学 系雑 誌 に
かで あ り、 さ らに 、接続 表現 に続 く後件 の内容 や そ の
掲載 され た 日本 語論 文 を対 象 に調 査 ・分析 を行 っ た。
評 価 、 あ るいは傾 向が予 測 しや す い と言 え る。
そ の結果 、 専 門 日本 語 教 育 にお け る作 文指 導 の観 点 か
「しか し」 は 、第1段 落 と第2段 落 に多 く分 散 して
ら、特 に…
接続 表 現 に注 目し文章 の構 成 と論 理 展 開 につ
見 られ 、文 末 に否 定形 か 否定 的表 現 を伴 っ て種 々 の議
いて 、異 な る分 野 間の共 通 点 と相違 点 を明 らか に した
論 の展 開 に寄 与 して いた。 「しか し」の出現 は 、当該 テ
こ とは 、本研 究 の意 義 で あ る。
ー マ に関す る先行研 究 の 不足や 別 の視 点 の導 入
、提案
最後 に、接 続表 現 は複 数 の要 素 に よ り選 択 され 、 そ
を導 き、その よ うな論 理 展 開 を予 測 しや す く してい た。
れ に よる論 理 展 開 は異 な った様相 を呈す る もの と考 え
なお 、 「しか し」は 、他 の 「
結果 と考察 」 とい っ た議論
られ る。 まず 、 それ らが用 い られ る論文 とい う 「
ジャ
が行 われ るセ ク シ ョンで も多 く出現 す る9)こ とが容易
ンル」 が接 続表 現 の種 類 とそ の出現傾 向 を限 定す る。
に予想 され るこ と注3からも、出現位 置 の観 点 か らは そ
次 に、今 回明 らか にな った よ うに、 専 門分 野や雑 誌 に
れ ほ ど限定 的で は ない接 続表 現 で あ る と言 え る。
よって一 定の偏 りが認 め られ る。 また 、緒言 とい うセ
それ に対 して 、農 工 両分 野 にお いて 、全 体 的 に 「
そ
クシ ョンで特 に 出現 しやす い接続 表 現が 存在 す る。 さ
こ で 」 の多 くは:最終 段 落 で あ る 第3段 落 に 出現 し、
らには 、そ の文 章 の 中の論 理 展 開 に寄与す る もの と し
「
本研 究 で は」 とい った表 現 と共 起 しや す い傾 向 が認
て 、段落 の位 置 、換 言 すれ ば、段 落 内の意 味の ま とま
め られ た。 ま た 、そ の文 の文 末動詞 は 限定 され た語彙
り(文 章 の構 成 要素)に よ って、適 切 な接 続 表現 が選
択 され る もの と考 え られ る。今 後 は 、 これ らの知 見 を
4)二 通 信 子 ・大 島弥 生 ・山本富 美子 ・佐 藤 勢紀 子 ・因 京 子:
活 用 しつつ 、論 文 文章 の論 理展 開につ い て さ らに別 の
ア カデ ミック ・ライ テ ィ ング教 育 の課題,日 本 語教 育 学会
観 点 か ら分 析 を進 め、合 わせ て 、専 門 日本 語教 育 の作
春 季 大 会予稿 集,pp.285」296(2004)
5)佐 藤 勢紀 子 ・仁 科 浩美:工 学系 学術 論 文 にお け る序 論 の
文 指導 に有 効 な リソー ス 開発 を 目ざ した い。
構 成 の分 析,東 北 大学 留 学生 セ ンター 紀 要,第3号,pp.
26-34(1996)
謝辞
本 研 究 は平 成16年
度 科 学 研 究 費 補 助 金 基盤 研 究(C)(1)
「
種 々の 理 系 専 門分 野 にお け る 日本 語 論 文 作成 方 法 の指 導
に 関す る基礎 的研 究」(課 題 番 号:1458033研
究代 表者:村 岡
6)ア カ デ ミ ック ・ジ ャパ ニー ズ研 究 会:大 学 ・大 学院 留 学
生 の 日本語 ④ 論 文作 成編,株 式 会社 アル ク,(2002)
7)村 岡貴子 ・因 京 子 ・仁 科 喜久 子 ・深 尾 百合 子 ・加 納 千恵
子:専 門 日本 語教 育 の現 状 と将 来 の方 向(パ ネル セ ッシ ョ
貴子)の 助成 を受 け て行 った。
ン)日 本 語教 育学 会 秋季 大会 予稿 集,pp,231-242(2001)
8)村 岡貴子 ・米 田 由喜代 ・大谷 晋也 ・因 京 子 ・深 尾 百 合子 ・
注
1文
献4)で 佐藤iは、アカ デ ミック ・ライ テ ィ ングの た めに
仁科 喜 久子:工 学 系 お よび農 学 系 日本語 論 文 「
緒言」の
開発 した教 材 で あ る文 献6)の 、今 後 の改 善策 と して 「
論文
文 章構 造 分析,専 門 日本語 教 育研 究会 第5回 研 究討 論 会 口
の構成 要 素1展 開パ ター ン、文型 ・表 現 につ いて 、専 門分
頭発 表 資 料(2004)
野 ご とに分析 を行 い 、分 野 に よ る差 異 を明 らか に して 、教
9)村 岡 貴子:農 学 系 日本 語論 文 の 「
結 果 お よび考 察 」 に お
材 の利 用 の仕 方 を工夫 す る」こ とを指摘 してい る(p.293)。
け る接続 表 現 と文章 展 開,専 門 日本 語 教 育研 究,第4号,
2対
象 とした雑誌 の1年 間 の掲載 論 文数(和 文)は 、工学
pp.27-34(2002)
系 が農学 系 よ り全 体 的 に多 か った。2002年1年 間 に最 も多
く掲 載 され た 『日本 機械 学 会論 文集 』 は514編 で、最 も少
な かっ た 『日本 土壌 肥 料科 学雑 誌 』は33編(2003年
は50
著者紹介
村 岡 貴 子:大
阪 大 学 留 学 生 セ ン タ ー一教 授565-0871
大 阪 府 吹 田市 山 田丘1-1
編)で あっ た。
3文
[email protected]
日本 語 教 育 学 、 日本 語 文 体 論
献9)に よる と、農 学系 日本 語 論文 を対 象 と した調 査 で、
「しか し」 は、 「
結 果 」 「考察 」お よび 、それ らが一 体 と
米 田 由 喜 代:大
565-0871大
な った 「
結果 お よび 考察 」 の どの セ クシ ョンで も 「また」
阪大 学留 学 生セ ンター 非 常勤 講 師
阪 府 吹 田 市 山 田丘1-1
[email protected]理
工 系 専 門 日本 語 教 育
や 「
一 方」 と同様 に高 頻度 で 出現 す る接続 表現 と認 め られ
大 谷 晋 也:大
て い る。
565-0871大
阪大 学留 学生 セ ン ター助 教授 、
阪 府 吹 田市 山 田 丘1-1
[email protected]日
本語 教 育 、多 文化 教 育
参 考 文献
1)村 岡 貴子 ・仁科 喜 久子 ・深 尾 百合 子 ・因京 子 ・大 谷晋 也:
後 藤 一 章:大 阪 大 学 大 学 院 言 語 文 化 研 究 科 博 士 後 期 課 程
在 籍 、560-0043大
理 系分 野 にお け る留学 生 の学位 論 文使 用 言語,専 門 日本
阪 府 豊 中 市 待 兼 山 町1-8
[email protected]コ
ーパ ス言 語 学
教 育研 究,第5号,pp.55-60(2003)
2)村 岡貴子 ・大谷 晋也 ・仁 科 喜 久子 ・深 尾百 合子 ・因京 子 ・
米 田 由喜代:種 々 の理 系分 野 にお け る学会 誌使 用言 語 事
情 と留 学生 の論 文使 用 言語―
日本 語論 文 作成 指導 の た め
深 尾 百 合 子:東
184-8588東
京 農 工大 学留 学生 セ ンター 教授
京 都 小 金 井 市 中 町2-24-16
[email protected]
理 系 専 門 日本 語 教 育 、 日本 語 教 育 学
の基 礎研 究―,日 本 語 教育 学会 秋 季 大会 予稿集,pp.107因 京 子:九 州 大 学 留 学 生 セ ン ター 助 教 授
812-8581福
岡 県 福 岡 市 東 区 箱 崎6-10-1
112(2003)
3)米 田 由喜 代 ・林洋 子:口 頭 発表 序 論部 の談話 構 造 と語彙 ・
表 現― 農 学部 卒業 論 文発 表 の分 析 か ら―
専 門 日本 語教
育 研 究,専 門 日本語 教 育研 究 会,第5号,pp.37-44(2003)
[email protected]日
本 語 教 育 学 、日本 語 学
Conjunctions and Logical Development:
A study
of Introductory
Engineering
Science
MURAOKA, Takako*,
Sections
Papers
YONEDA, Yukiyo
to Agricultural
Written
OTANI, Shinya
and
in Japanese
GOTO,
Kazuaki
FUKAO, Yuriko and CHINAMI, Kyoko
*International Student Center
, Osaka University, 1-1,Yamadaoka,S'uita shi, Osaka 565-0871
[email protected]
As an investigation of logical development methods, this study focuses on conjunctions that appear in the
introduction sections of scientific papers written in Japanese. A body of introduction sections, each consisting of
three paragraphs, was compiled from 90 agricultural and engineering journals, and a computer search was
conducted to locate sentences that included the conjunctions. As a result of the search, it was found that shikashi
and sokode were frequently used in all fields and contributed to logical development. Shikashi often appeared
when a negative form of a verb or predicate or an expression that had a negative meaning was at the end of the
sentence. The subsequent
sentences indicated shortage of research in the past, or introduced differing
perspectives or new proposals. On the other hand, sokode frequently appeared in the third paragraph with some
specific expressions such as honkenkyu dewa, and clearly indicated that the main concepts of the paper were
about to be introduced. Finally, a pattern was more evident in agricultural papers than engineering papers, as
both Sokode and its collocation with the -ta form at the end of sentences appeared more frequently in the former.
Key words: agricultural and engineering science papers written in Japanese, Introductory sections, conjunctions,
logical development, collocations, sentence-ending verb