Ⅱ.原油価格の動向と湾岸産油国への影響

中東研究センター 情勢分析報告会(要旨) 2015 年 2 月 9 日
Ⅱ.原油価格の動向と湾岸産油国への影響
鈴 木 清 一 (当 センター 研 究 主 幹 )
2014 年 6 月 よ り 原 油 価 格 が 大 幅 に 下 落 し て い る 。 こ の 要 因 分 析 、 湾 岸 産 油 国 へ の
影響および今後の動向について、本報告を行った。
本まず原油価格に関わる要因を分類し各要因と原油価格の因果関係を説明した。
ま た 、 日 々 の 市 場 価 格 下 落 要 因 に つ き 2008 年 の 下 落 と 今 回 の 下 落 に つ い て 比 較 を 行
い 、 前 回 は 金 融 要 因 が 今 回 は 地 政 学 リ ス ク と OPEC 減 産 の 要 因 比 率 が 大 き い こ と を 示
した。しかし前回も今回も下落期には原油在庫は増加しており、価格動向の流れを決
めるのは需給と指摘した。さらに今回の下落は 3 期間に分けそれぞれの特徴を示した。
発表日は底値探りの期間に当たるとした。
今 回 の 下 落 の 主 要 因 は 米 国 の 原 油 生 産 増 加 に よ る 超 過 供 給 だ が 、 2012-2014 年 前 半
に お い て は 、 OPEC 主 要 国 の 個 々 の 事 情 で そ れ を 緩 和 し た た め 原 油 は 高 値 を 維 持 し 、
2014 年 は そ れ を 増 幅 し た こ と を 指 摘 し た 。 ま た 、 今 回 の 下 落 の 主 役 で あ る サ ウ ジ ア
ラビアの考えについて、サウジが固執するのは自国のシェアであることを指摘した。
さ ら に OPEC 内 部 に お い て 減 産 を 論 ず る 際 に 起 点 と な る 各 国 割 当 て で 利 害 が 対 立 す る
ことため減産にはハードルが高いと指摘した。
湾岸産油国への影響は、財政・経済(投資と消費)への影響を考察し、影響の小
さい国はクウェート・アブダビ・カタル、比較的大きい国はサウジ・バハレーン、大
きい国はオマーンと分類した。この中で、サウジは今後就労人口が増加することを鑑
みると財政事情は一般に言われるほど余裕があるわけではないと指摘した。
原油在庫が増加しているので価格はまだ底を打ってはいないとの所見を述べた。
また反転する場合のシナリオを述べ、底値が低いほど減産が進み上値も高くなること
を指摘した。最後に、原油価格が低いことを前提とした政策は適切ではないこと、湾
岸産油国との交易・投資・受注においては当地域を特別視しないで基本的な判断基準
に則るべき、を日本への提言とした。
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