原油相場、産油国非公式会合への期待から続伸、ブレント 50 ドルに接近

IEEJ:2016 年 8 月掲載 禁無断転載
特別速報レポート
2016 年 8 月 17 日
国際エネルギー情勢を見る目(285)
原油相場、産油国非公式会合への期待から続伸、ブレント 50 ドルに接近
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
常務理事 首席研究員
小山 堅
8 月 16 日、原油先物相場は続伸し、期近限月の終値はブレントで 49.23 ドル、WTI で
46.58 ドルと 7 月初め以来の高値となった。ブレントは節目の 50 ドルに迫り、両原油とも
に 8 月 10 日以来 5 営業日連続での続伸である。
この価格上昇の重要な背景要因としては、9 月 26~28 日にアルジェリアで開催される国
際エネルギーフォーラム(IEF)に合わせて OPEC が非公式会合を開催し、非 OPEC も含
む主要産油国との協議で国際市場における供給過剰に歯止めが掛るのではないか、との期
待が浮上したことがある。
そのきっかけは、
8 月 8 日に OPEC 議長であるカタールの Al-Sada
エネルギー産業大臣が非公式会合開催を明らかにしたことであった。
原油価格は年初の安値(WTI で 26 ドル台)から徐々に値を戻し、6 月に 50 ドル台に復
帰した後は基本的に一進一退の状況が続いている。一本調子で上昇が続くことは無く、英
国の EU 離脱の影響や中国経済のダウンサイドリスクに代表される世界経済不安への懸念、
高い OPEC 生産水準、そして 50 ドル台復帰に合わせて浮上してきた米国シェールオイル
生産減少の歯止めの可能性等の諸要因の影響の下、ある意味では「上値が重い」展開が続
いてきた。
その状況下、むしろ 7 月後半から 8 月初めにかけては、足下での極めて高い石油在庫水
準、7 月の記録的に高い OPEC 生産水準(IEA によれば 14 カ国計で 3,339 万 B/D)
、6 月
末からの米国石油リグカウントの 7 週連続増加、その結果として米国原油生産下げ止まり
の兆し等が相まって、国際石油市場における供給過剰の状況が長引くのではないか、との
見方が市場関係者に広まり、原油価格には下落圧力が働くに至った。
実際、原油価格は 7 月前半の 40 ドル台後半の推移から、7 月後半には 40 ドル台前半で
の推移と水準を切り下げ、8 月 2 日は WTI が 4 月 18 日以来となる 40 ドル割れを記録し、
39.51 ドルまで下落した。ある意味で、この価格下落の動きを睨み、その背景にある供給過
剰問題への対応策として、冒頭に述べた産油国の非公式会合のアイデアが浮上してきたと
もいえるだろう。
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IEEJ:2016 年 8 月掲載 禁無断転載
市場関係者の多くは、方向性としては需要の緩やかな伸びの持続と低価格による非
OPEC 石油生産の停滞によって、市場は供給過剰が解消される「リバランス」に向かいつ
つある、という点で共通認識を現在でも持っている。しかし、そのリバランスに向かう速
度と度合いに関しては不確実性が大きく、8 月初めまでの地合いでは、供給過剰の払拭には
思っていた以上に時間が掛るのではないか、という認識が生まれていた。
例えば、IEA の月次石油市場報告書で見ると、7 月時点の分析では現状並みの OPEC 生
産を前提とすれば、2016 年の第 3 四半期から国際石油市場の需給バランスは若干の需要超
過に転じ、その傾向が持続、2017 年後半は大幅な需要超過となることを示唆していた。し
かし、8 月時点の分析では、同様の前提では 2017 年前半までは若干の供給超過が続き、大
幅な需要超過になるのは 2017 年後半になってから、という示唆に変わっている。
供給過剰の長期化とその下での原油価格下落への懸念に直面し、OPEC は市場へのメッ
セージとして、必要とあれば対応策を取るという姿勢を示した。これを受けて、OPEC の
盟主、サウジアラビアの Al-Falih エネルギー大臣が、非公式会合と市場のリバランスに向
けた対応に関する産油国間の協力に前向きな発言をしたと Financial Times 誌が伝えたこ
ともあり、市場が反応して以降の続伸相場を支えることになった。
しかし逆にいえば、今の市場環境下では、産油国の協調による何らかの対応が無いと供
給過剰の払拭が容易ではない、あるいは相当時間が掛る、という認識が強いともいえる。
その意味では、現時点では非公式会合の開催というニュースに市場が反応したものの、今
後は市場の関心はその成否・結果に移っていくことになる。そして、産油国間の協調の成
否に関しては、決して楽観や予断は許されないとも言えるだろう。
思い返してみれば、今回の非公式会合の先駆けともなったのは 2 月 16 日のサウジアラビ
ア、ロシア、ベネズエラ、カタールの石油大臣による「増産凍結合意」の発表である。こ
のアクションも、2 月 11 日に WTI が 26 ドル台にまで落ち込む厳しい状況に対応して打ち
だされたものであった。しかし周知の通り、結果としてこの「増産凍結合意」は産油国間
の足並みが揃わず、今日に至るまで実現していない。
今回、上述してきた供給過剰払拭遅れの可能性という新たな市場環境に対応して、非公
式会合とそこでの産油国協調のアイデアが現れ、市場の注目を集めることとなった。しか
し、産油国協調を巡っては、その主要なステークホルダーである、サウジアラビア、イラ
ン、ロシア等の関係は複雑で、かつ石油市場のロジックを超えた様々な問題もある。もち
ろん、イランの石油生産が経済制裁解除を受け既に制裁前の水準にほぼ復帰している、と
いった新たな状況も生まれており、これを加味した検討が産油国協調について行われる可
能性も興味深い。まさに当面は、原油相場を見る上での重要なポイントとして、産油国協
調の可能性とその成否の行方に注目していく必要がある。
以上
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