CHEMOTHERAPY 北 原 克 之 ・高 橋 剛 一 長岡中央綜合病院内科

VOL.
23
NO.
CHEMOTHERAPY
5
Fosfomycin
北
Fosfomycin(FOM)はStreptomycesか
1709
capsule
原
の 臨 床 的 検 討
克 之 ・高 橋 剛
長岡中央綜合病院 内科
ら産 生 され,
一
も追 求 した 。
広 い抗 菌 ス ベ ク トラム を示 し,殺 菌 的 で,細 胞 壁 の 合 成
体液濃度
血 中,尿 中 濃 度 と も使 用3日
阻 害 作 用 を有 す る新 しい抗 生 剤 で あ る。 本 剤 を 使 用 す る
い て 測 定 し,採 血 は 朝 のFOM服
機 会 を 得 た の で そ の結 果 を 報 告 す る。
間,2時
対 象 お よび 方 法(Table
対象
1)
昭 和48年12月
間 に 行 な い,尿 は24時
か ら 昭 和49年4月
ま で の5カ
が い,カ
準 希釈 液 は0.05MTris
sp.(MB-838)を
令 は30才
∼71才 で 疾 患 名 は
管 支拡 張 症2例,肺
炎3例 で あ り,診
炎 菌 は黄 色 ブ菌,肺 炎 球 菌,肺 炎 桿 菌 が 各1例 で,残
抗菌 力
り
臨 床 分 離菌 の2株
Nutrient agarを
agarで
分4が4例
分3で,こ
で,1日3g分3が3例,2g
間 毎 と した ◎ 残 り1例 は1.59
間 の もの お よび 副 作 用 の た
め6日 間 の もの が 各1例 つ つ あ った ◎
効果判定
自覚 症 状,胸
用 い て 測 定 したQし
か しNutrient
は 肺 炎 球 菌 が生 え な い た め,同 時 に血 液 寒 天 に
結 果 な らび に考 案(Table
の 症 例 は 各 食 後 に 使 用 した 。 使 用 期 間 は原 則
と して7日 間 と した が,10日
と標 準 菌 の2株 に つ い て,
て も行 な っ た。
で,以 上7例 の 服 用 間 隔 は 食 事 とは 無 関 係 に
そ れ ぞ れ8時 間 毎,6時
8.0)で,Proteus
ホ ス ホ マ イ シ ソ 抗 菌 力 測 定 法 に した が い,Difcoの
5例 は常 在 菌 で あ った り,喀 疾 が 出 な い た め,起 炎 菌 は
プ セ ル500短g(力
用 い,標
検 定 菌 と して 行 な った 。 外 来 使 用 の2
不 明 で あ った 。
使 用 したFOMは1カ
Buffer(pH
agarを
例 は検 体 採 取 が で きな い た め,入 院 の6例 で 測定 した 。
断 は胸 部 レ線 所 見,気 管 支造 影 な どに よ り決 定 したO起
価)含 有 の 経 口用 のCa塩
間の蓄尿の一部尿で行
ッ プ法 でDifcoのNutrient
性 別 は 男5例,女3例,年
用 法 ・用 量
よ び 後1時
な った 。 測 定 法 は ホ ス ホ マ イ シ ソ体 液 濃 度 測 定 法 に した
月 間,当 科 外 来 お よび 入 院 の 呼 吸 器 感 染 症8例 で あ る。
気 管 支 炎3例,気
目の検 体 につ
用 前,お
薬剤効果
2)
各 症 例 に つ い て の臨 床成 績,経 過 はTable
2の とお りで,症 例 ご との 詳 細 は 省 略 す る。 上 述 の基 準
に よ る効 果 判 定 で有 効5例,や
あ った 。 症 例1∼4は
や 有 効2例,無
自覚 症 状 の 消失,血 沈,白
の正 常 化,胸 部 レ線 所 見 の著 明 な改 善,起
部 レ線 像-,白 血 球 数,血 沈 値
効1例 で
血球数
炎菌の消失が
あ り有 効 と判 定 した 。 症 例5は 右 遊 走 腎 と慢 性 腎 孟 腎 炎
な どに よっ て行 な い,起 炎 菌 の 明 らか な場 合 は 細 菌 学 的
が あ り,血 沈 は 不 変 で あ った が,そ
検 討 を加 え,有 効,や や 有 効,無 効 で あ らわ した 。
症 状 と胸 部 ン線 像 の 著 明 な 改 善 に よ り有 効 と判 定 した 。
臨床検査
副 作 用 の有 無 を検 討 す る た め,使 用 前 後,
症 例7,8は
のた め と考 え,自 覚
自覚 症 状,胸 部 レ線 像 の軽 度 の改 善 が見 ら
全 例 に 肝 機 能 検 査(GOT,GPT,ア
ル カ リフ ォス フ ァ タ
ーゼ ,LDH,血
清 ビ リル ピ ソ,血 清 蛋 白,ICG),腎
機能
診 で 発 見 され た 自覚 症 状 の 全 くな い 症 例 で,悪 性 腫 瘍 も
検 査(検 尿,BUN,血
疑 い精 査 した が そ の所 見 は な く,肺 炎 と診 断 した 症 例 で
清 ク レア チ ニ ソ,PSP),一
般検
れ た た め,や や 有 効 と した 。 無 効 の1例(症
例6)は
血(赤 血 球 数,血 色素 量,ヘ マ トク リッ ト,白 血 球 数,
あ る 。使 用 量 か ら見 る と無 効 の1例 だ け が1日1。59で,
血 液嫁,血 小 板)を 検 査 し,異 常 を 認 め た 場 合 は 中 止 後
有 効 お よ び や や 有 効 の7例 は 全 て1日2∼39の
Table
1.
Clinical
results
of 8 cases
treated
with
fosfomycin
検
使用例
CHEMOTHERAPY
1710
Table
2.
Clinical
courses
MAY
of 8 cases
GPTだ
で あ った。
副 作 用(Table
1)4例
用 と して,症 例7で2日
心 が あ った が,い
に 認 め られ た 。 自覚 的 な 副 作
目に 下 痢,症 例8で1日
ず れ も軽 度 で,FOMの
例3で はGOT28→90,GPT16→
使 用 後 に 異 常 値 を 示 した が い ず れ も 中 止
後10日
目,15日
例 と もLDH,ア
目に は正 常 化 した。 しか し2
ル カ リフ ォス フ ァ タ ーゼ,血
清 ビ リル ビ ン,血 清蛋 白 の 異 常 は 認 め られ ず 悪
心,食 欲 不 振 な どの 自覚 症 状 もな か った 。 症 例
3で は肝 生 検 を試 み た が 失 敗 した 。GOT・GPT
の上 昇 は2例
と も1日3gの
使 用 例 に 起 り,ま
た 使 用 したLotNo.も
同 一 の も の で あ った。
そ の 後 減量 し,Lotを
か え て5例 に使 用 した が
GOT・GPTの
上 昇 は み られ なか っ た。GOT・
fosfomycin
け の 異 常 で あ った た め,真
明で あ る が,1日3g以
目に 悪
の 肝機 能 障害 か ど う
た め か も不
上 の使 用 に際 して はGOT,GPT
の上 昇 に 注 意 す る必 要 が あ る と考 え る。 な お,そ の 他 の
使用を続けた
臨 床 検 査 上 の異 常 は 認 め られ な か った 。
体 液 濃 度(Table
上 昇 が2例 に 見 られ た 。 症 例2はGOT19→73,GPT
15→50,症
with
か 不 明 で あ り,ま た使 用 量 の た め かLotの
が軽 快 した 。 臨 床 検 査 上 の副 作 用 と してGOT・GPTの
72と
treated
1975
Table
3.
Serum
levels
and
3)血
urinary
中 濃 度 は 各 症 例 と も2時 間 後
excretions
of fosfomycin
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23
NO.
CHEMOTHERAPY
5
1711
が1時 間 後 よ り高 値 を 示 した が,血 中 濃 度,尿 中 排 泄 と
の は な か った 。臨 床 検 査 上 の異 常 所 見 と してGOT,GPT
もか な りの ぼ らつ きが 見 られ,と
の上 昇 が2例 に み られ た 。
くに 尿 中 排 泄 でそ の傾
向 が 強 か った 。 こ とに 症 例3で は い ず れ もひ じ ょ うに 低
値 で あ った 。 また3g分3と2g分4で
差 は 余 り認 め ら れ ず,臨
の 血中濃度 の
床 効果 と 一 致 す る所 見 で あ っ
たQ
4)MICは
下,他 はす べ て6.25μg/mlで
肺 炎 球 菌 が0.2μg/ml以
上 昇 は1日3g使
用 の2例 に み ら
ル
カ リフ ォス フ ァ タ ーゼ,血 清 ビ リル ビ ソ の 異 常 は な く,
4.
あ った 。
結
FOMを
え,1日
論
臨 床 効 果 は 有効5例,や
1日2g以
参
1)
や 有 効2例,無
効1例
で,
STAPLEY, E. 0.,
Chemoth.
2)
が 各1例 に あ った が 軽 度 で そ の た め に 使 用 を 中 止 した も
Antibacterial
上 昇 か ら考
妥 当 と考 え る 。 また 本 剤 使 用 中
考
文
献
D. HENDLIN, et al. : Phos-
phonomycin.
I. Discovery
and in vitro biological
characterization.
Antimicr.
Agents
&
上 の 使 用 例 は 全 例 有 効 で あ った 。
4.
剤 効 果 お よびGOT,GPTの
使 用量 は2gが
の 効 果,副
副 作用 は4例 に み られ た 。 自覚 的 に は 悪 心,下 痢
Table
以上,薬
は定 期 的 に 肝 機 能 検 査 を 行 な うべ きで あ る と考 え る。
呼 吸 器 感 染 症8例 に 使 用 して,そ
作用 に つ い て検 討 した 。
2.
GOT,GPTの
真 の 肝機 能 障 害 か ど うか は不 明 で あ った 。
抗 菌 力(Table
1.
3.
れ た が い ず れ も中 止 後 正 常 化 した 。 しか しLDH,ア
mycin.
Agents
activities
3)
1969,
284-290
JACKSON, M. & E. 0.
STAPLEY Phosphono-
II. Fermentation
studies.
& Chemoth.
1969, 291-296
HENDLIN, D., B. M. FROST, et al. : Phosphonomycin.
III. Evaluation
in vitro.
Agents
& Chemoth.
1969, 297-302
4)
Antimicr.
Antimicr.
ZIMMERMAN, S. B., E. O. FROST, et al. : Phosphonomycin.
IV. Susceptibility
testing
method and survey.
Antimicr.
Agents
& Chemoth.
1969, 303-309
5)
MILLER A. KATHRINE, BATTINA M. FROST,
et al.: Phosphonomycin.
V. Evaluation
in mice.
Antimicr.
Agents
& Chemoth.
1969, 310-315.
Table
5.
Laboratory
data
CHEMOTHERAPY
1712
CLINICAL
STUDIES
KATSUYUKI
Department
MAY
KITAHARA
of Internal
ON FOSFOMYCIN
and
GOICHI TAKAHASHI
Medicine,
Nagaoka
Fosfomycin was used orally 1. 5-3. Og daily for 6-10days
diseases (bronchitis 3, bronchiectasis
2, pneumonia 3).
1.
daily
The
dose
clinical
results
were
of 2. 0 g or over was
1975
good in 5 patients,
fair
effective
in all 7 cases.
Chuo
Hospital
in 8 patients
in 2 patients
and
of respiratory
poor
in
only
infectious
1 patient,
and
2. Side effects were observed in 4 patients.
Mild gastro-intestinal
symptoms occurred in 2 patients,
nausea 1, diarrhea 1, but none was severe enough to warrant discontinuation of the drug.
Elevations
of serum glutamic oxaloacetic transaminase
(GOT) and of serum glutamic pyruvic transaminase(GPT)
after therapy were observed in 2 patients.
3.
Elevations
normal
of GOT and GPT
10-15days
after
But abnormality
bilirubin
4.
and
not
observed
of the
in
observed
in 2 patients
who were
given
3. Og daily,
and became
drug.
serum
lactic
dehydrogenase,
alkaline
phosphatase
or
serum
level.
These
elevations
therapy.
was
were
cessation
data
suggest
of
GOT
that
and
daily
GPT,
dose
and
of 2. Og
liver
is
function
recommended
test
should
considering
be
examined
these
clinical
periodically
results
during