別記第3号様式 事 後 評 価 調 書 機関名 整理番号 1 研究課題名 北海道環境科学研究センター 塘路湖における環境保全と漁獲の安定化に関する研究 ※重点領域・一般試験等 事業区分 重点領域特別研究 研究区分 研究 試験 調査 分析 共同研究機関 北海道立水産孵化場、北海道立衛生研究所、山形大学理学部 (協力機関) 研 究 の 概 研究期間 全 体 所 要 額 (千円) H 11 年度 ∼ H 13 11,890 (一財 11,890 年度 ) 要 ○ 研究背景 北海道には多数の湿原が広がっており、その中に貴重な湖沼が存在している。それらの湿原内湖沼には、①豊富な水産資源がもたら す漁業的役割、②優れた景観がもたらす観光的役割、③渡り鳥の中継地や繁殖地としての役割がある。塘路湖をはじめ北海道の多くの 湿原内湖沼において、周囲からの有機物や栄養塩類の流入による環境悪化や漁獲の不安定化が懸念されいる。しかし、集水域を含めた 詳細なデータによる水質環境と漁獲の安定化に関する総合的な対策がなされていないのが現状である。 ○ 研究目的 本研究の目的は、水質および底泥の環境悪化とワカサギ漁獲の不安定化が懸念されている釧路湿原内の塘路湖において、それらの問 題を解決するため、環境特性を決定する要因の一つである集水域からの有機物や栄養塩類の起源解明、湖内堆積特性の解明、ワカサギ 漁業資源への環境影響を明らかにすることである。 ○ 研究内容 集水域からの有機物や栄養塩類の負荷量および起源解析、湖内の栄養塩類の挙動と生物環境、底泥の起源および堆積速度の解析、ワ カサギの資源動態解析を行った。本研究では、化学的、生物的基礎解析に基づく、食物連鎖網、物質循環解析を行った。さらに、自動 データ記録装置を用いた風向風速、水温、流速の連続データによる詳細解析、炭素窒素安定同位体比による有機物起源解析および植物 プランクトンの生育環境条件の解析、放射性同位元素セシウム137による堆積速度の見積もりなどを行った。 ○ 研究実績 ①炭素窒素安定同位体比による解析によって、集水域の森林系および牧場系の有機物の起源解析が可能となった。 ②栄養塩類の挙動および植物プランクトンの種と量について、18回の現地調査により明らかになった。 ③底泥の起源や堆積速度に関して、炭素窒素安定同位体比、チタン、セシウム137などの解析により、明らかになった。 ④魚類調査、動物プランクトン、植物プランクトン、バクテリア、底泥生物の調査の結果から、食物連鎖網が明らかとなった。 研 究 の 成 果 ○ 具体的な成果及び研究目標の達成度 ①集水域の牧場から降雨時に有機懸濁物が流出し、河川下流部に堆積して、ワカサギの産卵床環境を悪化させていることがわかった。 ②湖内の栄養塩類挙動に関して、集水域の負荷、大気からの固定、分解による再供給により、季節的挙動特性が明らかとなった。 ③塘路湖の底泥環境は過去に比べて悪化し、その起源は富栄養化に伴う植物プランクトンの増殖影響が大きいことがわかった。 ④ワカサギの主な餌は動物プランクトンでその量は塘路湖には十分あり、ワカサギの餌環境は悪くないことがわかった。 ○ 研究期間・経費の妥当性 1年間の季節的サイクルが湖沼環境解析の最低限の単位であり、経年的な気象条件の違いの誤差を考慮して解析するには、3∼5年 が必要である。経費に関しては、自動データ記録装置のリースや安定同位体比等の特異的な分析には、高額な費用が必要である。また、 環境保全や漁業資源に関する研究は、現地野外調査が多数回必要であり、それ相応の旅費が必要となる。従って、本研究に対して、2 年8ヶ月という研究期間と11890千円という経費に関しては、最低ラインであったといえる。 ○ 他機関との連携 漁業資源解析を行うためには、湖内の食物連鎖網の解析が必須であり、それらには魚類やその他の生物 目 標 の 達 成 度 a・b・c 群の研究が必要である。これらの部分は、当センターの解析に加えて、共同研究機関である北海道立水産 孵化場、北海道立衛生研究所、山形大学理学部の詳細な解析が付加されることによって、順調に進展した 期 間 の 妥 当 性 a・b・c ものといえる。 ○ 新たな展開に向けた課題 経 費 の 妥 当 性 a・b・c 本研究の成果により、塘路湖に関して、環境保全と漁獲の安定化をはかるための、十分な知見を得るこ とができた。また、他の湿原内湖沼への応用に関して、本研究で開発された解析手法と科学的事実は、十 成 果 の 有 益 性 a・b・c 分利用できる。しかし、湖沼には、それぞれ独自の地理的特徴、気象状況をもっており、それらを考慮し た検討が必要と思われる。 成 果 の 活 用 策 ○ 活用される分野 本研究成果は、北海道に多数存在する湿原内湖沼の保全施策への基礎データ、内水面漁業への安定漁獲対策への基礎データとして最 大限活用される。 ○ 具体的な活用方策 本研究の具体的な活用方策は、塘路湖の地元関係機関、関係者に還元される。漁業者に対しては、より安定的な生産が得られるため の漁業資源管理手法について提言される。地元自治体には、現在の塘路湖の科学的な情報を提供し、地元の環境行政への知見として利 用されうる。その他の湿原内湖沼における環境的、漁業的問題に対しては、本研究成果を参考知見として十分に利用される。 ○ 成果の普及 研究成果に関して、報告書の配布に加えて、学会における発表と学会誌上による掲載により公表される。現段階でのおもな学会発表 と学会誌上への掲載の実績を記載する。今後、多数の学会発表と誌上による掲載に努め、本研究成果の普及に努力する。 *三上ら、塘路湖における陸水学的研究(1)−天然安定同位体比からみた底質の有機物起源−、日本陸水学会口頭発表 *石川ら、塘路湖における陸水学的研究(2)−湖内の懸濁物質の挙動−、日本陸水学会口頭発表 *安富ら、塘路湖における陸水学的研究(3)−基礎生産の特徴−、日本陸水学会口頭発表 *永洞ら、釧路湿原における河川水溶存フルボ酸のキャラクタリゼーション、日本水環境学会誌 *伊藤ら、北海道釧路湿原、塘路湖とシラルトロ湖の底生動物、陸水生物学報 活 用 の 可 能 性 a・b・c 【自己評価】 A・B・C 【総合評価】 A・B・C 【意見】化学的、生物的基礎解析や安定同位体比分析による有機物起源解析などにより、塘路湖及びその集水域などの 特性を科学的に明らかにし、塘路湖の環境保全と漁獲の安定化という研究目的は十分に達成された。本研究の成果は、 地元に還元されると共に、道内に多数存在する湿原内湖沼の環境保全施策や内水面漁業の安定漁獲対策などへの基礎デ ータ及び手法の応用として最大限活用される。 (追跡評価の必要性 有・無) 【意見】 本研究により、塘路湖等における環境特性を明らかとし、環境の保全と漁獲の安定化に向けた基礎的データが得られ るなど、十分な研究成果が得られている。 今後、地元の漁協等関係機関との連携のもと、環境保全施策の展開や資源管理手法の確立を進める必要があり、成果 の具体的な反映状況について追跡評価の必要がある。 (追跡評価の必要性 ○ 有 ・無) (A)目標を達成し、十分な研究成果が得られている (B)目標を概ね達成し、一定の研究成果が得られている (C)目標の達成度が低く、十分な研究成果が得られていない (a)極めて高い、適切である (b)高い、概ね適切である (c)低い、改善の余地がある
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