2015/6/30 明日出席できない人へ • 『インターネット心理学のフロンティア』 p.150~163まで熟読し、500字程度の感想文をト ムソンへメールで送ってください(6月22日夜 12時まで) • • 北海道科学大学 メールの件名に学生番号とお名前を入れること 「メールで済ませたら楽なのに」 メールなら素直に表現できる 第10週 講義スライド インターネットにおける 自己呈示・自己開示 メールアドレス:[email protected] 注意 • 情報社会論 参考書:杉谷陽子(2009)「第3章 インターネットにおける自己呈示・自己開示」三浦麻子・森尾博昭・川浦康至編著『イ ンターネット心理学のフロンティア』誠信書房 比較的に最近の出来事である • 1990年代前半まで、文字によるコミュニケーション は困難であった。 • 手紙を書く • FAXを送る • 浮上する疑問 • 対面でのコミュニケーションと対面でないコミュニケー ションとでは何か違うのか • 匿名状況はコミュニケーションスタイルをどう影響する か 2015/6/30 非言語的手がかりとCMC 初期のCMC理論 • メール、チャット、SNSなどにおけるコミュニケー ションは「CMC」と呼ばれる • Computer-Mediated Communication • コンピューターを介したコミュニケーション • 対面でのコミュニケーションとCMCとの違いに関す る研究は1970年代から北米でスタート • 当然インターネットはなかったが、コンピューターは存 在していた 非言語的手がかりとCMC 非言語的手がかりとCMC • 1990年代までの諸理論 1. CMCを従来の対面や電話などよりも劣るメディ ア・コミュニケーションであるという考え 初期のCMC理論 • 社会的存在感理論(Short, Williams, & Christie, 1976) • CMCでは対面での会話に比べて相手の存在感が希薄になり、コ ミュニケーションが冷たい印象になる • キューレスネスモデル(Rutter, 1984) • CMCは非言語的なコミュニケーション手がかりを欠くため、対話 が課題試行的になり自発性が下がる • 手がかり減少モデル(Kiesler, Siegel, & McGuire, 1984) • CMCは非言語的手がかりが少ないことによって、脱個人化(自分 を意識することができなくなっている状態)をお越し、インター ネット上の言い争いが起こることを説明する概念 従来の理論の2つの共通点 • 例:「社会的存在感理論」ではCMCは相手が見えな く、コミュニケーションが非人間的で冷たい印象を与 える • 例:「手がかり減少モデル」では、CMCで人は自己知 覚が低下し社会的制御がきかなくなり、提示版での言 い争いが起こりやすいという考え 2015/6/30 非言語的手がかりとCMC 非言語的手がかりとCMC 2. CMCの特徴を「非言語的手がかりの少なさ」とい うことに求めている点 • CMCを従来の対面や電話などよりも劣るメディ ア・コミュニケーションであるという考え 従来の理論の2つの共通点 • 対面の会話の場合: • 相手の表情を見る 非言語的 コミュニケーション • 声(イントネーション、音量など)を聴く • CMCの場合: • 非言語手がかりが欠如している • 今は絵文字はあるけど・・・ 近年のCMC理論 • インターネットの多機能化により、この考えが大幅に なくなった • しかし、以前として「CMCは非言語的手がかりが少な いメディアである」という考えを中心にたくさんの研 究が行われてきた • 特に自己開示や自己呈示に関する研究 非言語的手がかりとCMC CMCの特徴の定義 CMCにおける自己開示 • CMCをこれから「CMCが対人コミュニケーション を如何に影響するか」に関する研究を紹介する • 自己開示とは(1) • その際、「従来のコミュニケーション」と 「CMC」とではどこが異なるかをきちんと理解す るべき • それは、CMCの「非言語的手がかりの少なさ」が ポイント • 「他者に対して、言語を介して伝達される自分自身に 関する情報、およびその伝達行為」 • • つまり、自分自身に関する情報を他者に話すこと 非常に内面性の高い情報を自己開示することは「告白」と も呼ばれる 2015/6/30 CMCにおける自己開示 CMCにおける自己開示 • 自己開示とは(2) • CMCでは人は自己開示をより深くする(詳しく話 している)ことが示唆されている • 臨床心理学などの分野では多くの研究がある • • • 有名なのは、「自己開示」をすること(すなわち内面的な 情報を明かすこと)によって精神的健康がよくなるという 知見 親密性も上昇させる 対人関係においてお互いが積極的に自分の話をするように なることで関係の発展が促進される 皆さんはどうですか? CMCにおける自己開示の促進 • 「私はいつも相手に感じるままのことを話している」 • 対面よりもメールやチャットなどでは「私に当てはま る」と答える人が多い • 実際に対面とメールでの会話を内容分析した研究者で は、確かにメールでの会話内容がより詳しかった CMCにおける自己開示 CMCで自己開示が促進される理由 • 「手がかり減少モデル」にあるように、非言語的 手がかりが乏しい • 脱個人化による「制御の少ない」コミュニケーション が生じやすい • • 良い影響:自己開示が起こりやすい 悪影響:フレーミング(言い争い)が起こりやすい 2015/6/30 CMCにおける自己開示 CMCにおける自己開示 • CMCと自己意識の研究 • 視覚的匿名性と自己開示 CMCで自己開示が促進される理由 • われわれは「二つの自己意識を持っている」と言われる 1. 公的自己意識 • 他者から評価されたり、人に何かを説明したいりするときに高まる 自己意識 CMCで自己開示が促進される理由 • 公的・私的自己意識を影響する視覚的匿名性を研究し たJoinson(2001)を見てみよう • 2. 私的自己意識 3つの実験を行い、自己意識における視覚的匿名性の役割を 明らかにした研究 • 自己の内面に注目が向けられること(高まると、われわれは自分の 動機や欲求に沿った行動に注意が向き、他者からの評価懸念が低下 する) 自己開示が促進される 言い争いも起こりやすい CMCにおける自己開示 CMCにおける自己開示 • 視覚的匿名性と自己開示 • 視覚的匿名性と自己開示 CMCで自己開示が促進される理由 • 実験1 • • • • • 参加者は対面あるいはコンピューターで討論を行った 対面条件では討論が録音され、コンピューターの場合は チャットがログ(記録)された その後、発話が分析され、自己開示度が測定された 結果的に、CMCの討論での自己開示度が高かった つまり、CMCではどうも自己開示がしやすい CMCで自己開示が促進される理由 • 実験2 • • • • 参加者は両条件ともコンピューター(チャット)を使って討論し た 一方は相手が見えない(視覚匿名性)状態、もう一方はウェブカ メラで相手の姿が見える状態 結果として、視覚匿名性のある参加者のほうは自己開示が多かっ た つまり、CMCで視覚という非言語的な手がかりが利用できないと きに自己開示が促進されると指摘する結果 2015/6/30 CMCにおける自己開示 CMCにおける自己開示 • 視覚的匿名性と自己開示 • 視覚的匿名性と自己開示 CMCで自己開示が促進される理由 実験3 • 自己意識を直接に操作する実験 参加者は公的自己意識の高低、私的自己意識の高低の条件に分けられた 私的自己意識を操作する条件 公的自己意識を 捜査する条件 パソコン画面の横にマンガの キャラクターの絵が置いている パソコン画面の横に 自分の顔写真が置いている 公的自己意識:高 私的自己意識:低 公的自己意識:高 私的自己意識:高 ウェブカメラあり ウェブカメラなし 実験室の廊下が暗い 公的自己意識:低 私的自己意識:低 公的自己意識:低 私的自己意識:高 0.8 自己開示の量 • CMCで自己開示が促進される理由 実験3 自己意識を直接に操作する実験 自己意識と自己開示の関係 0.6 0.4 0.2 公的自己意識が低くて、かつ 私的自己認識が高い場合、自 己開示がしやすい 0 -0.2 公的自己意識(高) -0.4 -0.6 私的自己意識(高) 私的自己意識(低) 公的自己意識(低) CMCにおける自己開示 CMCにおける自己開示 • CMCで活性化する自己概念の研究 ① CMC上では、自己開示が促進される傾向がある CMCで自己開示が促進される理由 • 「本当の自分」がCMCにおいて活性化されるのでは? • • • インターネットで知り合った他者は匿名であり、現実世界 の対人ネットワークとのかかわりが一切ない その人に自分に関する秘密などをばらしても、後で問題に なる懸念は不要だという主張 また、⻑時間ネットを使って見知らぬ他者とかかわりを持 つことによって、「本当の自分」を対面のかかわりにおい ても活性化しやすくなるという研究も CMCと自己開示のまとめ ② 上記の①では、CMCでは利用できる非言語的手が かりが少ないため、私的自己意識が高まり、評価 懸念が低下したりすることによって生じる 2015/6/30 CMCと自己呈示 CMCと自己呈示 • 自己呈示とは • ハイパーパーソナル・モデル(1)(Walther et al., 1994) • 他者からの肯定的なイメージ、社会的承認や物質的報 酬などを得るために自己に関する情報を他者に伝達す ること • 自己開示 = 自己に関する情報をありのままに述べる行 為とその言語的内容 • 自己呈示 = 自己に関する情報を意図的に調整して話す 行為全体やその内容(非言語的行動も含む) CMCと自己呈示の研究 • CMCでは以下の4つの要素が相互に影響与え合い、かか わりを持つ者同士の好意が高まっていく 1. 受け手 CMCでは非言語的手がかりが相手に伝わりにくい ので、受けては、伝えられた情報を過度に重視し相手を捉 えがちである • 例:魅力的な女性と出会いたいと思ってチャットをしている人 は、たまたま知り合った女性が少し親切な行動をとると、その 人はとても親切ないい人であると極端に思い込む CMCと自己呈示 CMCと自己呈示 • ハイパーパーソナル・モデル(2)(Walther et al., 1994) • ハイパーパーソナル・モデル(3)(Walther et al., 1994) CMCと自己呈示の研究 • CMCでは以下の4つの要素が相互に影響与え合い、かか わりを持つ者同士の好意が高まっていく 2. 送り手 そもそも人は自分をよく見せたいという動機を 持っているが、CMCでは理想的な自分を印象付けられるよ うな自己呈示を行うことができる • 「選択的自己呈示」(selective self-presentation) CMCと自己呈示の研究 • CMCでは以下の4つの要素が相互に影響与え合い、かか わりを持つ者同士の好意が高まっていく 3. チャネル(メッセージの伝達経路) CMCでは送るメッ セージを編集することにメリットがある。 • 時間をかけてメッセージを構成することもできる 2015/6/30 CMCと自己呈示 CMCと自己呈示 • ハイパーパーソナル・モデル(4)(Walther et al., 1994) • CMCと自己呈示の研究 • CMCでは以下の4つの要素が相互に影響与え合い、かか わりを持つ者同士の好意が高まっていく CMCと自己呈示の研究 ハイパーパーソナル・モデル(5)(Walther et al., 1994) • • 受けて、送り手、チャネル、フィードバック この概念をWalther(1994)が実験研究で検討した • 4. フィードバック 送り手と受け手が送信したメッセージが 互いに好意に受け止めた場合、「やっぱり自分が提示した 自己はいいよね」と自覚し、ますます相互に理想的な自己 呈示を行うことになる 参加者はコンピューター(チャット)を用いて討論をした • • • • 相互に相手を好意的に捉えるスパイラルが生じる 半数の参加者は、討論の相手のハンドルネームをクリックすると顔写真 とプロフィールが表示される 他の半数は相手のハンドルネームをクリックしたときにプロフィールの み(写真なし)が表示される 結果的に顔写真のない相手に対する好意度が高かった • 視覚的情報がないほうが、自分勝手に自己イメージを伝えることができ る CMCと自己呈示 CMCと自己呈示 • CMCにおける戦略的自己呈示の研究(1) • CMCにおける戦略的自己呈示の研究(2) CMCと自己呈示の研究 • これまではCMC利用とコミュニケーション内容やコミュ ニケーション主体同士の認知に対する影響に関する研究 を紹介してきた • 次は、「われわれが自らの自己呈示目標に応じてメディ アを使い分ける」ことを検討する研究を紹介する • 自分の「印象管理」(image management)のためのメディア 選択 CMCと自己呈示の研究 • O’sullivan(2000)はこのアイディア(自己呈示目標によ るメディアの選択)を研究で検討してみた • まず自己呈示目標を分類した • 自己宣伝 • 賞賛 • 告白 • 非難 自分の良いところを積極的にアピールすること 他者をほめること 自分にとって都合の悪いことを他者に打ち明けること 相手の非を指摘すること 2015/6/30 CMCと自己呈示 CMCと自己呈示 • CMCにおける戦略的自己呈示の研究(3) • CMCにおける戦略的自己呈示の研究(4) CMCと自己呈示の研究 CMCと自己呈示の研究 • O’sullivan(2000)の自己呈示目標分類 • 実験参加者に「どのような時にCMCが望ましいか」と聞いた • • O’sullivan(2000)の自己呈示目標分類 • 「告白」はそもそも難しいから、CMCを使って言葉を構成し慎重に メッセージを伝える(コントロールする)ことができる • 焦点 自己 コミュニ ケーション 内容 なぜ「告白」はCMCでやりやすいか • 自己宣伝(boost) 他者 賞賛(praise) • 肯定的 否定的 告白(confess) 非難(accuse) • CMCと自己呈示 CMCと自己呈示のまとめ ① CMCでは、相手に伝わる非言語的手がかりが少な いため、対面や電話などよりも自己呈示がコント ロールしやすくなる ② われわれはCMCの特徴を意識せずとも理解してお り、たとえば、自分に不利益をもたらす可能性の あるコミュニケーション場面などでは、戦略的に CMCをメディアとして選択する傾向がある 対面のコミュニケーションでは非言語的な情報をコントローすること が難しいから 相手が自分の表情や身振り手振りを見ることが大きな心理的負担にな る 対面では自分が伝える言葉だけではなく、他の非言語的手がかりにつ いても配慮しなくてはならない・・・それは疲れる CMCの「非言語的手がかりが少ない」ことがここで役に立つ CMCにおける「話しやすさ」の研究 • • ここまでわかったこと CMCの短所として捉えら れる「非言語的手がかりの少なさ」は実は自己呈 示をコントロールできるという良いところも存在 する その「CMCの話しやすさ」のアイディアに関する 研究を紹介しよう 2015/6/30 CMCは「話しやすい」 「話しやすさ」とは • • • 「コミュニケーション時に人びとが感じる心理的負担 感が低いこと」 緊張しない、気軽だ、面倒ではない、などなど CMCにおける「話しやすさ」の研究 CMCは「話しやすい」 原田(1997)の研究(2) • • CMCが話しやすい理由 1. コントロール可能性 • 自らの発話を意図的にコントロールすることができること • 対面では: • 年配の人に対しての礼儀正しさ、親友に対してくだけた雰 囲気 • 視線の位置、外見の雰囲気 • テキストベースのCMCでは、表情や視線などは伝わらないた め、与えたい印象を上手に気楽に伝えることができる CMCにおける「話しやすさ」の研究 CMCは「話しやすい」 原田(1997)の研究(1) • キーボードを打つことが面倒なはずのCMCは意外と評 価が高かった • 話しやすさの得点 CMCにおける「話しやすさ」の研究 各メディアの「話しやすさ」の得点 1 0.5 0 同期的会話 非同期的会話 -0.5 -1 対面 テレビ電話 音声電話 CMC CMCにおける「話しやすさ」の研究 CMCは「話しやすい」 原田(1997)の研究(3) • • CMCが話しやすい理由 2. 編集可能性 • • 発話の歳にその内容を満足いくまで編集できること 「時間」がポイント • チャットの場合は即時に返信しなくてはならないの で、編集時間が少なく、編集可能性が低い • 「メールの話しやすさ」が高いことは、この理由にあ る → 与えようとする印象を「編集」する必要な時間が あるから
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