デジタル線形フィルタの定義とインパルス応答 デジタル線形フィルタの定義を学び、フィルタ固有の性質を表すインパルス応答について学びます。 1 デジタル線形フィルタの定義 フィルタとは入力された物のある特定の成分を取り除いたり強めたりする機能を持つシステムのことで、例えばコー ヒーフィルタはコーヒーの豆だけを取り除いて液体だけを取り出す機能を持っています。サングラスなんかも太陽光の 紫外線だけ取り除いて可視光だけ取り出すフィルタです。もっとも今回は信号の話ですので、コーヒーフィルタやサン グラスの話ではなくて信号のフィルタについて話します。 さて信号用のフィルタは大きく分けてアナログ信号を扱うアナログフィルタとデジタル信号を扱うデジタルフィルタ に分かれます。更に分けると線形フィルタか非線形フィルタに分かれます。今回取り扱うフィルタはデジタル線形フィル タです (補足 1) 。 デジタル線形フィルタの定義は次の通りです。 定義: デジタル線形フィルタ あるデジタルフィルタに信号 xj [i] を入力した時の出力を yj [i] とする (j は整数)。aj を実定数として、このフィ ルタに M-1 ∑ {aj · xj [i]} j=0 を代入した時の出力が M-1 ∑ {aj · yj [i]} j=0 となるデジタルフィルタをデジタル線形フィルタという。また上の関係を重ね合わせの原理と言う。 ちなみにデジタル線形フィルタでないデジタルフィルタは全てデジタル非線形フィルタといいます。 2 インパルス応答 あるデジタル線形フィルタの性質を知るためにインパルス応答が使われます。 定義: インパルス応答 あるデジタル線形フィルタに n = 0 のデジタルインパルス信号 δ[i] = {1, 0, 0, · · · } を入力した時のフィルタ出力 h[i] をインパルス応答と言う。 つまりインパルス信号に対する応答の信号をインパルス応答といいます。そのままですね。 このインパルス応答はデジタル線形フィルタの内部状態を示すものですので、未知のデジタル線形フィルタがあってそ の内部状態を知りたい時には、とりあえずインパルス信号を突っ込んでその応答を調べるということが良く行われます。 1 演習 演習 1 (個人):デジタルフィルタ y[i] = 3 · x[i] に x0 [i] = {1, 2, 3} 及び x1 [i] = {2, 1, 1} を入力した時の出力信号 y0 [i] と y1 [i] を計算してノートに書け。 演習 2 (個人):演習 1 のフィルタに入力信号 x0 [i] + 2 · x1 [i] を入力した時の出力信号を計算してノートに書け。 演習 3 (個人):演習 1 のフィルタが線形フィルタである理由をノートに書け。 演習 4 (個人):デジタルフィルタ y[i] = loge x[i] に x0 [i] = {1, 2, 3} 及び x1 [i] = {2, 1, 1} を入力した時の出力信号 y0 [i] と y1 [i] を計算してノートに書け。 演習 5 (個人):演習 3 のフィルタに入力信号 x0 [i] + 2 · x1 [i] を入力した時の出力信号を計算してノートに書け。 演習 6 (個人):演習 3 のフィルタが非線形フィルタである理由をノートに書け。 演習 7 (チーム):この演習で扱う信号はアナログ信号でも可とする。ある未知のフィルタ (又はシステム) にインパルス 信号を突っ込んでそのインパルス応答で内部状態を知るという行為は日常的によく行われている。その例をチームで話 し合って 1 つ以上ノートに挙げよ。 2 補足 本題から外れるので本文中では詳しくは説明しなかった事項を補足します。興味があったり、大学編入試験対策でもっ と深く知りたい学生は読んで下さい。 補足 1:この講義で取り扱っているフィルタは、正確には「デジタル線形時不変フィルタ」といいます。時不変というの は、フィルタへの入力信号の入力時間をシフトさせると同じ時間だけ出力信号もシフトするという意味です。定義を書 くと次のようになります。 定義: 時不変フィルタ あるフィルタの入力信号を x[i] とし、出力信号を y[i] とする。δ を任意の整数としたとき、x[i + δ] に対する出力 が y[i + δ] となるフィルタを時不変フィルタという。 3
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