6 窒素成分を高めた食品残さペレット肥料の 施用が水稲の生育・収量に

6 窒素成分を高めた食品残さペレット肥料の
施用が水稲の生育・収量に及ぼす影響
農産物安全・土壌担当
山﨑晴民
(1) ねらい
食品由来の廃棄物は、堆肥や飼料等に利用できるにもかかわらず、焼却処分さ
れるものも多く、二酸化炭素の排出の観点から環境への影響も懸念される。
この食品由来の廃棄物を有効利用するため、調理屑等を原料にした堆肥を基に
ペレット肥料(商品名:彩の国食品系エコペレット:以下、ペレット肥料)の研
究開発を進め、水稲や露地野菜での栽培技術の検討や利用促進を図ってきた。
しかし、このペレット肥料は、化学肥料と比較して肥料成分含量が低く(窒素
4%)、単位面積当たりの施用量が多くなるなど、施肥作業に労力がかかっていた。
そこで、肥料成分含量を高めた「高窒素ペレット肥料(窒素7~8%)」を開発
し、水稲栽培における実用化について検討した 。
(2)研究内容
ア ペレット肥料の高窒素成分化と規格改正
ペレット肥料は、食品残さ堆肥、米ぬか、菌体肥料を混合して堆積、発酵過程
を経て製造されるが、高窒素ペレット肥料は、食品残さ堆肥に他の有機原料や無
機肥料を混合して、肥料成分を高めたペレット肥料として製造される。
肥料取締法では、堆肥に無機肥料を添加して販売することができなかったた
め、窒素成分を高めるためには、フェザーミールなどの有機原料を用いていたが、
本試験の結果を基にして、肥料取締法が規格改正(平成24年8月「混合堆肥複
合肥料」の新規設定)され、新たに無機肥料と食品残さ堆肥との混合が可能とな
った。
イ 水稲栽培試験
水田研内ほ場(細粒灰色低地土)において、2009年~2013年に5月上旬移植(品
種:彩のかがやき及び彩のほほえみ)で試験を実施した。試験区として①化学肥
料区②ペレット肥料(従来型)区③高窒素ペレット肥料(窒素:7%)区④高窒
素ペレット複合肥料(窒素:8%)区を設定した。水稲の収量(精玄米重)は、
各ペレット肥料区は化学肥料区と同等あるいはやや優る傾向がみられた。
以上のことから、窒素成分を高めた高窒素ペレット肥料は、肥料の現物施用量
がペレット肥料に比べ3~4割程度であったにもかかわらず、ペレット肥料と同
等以上の収量が得られ、肥料的効果が高いことが認められた。
(3)今後の見通し
高窒素ペレット肥料は、食品残さと家畜糞堆肥を混合した複合肥料(エコペレ
ット055:窒素-リン酸-加里が10-5-5%)として製品化しており、今後、利用
拡大が期待さる。
連絡先
農産物安全・土壌担当
~ 17 ~
電話 048-521-9461
0480-21-2091
A社
寄居工場
食品残さ堆肥
計量
有機原料
計量
混合
発酵
1~2週間
造粒
ペレット4mmΦ
乾燥・冷却
<B社関東工場>
篩別
製品
(堆肥:特殊肥料)
※ 製品1tを生産するのに必要な原料使用重量(kg)は食品残さ堆肥(窒素-リン酸-加里が3.4-1.5ー2.4:
以下有機原料及び肥料も同様)が650kg、米ぬか(2-5-1)が150kg、菌体肥料(5-3-0)が300kgである。
肥料取締法において、特殊肥料の主要成分として表示出来る含有量は4-2.6-1.6である。
図1 ペレット肥料の生産工程
80
窒素分解率(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
0日
30日
60日
120日
埋設日数
ペレット肥料
写真 1
ペレット肥料
図2
高窒素ペレット肥料
土壌における高窒素ペレット肥料の窒素分解率
表1 ペレット肥料の成分、施用量及び水稲の生育、収量(2010年) 試験区
肥料成分%
窒素無機化率 ペレット現物 稈長 精玄米重 収量指数
窒素-リン酸-カリウム
推定値(%) 施用量kg/10a
cm
kg/10a
1 慣行(化学肥料)
14-14-14
100
84.2
528
100
2 ペレット(従来型)
4-2.6-1.6
50
250
83.4
529
100
3 高窒素ペレット
7-1-1
70
102
84.8
579
110
4 高窒素ペレット複合肥料型
8-10-8
85
74
88.0
560
106
※品種は彩のかがやきを用いた。基肥は窒素で5kg/10a、穂肥(いずれも化学肥料)は窒素で3kg/10aとした。
ペレットは窒素成分に無機化率推定値を乗じて窒素有効成分量とし、施用量を設定した。
120
100
80
2009年
2010年
2011年
2013年
化学肥料
ペレット肥料
高窒素ペレット肥料
高窒素ペレット肥料複合型
図3
収量指数の経年変化
写真2
高窒素ペレット肥料
(エコペレット055)
~ 18 ~