Ⅱ尿管ポリープの一例 本邦に置いては比較的稀とされている、 膀胱内に脱出した尿管ポリープを供覧す る. 症 例 43 歳女性が無症候性血尿を主訴に来 院した.膀胱鏡検査で左尿管口から表面 平滑な非乳頭状で棍棒状の腫瘤が脱出し ていた(図1).尿細胞診は陰性で、D IP(図2)では、水腎症や尿管通過障 害及び腎尿管の腫瘍を思わせる所見は無 く、膀胱部に小さな陰影欠損を認めた. 尿管良性腫瘍を疑い手術を行った.尿管口から 約 3-4cm 中枢の尿管起源とする長さ約 8cm の 腫瘍を認めた(図3).迅速診断で悪性所見の ないことを確認した後、尿管口から約 6cm 中枢 で尿管を部分切除した.病理組織学的診断は fibroepithelial polyp であった. 考 察 尿管のポリープは尿管良性腫瘍のうちでは最 も多いとされているが、本邦における臨床症例 の解析されたものは少ない.1979 年に大沢ら1) が 121 例を集計解析し、1996 年に北村ら2)が 150 例を集計しているが、全体の解析はなされ ていない.それ以降小児例の集計3)やその長 さによる集計解析2)や治療法(内視鏡的)に 基づく集計解析が多く尿管ポリープ全体とし ての解析はみられない. 大沢ら1)らによれば、本邦の尿管ポリープ の臨床病態は、男性 80 例女性 40 例不明 1 例 で男性に圧倒的多数であり、ほぼ全年齢にみ られるが 30 歳未満 34%、30-59 歳 64%、60 歳以上 2%で中壮年層に多い.患側は右尿管 40 例、左尿管 79 例及び両側ないし不明 2 例 である.ポリープの発生部位は上部尿管 32%、中部尿管 25%、下部尿管 43% および不明 Copyright© Noriharu Mikata 2015 All Rights Reserved. 13%で下部尿管発生が多い.臨床症状は側腹部痛・腰痛、血尿、膀胱刺激症状 が多いが本疾患に特有な症状はないとしている.記載のあった 96 例の組織像 は単なるポリープ 25 例、線維性(fibrous)・線維上皮性(firoepithelial)30 例、炎症性(肉芽腫性を含め)29 例、その他 12 例である.ポリープの長さを 5 ㎝で分けると、5 ㎝未満 66 例、5 ㎝以上 25 例及び不明 30 例であり、5 ㎝未 満の症例では結石の合併が多く、組織像としては炎症性が多い.長いポリープ としては外尿道口から脱出ほどのものも報告されている5).治療法としては腎 尿管摘除術 46 例、尿管部分切除 33 例、ポリープ摘除術 27 例、腎摘除術 9 例、 経尿道的切除術 3 例およびその他不明 3 例とされているが、最近は経尿道的治 療の報告が多く見られる4). 文 献 1)大沢哲雄、青島茂雄、武田正雄:尿管ポリープの2例-本邦 121 例の統計 的観察-西日泌尿 41:147-151,1979 2)北村朋之、石原理裕、内田博仁、笠原敏雄、片岡肇一、井上克己、石原八 十士、島田 誠、斉藤豊彦、吉田英機:長大な尿管ポリープの1例。泌尿外. 9:1177-1179、1996 3)押野見和彦、辻井俊彦、南方良仁、實重 学、佐藤裕之、浅沼 宏、宍戸 清一郎:間欠性水腎症を呈した両側多発性尿管ポリープの1例。日泌尿会誌、 99:43-47,2008 4)宮川友明、服部一紀、川添夏衣、小野澤瑞樹、鳥居 徹、赤座英之:Ho-YAG レーザーにて切除し得た尿管ポリープの1例.泌尿外.18:1381-1384、2005 5)竹本雅彦、城嶋和孝、坂野 滋、松山豪泰、内藤克輔:外尿道口から脱出し た長大な尿管ポリープの1例.西日泌尿、59:918-920,1997 Copyright© Noriharu Mikata 2015 All Rights Reserved.
© Copyright 2024 ExpyDoc