973 第 50 回地盤工学研究発表会 (札幌) 2015 年 9 月 E - 07 液状化地盤の粘性係数同定のためのモデル実験と数値解析 液状化 筑波大学 学生会員 ○大竹 啓介 国際会員 松島 亘志 はじめに 液状化地盤の流動による構造物への被害を防止するためには、液状化地盤の力学的特性を妥当に評価した構成モデル が必要である。しかし、液状化地盤は力学的挙動が複雑[1]であり、砂を用いた模擬地盤は土粒子の沈降により液状化状 態を長時間維持することは困難である。そこで本研究では、液状化地盤と同様に粒子と水が高濃度で混ざった懸濁液を、 水とほぼ同じ密度を持つポリスチレンビーズを用いて作成し、その力学的特性を調べ、砂を用いた模擬実験の結果と比 較した。そして SPH 法を用いて実験と同様に流体中で球を動かす数値計算を行い、実験の結果と比較し、考察を行った。 実験概要 実験装置の概要を図 1 に示す。表 1 に示す 2 種類のポリスチレンビーズを用い ての 2 つの試料を作製し、その懸濁液中で球の引き上げ試験と押し下げ試験を行 った。その時に球に働く抗力から、以下の式を用いて粘性係数を求めた。 1 ρ 2 (1) 4 (2) ここで、D:抗力、ρ:密度、V:速度、d:球の直径、CD:抗力係数、μ:粘性 係数 である。また、CD とレイノルズ数 Re の関係は、一様流れ中の球における 関係を用いた。 サイズ 表 1 実験で用いた試料 平均粒径 ビーズ 純水 [mm] [g] [g] 固相率 試料 1 GS-TS 0.4~0.7 4460.9 3134.2 0.581 試料 2 GS-T 0.7~1.1 4178.4 2982.6 0.576 図1 実験装置の寸法 実験結果 実験は引き上げ・押し下げ試験共に 30,50,80,100 [mm/s]の 4 種類の速度で行った。ロードセルで測定した値から、棒 などにかかる浮力の影響を除き、棒の摩擦や底面の影響などを考慮するために、懸濁液を等価粘性流体とした場合の 粘性係数の値を、定常的な流れと考えられる球の移動距離を変えて算出し、以下に示した砂の模型地盤を用いた濱田 らの実験式[2]である(3)式と比較した結果をプロットしたものを図 2 に示す。 0.042・98.1・ 3V . (3) (4) ただし、γ:せん断ひずみ速度 であ り、一様な流れ中における球の表面の せん断ひずみ速度は(4)式で与えられる としている。また、(3)式は図中で黒線 として示した。 (1) 引き上げ試験(試料 1) A model experiment and a numerical analysis for evaluating viscosity of liquefied sand (2) 引き上げ試験(試料 2) Keisuke Otake, University of Tsukuba Takashi Matsushima, University of Tsukuba 1945 実験結果から、球の引き上げ試験で は、どちらの試料においても球の速度 V=30,50mm/s で式(3)の黒線から大きく 異なる値となった。原因として、進行 方向における棒の影響が考えられる。 押し下げ試験では、どちらの試料にお いても概ね式(3)と一致した。しかし、 V=10mm/s では特に試料 2 において値が 異なっていることから、速度によって は粒径の大きさが影響することも考え (3) 押し下げ試験(試料 1) 図2 られる。 (4) 押し下げ試験(試料 2) 球の各速度と粘性係数の関係 SPH 法による数値解析 SPH 法は、連続体を仮想的な粒子の集合と捉え、粒子の運動方程式より連続体の動きを求める解析手法である。利 点として、構成モデルによって固体でも液体でも表現することができ、メッシュレスで大変形も扱えることから、液 状化地盤の流動を表現するのに適している計算手法であると考えられる。 本研究では、Navier-Stokes 方程式に従う非圧縮性 Newton 流体の中で移動する球体にかかる抗力を計算した。設定し た球体の径等は、表 2 に示すように実験と同じ大きさとし、図 3 のような初期配置を持つ粘性係数については、各移動 速度に対応する等価粘性流体の(3)式を用いた値を代入した。 表 2 計算モデルの設定 サイズ 粒子間距離 [mm] 球の直径 [mm] 密度 [kg/m3] W21×W21×H50 時間刻み dt [s] 1.0×10-4 3.80 圧力-密度係数[m/s] 10.0 19 周期境界 x , z 方向 1004 図 4 理論解・実験解との比較 図5 周期境界の検討 図 3 計算モデル(断面図) 結果を比較したものを図 4 に示す。SPH 法による解析結果と、(3)式を用いた等価粘性流体の理論解を比較すると、 全体的な傾向としては似ているが、抗力は理論解よりも常に大きい値となっている。考えられる原因の一つが周期境 界までの幅である。解析では幅 W=21 としたが、速度等の条件を一定とし、幅の粒子数を変えて検討した結果を図 5 に 示すが、幅の粒子数 W=15,21,27[個]と増えるに従って、理論解に近づいていることが分かる。このことから、球の周り に十分な領域を設定すれば影響を小さくすることが出来ると考えられる。また、モデルが球体を再現できているかど うかについても検討する必要がある。実験値との比較においては、数値解析や理論解とも違う傾向を示した引き上げ 試験については、やはり棒の影響を考慮する必要があると考えられる。 まとめ 実験では、ポリスチレンビーズを用いた懸濁液でも、砂を用いた模擬地盤の実験式とほぼ同様の結果が得られた。一 致しなかった引き上げ試験の結果については、数値解析によって進行方向の棒の存在の有無について検討する必要があ る。今後も拘束圧等のより詳細な条件での実験や、それらを再現した数値解析によって、液状化地盤の複雑な挙動を解 明し、それらを表現できる構成モデルの構築を今後の課題とする。 参考文献 [1] 安田進「液状化に伴う地盤の流動と構造物への影響」土と基礎,1999 [2] 濱田政則,若松加寿江「液状化による地盤の水平変位の研究」土木学会論文集,Vol.Ⅲ-43,No.596,1998 1946
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