水車を浮かべて発電する 12 班 1.はじめに 現在アフリカなどの多くの発展途上国ではエネル ギー不足に陥っており, そのせいで多くの人たちが 貧しい生活を余儀なくされている.現代社会におい てエネルギーが必要不可欠なのは言うまでもなく, こうした国々にエネルギーを簡便な方法で供給する ことが求められている.そこで, 発展途上国でも使 えるような身近な自然のエネルギーを利用して発電 できる装置を製作しようと考えた.このため, 自然 のエネルギーの中でも川の流れに着目し,川の流れ を利用して水力発電する装置を製作することを本研 究の目的とする.なお, 途上国での利用を前提に, 製作した装置を専門知識がなくても誰でも気軽に設 置でき,また設置した装置を簡単に取り外して持ち 歩きが出来るよう配慮することとする. 2.装置の製作 2.1 小型の船と水車 製作した装置を図 1 に示す.本装置は主に水車を 浮かべるための小型の船と,川の流れからエネルギ ーを取り出して発電するために発電機を備え付けた 水車からなる.この装置は小型の船を川に浮かべて, 流されないよう紐で岸などに固定して設置する.そ うすると船に備え付けられた水車の下部が川に浸り, 水車が回って発電できる. 図 1 製作した装置の全体像 山本晃弘 2.2 水車と船の形状 水車の形状と各寸法を図 2 と図 3 に示す.この水 車は2枚の円板で8枚の円状の羽根を放射線状に挟 み込むような構造である.また, 船の寸法を図 4 に 示す. 材料には加工しやすいように発泡スチロール を用いた.船の先端を尖らせたのは, 水流の勢いが 船に当たって落ちるのを防ぎ, より水車に勢いのあ る水流を当てるためである.今回は船の片側にしか 水車を設置しなかったが, 出来るなら両側に設置す るのが理想である. 図 2 水車の形状 図 3 水車の各寸法 Cp = 2𝑃 𝜌𝐴𝑉 3 (1) と表すことができる 2).この式をもとに今回の実験 結果からパワー係数 Cp を求めると,表 2 のように なった. 水車において理想的なパワー係数 Cp は 0.9 前後 になる 1)のに対し,今回の実験結果から得られたパ ワー係数は最大でも 1.39×10-5 と,非常に小さく, 発電の効率は極めて低い. 表 2 パワー係数 図 4 船の各寸法 3.実験 3.1 実験方法 製作した装置を川に設置し,稼働させてその時の 電流と電圧の値をマルチメーターを用いて測定した. なお,水車の羽根の幅を 30mm,50mm,70mm と変 えるとともに,流速の違う 3 箇所において測定を行 った.測定を行った場所での流速は浮きを流すこと で流れた距離と流れるのにかかった時間を測定し, 求めた. 3.2 実験結果 実験結果を表 1 に示す.ただし, 空欄のところは水 車が回らなくて発電できなかったことを示している. 表1 発電量(μW) 羽の幅(mm) 流速(m/sec) 30 0.73 50 70 5.65 9.47 1.06 8.3 12.8 15.3 1.28 15.3 24.4 32.8 4.考察 4.1 水車が回らない原因 流速が 0.73m/sec 羽の幅が 3cm のときに水車が 回らなくて発電することが出来なかった.これは, 水車の浮力によるものだと考えられる.今回は発泡 スチロールを用いて水車を製作したため,発泡スチ ロールが水よりも密度が低いために水車に浮力が生 じる.水車の形が完全な円形でなく,浮力が水車に 偏ってかかってしまうため, 水車が回るのを妨げた と考えられる. 4.2 発電効率について 流体が持つエネルギーに対してどれだけのエネル ギーを得られたかは,パワー係数 Cp を用いて表す ことが出来る.この Cp は羽が受ける水流の面積を A(m2),水の密度をρ(kg/m3),流速を V(m/s),発電量を P(W)とすると 5.結論と今後の課題 目的としていた装置を製作し,実際に発電できる ことを確認した.しかし,発電効率は極めて低く, 実用化するのは難しい.発電効率を上げるには, 発 電機の性能を上げることが考えられる.水車を回す ことによって生じる誘導電流を用いて発電している ので,発電機内部のコイルの巻き数に発電効率は大 きく依存する.本研究で用いた発電機は市販されて いた小型のものであるため,コイルの巻き数が少な く発電性能は高くない.効率を最大限に上げるため には装置に合わせてできるだけコイルの巻き数を多 くした発電機を製作するとよいと思われる.この他 にも,船の大きさにも検討が必要である.本研究では 原理確認のため, 船の寸法を深く検討しなかったが, また,実用化する際には単位面積あたりに可能な限 り多くの装置を並べたほうがよい.このため, 船は 可能な限り小型のほうが単位面積当たりの発電効率 が上がるため,取り付ける水車の質量などを考慮し て必要最小限の大きさを決定したほうが良いと思わ れる. 参考文献 1) 加藤政一・中野茂・西江嘉晃・桑江良明,電力 発生工学,数理工学社(2012), 2) 風力発電について http://globalenergy.jp/product/faq/windpower. html (2015/1/13 アクセス)
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