新しい真珠養殖技術実証化事業 新・白色系ピース貝

新しい真珠養殖技術実証化事業
新・白色系ピース貝生産技術開発研究
田中真二・土橋靖史・渥美貴史
目的
沢度を測定した。
経済的価値の高い白色系真珠をつくる貝殻真珠層白色
系アコヤガイの新しい系統(新・白色系ピース貝)の生
結果および考察
産技術を確立する。
1.新・白色系ピース貝系統の保存
方法
各系統につき約 1,000 個体を神前浦漁場で育成中である。
1.新・白色系ピース貝系統の保存
2.新・白色系ピース貝系統を用いた真珠生産試験
生産した種苗はいずれの系統も順調に生育しており,
尾鷲市九鬼と福井県から導入した各天然貝由来の系統
ピース貝右殻の殻体真珠層黄色度の平均値を業者別,
ならびに三重県栽培漁業センター母貝系統について,系
系統別に図 1 に示す。黄色度の平均値は新・白色系ピー
統保存用に同ロット内の無選抜の親貝(雌 23~30 個体,
ス貝が 11.3~25.8(平均 15.9),民間ピース貝が 12.6~
雄 25~30 個体)を用いて交配した。
26.5(平均 19.6)であり,民間ピース貝に白貝を用いた業
2.新・白色系ピース貝系統を用いた真珠生産試験
者アを除き,概ね同等以下であった。
4 名の養殖業者に依頼し,以下のとおり真珠生産試験
生産された真珠の黄色度,巻き,干渉度および光沢度
を行った。ピース貝には,平成 25 年度に種苗生産した
の平均値を業者別,系統別に図 2 に示す。新・白色系ピ
新規ピース貝 4 系統(母貝♀×九鬼♂,母貝♀×福井♂,
ース貝の真珠の黄色度は 61.9~75.9(平均 69.7)であり,
福井♀×母貝♂,九鬼♀×母貝♂)と養殖業者手持ちの
民間ピース貝の真珠(60.4~76.4(平均 68.1))と比べ
ピース貝(民間ピース貝)の 2 年貝の計 5 系統を用いた。
て遜色なかった。巻き,干渉度および光沢度も,新・白
母貝には,三重県栽培漁業センター産母貝(スーパーア
色系ピース貝の真珠は概ね民間貝と同等であった。
コヤ貝)と業者手持ちの民間交雑母貝の 2 系統を用いた。
これらの結果から,新・白色系ピース貝を用いること
すなわち,各業者ともピース貝 5 系統×母貝 2 系統=10
により,民間ピース貝と遜色ない品質の白色系真珠を生
試験区とした。4 月下旬~6 月下旬に,各区とも 100 個
産できることが確認された。
の母貝に 1.9 分の核を 1 個ずつ挿核した。挿核に用いた
ピース貝の殻(1 試験区につき 2~4 個体)を回収し,右
殻の殻体真珠層黄色度(YI 値)を測定した。試験貝を
12 月に浜揚げし,真珠の黄色度,巻き,干渉度および光
A(母貝♀×九鬼♂)
B(母貝♀×福井♂)
C(福井♀×母貝♂)
母貝:スーパーアコヤ貝
黄
色
度
(
Y
I
値
)
30
25
20
15
10
5
0
黄
色
度
(
Y
I
値
)
**
イ
業者
ウ
民間
母貝:民間交雑貝
*
ア
D(九鬼♀×母貝♂)
エ
30
25
20
15
10
5
0
***
ア
イ
業者
ウ
図 1.真珠生産試験に用いたピース貝右殻の殻体真珠層黄色度(*同一業者内で
民間貝との間に有意差あり( p<0.05)
3-13
エ
A(母貝♀×九鬼♂)
B(母貝♀×福井♂)
C(福井♀×母貝♂)
母貝:スーパーアコヤ貝
黄
色
度
(
Y
I
値
)
80
70
60
50
40
30
20
10
0
** *
ア
ウ
黄
色
度
(
Y
I
値
)
エ
1.2
1.0
巻 0.8
き 0.6
m 0.4
m 0.2
0.0
80
70
60
50
40
30
20
10
0
*
ア
イ
ウ
*
エ
*
*
(
(
1.2
1.0
巻 0.8
き 0.6
m 0.4
m 0.2
0.0
)
)
ア
イ
ウ
ア
エ
0.14
0.12
0.10
干
0.08
渉
0.06
度
0.04
0.02
0.00
イ
ウ
0.14
0.12
0.10
干 0.08
渉 0.06
度 0.04
0.02
0.00
ア
0.28
0.24
0.20
光
0.16
沢 0.12
度 0.08
0.04
0.00
民間
母貝:民間交雑貝
*
イ
D(九鬼♀×母貝♂)
イ
ウ
* *
ア
エ
イ
ウ
*
ア
イ
0.28
0.24
0.20
光
0.16
沢
0.12
度
0.08
0.04
0.00
*
ウ
イ
ウ
業者
業者
図 2.新・白色系ピース貝系統を用いて生産された真珠の測定結果(*同一業者内で
民間貝との間に有意差あり( p<0.05)
3-14
エ
**
ア
エ
エ
エ