β単相超弾性材料創製及びそれを用いた次世代IVRデバイスの臨床応用

東北大学病院臨床研究推進センター
Clinical Research, Innovation and Education Center, Tohoku University Hospital
文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム
β単相超弾性材料創製及びそれを用いた
次世代IVRデバイスの臨床応用
プロジェクト責任者:山内清/臨床研究推進センター
研究概要
TiNi形状記憶合金は、良好な形状記憶効果および超弾性を示し、更に医療用途のASTM
規格化に伴い、ガイドワイヤー・ステント等のIVRを中心に超弾性医療機器にワールドワ
イドで使用されている。IVR用途には、生体温度で超弾性を示す形状回復温度(Af)≦37℃
のNi過剰Ti-51at%Ni合金が使用され、Af>37℃の等原子比Ti-50Ni合金は超弾性を得難い
ため、IVRデバイスには不適とされてきた。しかし、独自の知見からTi-50Ni合金において
も、加工集合組織制御により生体温度での超弾性発現を見出した。Ti-50Ni合金の超弾性
は、Ni過剰の析出物がないβ単相のため、高いプラトー応力・低折損性が特徴である。本
プロジェクトでは、デバイス用素子とデバイスでの実証を行い、非臨床POC取得を目指す。
Ti-50Ni合金素子より、ステントの作製に成功
Ti-50Niの高加工性を活用した、転位の高密度化により、
Ti-51Ni同等以上の超弾性を見出した.
Ti-50at%Ni
β単相
Af>37℃
T i -50N合金
転位高密度化素子の
室温での超弾性
転位高密度化
・高いプラトー応力
・析出物フリー
(耐折損性)
レーザ装置
加熱復元
試作ステント
7
6
Ti-51at%Ni
5
β+Ti3Ni4(析出物)
Af≦37℃
4
荷重(N)
超弾性
TiNi
(β相)
50Ni 51Ni
バネ復元
臨床研究推進センター及び体制内で試作を実施
Ti-50Ni近傍組成A
Ti-50Ni近傍組成B
3
Ti-51Niの同サイズ・同デザインの
ステントと比較して高強度化を実現
2
1
0
TiNi+
Ti3Ni4
-1
0
1
2
3
4 5 6 7 8 9 10 11 12
ステント径(mm)
ステントの荷重曲線
*Af:形状回復温度
1
3
2
4
非臨床POCの取得: T-50Ni合金の耐久性データ
チューブ・ワイヤー素子の試作及び評価結果
ステントの引張り伸びの比較
デバイス用各種素子の転位高密度化が可能となった。
伸び率相対値
・ステント用φ2mmのチューブ素子
・カテーテル用φ1mm以下のチューブ素子
・ガイドワイヤー用φ0.5mmのワイヤー素子
drawing
Straightening
塑性加工技術と設備の検討で実現
素子の特性
高特性のステント素子を実現
応力[MPa]
Swaging
高応力プラトー
ワイヤー素子特性比較
Ti-50Ni by Swaging
Ti-51Ni by Swaging
低ヒステリシス
Ti-51Ni
0
1
2
3
4
ひずみ[%]
5
ステント用チューブ素子の
応力-歪み曲線
V曲げ折損試験○
V曲げ折損試験×
6
ワイヤーの応力-歪み曲線
(サイクル試験)
163
100
Ti-50Ni近傍 Ti-50Ni近傍
組成A
組成B
ワイヤー素子のV曲げ折損性
熱処理条件
194
Ti-50Ni
Ti-50Ni近傍の2組成にて
ステントを作製し、特性を評価
Ti-51Ni組成
応力-ひずみ曲線
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
東北大学病院
臨床研究推進センター
山内 清
T-50Ni合金デバイスの試作及び優位性
研究の背景: Ti-50Ni合金とTi-51Ni合金との比較・優位性
形状記憶特性
責任者
お写真
Ti-51Ni
Ti-50Ni Ti-51Ni
伸線後
×
×
300℃
×
×
400℃
○
×
500℃
○
×
更に、ステントにて、
繰り返し収縮拡張試験を行
い、耐久性のデータを取得
予定
耐久性に関して、51Niに対し優位なデータが
得られており、非臨床POC取得のめどがついた
出口戦略と今後の展開
目標:Ti-50Ni超弾性医療デバイスをワールドワイドに普及させる
● Ti-50Ni合金のみで実現可能なデバイスの創製
● 現在、国内の医療機器メーカーと、
例:超弾性と形状記憶の局所併存(下図)
ステント、ガイドワイヤー、カテーテルの
実用化に向けた総括的契約について、
拡張部 :超弾性
適用分野他の協議を行っている。
リンク部:形状記憶
早期に、Ti-50Ni超弾性合金の医療機器
への適用実現を目指す
屈曲対応全リンクステント