2.循環器内科

2.循環器内科
(1)外来(救急外来)
①胸痛患者への対応
1)痛みの性状(部位、強度、持続時間、頻度、誘因)を必ず確認する。
2)心音、呼吸音、頸部・腹部の血管雑音の聴取と四肢動脈の触知を忘れない。
3)心電図や胸部 X-p は以前のものとの比較が診断に大いに役立つ。
4)急性心筋梗塞症の心電図は時々刻々変化するので、診断がつかないときは 30 分後に
再検する。
(hyperacute T は、しばしば見逃されている。)
5)虚血性心疾患が疑われる場合は硝酸薬の効果を試してみる。できれば心エコーを施
行し壁運動の異常や心嚢液の有無を確認しておく。
6)低酸素血症(SpO2 低値)の原因が不明の時は、肺塞栓症を忘れないようにする。
7)大動脈解離の診断には超音波検査(胸骨上窩アプローチも)を利用する。
②急性心筋梗塞症患者、急性心不全患者、急性肺血栓塞栓症患者への対応はそれぞれの
院内マニュアルを参照する。
③ACLS に関しては、ガイドライン 2010 を参照(各自マスターするように)
(2)病棟(CCU)
①急性心筋梗塞症
1)バイタルサインの変化には常に注意し、重症化する前に手を打つ事が大切。
2)漫然と全ての患者に同じリハビリをおこなわないように。梗塞範囲、壁内進展度、
残存病変枝数、心肺機能に応じた個別のメニューがあるはず。
3)リドカイン持続投与時は中毒症状(精神症状)の出現に注意する。
4)心エコー所見、心電図は経時的に変化するので、急性期は毎日確認する。
5)おかしいなと感じたら、躊躇せずに循環器スタッフに報告する。
6)二次予防目的の薬物療法・運動療法・食事療法はいずれも極めて重要である。
②急性心不全
1)初期治療にミオコールスプレーは役に立つ。
(ルート確保前に素早く使える。但しショック状態には当然禁忌)
2)塩酸モルヒネは重要な治療薬である。起座呼吸状態にしばしば著効する。
3)ライントラブルには十分注意を払う事。動脈ラインがはずれれば大出血を招く。
4)侵襲的なモニター類は感染源にならないよう清潔に扱う。
5)呼吸状態が改善しない場合は非侵襲的人工呼吸法(NPPV)を積極的に使用する。
③不整脈
1)心電図モニターは有力な診断ツールであるが、見ていないと意味がない。
前日の波形を毎朝振り返ってチェックする事。
2)wide QRS tachycardia は心室頻拍として扱う。状態が悪く不安定と判断したならば、
ためらわずにカルジオバージョン(同期下の電気ショック)
。
バイタルが安定していれば慌てないで 12 誘導心電図をとる。普段の心電図やカルテ
の履歴も参考とし鑑別診断を試みる。
3)どんなモニター波形であろうと、意識がなく脈拍を触知しなければ PEA である。
救急システムを発動するとともに直ちに胸骨圧迫を開始すること。
④スワンガンツカテーテル
1)圧波形が正しく肺動脈波形を示しているかをチェックする。奥に入りすぎたり、
バルーンを膨らませたままだと PCWP 波形を示す。(肺塞栓症を合併する)
2)ゼロ点が心房の高さになっているかをチェックする。
3)カテが右室壁に触れ VPC が頻発する事がある。レントゲンで位置を確認する。
⑤IABP
1)下肢の虚血に注意:脈拍(ドップラー血流計)、皮膚色(温度)
2)回路の屈曲、チューブ内の血液混入がないかを診察毎にチェックする。
3)バルーン収縮のタイミングを拡張期に合わす。QRS 波形が不安定で同期がうまくい
かないときは誘導を変えたりモニターの貼付位置を変えたりしてみる。
4)腎臓や腹部臓器への血流が阻害される場合がある。(腎梗塞、腸管壊死)
5)抗凝固療法を忘れない。(ACT は 150~200 秒)
6)疼痛に対する配慮:体位変換は可能でありチューブに注意すれば下肢の屈曲も可能。
⑥PCPS
1)下肢虚血、抗凝固療法に注意を払う
2)接続が外れていないか、流れはスムーズか、チューブ内血液の色調に変化はないか。
3)空気塞栓、血栓塞栓症が最も重篤な合併症である。
4)脱血チューブが血管壁に当たり脱血が不十分な時は、いったん回転数を 500 以下に
下げ再び戻すと脱血がスムーズになる事がある。
5)空気混入などの緊急時には回転を止め、鉗子で送脱血管をクランプする。
⑦一時ペーシング
1)作動不全の有無をモニターでチェックする。
2)閾値は変動するので毎日チェックする。
3)ペースメーカー本体との接続が外れないようにしっかりと接続する。
(3)検査
①運動負荷
1)心筋虚血を誘発する検査であり当然危険を伴うので必ずスタッフと一緒に行う。
2)不安定狭心症、重症の大動脈弁狭窄症には禁忌。
②心臓カテーテル検査
1) 侵襲的検査である事を十分自覚して検査にのぞむ事。四肢の血管触知、腎機能、ヨ
ードアレルギーの有無は事前に必ず確認しておく。
2)上肢からのアプローチの際はアレンテストと頸動脈エコーをしておく。
3)PCI では抗血小板薬の服薬は必須である。
4)カテ中に使用する麻酔薬等のシリンジは生食用とは別の種類を使う。
何が入っているか不明な注射器は躊躇せずに捨てる。(危険)
5)フラッシュ用の生食ピッチャーには決してガーゼなどを浸けない事。
異物を冠動脈内に注入してしまう事になる。
6)ガイドワイヤー、カテーテルの操作は透視で確認しながら慎重に行う。
7)第一術者は患者の状態、心電図モニター、圧波形に常に注意を払う。異常を察知し
たらすぐに全メンバーに知らせる。
(ST 変化や圧の wedge 波形には特に注意)
8)造影剤の注入は最初ゆっくり徐々に押し込みながら十分に造影される量を入れる。
円錐枝に強く注入してしまうと心室細動が誘発されてしまうので特に注意。
9)局所麻酔は十分に行う。血管穿刺時の疼痛は思いの外強い。病棟でシースを抜去す
る際にも局麻を忘れないように(primary shock を起こす人もいる)
。
10)大腿動脈アプローチでは止血後の圧迫の際、静脈を圧迫しないように注意する。
カテ後の最も避けなければならない重大な合併症は肺血栓塞栓症である。