鉛直擁壁に働く乾燥砂地盤の主働土圧 地盤工学研究室 北村卓治 1.本研究の目的 過去の 二次元土 圧に関す る実験的 研究では 、壁面に 作用する 全土圧の 計測は行 われてき たが、深 度方向 に対する土圧分布を要因をいろいろと変化させて測定した例はほとんどない。そこで、本研究室では深さ毎 に土圧を測定できる剛な壁面を持ち、上下端を任意に水平方向に動かすことのできる模型擁壁を開発した。 本実験は、砂地盤に設けた模型擁壁を下端をヒンジとして主働方向に回転させ、静止土圧から始まり主働土 圧に至るまで、模型擁壁に働く土圧の深度分布を測定する。この結果から、土圧の深度分布の実態、全土圧 と相対密度との関係を明らかにし、さらにヤーキーの静止土圧式、ランキンの主働土圧式から得られる深度 分布と比較する。また、遠心場における力学実験の相似則を modeling of models の方法で検証する。 リード線接続箱 モーター制御装置 モーター 回転式変位計 2.実験方法 図-1 に 可動型の 模型用壁 とその変 位装 単位(mm) 置、模型地盤の構成を示す。本実験では、 擁壁はスクリュージャッキで引くことによ って、底面に設置されたリン青銅板をヒン 擁壁 スクリュージャッキ 135 310 ジとして主働側に回転させる。擁壁の変位 地盤 213 は、擁壁上端に取り付けた糸を介して回転 変 位計 で測 定 する 。擁 壁は 深 さ方 向に 10 分割されており、各々が土圧計として、垂 直、せん断土圧を電気的に測定する。(図 66 -2 参照) 図-1 模型容器 模型地盤は、空気乾燥状態の豊浦砂 ( D max =0.425mm 、 ρ dmax =1.65g/cm 3 、 ρ dmin =1.35g/cm 3 ) を 用 い 、 空 中 落 下 a 法で相対密度 Dr=25%、50%、75%で作成する。地盤変形はガラス観測 a 面に貼り付けた、油に浸した素麺で観察する。遠心加速度は 25G、50G、 a a-a断面 75G を選び、所定の遠心場に模型擁壁を置いた後、擁壁を傾ける。擁壁 の回転速度は 1°当たり 11.2 分で、回転角 0.1°毎に各土圧計からの出 力を測定し、回転角 0.75°毎に写真撮影を行う。回転角 5°付近で回転 a-b断面 を止め、実験を終える。 3. 土圧分布、全土圧−回転角関係、深度分布 これから述べる図-3∼図-5 は代表例として、遠心加速度 25G(実地 盤換算高さ 3.35m)のものを掲載し、各々の図において相対密度 D r を 25%、 50%、75%と変えたデータを並べた。図-3 土圧分布は深度別の土圧と b 図-2 模型擁壁と土圧計 回転角の関係を表す。土圧分布より、以下の考察を得た。①深度の深い 位置の土圧に揺れが見られている。これは地盤の破壊が様々な深度で部分的に生じている結果であると思わ れる。図-4 全土圧−回転角関係は深度別の土圧を足し合わせた合力と回転角の関係を表す。全土圧−回転 角関係より、以下の考察を得た②全土圧にあまり揺れは見られない。これより前述の土圧の揺れは土圧の実 態を表していることが分かる。③全土圧は相対密度が高くなるにつれて小さくなる。図-5 深度分布は擁壁 回転角毎(90°、90.1°、92°、93°)の実地盤換算深さ−土圧関係を表す。深度分布より、以下の考察を 得た。④静止土圧からわずかな回転角で主働土圧に至り、変位が増してもさほど変わらず収束する。⑤実験 値と計算値(ランキン、ヤーキーの土圧式から得られた深度分布)について比較すると、主働土圧に関して は擁壁下部を除いてほぼ一致している。静止土圧に関してはあまり一致していない。 Key Words:遠心模型実験、主働土圧、静止土圧、擁壁、砂地盤 4. modeling of models の検証 modeling of models の検証は、相似則および実験の再現性を検証す ○Dr=25% 3 □Dr=50% く設定した 3 つの case(遠心加速度 25G×模型地盤高さ 12cm、遠心 ◇Dr=75% 土圧(tf/m) るために行う。図-6 に相対密度 Dr=75%、実地盤換算高さ 3m に等し 加速度 50G×模型地盤高さ 6cm、遠心加速度 75G×模型地盤高さ 4cm) の深度分布を掲載する。これらを比較した結果、一部を除いてほぼ再 2 現性を得ている。 1 0 90 91 92 93 擁壁回転角(°) 94 図-4 全土圧−回転角関係 1.2 2 2 1.5 土圧(tf/m2 ) 土圧(tf/m2 ) 3 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1 0.8 土圧(tf/m2 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0.6 0.4 1 0.5 D r=25% 0 90 91 92 93 擁壁回転角(°) 0.2 D =50% 0 90 94 91 92 93 94 擁壁回転角(°) D =75% 0 90 95 91 92 93 94 擁壁回転角(°) 95 図-3 土圧分布(グラフ右隅に相対密度 D を示す。) 0 90° 90.1° 91° 92° 93° ランキン ヤーキー 0.5 実地盤深さ(m) 実地盤深さ(m) 1 0 90° 90° 90.1° 91° 92° 93° ランキン ヤーキー 1 90.1° 0.5 実地盤深さ(m) 0 1.5 2 0 0.5 2 2.5 3 ランキン ヤーキー 2 2.5 1 1.5 2 土圧(tf/m ) 93° 1 1.5 2 3 D =25% 91° 92° 2.5 D =50% 0 0.5 1 2 土圧(tf/m ) 1.5 3 D =75% 0 0.5 1 2 土圧(tf/m ) 1.5 2 図-5 深度分布(グラフ左隅に相対密度 D を示す。) 0 0 0 90° 90° 90.1° 91° 実地盤深さ(m) 実地盤深さ(m) ヤーキー 2 × ヤーキー 1.5 × 2.5 0 0.5 ランキン 1 ヤーキー 1.5 2 50G 12cm 3 92° ランキン 1 2 25G 2.5 91° 92° ランキン 1.5 90.1° 0.5 91° 92° 1 90° 90.1° 0.5 実地盤深さ(m) 0.5 75G × 2.5 6cm 1 1.5 2 土圧(tf/m ) 2 2.5 3 0 0.5 4cm 1 1.5 2 土圧(tf/m ) 2 2.5 3 0 0.5 1 1.5 2 土圧(tf/m ) 図-6modeling of models の検証(グラフ左隅に遠心加速度×模型地盤高さを示す) 2 2.5
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