腹膜炎による敗血症性ショック患者に対する polymixinB血液浄化(PMX

第5回 Journal club 2015/8/22
腹膜炎による敗血症性ショック患者に対する
polymixinB血液浄化(PMX-DHP)の早期使用
GICU 鈴木 悠太 鈴木 武志
敗血症性ショック
感染によるSIRS→敗血症
敗血症に伴うショック→敗血症性ショック
死亡率 30-40%
代表例 下部消化管穿孔
敗血症性ショックにおける
エンドトキシン
エンドトキシン→グラム陰性桿菌の細胞壁の一部
PMX-DHP
グラム陰性菌が疑われるSIRSの診断を満たす敗
血症性ショック症例に有効性が示された治療法
エンドトキシン中和作用があるpolymixin Bを固定
した繊維を充填したカラムに患者血液を体外循環
させてエンドトキシンを除去する
1994年に保険適応となった日本発の治療法
これまでの報告①
重症敗血症に対しPMXを施行
→血中エンドトキシン濃度↓、収縮期血圧↑
(小玉正智 日外会誌 1995; 96: 277-285)
腹腔内感染症が原因の重症敗血症にPMXを施行
→エンドトキシン濃度、死亡率は改善せず
(Vincent JL et al. Shock 2005; 23: 400-405)
これまでの報告②
2004/12-2007/12の期間で
イタリアのICUで10施設で行われた大規模RCT
腹腔内感染による敗血症性ショック患者を
緊急手術後にランダム化し割り付け
死亡率の比較
PMX群34人 標準治療群30人を比較
p=0.01
死亡率
32%
54%
PMXは有意に死亡率を改善させる
大規模臨床研究における
PMXの効果の検証
この研究の問題点
死亡率が有意に差があると判断され早期に終了
対照群の死亡率が高すぎる
死亡率は二次評価項目でしかない
→さらなる臨床研究による効果の検討
その後に始まった研究
・イタリアでの観察研究
・アメリカでの大規模RCT
・フランスでの大規模RCT
本論文の概要
腹腔感染由来の腹膜炎による敗血症性ショックに
PMXを導入すると
標準治療と比較し
28日死亡率、臓器不全を減少させるか
研究
2010/10-2013/3のフランスの18施設のICU
前向き多施設共同無作為化比較試験
対象
消化管穿孔による腹膜炎に対し緊急手術を施行し、
術後12時間以内に、敗血症性ショックを来した患者
除外基準
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18歳以下
妊婦
瀕死の患者
化学療法、悪性腫瘍による血球減少
保存的治療の患者
術中所見で穿孔なし
腸間虚血による穿孔
外傷性穿孔
虫垂炎の穿孔
肝硬変ChildC
術前の心肺停止
ヘパリン禁忌
進行癌が発見された患者
研究参加拒否
研究プロトコール
1回目
2回目
アウトカム
• Primary outcome
28日死亡率
• Secondary outcome
3、7、14、90日死亡率
SOFAスコアに基づいた臓器障害の重症度の低下
• Post hoc analysis
SOFAの7日目における変動
RRTの率
合併症の有無、手術の質による死亡率の違い
結果
患者割り付け
結果
各群の特徴
差なし
結果
腹膜炎・細菌について
結果
primary outcome
28日
33(27.7%)
22(19.5%)
p=0.14
結果
secondary outcome
PMX-HP group
Control group
N=119
N=113
Day 3, n (%, 95% CI)
13 (10.9, 6.5-18.1)
11 (9.7, 5.5-16.9)
Day 7, n (%, 95% CI)
19 (16.0, 10.5-23.9) 14 (12.4, 7.5-20.0)
P
0.7661
0.4356
Day 14, n (%, 95% CI) 25 (21.0, 14.7-29.5) 18 (15.9, 10.4-24.1)
0.3197
Day 90, n (%, 95% CI) 40 (33.6, 25.9-42.9) 27 (24.0, 17.1-32.9)
0.1025
結果
secondary outcome
血小板数に差があり
結果
Post hoc
SOFAの7日目における変動
RRTの率
合併症の有無、手術の質による死亡率の違い
→有意差なし
PMXの施行について
2回のPMXをすべて施行できたのは81例(69.8%)
25例が回路詰まりで中断している
結 論
腹膜炎による敗血症性ショックに対するPMXは、
臓器障害を軽減することなく、有意ではないものの、
死亡率を増加させる傾向にあった。
limitation
• PMXを中断した症例が多い
→PMX群として成り立っていなかったのでは?
• 標準治療群の死亡率低い
→軽症例を対象にしていたため差が出なかったのでは?
• 抗凝固薬としてヘパリンを使用
→フサンの使用なら中断例が減ったのでは?
• PMXを施行する時間が2時間
→長時間の施行で結果が変わったのでは?
• エンドトキシン値を測定していない
→エンドトキシン高値の群ならば結果は変わったのでは?
• フランスでの研究
→日本人なら結果は違うのでは?
今後の展望
アメリカでの大規模RCTの結果がどうなるか?
同様の結果であれば、
今後のPMXの位置づけが大きく変わることになる