第6回 林/小杉 A Randomized Trial of Epidural Glucocorticoid

第6回土曜Journal Club
A Randomized Trial of Epidural
Glucocorticoid Injections for Spinal
Stenosis
N Engl J Med 2014; 371:11-21
専修医 林 浩正
指導 小杉 志都子
Background
腰部脊柱管狭窄症(LCS)の治療における硬膜外への
ステロイド投与併用は有用か?
神経根炎症と虚血の軽減によって疼痛緩和をもたらす
Curr Rev Musculoskel Med 2008;1:32-38
身体機能や歩行の改善に有効な治療である
Am J Phys Med Rehabil 2011;90:1050-1055
高齢者のLCSによる腰痛が有意に軽減される可能性がある
Pain Physician 2011;14:217.
目的
腰部脊柱管狭窄症の腰下肢痛に対する硬膜外ブロック
について、局所麻酔薬+ステロイド剤混合群と局所麻酔
薬単独群を比較する
方法
Multicenter, Double-blind, randomized, controlled trial
対象:腰部脊柱管狭窄症の患者400人
硬膜外ブロック施行
3週目、6週目の患者の評価を比較
対象者は硬膜外ステロイド注射に来た2224人
除外基準
・中心管の狭窄
・手術適応のすべり症
・腰椎手術歴がある
・過去6ヶ月以内の
硬膜外ステロイド注射
適合基準
・年齢≧50歳
・CT or MRIでLCS
・NRS≧4の疼痛
・MRDQスコア≧7
400人が参加
Lidcaine alone(L)群
139 interlaminar
61 transforaminal
Glucocorticoid(G)群
143 interlaminar
57 transforaminal
Figure1. Enrollment, Randomization, and Follow up
ブロックの内容
硬膜外注射(interlaminar approach) 透視下
:最も強い狭窄部位から1椎間下のレベル
経椎間孔的硬膜外注射(Transforaminal epidural block)
:症状が最も強いレベル
薬剤:0.25~1%リドカイン1~3mlに加え、
トリアムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン
患者は希望すれば3週間後に同様の治療を受けられる
注入までの流れ
薬剤は事前にL群、G群の2種類シリンジを用意し、それぞれ
“注入”もしくは“破棄”のラベルが貼付され、注入シリンジのみ
使用された
注入
破棄
評価項目
Primary outcome
6週間後のRMDQスコアの変化、NRSの変化
Secondary outcome
RMDQとNRSが30%改善した患者の割合
RMDQとNRSが50%改善した患者の割合
Other secondary outcome
3週目、6週目における以下の点数
平均NRS
BPI(簡便痛みの質問票)スコア
PHQ-8(うつ病性障害モジュール)スコア
GAD-7(不安評価)スケール
EQ-5D(健康関連QOL)アンケート
SSSQ(満足度など)
Table1
Baseline Characteristics of the Study Participants.
結果
Primary outcome
6週目のRMDQスコア 有意差なし(P=0.07)
NRSスコア
有意差なし(P=0.48)
Secondary outcome
6週目のRMDQスコア、NRSスコアの改善(30%、50%)
に有意差なし
Other secondary outcome
6週目のPHQ-8スコア
有意差あり(P=0.007)
SSSQスコア(患者満足度)有意差あり(P=0.01)
3週目のRMDQスコア 有意差あり(P<0.001)
NRSスコア 有意差あり(P=0.02)
有害事象
有害事象の発生率ではステロイド群の方が多かった(P=0.02)
Interlaminar approachのうちステロイドを併用した方が有害事象
が多かった(P=0.02)
具体的には発熱、感染、頭痛、めまいなどの頻度が多かった
血清コルチゾル濃度
ステロイド群の方が朝の血清コルチゾルが低下した人
が多かった
Table2. Primary Outcomes According to Treatment Group and Injection Approach.
Figure2. Secondary Outcomes.
Table 3. Adverse Events and Cortisol Suppression at 6 Weeks.
考察
・L群・G群共に治療前より、痛み・機能に有意な改善が見られた
・3週目にG群ではL群に比べ大きな改善があったが、臨床的
に軽微な差だった
・6週目のG群の抑うつ度および満足度の改善はステロイドの
作用(疲労回復効果など)や、 3週目の疼痛改善が影響した
可能性がある
・血清コルチゾル低下はG群に多く、骨塩量減少や視床下部
下垂体抑制などステロイド長期投与によって全身影響の
可能性があるので注意が必要である
limitation
Blind
・患者と研究員の接触でblindが保たれていたか?
・患者が領収書の記載で確認する可能性
Bias
・プラセボ効果、選択した薬剤の種類による差は?
・適切な位置に薬剤が投与されていたか?
・もともと高齢者のLCSの病態は改善しにくい
・3週間目に改善した人は、2回目のブロックを受けない
人もいる→6週後の評価に影響する可能性がある?
結語
LCSの腰下肢痛に対する硬膜外ブロックは有効であるが、
ステロイド併用有無では効果に違いがない