応用線形代数 演習問題解答例 2008 山田 直記 計算間違いやミスプリントがあるはずです。注意して利用して下さい。 1 数ベクトル空間 Rn Rn の基本的な性質 1.1 問題 1.1 加法 (1): x1 y1 x 1 + y1 y1 + x1 y1 x1 .. .. .. .. .. .. . + . = = = . + . . . xn yn xn + yn yn + xn yn xn 加法 (2):省略。加法 (3) と (4) は本文にあり。 スカラー倍 (1): x1 1 x1 x1 .. .. .. 1 . = . = . xn 1 xn xn スカラー倍 (2): 省略。 スカラー倍 (3) x1 y1 x1 + y1 a(x1 + y1 ) . . .. .. a .. + .. = a = . . xn yn xn + yn a(xn + yn ) ax1 ay1 x1 y1 .. .. .. .. = . + . = a . + a . axn ayn xn yn スカラー倍 (4):省略。 問題 1.2 (1) n が (1) の性質ををみたすとすると 0 = 0 + n = n である。 1 (2) x ∈ Rn に対し x0 , x00 が (2) の性質をみたすとすると x0 = x0 + 0 = x0 + x + x00 = 0 + x00 = x00 である。 1.2 Rn の標準的な内積 問題 1.3 (1) (x, x) = x21 + · · · + x2n = 0 である。(x, x) = 0 となること は x21 + · · · + x2n = 0 と同値だから x1 = · · · = xn = 0 で、x = 0 と同値 である。 P P (2) (x, y) = ni=1 xi yi = ni=1 yi xi = (y, x) である。 (3)(i) (xi + x0i )yi = xi yi + x0i yi による。(ii) (cxi )yi = c(xi yi ) より明 らか。 問題 1.4 x = 0 の場合は A = 0 となり、2 次方程式にならない。このと きは両辺が 0 になるので、結論は正しい。等号が成立するのは、x, y が B 1 次従属のときである。実際、2 次方程式が重解 t0 = − をもつので、 A (t0 x + y, t0 x + y) = At20 + 2Bt0 + C = 0 より tx + y = 0 でなければな らない。 問題 1.5 (1) kxk = 0 ⇔ (x, x) = 0 ⇔ x = 0, (2) kcxk2 = c2 kxk2 , (3) kx + yk2 = kxk2 + 2(x, y) + kyk2 5 kxk2 + 2kxkkyk + kyk2 = (kxk + kyk)2 . (cx, y) c(x, y) 問題 1.6 (1) ∠(cx, y) = arccos = arccos = ∠(x, y), kcxkkyk ckxkkyk µ ¶ (x, y) (2) ∠(cx, y) = arccos − = π − ∠(x, y) すなわち、補角に kxkkyk なる。 2 ベクトル空間と線形写像 2.1 ベクトル空間 2.2 部分ベクトル空間 問題 2.1 (1) x ∈ W とすると −x ∈ W なので x + (−x) = 0 ∈ W で ある。 (2) ki ui (i = 1, . . . , n) である。 k1 u1 + k2 u2 ∈ W なので k1 u1 + k2 u2 + k3 u3 = (k1 u1 + k2 u2 ) + k3 u3 ∈ W である。これを順次繰り返せばよい(数学的帰納法)。 2 問題 2.2 例 2.3 より原点を含む平面は部分空間である。原点を含まなけ れば問題 2.1 (1) より部分空間ではない。原点を通る直線は、定ベクトル a ∈ R3 を用いて L = {ta | t ∈ R} と表せるので ta + sa = (t + s)a, k(ta) = (kt)a より部分空間である。原 点を通らない直線は、上と同じ理由により部分空間ではない。 2.3 基底と次元 問題 2.3 u, v ∈ hu1 , . . . , ur i とする。 u = k1 u1 + · · · + kr ur , v = `1 u1 + · · · + `r ur と表せる。 u + v = (k1 + `1 )u1 + · · · + (kr + `r )ur ∈ hu1 , . . . , ur i αu = (αk1 )u1 + · · · + (αkr )ur ∈ hu1 , . . . , ur i である。 問題 2.4 {e1 , . . . , en } は一次独立である。また、任意の x = (x1 , . . . , xn ) ∈ Rn は x = x1 e1 + · · · + xn en と表されるから Rn = he1 , . . . , en i である。 2.4 線形写像 問題 2.5 (1) f (ku + mv) = f (ku) + f (mv) = kf (u) + mf (v) であ る。逆を示す。 m = 0 とすれば f (ku) = kf (u), k = m = 1 とすれば f (u + v) = f (u) + f (v) である。 (2) f (ku) + mv) = ku + mv = kf (u) + mf (v) . 問題 2.6 f (u + v) = A(u + v) = Au + Av = f (u) + f (v), f (ku) = A(ku) = kAu = kf (u). à ! à ! à ! 0 0 1 問題 2.7 0 = ∈ W で f (0) = である。 u = ∈W で 0 0 −1 à ! à ! −1 −1 であるか である。 ku ∈ W でもあり f (ku) = k f (u) = −1 −1 ら、 f (W ) は原点を通る直線 x − y = 0 である。 問題 2.8 (i) u, v ∈ ker(f ) とする。 f (u + v) = f (u) + f (v) = 0, f (ku) = kf (u) = 0 より u + v ∈ ker(f ), ku ∈ ker(f ) となるので ker(f ) は V の部分空間である。 3 (ii) w1 , w2 ∈ f (V ) とする。 w1 = f (u1 ), w2 = f (u2 ) (u1 , u2 ∈ V ) と表される。 w1 + w2 = f (u1 + u2 ) と表されるので w1 + w2 ∈ f (V ), kw1 = f (kw1 ) なので kw1 ∈ f (V ) である。従って f (V ) は W の部分 空間である。 2.5 線形写像と行列 問題 2.9 v = p1 v 1 + · · · + pn v n と表される。 f (v) = p1 f (v 1 ) + · · · + pn f (v n ) = p1 (a11 w1 + · · · + am1 wm ) + p2 (a12 w1 + · · · + am2 wm ) .. . + pn (a1n w1 + · · · + amn wm ) = (a11 p1 + a12 p2 + · · · + a1n pn )w1 + (a21 p1 + a22 p2 + · · · + a2n pn )w2 .. . + (an1 p1 + an2 p2 + · · · + amn pn )wm すなわち f (v) ∈ W を f (v) = q1 w1 + · · · + qm wm と表すとき、係数に ついて q1 p1 .. .. . = A . qm pm 0 0 . . .. .. である。特に、 v i = 1 (i, wj = 1 (j ととれば . . . . . . 0 0 p1 .. . = p1 v 1 + · · · + pn v n , q1 .. . = q1 w1 + · · · + qm wm pn qm なので f (v) = Av 4 が成り立つ。 問題 2.10 à ! à ! à ! à ! x1 x2 x1 + x2 2(x1 + x2 ) + 3(y1 + y2 ) + ) = f( )= f( y1 y2 y1 + y2 5(x1 + x2 ) − (y1 + y2 ) à ! ! à ! ! à à x2 x1 2x2 + 3y2 2x1 + 3y1 ) ) + f( = f( + = y2 y1 5x2 − y2 5x1 − y1 à ! x f (k ) の計算は省略する。 V , W の基底を標準基底にとると x à ! à !à ! x 2 3 x f( )= y 5 −1 y なので à ! 2 3 A= 5 −1 である。 問題 2.11 V , W の基底を標準基底にとると x x+z 1 0 1 x f (y ) = y − z = 0 1 −1 y z 2x + 3y + z 2 3 1 z なので 1 0 1 A = 0 1 −1 2 3 1 である。線形写像であることの計算は省略する。 問題 2.12 標準基底で考えると a b A = p q r s である。線形写像であることの計算は省略する。 à ! a p r 問題 2.13 で表される線形写像が一つの例である。 b q s 5 2.6 別の基底との関係 2.7 線形写像の和と合成 問題 2.14 本文で計算しているように (f + g)(v i ) = (a1i + b1i )wi + · · · + (ami + bmi )wm であるから、f + g に対応する行列は (aij + bij ) である。 行列の計算から A + B = (aij ) + (bij ) = (aij + bij ) であるから、f + g に対応する行列は A + B である。 問題 2.15 (kf )(v i ) = kf (v i ) = ka1i w1 + · · · + kami wm であるから kf に対応する行列は kA である。 問題 2.16 次のように確かめられる。 (g ◦ f )(ku) = g(f (ku)) = g(kf (u)) = kg(f (u)) = k(g ◦ f )(u) (g ◦ f )(u + v) = g(f (u + v)) = g(f (u) + f (v)) = g(f (u)) + g(f (v)) = (g ◦ f )(u) + (g ◦ f )(v) 3 3.1 応用例など 微分方程式 問題 3.1 ϕ(t) = 2e2t − 3e−t . 問題 3.2 ϕ(t) = e2t + et . 問題 3.3 ϕ(t) = (1 − 2t)e2t . 問題 3.4 ϕ1 (t) = cos t, ϕ2 (t) = sin t ととることができ ϕ(t) = cos t + 2 sin t である。 à ! à ! à ! u1 1/u1 1 問題 3.5 に対する逆ベクトルは , 零ベクトルは で u2 1/u2 1 ある。計算規則をみたすことは省略する。 問題 3.6 (−1)x はスカラー倍、−x はベクトル x の逆ベクトルである。 これらは一致する。 à ! à ! à ! à ! à ! 2 1 2 1 u1 = log u1 + log u2 と表されるから , 問題 3.7 u2 1 2 1 2 は V を生成している。また、 à ! à ! à ! 2 1 1 c1 + c2 = 1 2 1 6 à ! à ! 2 1 すなわち 2c1 = 1, 2c2 = 1 とすると c1 = c2 = 0 であるから , 1 2 は一次独立である。故にこの二つのベクトルは V の基底になっている。 3.2 次元定理 問題 3.8 f : V → V が一対一とする。0 6= v ∈ ker(f ) とすると f (v) = f (0) = 0 となり一対一であることに反するから ker(f ) = {0} である。 dim{0} = 0 なので dim f (V ) = n となる。 f (V ) は n 次元ベクトル空間 の n 次元部分空間になるので一致しなければならない。すなわち f は上 への写像である。 逆に f が上への写像とすると dim f (V ) = dim V = n となり dim ker(f ) = 0 でなければならない。故に ker(f ) = {0} となり f は一対一である。 問題 3.9 fW : W → V を fW (w) = f (w) (w ∈ W ) とする。fW が線形 写像であることは明らかである。次元定理より dim fW (W ) = dim W − dim ker(fW ) で ker(fW ) = ker(f ) ∩ W であるから、結論が成り立つ。 問題 3.10 (i) と (ii) が同値であること。A = (a1 , . . . , an ) と列ベクトル で表すと rank A = n であることは {a1 , . . . , an } が一次独立であること になり、 |A| = det(a1 , . . . , an ) 6= 0 と同値である。 (iii) と (iv) が同値であることは問題 3.8 で示されている。 (i) または (ii) と (iii) または (iv) が同値であること。 f が一対一であ るとすると上への写像でもある。次元定理から ker(f ) = {0} であり、こ れは連立一次方程式 Ax = 0 の解が 0 に限ることを表すので |A| 6= 0 で ある。逆も同じである。 3.3 行列の指数関数 7 4 アフィン写像 問題 4.1 (1) y1 b1 a11 a12 à ! x1 + b2 = y2 a21 a22 x2 y3 b3 a31 a32 と表して、条件を代入すると連立 1 次方程式が得られる。これを解けば よい。 0 −4 à ! 2 x1 ϕ = −2 4 + 1 √ x2 3 2 1 (2) à a11 a12 a13 a21 a22 a23 ! à ! à ! x1 b1 y1 = x2 + b2 y2 x3 と表して、条件を代入すると連立 1 次方程式が得られる。これを解けば よい。 à !à ! à ! 12 4 − 11 x 10 − 1 5 5 5 ψ= + 33 6 64 − x2 −22 5 5 5 問題 4.2 (1) ψ ◦ ϕ = ψ(Ax + b) = B(Ax + b) + c = BAx + Bb + c, (2) ϕ−1 (y) = A−1 y − A−1 b. 問題 4.3 (1) (x0 , x) = α と表された直線が y = Ax + b と写ったと すると、(t (A−1 )x0 , Ax + b) = (x0 , A−1 (Ax + b)) = (x0 , x + A−1 b) = α + (x0 , A−1 b) より、(y 0 , y) = β をみたすので、直線上にある。(2) 平面 は (x0 , x) = α と表されるので (1) の証明がそのまま適用できる (数学の 一般性!)。直線は平面と平面の共通部分だから、ϕ(A ∩ B) ⊂ ϕ(A) ∩ ϕ(B) により像も直線になる。 問題 4.4 y = x + b とすると x = y − b = τ−b (y) である。 1 1 1 問題 4.5 y = λx+b とすると x = (y −b) となり、 ϕ−1 (x) = x− b λ λ λ なので相似変換である。 問題 4.6 kϕ(x) − ϕ(y)k = kλ(x − y)k = λkx − yk である。すなわち kϕ(x) − ϕ(y)k は倍率を表している。幾何学的には、もとの線分と写さ kx − yk れた線分の長さの比である。 問題 4.7 変換は à ! 3 ϕ(x) = 2x + 2 8 à ! −3 と表されるので、倍率は 2、相似の中心は である。 −2 問題 4.8 ϕ(ϕ(x)) = ϕ(−x + b) − (−x + b) + b = x であることによる。 ¡ ¢ 問題 4.9 ϕ(x) = −x + 2 ab となる。三角形は各自描いてみよ。 問題 4.10 (1) x1 軸対称に写す。(2) x1 軸方向に 2 倍し、x2 軸方向には − 12 倍する。さらに、x1 軸対称に写す。(3) x1 軸方向はそのまま、x2 軸 ¡¢ ¡¢ ¡¢ を直線 y = 12 x に写す。 e1 = 10 , e2 = 01 とするとそれぞれ f 1 = 10 , ¡¢ ¡ ¢ f 2 = 21 に写るので、 xx12 は x1 f 1 + x2 f 2 に写る。 問題 4.11 (1) kψ ◦ϕ(x))−ψ ◦ϕ(y)k = kϕ(x)−ϕ(y)k = kx−yk による。 (2) ϕ(x1 ) = y 1 , ϕ(x2 ) = y 2 とすると ky 1 − y 2 k = kϕ(x1 ) − ϕ(x2 )k = kx1 − x2 k である。この関係式は、ky 1 − y 2 k = kϕ−1 (y 1 ) − ϕ−1 (y 2 )k = kx1 − x2 k でもある。 5 R2 の合同変換 問題 問題 問題 問題 問題 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 6 R2 のアフィン変換 ¡ ¢ ρθ ◦ ρ−θ = 10 01 を確かめればよい。 ¡¢ p = 11 , θ = π2 ととると ϕ(x) = τp ◦ ρθ ◦ τ−p (x) である。 各自本文に即して確かめよ。 各自講義を振り返って確かめよ。 ¡¢ ¡¢ (1) p = 31 , θ = arccos 13 (2) p = 00 , θ = arccos(− 79 ) ¡¢ 問題 6.1 固有値は 1 重複度は 2 で、固有ベクトルは a 10 (a 6= 0) で ある。 問題 6.2 (1) (0, 0), (1, 0), (2, 1) を結ぶ三角形である。(2) (0, 0), (−1, 0), (0, 2) を結ぶ三角形である。 7 定理 6.1 の証明 問題 7.1 次の問題の解を参考にせよ。 問題 7.2 定理の証明を振り返ると à ! à 1 ! Ã√ !à √ − √310 10 0 1 2 1 10 = 2 3 1 √ √ 0 − √10 3 4 0 10 10 7 5 ! 1 と分解できる。それぞれ軸を傾ける変換、回転、軸方向の拡大・縮小を表 す行列である。これに平行移動を加えると上の問題の解になる。 9 8 R3 の合同変換 問題 8.1 kApk2 = (Ap, Ap) = (t AAp, p) = kpk2 = 1, (Ap, Aq) = (t AAp, q) = (p, q) = 0 による。 10
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