JRDRハイライト (3)都道府県別男女別透析導入率と各種因子との関連(図表3) 論文の概要 慢性透析患者導入率には、地域差があり、その要因について検討した探索的研究である。 タイトル:Factors associated with the incidence of dialysis 著者:Ogata S, Nishi S, Wakai K, Iseki K, Tsubakihara Y, and the Committee of Renal Data Registry of the Japanese Society for Dialysis Therapy 収載:Clin Exp Nephrol 2013;17(6):890-898 対象:2004-2006年中透析導入患者 102,011人 目的変数:都道府県別男女別単位人口当たり年間平均透析導入率 説明変数:日本透析医学会・日本腎臓学会ホームページ、施設会員名簿、財務省統計局、国民栄養調査 などから抽出した81項目の都道府県別データ 手法:単回帰分析および重回帰分析 結果:単回帰分析で有意であった男性30項目女性36項目のうち、重回帰分析では男性で一般病院平均在 院日数、単位人口あたり悪性新生物による死亡者数、四肢切断の既往、日照時間が、女性で心筋梗塞の 既往、単位人口あたり生活習慣病・悪性新生物・脳血管疾患による死亡者数、ビタミンC・蛋白質摂取量、 一世帯当たり貯蓄現在高、透析専門医数、粗出生率、雪日数、いも類摂取量、年平均気温、一般病院平 均在院日数が独立した有意な因子として選択された。 (/人口100万人) 500.0 透析導入者数 (男性) 400.0 300.0 200.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 1,200 透析専門医数 (/人口100万人) 1,500 1,800 2,100 2,400 50 100 150 200 雨日数 (日/年) 日照時間 (時間/年) 透析導入者数 (女性) 300.0 200.0 100.0 210 230 250 270 炭水化物摂取量 (g/日) 9.0 10.0 11.0 鉄摂取量 (mg/day) 12.0 400 450 500 550 600 カルシウム摂取量 (mg/day) 単回帰分析で有意となった項目のうちp値の低い男女別上位3項目と単位人口あたり都道府県別透析導入者数の関係 (許諾を得て引用・改変) 解説 従来、透析導入率における地域差については人種差が大きく関与しているという報告は多い。遺伝的に ほぼ単一民族と考えられる日本における地域差とその要因に関する研究は、環境因子を説明できる可能 性がある。 この論文では透析導入患者個々のデータはもちろんのこと、背景となる一般人口の栄養摂取量、社会的 要因や気象条件、さらには医療施設因子について多数の項目を網羅的に調査している。それらの中から 環境因子を含む数多くの因子が単回帰および重回帰分析で有意となったことは興味深い。 探索的な研究であり、Ecological Study(地域相関研究)の形式をとっているため生態学的誤謬を含んで いる可能性があり、また地域差については様々な要因が複雑に絡んでいると考えられるため、今後今回 の結果を基にさらに個別の研究が進んでいくことを期待する。 54
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