JRDRハイライト (1)はじめに(図表1) 日本透析医学会の年末調査は、過去50年以上にわたり現況報告として、わが国の透析療法の、文字通り 現況を明らかにしてきました。わが国の透析療法の断面調査だけではなく、経年的な変化も明らかにし てきた、世界にも例を見ない規模・歴史をもった調査です。これも、ひとえに全国の透析施設や、透析 従事者の方々のご尽力の賜物であり、この場を借りて感謝申し上げます。 さて、こうした年末調査により収集されたデータを、透析医療により還元すべく、統計調査委員会では、 2008年度から公募研究・委員会研究として、年末調査データをもとにした解析を積極的に進めてきました。 これらの研究によって得られた成果から、透析患者の予後・QOLなどさまざまなアウトカムと関連する 要因・治療様式が明らかにされてきました。さらに、これらの成果には日本透析医学会が作成したガイ ドラインの作成根拠として使用されたものもあります。 2014年末調査の図説現況からJRDRハイライトとして、現在までにJRDRデータベースを基にした解析に よって明らかにされた英語論文について紹介いたします。 現在まで、 年末調査をもとにした英語論文は表に示すように32報が報告されています。今年はこの中から、 13論文を選択し、その概要、要因とアウトカム、結果をよく表す図、さらにはその解析が行われるに至 った背景や、論文の意義について、実際にその論文を執筆した解析小委員が中心となって、紹介を行い ます。 本企画が、年末調査にご協力をいただいた会員の方々にとって、わが国の透析患者から得られた英語論 文を理解する上で、有用なものになれば幸いです。 公表年 論文数 収載誌 論文数 2007年以前 4 Ther Apher Dial 9 2008年 2 Nephrol Dial Transplant 6 2009年 2 Am J Kidney Dis 3 2010年 1 Clin Exp Nephrol 2 2011年 2 Kidney Int 2 2012年 3 Kidney Int Suppl 2 2013年 3 PLoS One 2 2014年 7 Am J Nephrol 1 2015年 8 Blood Purif 1 Clin J Am Soc Nephrol 1 J Bone Miner Metab 1 J Ren Nutr 1 Nephron Clin Pract 1 主な対象領域 論文数 CKD-MBD 8 透析導入・導入患者 6 循環・血圧管理 3 水質管理 3 電解質・酸塩基平衡 3 貧血 3 手根管・アミロイドーシス 2 総説・その他 4 いずれも各年末の現況報告は含まず 解説 公表年については、2012年ころから年間公表論文数が増加し、2014年からは公募研究・委員会研究の結 果が相次いで報告されていることが分かる。 収載誌は、Therapeutic Apheresis and Dialysis誌をはじめ、透析領域における国際的に評価の高い雑誌 に複数の報告が掲載されている。 対象領域については、透析導入、水質管理など透析治療の基礎的なことから、透析患者における合併症 など幅広い分野にわたって検討がなされている。 このように様々な分野において年末調査の結果が活用され、実際の透析医療に還元されている。 52
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