血液浄化器のこれまでとこれから

●特集「血液浄化器の進歩」
血液浄化器のこれまでとこれから
早稲田大学名誉教授
酒井 清孝
Kiyotaka SAKAI
は,その血液浄化器のメカニズム・構造とその操作条件
まえがき
1.
(原因)に強く依存する。原因があっての結果であること
人工臓器のパイオニアとして,人工臓器とともに人生を
から,臨床での問題解決とともに,それに基づいた血液浄
歩んだ Kolf f WJ が,2009 年 2 月 11 日に 97 歳で惜しまれて
化器とその操作法の設計にさらなる医工学的改良が必要で
亡くなった。Kolff WJ(図 1)は,オランダ貴族 Kolff 家の出
ある。
身であったが,1950 年に米国に移り,1955 年に米国市民
権を得ている。第二次世界大戦中にオランダで回転ドラム
型透析器(血液浄化器)を研究開発し,1945 年に世界で初
2.
血液浄化の概念
ジョンズ・ホプキンス大学医学部薬理学科の Abel JJ(図
2),Rowntree LG, Turner BB は,1913 年 5 月 6 日にワシン
めて腎不全患者の治療に成功した。
Kolf f WJ の先駆的研究によって,血液浄化器は技術的に
トン D.C. で開催された米国内科学会で,人工腎臓の基本原
も臨床的にも最も成功した人工臓器(生体機能代行装置)
理である体外循環による vividif fusion(生体拡散)の概念
となった。生体腎の濾過・再吸収・分泌とは異なる分離メ
(血液浄化の概念)を提案した 18) ∼ 20) 。図 3 は Abel JJ の実
カニズムである透析で,現在では慢性腎不全患者を最長 45
験ノートの一部である 7) 。さらに,プラスマフェレーシス
年(日本の統計)も延命させることに成功している。ここ
の概念についても提案している 21) 。
に到るまで,血液浄化器には数々の改良が加えられ,現在
彼らはウサギを用いた実験を 1912 年に開始した。これ
の装置にまで進化した。拡散(透析)の原理が発見された
は創造的な研究であった。この時に用いられたのが透析膜
のは約 160 年前,血液浄化の概念が提案されたのは約 100
による拡散(透析)であり,この拡散原理(物理化学的法則)
年前,腎不全患者の救命・延命に初めて成功したのは約 70
は,スコットランドの化学者 Graham T(図 4)によって
年前のことである。
1854 年に発見された。浸透圧についての講義録の中に,こ
医療経済,生命倫理など,文系側の視点から血液透析療
法の歴史をまとめたのが有吉玲子 1) である。
の拡散の原理(グラハムの法則)が実験装置(図 5)ととも
に記述されている 22),23) 。拡散現象を定量化したフィック
医療側の視点から,血液浄化器を用いた腎不全治療の歴
史をまとめた世界および本邦における総説は多い 2) ∼ 12) 。
ここに挙げたのはその一部に過ぎない。血液浄化器の歴史
の法則が世に出たのは,翌年の 1855 年のことである 24) 。
「体外循環している動物血液からの拡散性物質の除去」
と題する Abel JJ らの論文 18) ∼ 20) に記載されている血液浄
化器(図 6,7)は,コロジオンチューブ 16 本の管状血液浄
を明快にまとめたのが白井洸である 13) 。
理工側の視点から,血液浄化器と血液浄化膜の歴史をま
とめた総説は多くない 14) ∼ 17) 。
化膜(内径 8 mm;膜厚 50 ∼ 200μm;管長 20 cm)をガラ
ス製外筒(内径 8.5 cm;管長 36 cm)に収めたウサギ用の血
血液浄化器を透析患者に用いたときの臨床症状(結果)
液浄化器である。体外循環血液の流れは,血液浄化器内で
2 往復して,再び動物に戻るように設計されている。した
■著者連絡先
E-mail. [email protected]
214
がって,コロジオンチューブ本数は 4 の倍数になる。ウサ
,イヌ用は 32 本(0.32 m2)
,仔ウシと
ギ用は 16 本(0.08 m2)
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
図 1 Willem J Kolf(
f 人工
臓器のパイオニア)5)
McBride PT : Genesis of the
a r t i f i c i a l k i d n e y. B a x t e r
Healthcare Co., Deerfield, 1987
より許可を得て転載。
図 2 John J Abel(血液浄化
の概念を提案)5)
McBride PT: Genesis of the artificial
kidney. Baxter Healthcar e Co.,
Deer field, 1987 より許可を得て転
載。
図 3 Abel の vividiffusion に関
する実験ノート(1912 年
12 月 9 日 )「Dialysis of
living blood exp.」7)
Ing TS, Rahman MA, Kjellstrand CM:
Dialysis: histor y, development and
promise. World Scientific, Singapore,
2012 より許可を得て転載。
図 4 Thomas Graham7)
Ing TS, Rahman MA,
Kjellstrand CM: Dialysis:
h i s t o r y, d e v e l o p m e n t a n d
pr omise. World Scientific,
Singapore, 2012 より許可を得
て転載。
図 6 Abel-Rowntree-Turner 透析器(血液浄化器)7)
Ing TS, Rahman MA, Kjellstrand CM: Dialysis: histor y,
development and promise. World Scientific, Singapore, 2012 よ
り許可を得て転載。
図 5 Graham の拡散実験装置
( 日 本 透 析 医 学 会 50 回 記 念 展 示 資 料 を 撮 影,
2005)
図 7 Abel らの vividif fusion(生体拡
散)装置(血液浄化器)
(日本透析医学会 50 回記念展示資料を撮影,
2005)
ヤギ用は 92 本(1.63 m2)のチューブを用いていた。透析液
かった。さらに透析液がガラス製外筒内に充填され,流動
には生理食塩水を用い,流動のないバッチ透析であっため,
のないバッチ透析が行われていたため,物質移動抵抗がさ
1 時間ごとに交換した。抗凝固薬としてヒルから採取した
らに大きくなったことは止むを得ない。除去効率が小さい
毒性の強いヒルジンを用いた。
ことの原因が大きい血液流路厚みにあると Abel JJ らは気
血液流路であるチューブ内径が 8 mm と大きかったこと
付いたのか,その後の仔ウシとヤギの実験では,血液流路
から,溶質除去の律速段階はチューブ内を流れる血液流路
厚み 6 mm のコロジオンチューブ(内径 6 mm)を作ってい
側にあり,このため溶質除去速度は非常に小さかった。論
る。しかしこの程度(25%)の内径減少では,溶質除去が促
文には多くの動物(ウサギ,イヌ,仔ウシ,ヤギ)を用いた
進されることはなかった。
実験結果が記載されているが,その中でサリチル酸ナトリ
ではどうすれば良かったか? 血液流路厚みをさらに小
ウム除去率が最大 24.35%のデータ(310 K,7 時間)は 22.5
さくすべきであった。ひと桁小さい血液流路厚みを達成で
kg のイヌからであった。
きれば,血液浄化器の性能向上が図られたであろう。その
このように除去量が大きくない最大の理由は,血液流路
ときには,溶質除去の律速段階が,血液境膜ではなく,血
厚み(8 mm)が大きすぎることにあった。コロジオン膜の
液浄化膜あるいは透析液境膜に移って,血液浄化器の性能
物質移動抵抗は大きかったが,律速段階は血液流路側に
を向上させるための方策が変わっていたであろう。しかし,
あったため,コロジオン膜の物質移動抵抗は支配的ではな
残念ながら当時の周辺技術ではそれは不可能であった。
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
215
以上のことから,血液浄化膜設計のみならず,膜を充填
したデバイス(血液浄化器)設計が重要であることが理解
されるであろう。
透析膜としてコロジオン膜を用いると,アルブミン漏出
型透析器(血液浄化器)のそれに酷似していることは驚き
である。
3.
回転ドラム型透析器と使い捨てコイル型透析器
量が大きかった。この原因として,コロジオン膜の孔径が
1) 回転ドラム型透析器(血液浄化器)
大きかったと考えられるが,もしかしたらピンホールが多
その後,血液浄化の概念をヒトの治療に適用しようとす
る努力が続いた。1920 年に Love GR は腸管漿膜を用いた
数存在していたからかも知れない。
論文には,下記のような医工学的に高く評価できる研究
vividiffusion を行っている 25) 。1923 年には Necheles H(図
8)が動物の腹膜を用いた血液浄化器を開発しているが,そ
成果が記載されている。
①膜厚が溶質除去に影響しない(透析膜が律速段階でな
れをするならば,人体内の腹膜を直接的に利用した透析治
いため。チューブ壁の厚みは,チューブ長中央部で 50 ∼
療が有効であると考えて,腹膜透析の概念を提案してい
100μm,チューブ長端部で 200μm であった)。
る 26) 。これは正に腹腔内透析器(血液浄化器)である。ド
②できるだけ小さい容器に大きな膜面積を確保したい
イツの内科医 Ganter G(図 9)が開発した腹膜透析と同時期
である 27) 。
(小型化が目標であった)。
③ガラス製外筒内にチューブをできるだけ均等に配置
ヒトの透析治療を行ったのは,1925 年の Haas G〔文献 6,
し,チューブ間に透析液の淀みが生じないようにしたい。
p. 61,Fig. 7.1(a)
(b)を参照〕をもって嚆矢とする。少量の
そのために,チューブ間の距離をチューブ径に等しくする
血液を腎不全患者から採取し,その血液をコロジオン膜と
か,あるいはやや狭くすると性能が良くなる〔透析器(血液
ヒルジンを用いて透析し,浄化された血液を患者に戻すと
浄化器)内で透析液の分配を均等にする〕。
いう間歇的手法であった。残念ながら腎不全患者を救命す
④大面積の透析器(血液浄化器)が血中溶質を除去する
るには至らなかった 28) 。Haas G が用いた透析器(血液浄
のに有利である〔溶質が膜透過する入口(膜表面)は,大き
化器)を図 10 に示す。1927 年にはヘパリンを用いて透析
い方が溶質除去に有利である〕。
を行っている 29) 。臨床を成功させるためには,理工学的
⑤生体に必要な血中溶質を除去しないように,適正透析
液組成を選定すべきである(溶質除去のメカニズムは濃度
視点からの改良が必要であることに Haas G はすでに気付
いていた。
1938 年に Thalhimer W〔文献 7,p. 64 を参照〕は,透析膜
差を推進力とする透析であるため)。
⑥血液を均等に流すために,血液が 2 往復するように透
としてセロファンチューブ(幅 2 cm,長さ 30 cm),抗凝固
析器(血液浄化器)を設計した〔血液流入口の数を減らし
薬として精製されたヘパリンを用いた透析治療を行った
て,チャンネリング(偏流)の起こる可能性を減らした〕
。
「未だ実験段階なので,
が,臨床的には成功しなかった 30) 。
血液浄化器製作の過程で医と工の連携があったら,研究
開発が進展したかもしれない。前述の如く,ひとつの技術
を完成させるためには,周辺技術の援護が不可欠であり,
ヒトに対して透析治療を行わないようにして欲しい」と論
文で警告している。
これで臨床応用の準備は整ったが,ヒトに使うための血
当時はそれがあまり行われていなかった。従って飛躍的進
液浄化器製作に壁が立ちはだかった。この問題を解決した
展は不可能であったと思われる。連携が行われていれば,
のが Kolf f WJ である 31) 。ヒトに初めて透析治療を試みた
多くのヒントが得られたに違いない。
Haas G と同じように,Kolff WJ も当初は幼稚な血液浄化器
Abel JJ らの研究ではサリチル酸ナトリウムの十分な溶
を間歇的に操作していた。このときに Kolff WJ が用いたの
質除去を達成できなかったが,動物の体内から膜を用いて
は,図 11 に示すような血液浄化器であった。腎不全患者の
血中溶質を直接的に除去することができたことには大きな
血液 25ml を充填した長さ 45 cm のセロファンチューブを
意義があった。すなわち,膜を用いる血液浄化が可能になっ
木の板に固定し,これを生理食塩水中で上下させて透析を
たことは素晴らしい研究成果である。そしてこの血液浄化
行うという,極めて幼稚な方法であった。
法は,ヒトの治療の可能性を示唆している。当時の周辺技
1943 年にオランダの小さな町カンペンで,ヒトの治療に
術が未成熟であったために,このアイデアはすぐには医療
使う目的で図 12 のような回転ドラム型透析器(血液浄化
技術にまで進展しなかったが,創造的な発想であったこと
器)を開発・製作して腎不全患者の治療に着手し,1945 年
には違いない。細かい点に違いがあるにせよ,黎明期にお
に腎不全患者の救命に成功している。これは臨床 17 例目
ける血液浄化器の形状が,現在広く用いられている中空糸
であった。Abel JJ が血液浄化の概念を提案してから約 30
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人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
図 8 Heinrich Necheles
(動物の腹膜を透析
膜として利用)5)
McBride PT : Genesis of the
a r t i f i c i a l k i d n e y. B a x t e r
Healthcare Co., Deerfield, 1987
より許可を得て転載。
図 9 Georg Ganter6)
McBride PT: Genesis of the
ar tificial kidney. Baxter
Healthcare Co., Deer field,
1987 より許可を得て転載。
図 10 Georg Haas が用いた透析器(血液
浄化器)
(日本透析医学会 50 回記念展示資料を撮影,2005)
図 11 初期の Kolff 透析器(血液浄化器)2)
Riprinted from Replacement of Renal Function by Dialysis,
2nd ed, 1983, p.13, Hemodialysis: A Historical Review,
Dr ukker W, Fig.13, with kind permission from Springer
Science and Business Media.
図 12 Kolf f らの回転ドラム型透析器(血液浄化
器)
(日本透析医学会 50 回記念展示資料を撮影,2005)
年後の臨床応用成功であった 32),33) 。
図 13 Hendrik ThJ Berk
(engineer)2)
Riprinted from Replacement of
Renal Function by Dialysis,
2n d e d , 1983, p .13, H e m o dialysis: A Historical Review,
Drukker W, Fig.14, with kind
permission from Springer
Science and Business Media.
回転ドラム型透析器(血液浄化器)の最初の操作は間歇
操作であったが,その後連続操作に変更している。回転ド
ラムは縦型であった。血液を落下させることがその理由で
した約 100 l の槽にその円筒の一部を沈めた。この円筒を
あったが,その後エンジニアである Berk HThJ(図 13)の提
回転させることによって,チューブ内を流れる患者の血液
案 31) で,ドラムを横置きにして回転させることで,血液ポ
と透析液の間で 6 時間透析を行い,尿毒素と過剰の水を除
ンプなしでも血液を送ることができるように工夫された。
去した。尿素クリアランスは 140 ∼ 170 ml/min であった。
装置設計でエンジニアの知恵を借りようとした点で,Kolf f
血液流路厚みの正確な値は不明である。血液浄化器内の
プライミングボリュームと膜面積が分かれば,平均血液流
WJ には先見の明があった。
回転ドラム型透析器(血液浄化器)開発の当初は,戦時中
路厚みを算出することができるが,前者が不明であるため
でもあったため,入手困難なセロファンの代替品としてセ
に算出できない。膜面積が 2.4 m2 であったとすると,平均
ルロースアセテートのソーセージ被膜を透析膜として用い
血液流路厚みが 1 mm のとき血液のプライミングボリュー
た。幅 2.5 cm,長さ 30 ∼ 40 m,膜面積 2.4
m2 のチューブ状
ムは 1.2 l,2 mm のとき 2.4 l になる。このことから考えて,
膜をアルミニウムスラット(アルミニウム不足になってか
平均血液流路厚みは約 1 mm であったと思われる。この値
ら木スラットに変更)に巻き,透析液(生理食塩水)を貯留
は大きく,溶質除去の律速段階は血液境膜にあった。
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
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図 14 Kolf f-Brigham 回転ドラム型透析器
( 血 液 浄 化 器 )と Edward Olson
(engineer)5)
McBride PT: Genesis of the artificial kidney. Baxter
Healthcare Co., Deerfield, 1987 より許可を得て転載。
図 15 朝鮮戦争時の野戦病院における Kolf f-Brigham 回
転ドラム型透析器(血液浄化器)5)
McBride PT: Genesis of the artificial kidney. Baxter Healthcare Co.,
Deerfield, 1987 より許可を得て転載。
図 16 Paul E Teschan5)
図 17 Nils Alwall5)
McBride PT : Genesis of the
a r t i f i c i a l k i d n e y. B a x t e r
Healthcare Co., Deerfield, 1987
より許可を得て転載。
McBride PT : Genesis of the
artificial kidney. Baxter Healthcare
Co., Deerfield, 1987 より許可を得
て転載。
第二次世界大戦後にボストンで,オランダから持参した
図 18 Alwall コイル型縦ドラム
透析器(血液浄化器)7)
Ing TS, Rahman MA, Kjellstrand CM:
Dialysis: histor y, development and
promise. World Scientific, Singapore,
2012 より許可を得て転載。
図 19 コルフツインコイル型
透 析 器( 小 型 使 い 捨 て
血液浄化器)7)
McBride PT: Genesis of the artificial
k i d n e y. B a x t e r H e a l t h c a r e C o . ,
Deerfield, 1987 より許可を得て転載。
2) コイル型透析器(血液浄化器)
設計図に基づいて,エンジニア Olson E の助けを借りて改
Kolf f-Brigham 回転ドラム型透析器(血液浄化器)の成績
良したのが Kolf f-Bringham 回転ドラム型透析器(血液浄化
が良くなってきても,多くの腎不全患者の治療に手間暇か
器)(図 14,15)である。医療従事者 6 人がかりで 10 時間
かる大型の装置を用いることはできない。このため Kolf f
かけて,腎不全患者を治療した。壮大な実験的治療であっ
WJ らは使い捨ての小型血液浄化器の必要性を強く感じた。
た。
1947 年には Alwall N(図 17)がコイル型透析器(血液浄化
挫滅症候群(cr ush syndrome)により兵士が亡くなるの
器)
(図 18)のアイデアを提案している 35) 。
を何とかしたいと考えたのは,Haas G が最初であった。彼
1950 年に米国オハイオ州クリーブランドクリニックに
は,1914 年の第一次世界大戦に軍医として参加して遭遇し
移った Kolff WJ は,Watschinger B とともに,多くの腎不全
た尿毒症で死んでいく多くの若い兵士に対して,透析治療
患者に使える使い捨て小型透析器(コルフツインコイル型
の必要性を強く感じた。さらに 1950 年に勃発した朝鮮戦
透析器)
(血液浄化器)を開発した 36) ∼ 39) 。これによって
争で,Kolff-Bringham 回転ドラム型透析器(血液浄化器)が
多くの腎不全患者の命が助けられるようになった。図 19
傷兵の挫滅症候群治癒に有効であったことが,1955 年に
に示すコルフツインコイル型透析器(血液浄化器)が 1956
Teschan
PE(図 16)によって報告された 34)
。これを契機と
年に米国の Travenol 社(現 Baxter 社)から量産開始された。
して,血液浄化器が生体機能代行装置として世界から脚光
セロファンチューブ(幅 15 cm,長さ約 4 m)を樹脂製網の
を浴びることになった。
上に置き,これをコイル状に巻いて樹脂製円筒に収める。
218
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
図 20 Travenol タンク式透
析装置(1961 年)
(日本透析医学会 50 回記念展示資
料を撮影,2005)
図 21 コルフツインコイル型透析
器(血液浄化器)の販売案内
状(Baxter Laboratories)5)
図 22 L e o n a r d T S k e g g s
(engineer)5)
McBride PT : Genesis of the
artificial kidney. Baxter Healthcare
Co., Deerfield, 1987 より許可を得
て転載。
McBride PT: Genesis of the artificial kidney.
Baxter Healthcare Co., Deerfield, 1987 より
許可を得て転載。
透析患者の血液は円筒中心部に位置するチューブコネク
ターから約 200 ml/min の流量でセロファンチューブ内に
流入し,チューブ内を流れる間に血液が浄化され,円筒壁
部に設置されたチューブコネクターから流出する。このツ
インコイル型透析器(血液浄化器)はキャニスター(透析液
容量約 6 l)内に設置される。キャニスター内を循環する透
析液は,樹脂製網の隙間を血液と十字流で下方より上方に
流れ,その流量は 10 ∼ 50 l/min であった。ツインコイル
型透析器(血液浄化器)に新しく供給される透析液の流量
は約 500 ml/min であった。血液流路が 2 つあるのは,セロ
ファンチューブ内を流れる血液のチャンネリング(偏流)
を抑えたかったためと思われる。
図 23 Jack R Leonards(third from left)5)
McBride PT: Genesis of the ar tificial kidney. Baxter Healthcare Co.,
Deerfield, 1987 より許可を得て転載。
この血液浄化器は,製造コストが安く,平膜を使えると
いう利点があった。一方で,血液側流路抵抗が大きいため
に除水効率には優れていたが,濾過(除水)を制御しにく
ンプライアンスが起こり,平均血液流路厚みが約 1 mm と
く,血液側圧力が大きくなるため網と直接的に接触してい
大きかったためである。製品のばらつきもあった。ここで
ない部分の膜が透析液側に膨らむ(コンプライアンス)と
も血液浄化器設計の重要性は明白である。
いう欠点があった。これによる血液流路拡大によって,溶
ASAIO(米国人工内臓学会)で血液浄化器に関する研究
質除去速度は低下した。血液の出口に異物が詰まるなどし
成果を発表した最初の日本人は,1957 年の青山繁人(ク
て血液圧力が大きくなると,透析膜の破損事故が起こった。
リーブランドクリニック留学中)であった 40) 。翌年には中
また,キャニスターからの異臭が避けられず,重炭酸ソー
元覚(米国滞在中)
,翌々年には東京大学第 2 外科の木本誠
ダ透析液の使用は困難であった。コルフツインコイル型透
二,稲生綱政,石井淳一が発表している。
析器(血液浄化器)を動かすための初期のタンク式透析器
(1961 年)を図 20 に示す。現在ではコルフツインコイル型
透析器および改良されたコイル型透析器(血液浄化器)は
4.
スタンダードキール型透析器と使い捨て積層型
透析器
用いられていない。コルフツインコイル型透析器(血液浄
1) スタンダードキール型透析器(血液浄化器)
化器)の当時の販売案内状を図 21 に示す。当時は相当に高
Skeggs(図 22)− Leonards(図 23)透析器(血液浄化器)
のアイデア 41),42) に基づいて,1960 年にノルウェーの Kiil F
価であったことが分かる。
この血液浄化器の溶質除去性能は低かった。その理由は,
血液流れにチャンネリング(偏流)が起こりやすく,またコ
(図 24)が図 25 のスタンダードキール型透析器(血液浄化
器)を開発した 43) 。セロファンの平膜を用いた,長さ 100
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
219
図 24 Fredrik Kiil 6)
McBride PT: Genesis of the
a r t i f i c i a l k i d n e y. B a x t e r
Healthcare Co., Deer field,
1987 より許可を得て転載。
図 25 スタンダードキール型透析器
(血液浄化器)
(日本透析医学会 50 回記念展示資料を撮影,
2005)
図 26 Belding Scribner(‘Scrib’)
図 27 James E Cimino
McBride PT : Genesis of the ar tificial
kidney. Baxter Healthcare Co., Deerfield,
1987 より許可を得て転載。
McBride PT: Genesis of the
a r t i f i c i a l k i d n e y. B a x t e r
Healthcare Co., Deer field,
1987 より許可を得て転載。
cm,幅 40 cm の大きな透析器(血液浄化器)であった。透
析液の流れを制御するために,溝が彫られた樹脂製の支持
板 3 枚で 2 枚組の平膜を 2ヶ所で挟み,血液は 2 枚の平膜間
を流れた。多彩な溝が彫られた樹脂製支持板と平膜の間で
チャンネリング(偏流)が起こらないように,透析液は血液
と向流で流れた。血液流路は 2 層で 1.6 m2 の膜面積を確保
していた。膜面積を増やしたいときには層の数を増やした。
平膜が使え,血液貯留量と血液側流路抵抗が小さく,患者
図 28 AN-69(PAN 透析膜)を用いた積層型透析器(小型使い捨
て血液浄化器)1967 年 6)
に合わせて層の数を調節でき,血液ポンプ不要というのが
A history of the treatment of renal failure by dialysis by J. Stewart Cameron
(2002) Figure 12.9(a)from p. 170 by permission of Oxford University Press.
謳い文句であった。血液流路厚みは必然的に大きくなる。
溶質除去性能は,血液流量が 200 ml/min で尿素クリアラ
ンスが 165 ml/min であった。また血液プライミングボ
現在に至っている。内科医の Scribner BH は,外シャント
リュームは 700 ml であったことから,平均血液流路厚みは
の他に,中分子仮説の提案,透析液集中供給装置,および
約 1 mm と算出される。血液の流れにチャンネリング(偏
小型の携帯型透析器(血液浄化器)の考案,といった発明家
流)が起こり,血液流路厚みを均一に維持できないこと,
でもあった。
また平均血液流路厚みが約 1 mm のため溶質除去における
律速段階が血液境膜にあったことなどが,性能を低下させ
2) 積層型(サンドイッチ型)透析器(血液浄化器) (図 28)
る要因であった。治療ごとに装置組立と滅菌操作が必要で,
小型で使い捨ての積層型(サンドイッチ型)透析器 47),48)
透析治療の準備に相当の時間と労力を必要としたために,
が 1972 年にスウェーデンの Gambro 社から PAN(AN-69)
多くの患者の治療を行うことは事実上不可能であった。
膜を用いて上市された 49),50) 。また 1966 年に Membrana 社
1960 年にもう 1 つ血液浄化分野で大きな出来事があっ
から製造開始された再生セルロース膜 Cuprophan(平膜)
た。Scribner BH(図 26)と Quinton W〔文献 6,p. 189,Fig.
が最初に使われたのは,この積層型透析器(血液浄化器)で
。こ
あった 5) 。スタンダードキール型透析器(血液浄化器)と
れによって,
「血管の切れ目が命の切れ目」と言われ,急性
比較して,多層にすることによって,小型化と高性能化が
腎不全患者だけに治療対象が限られていた時代から,慢性
達成された。しかし血液と透析液の流れを制御しにくく,
腎不全患者にも反復・継続して透析治療を行うことが可能
透析効率が不安定で,血液ポンプが必要であった。さらに
になった。しかし,外シャントは皮膚の上に設置されてい
樹脂板を多く用いるので,大きくて重いなどの欠点が開発
るため,事故が起こりやすかった。1962 年に Cimino JE(図
当初には指摘されていた。
4.2(b)を参照〕らによる外シャントの発明である 44)
27)らは内シャントのアイデアを提案している 45)
。1966
年に Brescia MJ〔文献 6,p. 193,Fig. 14.6(a)を参照〕らは
皮膚の下に設置できるテフロン製内シャントを考案し 46),
220
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
図 29 中空糸型透析器(小型使い捨て血
液浄化器)C-DAK(Cordis-Dow 社)
(日本透析医学会 50 回記念展示資料を撮影,2005)
5.
図 30 Richard Stewar t
(engineer)6)
図 31 中空糸内径によるクリアランス,血液側圧力損
失,血液プライミングボリュームの変化 54)
McBride PT: Genesis of the
a r t i f i c i a l k i d n e y. B a x t e r
Healthcare Co., Deer field,
1987 より許可を得て転載。
を血液と向流で流れる(人工肺では,血液は中空糸の外側
中空糸型透析器と中空糸透析膜
を流れる)
。そして中空糸の壁が透析膜として機能する。
1) 中空糸型透析器(血液浄化器)
透析効率の低下を惹起する透析液のチャンネリング(偏
1971 年に米国の Cordis-Dow 社は,使い捨ての中空糸型
流)を避けるために,中空糸を縮れさせたり,中空糸束を
透析器 C-DAK(Cordis Dow Artificial Kidney)
(図 29)を世
スペーサで巻いたり,中空糸の周りにフィンを付けるなど,
界で初めて世に出した。1964 年に Dow Chemical 社のエン
透析液偏流防止策がこれまで講じられてきた。多管式熱交
ジ ニ ア Stewar t RD( 図 30)ら が こ の ア イ デ ア を 提 案 し
換器のように,邪魔板を設置することができないための苦
。1967 年にはエンジニアである Lipps B らがこの
肉の策である。血液と透析液にチャンネリング(偏流)が
。前述のごと
全く起こらなければ,膜面積を小さくでき,透析器がさら
く,Abel JJ らの vividiffusion artificial kidney に構造がよく
に小型になる可能性がある。また透析器の性能を最大限に
似ていることは興味深い。
引き出すために,理論的には,透析液流量は血液流量より
た 51),52)
C-DAK を ASAIO
Meeting で発表している 53)
脱酢酸セルロースを素材とする非常に細い中空糸(内径
200μm,膜厚 30μm)を透析膜として用いていることから,
大幅に大きくなければならない。
中空糸はどの程度まで細くすべきか?中空糸内からの気
次のような利点が生まれた。必要な膜面積を小さな装置内
泡除去を容易にするために中空糸内径を大きくしたり,血
に収めることが可能となり(小型化),また血液のプライミ
液境膜の物質移動抵抗を減らすために内径を小さくした歴
ングボリュームを減少させることができ(低体外循環血液
史がある。図 31 に示すように,分子量の小さい溶質の透析
量)
,さらに血液流路が 200μm(0.2 mm)と狭いために血
除去には,中空糸内径が 100μm のところにピークがある。
液境膜が律速段階でなくなり,溶質除去性能に優れている
それよりも細くなると,透析除去性能は急激に低下する。
(高性能化)。以上の点から,透析膜を中空糸化したことは
これは中空糸内における血液の滞留時間が短くなるためで
画期的な技術的進歩であった。現在では,透析膜(血液浄
ある。それよりも太くなると,透析除去性能は緩やかに低
化膜)のほとんどが中空糸であり,それを組み込んだ中空
下する。これは血液流路厚みが大きくなって,血液境膜の
糸型透析器(血液浄化器)が臨床で使われていることから
物質移動抵抗が大きくなるためである。また内径を大きく
も,このことはうなずける。
すると血液のプライミングボリュームが直線的に大きくな
この透析器(血液浄化器)も血液と透析液は向流で操作
り,内径を小さくすると血液流れの流路抵抗が大きくなっ
された。1913 年の vividiffusion と異なるのは,内径 200μm,
て,圧力損失が指数関数的に増加する 54) 。これらの総合
膜厚 30μm の中空糸(capillar y)を 13,500 本束ねることに
的な観点から,透析器(血液浄化器)に使われる中空糸内径
よって,膜面積 1.36 m2 の小型透析器を作った点である。
は約 200μm に収束している。因みに毛細血管の平均内径
内径と膜厚がいずれも非常に小さくなった。周辺技術が成
は 10μm である。
熟しないと,ここまで上手く行かなかったであろう。
血液は中空糸の内側を流れ,透析液は中空糸と外筒の間
2) 血液浄化用透析膜(平膜と中空糸膜)
血液浄化器と血液浄化用透析膜の発展の歴史を血液浄化
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
221
図 33 走査型電子顕微鏡画像(CTA & PSf)
図 32 血液浄化器と血液浄化用透析膜の開発の歴史(血液浄化
膜の販売年で表示)
表 1 透析膜(血液浄化膜)の種類と特徴(東レ菅谷博之博士提供)
膜の販売年で表示して図 32 に示す。1966 年に再生セル
た 55) 。再生セルロース膜も似たような非対称構造の膜が
ロース Cuprophan 中空糸膜が Membrana 社で製造開始さ
作られていた 56) 。膜工学では,透析膜は均質膜とされて
れている。Cordis-Dow 社とほぼ同時期である。
きたが,ここに楔を打ち込んだのがドイツの Fresenius 社
透析膜(血液浄化膜)の種類と特徴を表 1 に示す。血液浄
である。1983 年に緻密層と支持層を持つ,血液浄化用ポリ
化膜の素材には,天然高分子由来の再生セルロースと酢酸
スルホン膜が開発された。しばらくは臨床使用されなかっ
セルロース,および合成高分子由来のポリスルホンなどが
たが,最近ではこの非対称膜が分子量の大きい尿毒素を除
あり,多種多様である。代表的なセルローストリアセテー
去する血液透析治療に広く用いられている。旭化成メディ
ト膜とポリスルホン膜の走査型電子顕微鏡画像を図 33 に
カル,東レ,日機装,ニプロ,川澄化学工業,Fresenius 社
示す。これを見ると,両膜の構造の違いがよく分かる。
で作られたポリスルホン系合成高分子膜が全透析膜の
均質膜は,分離に寄与する中空糸壁の構造が厚み方向に
75%以上になっている。均質膜ではなく,濾過膜の構造と
変化しない。すなわち膜全体が分離に寄与する。しかし均
同じ非対称膜を透析治療に用いることは非常識であった
質膜といわれていた酢酸セルロース膜も,詳細に膜構造を
が,結果的には大成功であった。非常識が常識に変わった
観 察 す る と,非 対 称 性 が 存 在 す る こ と が 明 ら か に な っ
技術革新のよい例である。
222
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
再生セルロース膜では,尿毒素が透析膜に空いている細
孔の中を拡散で透過するが,細孔は膜の中で真っ直ぐでは
なく,曲がりくねっている。尿毒素の大きさの約 5,000 倍
の孔長の中を尿毒素の分子は透過する。この距離を小さく
できれば,すなわち薄膜化できれば,尿毒素を透析で速や
かに除去することが可能となる。
性能のよい血液浄化膜が開発されても,臨床で十分な成
績が得られるとは限らない。血液浄化膜を組み込んだ血液
浄化器の設計が至適でないと,十分な性能を発揮できない。
図 34 透析膜(血液浄化膜)素材のシェア(2010 年末)
そのため,血液浄化器設計には十分な配慮が必要である。
十分な臨床成績が得られなかったとしても,血液浄化膜の
性能が良くなかったから,と性急に判断してはならない。
血液浄化膜の生体適合性は,これまで長期にわたって指
流路厚みが約 0.2 mm(200μm)にまで小さくなると,尿素
摘され,研究が続けられてきたが,血栓形成という初歩的
などの分子量の小さい尿毒素でも膜抵抗が大きくなってき
問題ですら,相変わらず臨床の現場で起こっている。この
た。分子量に関係なく膜抵抗が大きくなったことから,膜
血栓形成の問題は,血液浄化膜設計の問題だけではなく,
素材が再生セルロースだけであった時代から,膜の素材,
それを組み込んだ血液浄化器の設計も無関係ではない。血
物理構造,物理化学的特性の多様化の時代に突入した。
液浄化膜と血液浄化器を切り離して考えてはならない。生
1965 年に Scribner BH による中分子仮説の提案 60),1971
体適合性は,難しく,扱いにくい課題である。血液透析治
年にケミカルエンジニア Babb AL らによる面積・時間仮説
療が連続治療ではなく,間歇的治療であることが救いに
の提案 61) があり,さらに 1971 年に Cordis-Dow 社から中空
なっている。長期にわたる治療で,後になって腎不全患者
糸型透析器(血液浄化器)が上市されたことによって,透析
に何らかの問題が起こってくるような非生体適合性は,可
膜(血液浄化膜)の改良に意味がなかった状況が一変した。
及的速やかに解決しなければならない。大量に使われてい
1972 年以降,図 32 に示すように,新しい素材の透析膜(血
るポリスルホン膜には,孔形成と親水化のためにポリビ
液浄化膜)が次々と開発された。その多くが合成高分子膜
ニールピロリドン(PVP)が配合されている。配合されて
であるが,中には植物性高分子(セルロース)由来の透析膜
いれば十分かというと,必ずしもそうではない。湿潤膜内
(血液浄化膜)
〔cellulose diacetate(CDA),cellulose
表面における PVP 粒子分布の均一性 57),58) と PVP の溶出 59)
triacetate(CTA)膜〕も世に出た。
がこれからの大きな課題である。定期的に治療を受ける透
図 34 に透析膜素材のシェアを示す。2010 年末の統計で
析患者のために,生体適合性を早急に満足なものにしなけ
あるが,ポリスルホン系透析膜(血液浄化膜)が 4 分の 3 に
ればならない。
達している。短期間での劇的なシェアの伸びであるが,こ
6.
透析(拡散)による血液浄化器の技術的変遷
血液浄化器開発の歴史を眺めてみると,高性能化,小型
化,操作の簡易化を目指して改良が進められてきた。血液
の 4 分の 3 が限界なのではなかろうか。
7.
血液濾過,血液透析濾過,on-line 血液透析濾過,
血漿分離,血液吸着,腹膜透析
浄化器の性能が劣っていた時代,尿毒素の除去には血液境
1947 年に Alwall N は,透析と濾過を組み合わせた高い圧
膜の抵抗が大きく,透析膜(血液浄化膜)は血液と透析液を
力にも耐える改良型血液浄化器を開発した。透析膜(血液
直接接触させないためだけの役目であった。Abel JJ らの
浄化膜)としてセロファンを用いた 35) 。
血液浄化器の血液流路厚みは約 8 mm(改良して約 6 mm),
図 35 に示すように,透析は低分子量物質の除去に優れ,
回転ドラム型透析器(血液浄化器),コルフツインコイル型
濾過は中・高分子量物質の除去に優れている。拡散で大き
およびコイル型透析器(血液浄化器)
,スタンダードキール
な分子量の尿毒素を除去することが難しければ,濾過に
型透析器(血液浄化器),積層型透析器(血液浄化器)の平
よって,あるいは拡散に濾過を付加することによって,大
均血液流路厚みは約 1 mm であった。溶質除去に対してい
きな分子量の尿毒素を除去する。この効果を期待したのが,
ずれも血液境膜が律速段階で,透析性能の大きな改善は難
血液濾過と血液透析濾過(あるいは血液濾過透析)である。
しかった。ところが中空糸型透析器(血液浄化器)の血液
濾過を強くして大きな分子量の溶質の除去速度を大きく
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
223
た透析液の使用が不可欠である。汚れた透析液が腎不全患
者の体内に入ることは許されない。患者の体内に直接入ら
なくても,血液側の膜表面近傍に捕捉された外因性毒素
(エンドトキシン)は患者血液に反応する 66) 。透析液の清
浄化が不十分な透析施設で on-line 血液透析濾過と内部濾
過を行なってはならない。
プラスマフェレーシスの概念が提案されてから,2014 年
は 100 周年の節目の年である 67) ∼ 69) 。遠心分離,膜濾過お
図 35 溶質分子量に対する治療法によるクリアランスの変化 17)
よび吸着の原理を用いて,現在では多くの疾患の治療にア
フェレーシスが用いられている。
濾過における濾過膜・濾過器(血液浄化器)の性能指標
は,ふるい係数と濾過流量である。ふるい係数と濾過流量
すると,この対象溶質にプール性がある場合(例えばアル
は膜外の現象に支配される 70) 。血液濾過では,膜を透過
ブミンなどに結合している尿毒素,細胞内で生成する尿毒
しないで膜面に堆積するタンパク質のゲル層で濾過流量が
素など)には,除去性能(除去量)が低下する。兎と亀の例
決まる。血漿分離では,膜を透過しない血球成分の濃度分
えにあるように,拡散と濾過の差が小さくなる。このこと
極層で濾過流量が決まる。このように濾過の場合には,膜
から分かることは,溶質除去において,過剰ではなくて,
外の現象が支配的である。膜濾過を促進するためには,す
適度な濾過で操作すべきであるということである。血液濾
なわち濾過流量を大きくするためには,血液浄化膜の改良
過と血液透析濾過の血液浄化器には,濾過性能の大きい血
ばかりではなく,血流の膜面における壁ずり速度を大きく
液浄化膜(分子量の大きい尿毒素を除去する性能に優れた
すると効果的である。具体的には,血液流量を大きくする,
ハイパフォーマンスメンブレン)が用いられている。
血液流路厚みを小さくする,さらに血流に回転を与えて多
拡散操作に比較して,濾過操作では膜のファウリングが
起こりやすい。治療中にファウリングが起こると,濾過性
くの細かい渦群を発生させることなどである。
吸着で尿毒素を選択的に除去する治療が行われている。
能が低下するし,クリアランスも減少する。このために,
例えばリクセルカラムを用いて,低分子量タンパク質であ
ファウリングが起こりにくい膜の開発と,濾過操作の工夫
るβ2 - ミ ク ロ グ ロ ブ リ ン を 除 去 す る こ と が で き る。
が必要である。
Polymethyl methacr ylate(PMMA)膜は世界的に長期にわ
1967 年の Henderson LW〔文献 6,p. 240,Fig. 17.4(c)
たって透析治療に使われている合成高分子透析膜(血液浄
を 参 照 〕に よ る 前 希 釈 血 液 濾 過 62) に し て も,1976 年 の
化膜)であるが,特に分子量の大きい血中溶質を拡散と濾
Quellhorst E〔文献 6,p. 240,Fig. 17.4(c)を参照〕による後
過だけでなく,吸着でも除去することができる。生体適合
希釈血液濾過 63) にしても,コストがかさむこと,操作が煩
性を有する化学物質で被膜した活性炭を用いて,血中の尿
雑なこと,流量制御装置と十分に浄化された補充液が必要
毒素を除去する試みが行われた 71) 。アフィニティー吸着
であることなどの問題はあるが,大きな分子量の尿毒素の
のようなシャープな特異的分離が広がってくれば,血液浄
除去に優れていることを利点として提案された。最近では
化に有望な治療法となる。
十分に浄化された透析液を,血液透析での透析液の役目と
1923 年にドイツの内科医 Ganter G(図 9)が開発した腹
同時に,血液濾過での補充液にも使えるようにしたのが
膜透析 27) は Maxwell MH らの研究 72) に引き継がれ,その
on-line 血液透析濾過で,すでに臨床使用されている。
後,Moncrief JW とエンジニアである Popovich RP(図 36)
ハイフラックス透析膜(血液浄化膜)の濾過係数は大き
く,適度の膜間圧力差で大量の溶液が移動する。中空糸の
が持続的外来腹膜透析(continuous ambulator y peritoneal
dialysis, CAPD)として確立している 73) 。
内径と長さと本数,透析器外筒の内径と長さの適度な組み
医療分野で濾過膜(血液浄化膜)を用いたときの濾過現
合わせで,内部濾過を制御することができる 64) 。ハイフ
象を限外濾過(ultrafiltration)といっている。タンパク質の
ラックス透析膜(血液浄化膜)を用いた血液浄化器で,大き
混合物から一部のタンパク質を分離するために用いる膜が
い 分 子 量 の 尿 毒 素 を 積 極 的 に 除 去 し よ う と し た の が,
限外濾過膜であり,その操作が限外濾過である。従って透
Ronco65) ほかの先駆的研究である。
析での除水,腎不全患者から尿毒素を血液濾過,血液透析
On-line 血液透析濾過と内部濾過の場合には,清浄化され
224
濾過,内部濾過,on-line 血液透析濾過で除去するために用
人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
図 37 Aethlon Medical 社の Hemopurifier(血液浄化器)
図 36 Jack Moncrief(left)と Robert Popovich(right)6)
McBride PT: Genesis of the artificial kidney. Baxter Healthcare Co., Deerfield,
1987 より許可を得て転載。
いる膜を限外濾過膜といったり,その操作を限外濾過とい
た CAVH(continuous arteriovenous haemofiltration)であ
うことは正しくない。さらに血液浄化膜の透水性を限外濾
る。アミコン社製ポリスルホン中空糸濾過膜(短い糸で,
過といい,その透水性能の指標を限外濾過係数とか,限外
内径 1.1 mm,膜面積 0.005 ∼ 0.245 m2)を充填したミニ濾
濾過率と定義することはよろしくない。では何といえば良
過器で,TMP(膜間圧力)20 ∼ 70 mmHg,QB(血流量)40
いか。ただ単に濾過といえば問題ない。濾過,濾過膜,濾
∼ 50 ml/min,PV(血液充填量)27 ∼ 42 ml,UF(限外濾過)
過係数,濾過率が正しい用語である。Alwall N は限外濾過
3 ∼ 4 ml/min の性能を示している。これを大災害時用血液
(ultrafiltration)の用語を使っていない 35) 。Kolff WJ らは濾
浄化器として大人に利用することを考えてもよいのではな
過(filtration)の用語を用いている 74) 。しかし Skeggs LT
いか。
らをはじめとして,Kill F,Henderson LW ら,Quellhorst
現在の透析膜(血液浄化膜)に欠けている優れた生体適
E らほかは,限外濾過(ultrafiltration)の用語を用いてい
合性とシャープな選択分離性の改善は急がなければならな
る 43),62),63),75)
。いつの間にか用語を間違えて使い始めた
ようである。英語論文でも,限外濾過(ultrafiltration)の用
語が誤用されている。
8.
い。
9.
まとめ
人工腎臓(血液浄化器)は臨床的にも技術的にも最も成
血液浄化器のこれから
功した人工臓器(生体機能代行装置)である。生体腎と異
米国 Aethlon Medical 社から製品化された Hemopurifier
なるメカニズムの透析で,慢性腎不全患者を最長 45 年(日
(図 37)は viral pathogens 除去に有望な製品である 76) 。大
本の統計)も延命させることに成功している。ここに到る
災害時用(救急用,テロ対策用)の血液浄化器開発が急がれ
まで,拡散(透析)の原理が発見されてから約 160 年,血液
るが,操作の簡略化とともに,携帯に便利な小型化達成に,
浄化の概念が提案されてから約 100 年,腎不全患者の救
腎糸球体構造を模倣したい。
命・延命に透析の原理を用いて成功してから約 70 年が経
透析と濾過の違いがあるにせよ,血液浄化器のお手本と
過している。未だ課題が山積しているが,腎不全をはじめ
目標は腎糸球体である。腎糸球体と中空糸型透析器(血液
とする他の適応疾患患者のために,可及的速やかに解決し
浄化器)を比較すると,キャピラリーの太さがひと桁違う。
ていかなければならない。
ひと桁細くなると,膜面積が同じならば,キャピラリーを
充填する容器の体積がひと桁小さくなる。容器の大きさを
本稿の著者には規定された COI はない。
同じにすると,キャピラリーをひと桁細くすることで,膜
面積をひと桁大きくすることができる。さらに腎糸球体で
は,キャピラリーが細くて短い。短くなることで,血液流
れの圧力損失を大幅に減少させることができる。
Ronco C ら が新生児用濾過器(血液浄化器)を開発し,臨
床 応 用 し た と 報 告 し て い る 77) 。 小 型 の CARPEDIEM
(cardio-renal pediatric dialysis emergency machine)を用い
文 献
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人工臓器 43 巻 3 号 2014 年
225
4)
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7)
8)
9)
10)
11)
12)
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