Works Discussion Paper No.7 人材流動性と On the Job Training に関する探索的研究† 佐野晋平(千葉大学) 久米功一(リクルートワークス研究所) 2015 年 4 月 17 日 要約 日本企業の人材育成においては、正社員比率の低下、中高年層のボリュームの増加など、 人材育成のターゲットが変化して、人材育成の機能の低下が懸念されている。 そこで、本稿では、OJT が機能している程度、社内外での人材流動性、人事管理などの 視点から、人材育成の現状把握を試みた。具体的には、リクルートワークス研究所「人材 マネジメント調査 2013」のデータを用いて、上述の変数間の関係や規定要因を探索した。 その結果、社員の採用・離職割合でみた、人材の外部流動性は 6~8%に、社内異動の割 合でみた、人材の内部流動性は 10~25%に分布の山があった。社員の年齢構成がピラミッ ド型の場合は、外部流動性が高く、つりがね型では内部流動性が高かった。外部流動性は、 利益率、競争環境への適応力、株式市場での評価との正の相関がみられたが、内部流動性 は、いずれの指標とも有意な相関はみられなかった。 OJT の機能の程度と人材流動性との間には明確な関係がみられなかった。回帰分析によ ると、OJT が機能している程度に対して、従業員数、昇進・昇格に関する年次管理の実施、 複線型人事制度等の実施は正、次世代リーダー育成、ミドル処遇施策は負の関係があった。 OJT が機能するためには、OJT の制度化、インフォーマルな取り組み、育成者のスキル、 市場とのコミュニケーションの視点が欠かせないことが明らかとなった。 キーワード 外部流動性、内部流動性、OJT 本ディスカッションペーパーの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属す る機関およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。 †本稿は、リクルートワークス研究所「人材マネジメント調査二次分析研究会」の成果の一 部である。同研究会のメンバーから貴重なコメントをいただいた。また、本稿における因 子分析パートでは、八田誠氏(株式会社リベルタス・コンサルティング)のご協力を賜っ た。また、企業業績と流動性の関係に関しては、大湾秀雄氏(東京大学)から貴重な助言 をいただいた。記して深く感謝申し上げたい。なお、本稿に残された誤りはすべて筆者の 責任である。
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