代数学 AII 期末試験 2015.01.27 実施 学籍番号: 氏名 1 総得点 次の置換 σ, τ について στ の巡回置換型 (サイクルシェイプ) と位数を求めよ。(10 点) ( ) 1 2 3 4 5 6 , σ= 4 1 2 3 6 5 ( τ= 1 2 3 4 5 6 6 1 5 3 4 2 ) 【解答】 置換の積を計算すると ( ) 1 2 3 4 5 6 στ = = (1 5 3 6)(2 4) 5 4 6 2 3 1 となる。よって στ の巡回置換型は 2141 型である。また,στ の位数はその巡回置換型から 2 と 4 の最小公倍数である 4 となる。 2 G, H を群とするとき,次の問に答えよ。(各 10 点・計 20 点) (1) a, b ∈ G について,(ab)−1 = b−1 a−1 を示せ。 (2) f : G −→ H を群準同型とするとき,f (1G ) = 1H を示せ。 【解答】 (1): (ab)(b−1 a−1 ) = 1G および (b−1 a−1 )(ab) = 1G を示せばよい。 (ab)(b−1 a−1 ) = a(bb−1 )a−1 = a · 1G · a−1 = aa−1 = 1G (b−1 a−1 )(ab) = b−1 (a−1 a)b = b−1 · 1G · b = bb−1 = 1G これより (ab)−1 = b−1 a−1 が成り立つ。 (2): t = f (1G ) とおくと,f は準同型であるから t = f (1G ) = f (1G · 1G ) = f (1G )f (1G ) = t2 が成り 立つ。この両辺に t−1 をかけて t = 1H を得る。よって f (1G ) = 1H である。 3 群 G において次で定まる二項関係は同値関係であることを示せ。(10 点) a ∼ b ⇐⇒ ∃ x ∈ G s.t. b = x−1 ax 【解答】 反射律,対称律,推移律をそれぞれ示す。 (i): 任意の a ∈ G について a = 1G · a · 1G = 1−1 G · a · 1G が成り立つので,a ∼ a である。 (ii): a ∼ b とすると,ある x ∈ G が存在して b = x−1 ax が成り立つ。このとき a = xbx−1 となるが, x = (x−1 )−1 であるから,y = x−1 とおけば a = y −1 by が成り立つ。よって b ∼ a である。 (iii): a ∼ b, b ∼ c とすると,ある x, y ∈ G が存在して b = x−1 ax, c = y −1 by が成り立つ。このと き (xy)−1 = y −1 x−1 より c = y −1 by = y −1 (x−1 ax)y = (y −1 x−1 )a(xy) = (xy)−1 a(xy) が成り立つので, a ∼ c である。 以上から与えられた二項関係は G 上の同値関係となる。 4 以下で定まる行列 A, B を用いて G = {Am B n ∈ GL2 (R) | m, n ≥ 1} とおくとき,以下の問 に答えよ。ただし I は 2 次の単位行列を表す。(計 60 点) [ ] [ ] 0 1 −1 1 A= B= 1 0 −1 0 , (1) A および B の位数を求めよ。(5 点) (2) A−1 ∈ G および B −1 ∈ G を示せ。(5 点) 【Hint: A−1 = Am B n , B −1 = Am B n となる m, n ≥ 1 をそれぞれ求める。】 (3) AB = B −1 A および BA = AB −1 を示せ。(5 点) (4) G = {I, A, AB, AB 2 , B, B 2 } であることを示せ。(5 点) 【Hint: 任意の G の元は Am B n (1 ≤ m ≤ 2, 1 ≤ n ≤ 3) と表せることを示す。】 (5) G は GL2 (R) の部分群になることを示せ。(10 点) (6) f : G −→ R× を X 7−→ det X で定めるとき,f は群準同型であることを示せ。(10 点) (7) Ker f = ⟨B⟩ を示せ。(10 点) (8) Im f = {±1} であることを示せ。(10 点) 【解答】 (1): Am , B m (m = 2, 3, . . . ) を計算してみると [ ] [ ] 1 0 0 −1 A2 = , B2 = , 0 1 1 −1 [ B3 = ] 1 0 0 1 となり,A2 = B 3 = I が分かる。よって A の位数は 2 , B の位数は 3 である。 (2): A2 = B 3 = I より A−1 = A, B −1 = B 2 である。よって A−1 = A = A1 B 3 ∈ G, B −1 = B 2 = A2 B 2 ∈ G である。 (3): 両辺をそれぞれ計算して比較する。 [ ] [ ] −1 0 −1 0 AB = , B −1 A = B 2 A = , −1 1 −1 1 [ BA = ] 1 −1 , 0 −1 [ AB −1 = AB 2 = 1 −1 0 −1 ] よって AB = B −1 A, BA = AB −1 が成り立つ。 (4): A2 = B 3 = I より {I = A2 B 3 , A = AB 3 , AB, AB 2 , B = A2 B, B 2 = A2 B 2 } ⊂ G である。また (1) より Am = { I (m ≡ 0 mod 2Z) A (m ≡ 1 mod 2Z) , I Bn = B B 2 (n ≡ 0 mod 3Z) (n ≡ 1 mod 3Z) (n ≡ 2 mod 3Z) であるから,任意の m, n ≥ 1 に対して Am B n ∈ {I, A, AB, AB 2 , B, B 2 } となる。よって G = {I, A, AB, AB 2 , B, B 2 } が成り立つ。 (5): (1), (2), (3) より A2 = B 3 = I, AB = B 2 A, AB 2 = BA が成り立つ。Am B n , Ap B q ∈ G とする pn と,BA = AB 2 より B n A = AB 2n であるから,B n Ap = Ap B 2 p Am (B n Ap )B q = Am (Ap B 2 n )B q = Am+p B 2 p n+q となる。よって (Am B n )(Ap B q ) = ∈ G より G は積で閉じる。また I = A2 B 3 ∈ G である。逆元については (Am B n )−1 = (B n )−1 (Am )−1 = (B −1 )n (A−1 )m = (B 2 )n Am = B 2n Am = Am B 2 m+1 n ∈ G である。以上から G は GL2 (R) の部分群をなす。 【別解】 (4) より G = {I, A, AB, AB 2 , B, B 2 } であるから,この乗積表を計算してもよい。A2 = B 3 = I, AB = B 2 A, AB 2 = BA を用いて計算すると,G の乗積表は以下のようになる。 I I A AB AB 2 B B2 A AB AB 2 B B2 I A AB AB 2 B B2 A I B B 2 AB AB 2 AB B 2 I B AB 2 A AB 2 B B2 I A AB 2 2 B AB A AB B I 2 2 B AB AB A I B これより G は積で閉じ,I ∈ G であり,またどの行にも I が出てくるので G の各元についてその 逆元も G に存在することが分かる。よって G は GL2 (R) の部分群である。 (6): X, Y ∈ G に対して f (XY ) = det XY = det X · det Y = f (X)f (Y ) より f は準同型である。 (7): 計算すると det A = −1, det B = 1 である。これより det Am B n = det Am · det B n = (det A)m · (det B)n = (−1)m · 1n = (−1)m となる。ここで Am B n ∈ Ker f とすると Am B n ∈ Ker f ⇐⇒ f (Am B n ) = 1 ⇐⇒ det Am B n = 1 ⇐⇒ (−1)m = 1 ⇐⇒ m ≡ 0 mod 2Z となることから,m は偶数である。このとき A2 = I だったので Am = I であるから,Am B n = I · B n = B n ∈ ⟨B⟩ となる。これより Ker f ⊂ ⟨B⟩ である。逆に det B n = 1n = 1 より ⟨B⟩ ⊂ Ker f でもあるので,Ker f = ⟨B⟩ が示せた。 (8): (7) で示したように f (Am B n ) = (−1)m であるから,Im f = {±1} である。
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