負イオン注入によりシリコン酸化膜中に導入した ゲルマニウム原子の状態

京都・先端ナノテク総合支援ネットワーク
京都大学
Kyoto-Advanced Nanotechnology Network
平成19年度
ナノ計測・分析領域における支援成果
トピックス
負イオン注入によりシリコン酸化膜中に導入した
ゲルマニウム原子の状態分析
a
シャープ株式会社基盤技術研究所
b 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻
洗暢俊a、足立浩一郎a、小瀧浩a 、辻博司b、後藤康仁b、石川順三b
【研究目的】
ゲルマニウム(Ge)ナノ粒子を含有するシリコン酸化膜では、400nm付近のブルー光の
カソードルミネッセンス(CL)やフォトルミネッセンス(PL)が得られているが、さらにエ
レクトロルミネッセンス(EL)も期待されている。発光機構としては二酸化ゲルマニウム
の酸素欠陥による発光(ODC)が有力と考えられている。そこで、ナノ支援で提供されて
いるX線光電子分光装置を用いて、注入したGe原子の深さ分布や酸化状態を調べた。
【成
果】
SiO2中に負イオン多重注入で導入されたGe原子は、10~50nmの深さ領域に一様に分布
し、注入直後では約60%がほぼ一様に酸化されている(Ge02が15%、GeOが45%)。真空中の熱
処理では温度の増加と共に環元が進み、800℃では約65%が金属結合となり、Geナノ粒子
が形成されることがわかる。また、700℃では約40%、800℃では約30%のGe原子が一酸化状
態となり、二酸化Geに対して酸素欠損となる事が判明した。酸素欠陥の形成としては
700℃程度が適していると言え、CLやPLの発光強度変化とも対応する。今回調べた熱処
理によるGeの酸化状態の変化ならびに深さ分布をもとに、ODC形成の最適化を図ると共
にELの評価をさらに進める。
Fig.1 Ge 3d photoelectron spectra in XPS analysis of Ge-implanted SiO2 film with Ge concentration of about 6 at.% after
annealing at 700 and 800℃ as well as as-implanted sample.
Fig2. Oxidation state of Ge atoms implanted in Si02 film by multi-energy negative ion implantation with Ge concentration of
about 6 at.% after annealing at 700 and 800℃ as well as as-implanted sample.