平成24年度長期研修生 研究報告概要 鳥取県教育センター教育相談課

平成24年度長期研修生 研究報告概要
鳥取県教育センター教育相談課
長期研修生 倉吉市立成徳小学校 山本 歩美
1 研究テーマ
通常の学級の国語科における、一人一人の表現力育成をめざした授業づくり
~授業のユニバーサルデザイン化による、「わかる・できる」授業づくり~
2 はじめに
国語科の授業は、実生活で生きてはたらき、各教科等の学習の基本ともなる国語の力を身につけることを目
標として行われている。しかし、日々の児童の姿に、言葉による表現のつたなさや言葉で表現することへの苦手
意識を感じることがある。
児童の言葉での表現力を育てるためには、「わかる・できる」授業を通して、適切な表現方法や内容を一人一
人の児童が理解し、活用できるようにすることが必要ではないだろうかと考えた。
3 研究目的
(1)研究の仮説
国語の基礎・基本
一人一人が「わかる・できる」授業
・「単元を貫く言語活動」
・「国語授業のユニバーサルデザイン」
表現力の育成
(2)研究方法
① 理論研究
ア 国語科教育について(国語の基礎・基本とは?) イ 特別支援教育について(どんな工夫や配慮を?)
② 所属校での授業実践(第2学年25名)
ア せつめいの文をくらべて読もう「ふろしきは、どんなぬの」(全 11 時間)
イ なるほど!そうなんだ!本を読んで「ひみつクイズ」を作ろう「ビーバーの大工事」(全 17 時間)
4 研究内容
(1)実践① せつめいの文をくらべて読もう「ふろしきは、どんなぬの」(全 11 時間) (7/3~7/12)
【ねらい】 説明の表現様式の違いを考えたり、「質問」と「答え」の内容を表す大事な言葉や文を見つけたりし
ながら構成上の順序に気を付けて二つの文章を読み、それぞれの内容を読み取る
国語授業のユニバーサルデザイン化に向けて
【焦点化】①目標中の活動部分をめあてとして掲示する
②本文の必要な部分だけ拡大して掲示する
⇒スムーズに学習に取りかかることができた
【視覚化】①同じもの、対になるものを色分けして掲示する
②掲示物を使って説明させる
⇒同じもの、対になるものという文や文章同士の関係が
捉えることができた
⇒話題に沿った話し合いができた
【共有化】①ペアの友だちと説明し合う
②重要な発言を再現させる
⇒発言する児童が増えた
⇒お互いの考えに気づき、認め合うことができた
ユニバーサルデザ
イ ンで の工夫や配慮
は、児童の学習をスム
ーズにし、理解を深め
ることにつながった。
(2)実践② なるほど!そうなんだ!本を読んで「ひみつクイズ」を作ろう「ビーバーの大工事」(全 17 時間)
(10/26~11/9、11/21~11/22)
【ねらい】 自分がクイズ作りに使いたい文章を選び、文章の事柄の順序に沿って書かれている内容を読み
取ったり、主語と述語が照応したクイズを作ったりする
活用
【展開部】
理解
①中核教材でのクイズ作り
⇒「説明」が書けない
単元を貫く言語活動を設定し、
活動を繰り返した、3回目では…
【発展部】
②副教材でのクイズ作り
⇒「説明」は「答え」の繰り返し
③補助教材でのクイズ作り
⇒個別の支援の結果、適切な
「説明」が書けた
単元を貫く言語活動を設定し、活動を
繰り返すことで、身につけたい力の理解
を深め、活用に近づくことができた
5 研究のまとめ
(1)「単元を貫く言語活動」
単元を貫く言語活動の充実を図った実践②
では、児童全員が自分の伝えたいことを「質
問」と「説明」を加えた「答え」の形式にまとめる
ことができた(内容の読み取りができている)
「単元を貫く言語活動」を充実させること
は、「わかる・できる」授業の重要な要素
(2)「国語授業のユニバーサルデザイン」
実践②でのアンケートや振り返りでは、単元の学習が
進むにつれ、ユニバーサルデザインでの工夫を有効だと
感じる児童が増える傾向があった
ユニバーサルデザイ
ン化は、「わかる・でき
る」授業に有効
(3)表現力について
児童は、実践①で「質問」と「答え」の形式について理解できていたため、実
践②での書き換えをスムーズに行い、さらに「説明」を書き加えることができた
「質問」と「答え」の形式における表現力が一つ高まった
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
4
10
13
14
16
17
(時数/全 17 時)
よく分かった
大体分かった
あまり分からなかった
全然分からなかった
【焦点化】学習のめあてを聞いて、何を
するのか分かりましたか
国語の基礎・基本を、「単元を貫く言語活動」と「国語授業のユニバー
サルデザイン」によって児童一人一人が理解し、活用することは、表現
力を高めることにつながると考えられる。
6 今後の課題
①単元を貫く、最適な言語活動を行うため、様々な言語活動そのものの研究を行う
②学習の理解を深めるため、より一層の授業の工夫、支援が必要な児童により適した支援の内容を考えていく
③授業で身につけた力の日常化のため、他教科や日常的な活動などと関連させた表現活動を工夫していく
7 おわりに
「単元を貫く言語活動」と「授業のユニバーサルデザイン」は、一人一人が「わかる・できる」授業を実現する
上で、今後広げていきたいことであるが、あくまでも手段である。身につけさせたい力を見失わず、児童が学ぶ
意欲をもてる楽しい授業、日常生活の様々な場面とつながった授業に少しでも近づけて行きたい。