市同研だより 2015年 9月10日 小郡市人権・同和教育研究協議会 研究推進部 第137号 第 33 回小郡市同研夏期研修会の報告集~参加者は 640 名~ ≪第33回市同研夏期研修会テーマ≫ 差別の現実から深く学び、部落解放・人間解放の道筋を切りひらく実践を創り上げていこう 第33回市同研夏期研修会は、8月22日(土)小郡市文化会館大ホールを全体会場に、600名 を超える参加者のもと開催することができました。 全体会の後、分科・分散会に移り、社会教育講座では、「ある精肉店の話」の映画上映、 分科・分散会8会場では、19本の実践報告をもとに実践の交流と活発な意見交流がおこ なわれました。この分科・分散会では、例年行っていた行政部会・就学前教育部会・学校 教育部会ごとではなく、3部会合同での開催としました。各保育所・園、学校、地域や行 政において、この研修会で交流したことが実践としていかされることを期待します。 最後に、この夏期研修会に向け、実践報告をしていただいた方をはじめ、全体会や分科・ 分散会の業務として協力いただいた方々にこの書面をお借りしてお礼を申し上げます。 ありがとうございました。 ≪社会教育講座≫ 『ある精肉店の話』 ~映画上映~(やしほ映画社・纐纈あや監督作品) バリアフリー版(日本語字幕付、音声ガイド) ○監督の纐纈あやさんの話は聞いた事があったのですが、いつかこの映画を見たいと思 っていました。良かったです。私たちの生活が色々な人の上になりたっていることを 実感しました。実際に見ること、触れることの学びの大きさを思いました。 ○長男さんの「ここを出ようと思った事もあったが、継ぐのが自分の役目」とおっしゃ り、兄弟で続けてこられ、また新たな模索をされている事にすごいと思った。部落差 別と戦いながら、 「自分も変わらないと」と言われた言葉に、改めて私自身も変わらな ければなと思いました。 ○映像は衝撃的でした。北出さんの「本来まっとうするはずの命を他の生き物の都合で・・」 という言葉が残りました。価値観の変わる内容で、そして、こんな大変な仕事をして来 てくださった方の思いや、受けてきた差別を思うともっともっと多くのことを知らなけ ればならないと思いました。 ○淡々と日常がすぎていく。そこに生活と現実がある。生きる人々の力強さを感じまし た。「美しい」と思いました。 【社会教育講座アンケートより】 ≪分科・分散会①≫…「子どもの人権感覚を育むために何を大切にするのか」 ○「正しい認識をつけ、自分自身や集団を見つめる」 小郡小学校 旧5年学年集団 ○「声をつなぐ関わりをつなぐ人をつなぐ~縦の糸と横の糸を紡ぐ取り組みを通して」大原中学校 旧3学年職員集団 ○「人権・同和教育授業の各学年の取り組み~各学年からの報告」 小郡高等学校 1年 熊本さん 2年 安元さん 3年 中原さん 「子どもの人権感覚を育むために何を大切にする か」という討議の柱の下で、小郡小・大原中・小郡 高の 3 校の実践レポート報告と、それに関わる質問 を受けました。その後の全体協議では、「子どもの 困り感を教師がしっかりと把握し見通しを持つこ とで、全員が安心できる学級になる。」 「子どもの人 権感覚を育むためには、まず教職員など大人の人権 感覚が大切だということ。」という意見が出されま した。また、 「小・中・高と校種の違う教職員間でお互いの教育段階でどんな力を身につ けさせてほしいか。」という交流もできました。 まとめでは、研究協力者の高木さんより「こだわる」と「つながる」というキーワード を出していただきました。自分たちが何に「こだわり」、子どもたちに伝えていくのか、 様々な立場の人と「つながり」、現地に足を運んで学んでいくことが差別を無くすことに つながることを提言されました。 ≪分科・分散会②≫「子どもを取りまく課題を中心に据えた連携と仲間づくりをどう進めていくのか」 ○「いっしょ いっしょ」 小郡中央保育園 木下 文子さん ○「Aさんが楽しいとみんなが楽しい」~Aさんとの関わりから学んだこと~ 三国小学校 田中 廣樹さん ○「ともに成長できる仲間づくり」 小郡中学校 大石 裕二さん 保・小・中の3本のレポート、そして「子どもを取り まく課題を中心に据えた連携と仲間づくりをどう進め ていくのか」という討議の柱をもとに交流した。 保・小・中と3つの教育現場の取り組みを同時に聞く ことができ、配慮を要する子への支援についてそれぞれ の発達段階において様々な工夫がなされていること、ま た職員間や専門機関、職員と保護者などの横のつながり、個別の支援計画や連絡会など 保・幼―小―中の縦のつながりが分かり、連携の必要性を改めて共有し合うことができた。 全体討議では、子どもの特性を理解し支援していく上で、保護者同士のつながりが大切 であることも話題となった。また、それぞれの教育現場で取り組んではいるものの保護 者同士をつなげていくことのむずかしさや、「書くこと」が苦手な子においても「何が」 「どんな場面が」 「どんな感情だったか」について書くことで自分の気持ちを整理する必 要があることなど、今後の課題もあがっていた。 ≪分科・分散会③≫「子どものもつ課題に、どう支援していくか」 ○「班ノートで心をつなげよう」 三国中学校 鹿野 美樹子さん ○「外国籍の児童をむかえて」 立石小学校 教職員集団 第3分科・分散会では、三国中学校と立石小学校の2本の実践報告をもとに「子ども のもつ課題に、どう支援していくか~子どもや保護者の思いや願いを大切にしながら~」 を討議の柱として、論議・交流を行いました。三国中のレポートに対して、 「子どもと集 団とをつなげるために、言葉だけではなく文字でつなげていくことの大切さを学んだ」 という意見が出されました。立石小のレポートに対しては、 「言葉や文化、宗教の違いなどで様々な苦労がある」 「子ど もをつなげるために、地域の教材を取り入れていることを 嬉しく思う」 「地域にも呼びかけて一緒に取り組みができた ら」などといった意見が出されました。まとめとして、研 究協力者の水田さんから、 「子どもが学校や地域でどのよう に過ごしていくかを保護者としっかり話をし、学校、行政、地域が連携して子どもが安 心して過ごせる居場所をつくっていくことが大切である。」という提言をして頂きました。 ≪分科・分散会④≫ 「教職員の部落認識をどのように深めていくのか」 ○「正しく知ること」 東野小学校 深山 翔平さん ○「教師が自らを語ることから」 三井高校 人権・同和教育推進委員会 1本目は、採用されて5年目を迎えた報告 者が、どのようにして学びを深めていったの かを中心としたレポートでした。どんな出会 いをしてきたのか、何にこだわるのか、感性 を磨くとは、目の前にいる子どもたちに対し て教職員としてどうあるべきかを振り返る内 容でした。2本目は、授業中の差別事象に対 して、学校として取り組んできたレポートでした。教職員集団が、どのような立ち位置 で部落問題にかかわろうとしているのか、本気で差別をなくすことをのぞんで、自分の 言葉で子どもたちに部落問題を語っていくことの重要性などを学ぶことができた充実し た内容でした。 また、今なお、現存する差別事象に目を向け、なぜそのような事象が引き起こされる のか論議しなければ差別はなくなっていかないことや、教職員自身も、差別をなくそう とする仲間になっていくことが重要であることなども学ぶことができました。 ≪分科・分散会⑤≫「子ども達の厳しい状況をふまえ、『子どもの居場所』づくりをどう進めていくのか」 ○「相談から見える小郡市の子ども達」 子育て支援課 髙栁 浩隆さん、家庭児童相談室有川 政次さん ○「思いっきり遊び、すっきり学ぶ、そしてしっかりつながるBBクラブ」 御原小学校教職員集団 今年度は、行政部会と学校教育部会の2本のレポート を発表しました。行政部会からは、家庭教育相談員によ る小郡市の相談件数や相談内容及び児童虐待の事例が 報告されました。また、ネグレクトの連鎖を断ち切るた めの養育支援訪問事業や学力保障を目指した学び場支 援事業を紹介され、子どもたちやその家族を支える広が りが支援につながると話されました。 また、学校教育部会は、御原小学校から、特別支援学 級在籍の子どもたちの BB クラブへの参加と、そこでの様子が報告されました。また、BB クラブで過ごす子どもたちの言動から、学校の課題も明らかになり、職員の共通認識が 図られていることが話されました。その後、意見交流を行い、学校と BB クラブの連携が 必要であること、そして学童保育所や行政で行っている支援事業を学校に広げていくこ との必要性が確認されました。地域で子育てをしている家庭に関わっていくことが子ど もの居場所づくりにつながると実感しました。 ≪分科・分散会⑥≫「子どもの持つ課題を中心に据えながら、子どもたちをどうつないでいくのか」 ○「だれもが安心して過ごせる教室にするために」 のぞみが丘小学校 5年学年集団 ○「全員参加の修学旅行を」 宝城中学校 高山 晃さん 1 本目ののぞみが丘小学校のレポートでは、子どもの課題をどうとらえるのか、それを どう学校全体で共有していくか、そして、どう子どもたちに把握させていくのかを学ぶ ことができました。1 学年が 4~5 クラスあるが、学級担任ではなく学年担任という意識 で取り組むことが大切であることも実感しました。また、2本目の宝城中学校からのレ ポートからは、修学旅行の取り組みを通しての集団づくりを提起されていました。まず 先生方が子どものことを積極的に話題にし、子どもたちの様子や課題を共有することの 大切さを振り返ることができました。 「子どものことが気になるのか、気にならないのか、 …」と言われた先人の思いにふれることのできる分科・分散会でした。 ≪分科・分散会⑦≫ 「自尊感情を高めるための支援をどのようにつくっていくのか」 ○「かがやく笑顔は、たからもの」 味坂小学校 山下 広子さん ○「交流及び共同学習の取り組みについての報告」 小郡特別支援学校 原口 由佳さん、藤岡 隆さん 味坂小学校からは、 「特別支援学級の新設までの取り組みとその後の取り組みでの保護 者との連携や子どもの捉え」についての丁寧な報告と、小郡特別支援学校からは、 「高校・ 中学校との交流・共同学習」について、具体的に歌や掲示物の紹介を交えた詳しい報告 がありました。 『自尊感情を高める支援をどのようにつくっていくか』というテーマで討 議し、支援学校や通級教室、交流学級の担任、幼稚園等から様々な立場から意見が出さ れました。「褒めることは大切。だが教師側の視点か ら一方的に褒めるのではなく、子どもの感情に寄り添 って喜びを共有していくことが子どもの自尊感情を 高める」と確認できました。研究協力者の松本さんか らは、「障害の有無にかかわらず、どの子も『自分は ありのままでいいんだ』と安心してその場にいること ができる、失敗しても大丈夫という社会を創っていき たいですね。」と提言していただきました。 ≪分科・分散会⑧≫ 「子どもの持つ課題を中心に据えた連携をどのようにつくっていくのか」 ○「Aくんとの3年間」 立石中学校 牧草 さおりさん ○「A児から学んだ家庭との連携・共有の大切さ」 大原小学校 岩熊 瑛子さん ○「互いに認め合う集団づくりをめざして」 御原保育所職員集団 本分科会では、保育所、小学校、中学校からの3本のレポ ートをもとにして、校内、家庭や関係機関との「連携」につ いて意見交流を行った。 交流の中では、次の3つのことが明らかとなりました。1 点目は、被差別の視点に立って、子どもの思いを汲むことで ある。子どもの思いを基にした学習を日々の実践の中で行う ことが求められる。2点目は、連携のための基盤として保護 者と連絡を取ることである。家庭訪問等で信頼関係を深め、保護者の願いを知ることが 必要である。3点目は、関係機関や職員集団の堅実な連携である。子どもの課題に対し て、担任一人で抱え込むことなく、多くの人が多面的にアプローチをとることが求めら れる。課題も2点あげられた。1点目は、子どものもつ課題の本質をとらえることであ る。表面的な問題でなく、問題の背景を知ることが求められる。2点目は、検証の必要 性である。連携やその手段が十分であるか検証し続けることが必要である。
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