<第17号>平成 27 年 9 月 15 日 湘南養護学校 支援連携部 相談支援係 ―教師編ー ~夏季公開研修会の振り返り~ 第 1 回 7 月 29 日(水)『知的・発達障害のある人への医療的支援』 社会福祉法人 青い鳥 小児療育相談センター 原 仁 医師 講師の原先生は、小児科医としての長いご経験から発達障害のある方への薬物療法を中心にお話して いただきました。薬物療法や神経学的な話は難しいところもありましたが、実際に本校の児童生徒の中 には服薬治療を受けているお子さんもいます。改めて医療的支援について学ぶよい機会となりました。 行動障害と薬物療法 対応の基本は正確に情報やデータを収集し、自分自身の安全も 確保して、問題となる行動のきっかけや原因への働きかけを行い ながら行動変容を目指します。ただし、薬物療法を併用すること 正確な情報、冷静な態度 安全の確保(本人も援助者も!) 行動障害の意図を汲む 行動変容法が基本 薬物療法の併用に躊躇しない をためらうことなく医療につなぐことも大切!とのことでした。 行動障害の原因が神経活動の過剰な興奮や抑制系の神経活動の弱さにあるときには、リスペリドン(リ スパダール)やコンサータ、一部の抗うつ薬などが有効とのことでした。しかし、リスペリドンは食欲 増加という副作用が生じやすいため、代わりにエビリファイを使うことがあるそうです。 てんかんの治療 知的障害(精神遅滞)が重いほどてんかんを合併する割合が高く(15-40%)、発作による外傷やお風 呂での溺水に最も注意しなければならないとのことでした。てんかんは基本的に服薬治療が行われます が、保護者の判断で日によって服薬したりしなかったりするのは大変困るそうです。また、迷走神経刺 激療法という外科手術により発作量の減少を目指す治療の紹介もありました。 ADHD の薬物療法 ADHD の治療にもっとも使われるのはコンサータという徐放剤です(徐放剤=“徐々に薬剤が放出さ れる”作用のある特殊なカプセル。中身はリタリンと同じメチルフェニデート) 。この薬の良い点は、 “ド ラッグ・ホリディ”という活用の仕方で、使いたい日だけ使えばよいという他の薬にはない特徴があり ます。行事ごとや大事な日だけ使えるというのは大変便利です。また、字もきれいに書けるようになる 効果があるそうです。 コンサータのデメリットとしては、薬効時間が10時間程度なので副作用である食欲減退がある場合、 給食が食べられなくなってしまいます。そうした副作用を回避するときには、コンサータの代わりにス トラテラという薬を使います。 ADHD に限らず、どのお薬も効き方や副作用の出方は人それぞれで す。 いずれの場合も、家庭と連携して服薬の状況を細かく聞き取り、 学校でもデータを記録していくことが大切であるとのことでした。 今回のご講演では、原先生のご著書2冊を支援連携部で購入しました。ぜひご活用ください! ☆「最新 子どもの発達障害事典 DSM-5 対応」 合同出版 2014 ☆「家族のためのアスペルガー症候群・高機能自閉症がよくわかる本」 2013 第 2 回 8 月 24 日(月) 『強度行動傷害の理解と支援』―成人入所施設支援員の立場から― 県立 中井やまゆり園 高橋隆志氏 第 2 回目は、中井やまゆり園の高橋氏をお招きしました。主に知的障害と自閉症を併せ持った方々へ の支援についてお話いただきました。冒頭で「(強度)行動障害に至らないように配慮や支援を行うこと が大事である」というご説明があり、改めて予防的支援の大切さを考えさせられました。 なぜ強度行動障害になるのか 強度行動障害は、障害特性と環境要因の相互作用の悪循環が積み重なることによって形成されます。 下の図の左側に示されるような悪循環を断ち切り、いかに右側のような好循環を生み出していくか。相 手からのよい反応を引き出していくために、周囲からの働きかけが大切とのことでした。 環境 刺激、支援者、状況など 強 度 行 動 障 害 障害特性 「分からない」「伝わらない」 悪循環 パニック 暴れる 破壊 自傷他害 好循環が大切! 障害特性 「分かる」「伝わる」 安心・安全 信頼関係 叱責 対応困難 好循環 安 定 し た 暮 ら し やまゆり園での支援の考え方 表面的な行動だけに注目すると問題を複雑にしてしまうので、行動の直前にどのような刺激や環境要 因があったかを調べ、それらとの相互作用として行動を捉えるようにされています。また、施設利用者 を新規に受け入れる際には、ご本人の好きなことが何かを教えてもらうと支援の手立てを考えやすいの で非常に助かるとのお話もありました。 やまゆり園での支援の実際 環境設定については、ノースカロライナ州の自閉症支援プログラムである TEACCH の考え方を取り 入れられている面が多いようです。支援の実際の写真をいくつもご提示いただきました。 個人への働きかけとしては、1 対 1、個別支援、グループ活動への参加は人によって重点の置き方は 異なりますが、 「この人はグループは無理だから参加させない」といった固定的な考え方はとられないそ うです。あわせて、「自閉症だから、いつもと同じようにしなければならない。」と一義的に考えず、具 体的に見通しを持たせると変化に対応しやすくなるとの考え方に基づき、変化への柔軟性の学習も実践 されていました。この点については、私たちは日々の指導でつい見落としてしまいがちな落とし穴では ないでしょうか。 “支援を受け入れることも自立のひとつ”という話もありましたが、柔軟性の獲得を目 ... 指した丁寧なアプローチは、 “他者を受け入れる力”を獲得することにつながるのだと思います。 また、心身の安定に向けてリラクゼーションルーティンとして、日頃から深呼吸や軽い運動などを定 着させることで、不調になったときに備えておくようにアプローチされているそうです。確かに、情緒 不安定になってから「深呼吸してごらん」と伝えてもなかなか実施しにくく、日頃から自分にとっての リラクゼーション方法を実感しておくことが大切です。 その他、具体的な支援の実際の写真をたくさんご紹介いただきました。また、ご好意により写真資料 はいただくことができましたので、ご覧になりたい方は各学年・学部 Co.にお尋ねください。
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