医薬品副作用被害救済,不支給の 29%は「不適正使用」

Vol.1.55
平成調剤薬局 医薬品情報 2014.12.29
厚生労働省は 12 月 24 日,医薬品・医療機器等安全
性情報 319 号で,医薬品の使用による健康被害の救
済制度の現況を明らかにした。
医薬品副作用被害救済,不支給の 29%は「不適正使用」
この 5 年で認定が行われた事例 5,570 件のうち,不支給は 15%。理
由の内訳のうち使用の目的や方法が適正とは認められない「不適正
使用」が 29%に上っていた。
DI 室長:朝倉 恵美子
【請求件数は年々増加,昨年度は 1,371 件】
救済制度は,一般用医薬品を含む医薬品が適正に使用されたにもかかわらず,副作用による健康被害を補償す
る制度で医療費や各種年金などが給付される。
報告書によると,救済制度の請求件数は年々増加し,昨年度(2013 年度)は 1,371 件と 1998 年以来最多を記録
した。
それに伴い,なんらかの理由で救済が認められない事案も増加している。2009~13 年度までに決定された事例
5,570 件のうち,支給と決定された割合は 85%,不支給は 15%だった。
不支給の理由については「医薬品により発現したとは認められない」が 38%と最多,次いで「使用目的または
使用方法が適正とは認められない」が 29%と続いた。
支給事例の副作用による健康被害のうち,最も多かったのは「皮膚および皮下組織障害」で 32%,次いで「肝
胆道系障害」と「神経系障害」がそれぞれ 12%と続いた。
【ラモトリギンによる重症薬疹「不適正使用で不支給となった事例多い」】
報告書では不適正使用と判定され不支給となった事例を複数紹介。承認用量を超えた用法・用量が処方された
例や必要な検査が行われないまま使用が継続された例,過敏症の既往があるにもかかわらず類似の成分を含む医
薬品が投与された例など医療側の要因による事例の他,医師の指示を守らず自己判断で医薬品を使用した例など
も示されている。
特に抗てんかん薬ラモトリギン(商品名ラミクタール)に関して厚労省は「同薬による重症薬疹の事例で適正
な使用と認められず不支給となった事例はいまだに多い。ほとんどは投与初期の用量が過量または増量の間隔を
守らずに投与されていた」と指摘。使用の際には添付文書を必ず確認するよう求めている。その他の事例は次の
通り(一部抜粋)。
【承認された用法および用量を遵守せず使用された事例】
ジクロフェナクナトリウム徐放カプセル(商品名ボルタレン SR)による胃穿孔:同薬(1 日 2 回食後)を約 4
カ月,1 回 1 カプセル,1 日 3 回使用し,胃穿孔を生じた
【必要な検査が実施されていない事例】
骨粗鬆症治療薬エルデカルシトール(エディロールカプセル)による高カルシウム血症:同薬投与開始から 1
年 4 カ月後に高カルシウム血症が判明するまで一度も血清カルシウム値の測定が行われず,著明な腎障害の判
明後も 2 カ月半にわたり使用が継続された
【「禁忌」に該当する患者に使用された事例】
潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬メサラジン(ペンタサ)に過敏症の既往歴がある患者に同一成分別名称の薬
剤(アサコール)を投与:メサラジンによる薬剤性好酸球性肺炎の既往がある患者に,同一成分のアサコール
が投与され,間質性肺炎を生じた
【医師の指示によらず,自己判断で服用した事例】
感冒症状等に処方された医薬品を自己判断で服用:感冒症状等を認めたため,約 9 カ月前に医師から処方され
た総合感冒薬および去痰薬カルボシステイン錠の残薬を自己判断で服用し,多型紅斑型薬疹を生じた。
MTpro より引用