平成27年度病害虫発生予察特殊報第1号

平成27年度病害虫発生予察特殊報第1号
平成28年3月17日
山
梨
県
病害虫名:トマト黄化病
病源ウイルス:トマト退緑ウイルス
(Tomato chlorosis virus ,ToCV)
作物名:トマト
1 発生の経過
平成27年11月に中北地域で栽培されている抑制トマトにおいて、葉の黄化症状を
呈する株が確認された。総合農業技術センターで黄化症状葉を採取し、RT-PCR 法によ
る検定を実施した結果、トマト退緑ウイルス(ToCV)に陽性であった。このため、横
浜植物防疫所に同定を依頼したところ、RT-PCR 法によりトマト黄化病であることが確
認された。トマト黄化病の山梨県内の発生確認は初めてである。
2 国内での発生状況
本病は平成20年に栃木県で初めて確認されて以来、群馬県、熊本県、鹿児島県、
福岡県、茨城県、大分県、千葉県、福島県、神奈川県の10県で特殊報が発表されてい
る。
3 病徴
(1) 発病の初期には、葉の一部の葉脈間が退緑黄化し、黄斑を生じる。
(2) 症状が進展すると葉脈に沿った部分を残して葉全体が黄化し、葉巻症状やえそ
症状が現れる。
(3) 黄化症状は中~下位葉に現れやすく、生理障害(苦土欠乏症)に似る。
(4) 発病株では生育が抑制され、収量が減少する傾向が見られる。
図1 ほ場での発病状況
図2 葉の黄化症状
4 病原ウイルスの性質と伝搬
(1) 本ウイルスはクリニウイルス属のウイルスで、タバココナジラミおよびオンシ
ツコナジラミの吸汁により媒介される。
(2) 媒介は半永続伝搬であり、ウイルスを吸汁したコナジラミは、数時間から数日
間ウイルス媒介能を有する。
(3) クリニウイルス属のウイルスは経卵伝染、汁液伝染、土壌伝染および種子伝染
はしないとされている。
5 宿主植物
アカザ科、キク科、ゴマノハグサ科、シソ科、ナス科、ナデシコ科、フウロソウ科、
リンドウ科で感染が確認されている。
6 防除対策
本ウイルスはタバココナジラミおよびオンシツコナジラミにより媒介されるため、
タバココナジラミが媒介するトマト黄化葉巻ウイルスによるトマト黄化葉巻病と同様
の対策を実施する。
(1) コナジラミ類の侵入を防ぐために、育苗、本ぽハウスともに、施設開口部(天
窓、側窓、換気扇口等)に防虫ネット(0.4mm目以下)を張る。特に出入
り口のカーテンはニ重にする。
(2) 購入苗はよく観察し、コナジラミ類の寄生やウイルス症状が見られないことを
確認してから定植する。
(3) 下記の表を参照し、育苗期から薬剤散布及び定植時の粒剤施用を行い、コナジ
ラミ防除を徹底する。
(4) 施設内外の雑草は、ウイルスの伝染源やコナジラミの繁殖場所となるため、除
草を徹底する。
(5) 発病株はすみやかに抜き取り、ビニール袋に入れて密閉し枯死させてから処分
する。
(6) 栽培終了後は全株を地際から切断または抜根し、施設を10日以上密閉しコナ
ジラミ類を死滅させる。
表
系統
ネオニコチノイド系
ミルベマイシン系
METI 剤
ピリフルキナゾン
コナジラミ類の主な防除薬剤
薬剤名
希釈倍率・使用量
使用時期
使用回数
1回
ベストガード粒剤
1g/株
育苗期または定植時
アルバリン/スタークル粒剤
1g/株
育苗期/定植時
1回/1回
ベストガード水溶剤
2,000倍
収穫前日まで
3回
アルバリン/スタークル顆粒水溶剤
3,000倍
収穫前日まで
2回
コロマイト乳剤
1,500倍
収穫前日まで
2回
ハチハチ乳剤
2,000倍
収穫前日まで
2回
コルト顆粒水和剤
4,000倍
収穫前日まで
3回
※農薬を使用する際は必ずラベルの使用基準を確認してください。
(山梨県病害虫防除所)