教育における合理的配慮とテクノロジー シンポジウム記録等 2015.03.14

教育における合理的配慮とテクノロジー
シンポジウム記録等
2015.03.14
長良川スポーツプラザ
岐阜特別支援学校
神山
忠
はじめに
研修会の企画時点では、各団体の代表者に登壇してもらい意見を
交わしあう形のシンポジウムを予定していました。しかし、登壇を
お願いした方々が「代表としての意見としては話せない」というこ
とでした。もっともだと思い、急遽いただいた相談等を元に皆さん
で考える形に変更させていただきました。そのことをご説明しない
まま会を進めたこと、お詫びいたします。
しかし、いろいろなお立場の方が参加していただき、お考えをお
話しいただけ有意義な会となりました。ご参加いただけた皆さんに
心から感謝しております。
H28年4月1日から完全施行される「障害者差別解消法」に向
けて、しっかりと準備ができる H27年度にしていきたいと願って
います。
今後とも、連携しながら学校教育だけでなく誰もが生きやすい社
会に向けて共に取り組んでいきたいと願っています。
事例に関して
今回のシンポジウムで取り上げた事例は、事前にいただいたご意
見と今年度いただいた相談の中から選んだ10事例です。総数12
4件のほんの一部です。全部を取り上げることができませんでした
が、いただいた方には、個別にお返事を出させていただきました。
感じたのは、保護者の方の意識の高さとこの法律に寄せる期待感
です。絞られた事例ですが、そこから合理的配慮を考えていくヒン
トを得られればと思っています。そして、当事者の権利保証につな
がればと願っています。
事例
1
(LD 診断あり
中学校
通常級在籍)
忘れ物が多いことで毎日のようにみんなの前で注意を受けていま
す。
忘れ物が多い原因は、正しく予定黒板を書くことができないこと
だと先生も本人も保護者も分かっています。
書くことに困難があり、時間的にも正確さ的にも与えられた時間
内に予定を書いて帰って来ることができません。
それに対して、デジカメで撮影させて欲しいというお願いをしま
したが許可されませんでした。
そして、今日も忘れ物の件で、みんなの前で叱られて帰ってきま
した。
この申し入れはモンスターですか?
フロアの感覚・意識
合理的配慮
66、分からない
8、合理的配慮ではない
1
議論になったのは、何故デジカメになったのか、その他の方法の模
索はなされたのかその辺りは十分に議論する余地があるのではな
いかということでした。
問題なのは、診断がある子に対して特別扱いになるからと門前払い
するスタンス。それだけでなくみんなの前で叱る行為です。学びの
土俵に上がるための配慮はしなくてはならないものです。通常級の
中に6.5%いるとされる配慮が必要な子に配慮しないのは差別と
なります。
このケース、結果としては許可されました。しかし、写した写真を
見て連絡帳を完成させるという条件付きでした。予定黒板を写す行
為が学習の本質なのか、次の日の予定を正確準備することが学習の
本質なのかを見ていく必要があると思われます。それは、対象の児
童生徒の実態や学年にもよることだと考えられます。
この点を含めて、丁寧に合意形成していくプロセスが大切だと感じ
ました。
事例 2(ADHDの特性あり
小学校
通常級在籍)
大型テレビに映し出して授業をされる場面がありますが、うちの
子はそれが理解できないと言っています。よく聞くと画面の反射が
気になって何が投影されているか分からないということでした。
そのことを先生に伝えたところ、
「カーテンや照明は配慮していま
す。そんな見やすい所に毎回移動させることはできません。他の子
もそんなことを言い出したら授業が成り立ちません。」とのお返事で
した。大型テレビを使うときだけ、見やすい位置に来させていただ
くことはそんなに無理なお願いでしょうか。
フロアの感覚・意識
合理的配慮
67、分からない
4、合理的配慮ではない
4
分からない、合理的配慮ではない、のご意見の中には、この事例で
見えづらい子は、この子だけでないのではないか。その場合、基礎
的環境整備が整っていないと考えて、反射防止フィルムを貼るなど
の環境整備が適切な対応ではないかというご意見でした。
また、この子が席を移動しなくてもいいような偏光サングラスなど
の活用も選択肢にあげて議論していくといいのではないかという
ご意見でした。
文科省から出されている「児童生徒の健康に留意してICTを活用するた
めのガイドブック」にもデジタル黒板活用時の配慮点に書かれている配慮は、
基礎的環境整備として行ったうえで、個別の配慮を検討していくという手順が
大切だと感じました。すべて個別の配慮で対応していくのではなく基礎的環境
整備として考えることで、他の児童生徒の学びやすさにもつながります。
大型テレビを使った授業が多くなってきましたが、本当に後ろの子も見えている
のかを確認してみるといいとおもいます。授業の中で効果的に使う工夫をする
中で、見やすいところに移動することも選択肢の一つだと思います。経験上授
業の中に動きを入れると集中力の持続にもつながると感じています。学びの土
俵に上がることと、学習効果という視点ももって合理的配慮を考えていくとみ
んなの学びにつながると感じた事例です。
事例
3 (PDD 診断あり
中学校
通常級在籍)
テストにおいても、なかなか文章を読んで理解して答えることは
難しいです。
しかし、支援者が問題文を読み上げると答えることはできます。
そこで、テストを別室受験で読み上げてもらう配慮をお願いしまし
た。
すると、
「テストの公平性が損なわれるのでできません。どうして
もということでしたら特別支援学級に入級してください。」と言われ
てしまいました。
高校入試や大学入試センター試験でもそうした配慮はしてもらえ
るのに、義務教育ではなぜしてもらえないのでしょうか。
フロアの感覚・意識
合理的配慮
54、分からない
21、合理的配慮ではない
0
合理的配慮は、本人または保護者の申し入れによってスタートしま
す。保護者が申し出られる配慮の多くは大学入試センター試験等で
の前例を元にして伝えてきます。しかし、それが本当にベストな配
慮とは限りません。そのためそのおかれた環境・状況の中でできる
最善の方法を探る取り組みや話し合いが大切だと考えています。
この事例で NG なのは、特別支援学級に入級してくださいというよ
うな返答をした点です。インクルーシブ教育に向かっている中、通
常級に6.5%いていい存在の子を排除する行為は紛れのない差別
です。
このお子さんは、定期テストではまだ配慮はされていません。しか
し、強化によって、小テスト、単元末テストにおいて、教室内で試
験官に指さししたところだけを小声で読み上げてもらうことを始
めました。
それで読み上げることで、本当にその子の理解度が表出できると
証明できたら、定期テストでも実施される方向で動いています。こ
うした試行期間も必要だと思っています。
事例
4 (自閉症の診断あり
中学校
通常級在籍)
息子は、視覚優位というよりも視覚過敏で集中して取り組むこと
が日常的に困難です。医師から、それ用のサングラスを勧められ作
りました。また、聴覚過敏もあるのでノイズキャンセリングヘッド
ホンを家では使っています。そうしたサングラスやヘッドホンを学
校でも使えると過ごしやすいと本人が言うので学校にお願いしたと
ころ許可されませんでした。何度もお願いすると、もしどうしても
と言うなら、
「保護者と本人で学級の他の生徒や保護者に説明して許
可を取ってください。」と言われました。これは過度な要求だったで
しょうか?
配慮を得るための全体への説明は、保護者や本人がしなければい
けないことでしょうか。
フロアの感覚・意識
合理的配慮
44、分からない
24、合理的配慮ではない
7
診断があり、医師の指示で作ったメガネ(サングラス)の使用を認
めないというのは差別です。しかし、それによりいじめの対象にな
らないか、他の子で不必要にサングラスをしてくるようにならない
かなどの心配点があります。それに対する対応力を学校はもてない
といけなくなってくるということを示してくれた事例だと思いま
す。
このケースでは、たまたま他の子で花粉症がひどくてゴーグルタイ
プのメガネをしてきたので、それに合わせて試験的に全体に何の説
明もなく使い始めました。すると、急な奇声や飛び出し行為がなく
なってきました。ヘッドホンは耳栓対応で試しています。
それよりも、配慮を提供するのは学校側なのか、クラスメイトなの
かというと学校側です。ですので、本人・保護者は学校に説明すれ
ばいいことで、クラスの仲間や保護者に説明する必要はありません。
(聞かれたら応えられる必要はあると思われます。)より学校側の
説明力、指導力が問われる時代になってきたと言えると思います。
事例
5 (知的障害特別支援学校
高等部
1年生
保護者)
新聞や会報で「就学奨励費でスマートフォンやタブレットの購入
代を出してもらえる」ということで入学時に購入しました。
しかし、学校の授業で使わないので学用品扱いできないため補助
の対象になりませんと言われてしまいました。
息子は、スマートフォンがあることで自力通学でき、苦手なスケ
ジュール管理もできるようになりました。
せっかくの制度なのに、授業で使わないから支給対象にしてもら
えないというのは合理性に欠けるような気がしています。
授業(教育課程上)のどこかに位置づけてもらい学用品として支
給対象にしてもらうのは過度な負担でしょうか?
フロアの感覚・意識
合理的配慮
15、分からない
56、合理的配慮ではない
4
学用品と認めることと、差別に当たるということは実は別物だと言
えます。学用品と認めるには、教育課程上に位置付けて、全生徒が
使うことが求められます。特別支援学校には様々な生徒がいますの
で、全生徒がそれを使って学ぶことを仕組める学校とそうでない学
校があるので一概に差別とか過度な負担とかの問題としてとらえ
られない事案です。
ただ、文科省としては、積極的に学用品として認めていくようにと
PR しています。ですので、今は認められなくてもいろいろな活用
事例を蓄積して、教育課程上に位置付けて行けるようにしていく過
渡期だと考えるといいと思います。
東大先端研の魔法プロジェクトでは、そうした実践事例を紹介して
います。
(http://maho-prj.org/)そこに各校で実践できる事例が
あれば教育課程上に位置付けやすいと思います。一度、見られると
参考になると思います。
テクノロジーによって生きやすさは改善されます。そうしたアンテ
ナを持っていることも現場にはより求められる時代だと思います。
事例
6.
(学習障害診断あり
中学校
通常級在籍)
息子は、書字障害の診断があります。書くことも困難だし、自分
で書いた文字を後で解読することも難しいです。オプトメトリスト
や作業療法士から「代替手段を使う」ことをすすめられました。し
かし、今までタイピング入力の経験も少なくローマ字もしっかりと
覚えていない状況です。家で取り組もうと思っても、学校の宿題を
こなすだけで時間がなくなりタイピング入力に取り組むことができ
ません。学校に相談すると、「持ち込みに関しては検討できますが、
使いこなすための指導は学校ではできません。
」との解答でした。
使って効果があり合理的だと認めてもらう前の段階で止まってし
まっています。どうしたらいいでしょうか?
学校に使いこなしの指導をお願いするのは合理的配慮の範囲でし
ょうか?
フロアの感覚・意識
合理的配慮
6、分からない
59、合理的配慮ではない
10
合理的配慮として認めてもらうには、一定の効果がある必要が要件
になってきます。しかし、経験のないツールをいきなり使いこなせ
る人はまれです。誰しも使いこなすための取り組みが必要です。
この事例では、宿題だけで手いっぱいなので時間的に難しい。通級
指導を受けているわけではない。身近にそうした塾もないために困
っていました。
考えられる合理的配慮の範囲でできることとしては、①通級指導を
受けられるようにして、そこで定期的に指導を受けられるようにす
る。②宿題をタイピングで行うことを認めて、宿題と別にタイピン
グの練習をしなくてもよいようにする。
(音声入力の活用も認める)
東京大学の先端研で行っている障害児童生徒が ICT を使って学ぶ
Do-it Japan(http://doit-japan.org/doit/index.php/)プログラム
に参加したり支援を受けるなどの方法が考えられます。(岐阜特別
支援学校の地域支援センターでもフォローしています。
)
事例
7
(身体5級左手に麻痺あり
小学校
通常級在籍)
身の回りのことはほぼできるが、左手のまひのために汁物のお椀
を持って食べることができません。そのために、個人持ちの食器の
滑り止めの上に食器を置き片手で食べるように幼稚園からしてきま
した。
高学年になるに連れて、
「そんなものをいつまでも使っているから
ダメなんだ」と言われたり、年度が変わるたびに学校に足を運び手
帳を見せながら説明をしたりしています。
個別の教育支援計画はありませんが、サポートブックを持ってい
ます。そこにはこのことは書かれています。
毎回説明してお願いするのは、障害があるとついて回ることでし
ょうか。
この事例は、いくつかの要素があります。先ずは、伸びしろをどう
考えるかということです。そんなものを使ったら出来るものも出来
なくなると考えるか、とにかく出来る方法を使い学び、必要に応じ
て抜いていくと考えるかで大きく異なってきます。
この場合、機能障害、機能不全で改善の可能性が低く診断や手帳も
あるケースです。それなのに「いつまでもそんなものを使っている
から」などと言うことは差別です。みんなと同じようにできること
が教育の目的になってしまうとこうした言動が出るのでしょう。よ
り教育の本質を問われる時代に突入したと自覚したいものです。
大切にしたいのは、個別の教育指導計画やサポートブックです。そ
れに書かれているものは、しっかりと理解したうえで合意形成のた
めの話し合いをしていく必要があります。
個別の教育指導計画やサポートブックは合理的配慮を得るためのパ
スポートとして先進国では位置づいています。ライフステージが替
わるごとに説明することは必要ですが、ゼロから毎回説明しなくて
よいようにサポートブックの活用をしていきたいものです。
事例
8
(LD の診断あり
中学校
通常級在籍)
もう4年以上 DAISY 教科書を家庭学習のみで使っています。中学
に入り教科によってページ順に授業が行われなかったり、授業中で
も教科書の前に戻ったり、後に飛んだりする授業をされることがあ
り、家庭学習で今の単元を頭に入れておくだけでは授業で困ること
が出てきました。学校での使用は、特別扱い、機器の紛失・故障な
どの課題があるため認められていません。
学校の先生は、支援を抜いていく段階にあるから、なおさら学校
では使用を止めておく方がこの子の将来のためになる。きっとこの
苦労は生きる苦労になると言われます。
授業中に自分のデジタル教科書が使えるか、事前にどことどこの
ページを授業でやるかを教えてもらいたいのですがどちらも対応し
てもらえていません。
現在、教科書バリアフリー法で障害がある児童生徒には、拡大図書
や音声教科書、デジタル教科書の無償提供が保証されています。
しかし、通常学級の中で授業中に活用できている児童生徒はごくわ
ずかです。ほとんどが家庭学習でのみの使用にとどまっています。
ひたすら予習して、頭に入れて授業に臨むしかない状況です。それ
は、ICT 機器をその子だけ使わせることに対する理解が得られてい
ないからという理由がほとんどです。
現場の教員が教科書バリアフリー法の存在を知らないケースもあり
ますし、ネットで申請してすぐにダウンロードできる基礎的環境整
備が整っていることも知らないケースもあります。
文科省の特別支援教育課ではなく教科書課が音声教科書やデジタル
教科書の活用を推し進めています。使っている子が各教室に(6.
5%)いて当然という現場になる必要があります。現在デジタル教
科書として
AccessReading(http://accessreading.org/)
DAISY 教科書(http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/daisytext.html)
音声教材 BEAM(http://www.npo-edge.jp/work/audio-materials)などがあります。
事例
9
(LD の診断あり
中学校
通常学級)
中学に入り、教科担任制となったために教科によって配慮がない
授業に困っています。
板書しながら説明されるとノートテイクも説明聞きも両方できま
せん。
担任の(若い)先生に相談しても、それぞれ教科の先生の授業ス
タイルがあるから頼めないと言われてしまいました。
診断があり、同時処理、同時作業が苦手という結果を示しても配
慮してもらえず能力の問題と言われてしまうのは差別のように感じ
るのですが。配慮がもらえるには手帳がいるということでしょう
か?
教員、学校の風土として、良くないなと思っていても、お互い言い
にくいという感じがあります。児童生徒のためと言うことで言いに
くいことも言い合える風土になるといいなと思っています。
それはさておき、この事例どうでしょうか。板書しながら説明して
ノートを取れと言われるのは、この LD 診断ありの子だけが学びに
くいのでしょうか?多かれ少なかれ他の子も学びにくいと感じて
いることでしょう。また、こうした授業展開の学びについていける
ようになることは、その教科の本質なのでしょうか?負荷がかけら
れている中で学ぶというスキルアップになるかもしれませんが、学
びの本質でないことでしょう。
ということは、これは基礎的環境整備が整っていない授業だとみな
される可能性が出てきます。教員の指導力・授業力によっては、そ
れは学びの本質にアクセスできていない間接差別と判断されかね
ない時代がやってきたということです。
そんなことで訴訟問題になっては、悲しいです。先の述べた教員、
学校の風土が変わって、お互いに言い合えるだけでなく学び合える
風土となっていくことがこれからの学校にはより求められると思
います。
事例
10
(自閉症診断あり
小学校
通常学級)
全国学力調査の時には、別室受験させてもらえました。しかし、
通常のテストの時にはその配慮がしてもらえません。
理由を聞くと、
「学年一斉にテストを実施する時には配慮しやすい
ですが、学級ごと行う単元末テストでは別室で見る先生をお願いで
きない。
」ということでした。
また、
「そうした別室受験をしても、欠席等で後から受けたこと同
じ参考得点としてしか扱えないので一緒に受けた方がいいですよ。」
ということでした。
うちの子の全国学力調査の得点は、どういう扱いになっているか
聞きましたが、あやふやな答えしか返ってきませんでした。
合理的配慮を学校の都合のいいように使われている気がしてな
りません。
学校の都合で合理的配慮を行うことはあり得ません。「あの子がク
ラスにいると授業の妨げになるから、合理的配慮として別室で授業
を受けさせます。
「
」あの子がこのテストの母集団に入ると平均点が
下がるので、合理的配慮で別対応します。
」こんなことは、差別と
しか判断されません。
合理的配慮とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的
自由を享有し、行使するための必要かつ適当な変更及び調整です。
本人・保護者の申し入れに対して真摯に向き合い、必要かつ適当な
配慮とは何かを合意形成していくことが大切なことです。
また、学校には「合理的配慮をしますよ。例えばこんなことも応じ
ますし、あんなことも一緒に考えます。
」と門戸を開いて積極的な
姿勢を見せていくことも求められます。
意識の高い保護者だけが得
られるような状況では、間接差別状態だとみなされてしまいます。
このケースの場合、丁寧に話し合い、別室でなくても教室内でパー
テーションを使うことで本人の力が発揮できる環境が整い、他の児
童と同じテスト結果として扱ってもらえるようになりました。
つい先日「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方
針」について閣議決定がなされました。今これに沿って各省庁がガ
イドラインを作り出しました。
今後、それに則って各都道府県、各市町でも具体的な指針を出す
ことになると思います。これによりいきなり訴訟にならない仕組み
や合理的配慮が担保できるようになることでしょう。
特別支援教育総合研究所では合理的配慮やインクルーシブ教育
に関する情報を発信しています。(http://inclusive.nise.go.jp/)
完全施行までのこの1年間は、私たちのアンテナをより高くして
おく必要があるでしょう。
子ども達が障害の有無にかかわらず、学びの土俵に上がれるよう、
学びのスタートラインに立てるように「必要かつ適当な変更及び調
整」をしていきたいです。それは、善意や好意としてではなく、私
たちの義務であり、
彼らの権利だと捉えて真摯に取り組んでいきた
いと思っています。
大切なのは、丁寧に合意形成していく過程だと思っています。障
害によりぞんざいに扱われることがないように、誰もが大切な存在
だと実感し合える学校や社会になるように私たちが努めなければ
なりません。
岐阜特別支援学校の地域支援センターでは、保護者からの相談も
多数お受けしていますし、
学校等からも相談をいただいております。
来年度は、特に合理的配慮が各現場で適切に行えるような動きも
取っていきたいと考えています。
どんなお立場の方からでもお気軽にご連絡いただければ、一緒に
なって合意形成に向けてのお力添えをさせていただきます。
先日、自閉症の男子高校生と話を1時間ほどしました。その日、
彼は自宅帰ってからこんなことを言ったそうです。 「ぼくまた生
まれてきても AS で生まれてきたい。」
とってもステキだと思い
ました。彼は、きっと他者と平等に人権と自由を享有していると感
じてくれているのでしょう。