平成 23 年度委員会所管事務調査感想・意見等

平成 23 年度委員会所管事務調査感想・意見等
厚生常任委員会 篠原 正寛
1.
保育所待機児童について(鹿児島県鹿児島市)
1.概 要
都市部を中心とした待機児童対策は全国的問題であ
り、もちろん本市も例外ではない。
根本的対策は単純に施設数、受け入れ人数を増やす
ことであるが、経費の問題、これから減少傾向が顕著
になる就学前児童数の問題から、近未来につけを残さ
ない対応策が求められており、ここが各市の悩ましい
問題になっている。本市と鹿児島市の人口、児童数、
待機児童の推移は下表の通りであるが、鹿児島市はこ
こ近年、保育需要の増大にもかかわらず待機児童を確
実に減少させている。その具体的施策やそこにある哲学を学び、本市に即実践できる対策を考えること
は大変有効であるとの観点から同地を訪問し、近況や問題点について確認することとした。
*本市と鹿児島市の比較
人口
就学前児童数
待機児童 20 年
平成 21 年
平成 22 年
平成 23 年
西宮市
483,846
28,468
134
223
310
279
鹿児島市
607,955
33,757
196
359
357
85
注:児童数及び待機児童数はいずれも同年 5 月 1 日現在
2.感想・意見等(質問した項目など)
事前資料の精査と現地での説明を受け、以下の点について質問した。
1.
鹿児島市における就学前児童数の今後の推移をどのように予測しているか?
平成17年から微増減はあるもののほぼ横ばいの就学前児童数を今後の計画立案上どのように予測
しているのか尋ねたが、やはり本市と同じく今後は間違いなく減少していくであろうとのことであ
った。ただし、幼稚園の総定員が現在 12040 人、実際の入園が 8763 人、認可外保育所通園が 1912
人で、総数から認可保育所通園社を含むすべてを引くと約 13000 人ほどが家庭内保育されており、
今後の保育所定員数増加がまた新たなニーズを掘り起こすことになるので、入園希望者は同様のペ
ースで増え続けると予測されていた。
2.
既存保育所による分園整備においていかに土地の確保をしているか?
本市のように募集しても土地の確保が困難である現状からご当地ではどうか尋ねたが、市有地の払
い下げや貸与は全くしておらず、希望する法人が独自に確保している、しかも多くの場合は新たな
購入や借り上げではなく、元々所有している場合が多いとのことである。一概には言えないが人口
が本市の約 1.2 倍、市域は約 5 倍というところから、現在でも、また市街地でも使える土地が十分
あるものと思われた。
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3.
認定こども園の開設に対する事業者の感情について
認定こども園の開設を促進する上において既存の幼稚園事業者あるいは保育所事業者が他の参入に
ついて懸念を表明されるケースが本市でもあるのでご当地はどうか尋ねたが、現在すでにこども園
が8園(幼稚園型4園、幼保連携型4園)あり、それぞれの事業者に言われるような懸念はないと
のことであった。それぞれの歴史的背景や構成が市によって異なるので、ご当地はこの背景から抵
抗が少ない、と言うことであろうかと思われる。
ちなみに当日は学校法人鹿児島竜谷学園という幼保連携型認定こども園を訪問した。
元々幼稚園を経営する母体が本年4月より施設内に保育
園を設置したものであり、両園の同年代の子供を積極的に交
流させ、既存施設を十分に活用しておられるようで、「保育
園の良さを幼稚園に、幼稚園の良さを保育園に生かす」をテ
ーマとされていた。
認定こども園の問題点は主に経営に係るものであるという
認識だが、直接拝見して現場は工夫次第で相乗効果が大きい
と実感できた。各所にある経営の、またその将来の問題に指
針を出し、それらを乗り越えて早期に推進すべきである、
鹿児島竜谷学園外観
との感想をもった。
4.
新規参入法人に株式会社を含めていることへの是非について
福祉的施設の運営に株式会社が参入することについて、例えば本市では一定程度懸念や反対を表明す
る意見もあるが、ご当地ではどうであったのか確認したところ、現実には例えば応募事業者21のう
ち株式会社は一つであったり、現在運営している株式会社はなかったりするので具体的な影響は出て
いないとのことであった。また答弁の印象としてはこの参入について抵抗感などは全く感じられなか
った。
5.認可外保育施設の認可化について
計画では実数は読めないものの、認可外保育所の中から認可保育所に移行する事業者を公募・支援す
ることで定員増につなげたいとの記載があったが、本市では検討されたことがなく(少なくとも知り得
る限り)新しい視点であると考えられる。
実際に希望する事業者はあるのか確認したところ、事業所内保育所を除く認可外保育所 64 か所のうち、
条件を満たし、かつ意欲のあるものは前計画(平成 17 年~21 年)中にもあり、結果3園が認可化された
ので、一定数あるであろうとの予測である。
(ただし、他の増員がうまくいっているので優先順位は低い
ようであるが)
3.
西宮市との比較(参考とすること、取り入れるべきこと等について)
要するにご当地は一般化されざる奇策を講じた訳ではなく、本市も計画する当たり前の道、①既存保
育所定員増(計画 470 人、実績 350 人)②既存事業者の分園・第二保育園(計画 590 人、実績 619 人)
③認定こども園(計画 150 人、実績 150 人)④新規参入(計画 240 人、実績 120 人)これらの対策を実
施し、概ねうまく行った、と言う表現に尽きよう。
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ではなぜご当地はうまく行き、本市では捗々しくないのか?
対策順に見て行くと、①定員増については、この度の面積緩和対抗策として本市でも 250 人を超える定
員増が図られるため、現場の保育環境を考えると数値としては限界と言えよう。つまり定員増について
は図らずもうまくいった、と言うことになる。
②分園化については、ご当地は本市と比較して人口は 1.2 倍ながら市域面積は 5 倍あり、単純に考え
れば用地に困らない、と言うことが想像できる。適当な用地がそう見つからない本市はどうするか、一
部すでに始まっているが、ビルの賃貸物件で開園することを促進すべきである。またこの方が後述のよ
うに土地を手当てするより将来の撤退が容易である。
③認定こども園については、ご当地に限っては幼稚園、保育園、それぞれの経営者からの懸念や異論は
聞かれないようであったが、本市は事情が異なる。私園である以上、将来の経営を心配することは当然
であるし、歴史的経緯など無視出来ない要因もある。これらの和解(あえて和解と言うが)を果たすた
め、市は主体的な役割を担うべきである。特に福祉部局と教育委員会の壁を無くし、就学前児童施策の
将来像を語りあい、意見をもらい、模索する中で懸念を取り除いていくべきである。この作業は単に待
機児童を減らすだけにとどまらない意義や価値があるものと思われる。
④新規参入については、本市もあまりあてにしていないようであるし、現状に鑑みて難しかろうと思う。
また市外や株式会社の参入に対する抵抗感も根強い。数は当て込まないが、ご当地のように認可外保育
所の中から条件の揃うものを認可保育所に転換していくことは早期に研究すべきであり、また保育園の
形そのものを示す、つまり前述の賃貸ビルでの開園など既成概念を超えた形態を示すことによって参入
希望者を増やす努力が必要であるかもしれない。
予算の背景について、特に今回の視察では市の財政全般、市長公約や市の目標、投入予算等の相関関
係について知ることが出来なかったが、やはり直近の施設増を果たすためには重要であろう。
この面において本市が特段、他に劣るとは思えないが、さりとて目の前の待機解消だけに視点が行きす
ぎ、先を考えずにハードを広げて行くのは問題であると思う。
保育需要は世の好不況に左右されるとともに作れば作っただけあらたな需要を喚起する。その意味で
減少が確実視される就学前児童の人数が影響し出すまでには幾年月掛かるのだろう。
しかし、確実に減ることが分かっているのだから、あらゆる定員増を図りながらも同時に撤退をイメー
ジして投資しなければならない。幼児施設は構造上、転用が利かない。待機児童解消の先進的事例が 10
年先、20 年先に無思慮の象徴と言われないよう、この難しいバランスについて今後も考えて行きたい。
2.ゴミのリサイクルについて(熊本県水俣市)
1.概 要
水俣市は公害病たる水俣病で全国的に有名となり、そのイメージの払しょくに半世紀以上を費やしてき
た。これをきっかけとしてコミュニティーの再生、行政や市民が一体となった環境問題への取り組みが
進められ、これを総称して「もやい直し」
(船を結びあうもやい結びから来ている)と呼んでいるそうで
ある。
このような背景から全国に先駆けて環境問題へ取り組んできたが、その一環が資源リサイクルを主眼に
3
置いた 24 種類にもわたるゴミの分別収集である。きっかけは平成 4 年、不燃ごみとして廃棄されたガス
ボンベが処理工場で爆発し、施設に大きな被害が生じたことに始まり、その翌年から 20 品目にわたる分
別収集を開始したそうである。
人口の少ない、顔の見える古いコミュニティーの
まちとはいえ、当然容易ではなく、長い年月の試行
錯誤によってようやく定着した感があるとのことで
あった。
特徴としては 26 地区に 370 人の分別推進委員を
委嘱し、研修を重ねて住民の啓発に当たっているこ
と、地区の排出量に応じて売却益が還元されること、
市内に回収ステーションを 300 ヶ所設置し、夕方か
ら推進委員や職員がそこにいて不明なものは現場で
分別してもらうこと等があげられる。
回収ステーションに設置されるカゴ
都市規模や背景は本市と異なるので単純な比較や当
てはめはできないが、今後さらに細分化されるであろう本市のごみ分別においても取り入れるべき考え
方や仕組みが多々あると考えられるため、同地を訪問した。
2.感想・意見等(質問した項目など)
以上の概要と事前資料の精査、現地での見聞を交えて以下の質問をした。
1.
今年度より開始した小型家電の回収とその目的であるレアメタルの取り出しはうまくいってい
るのか?
4 月からの開始でまだデータがなく、確定的なことは不明であったが、業者委託し、回収数も多いの
で、今後どのくらいのレアメタルが回収できたのか、またどの品目が含有量が多く、どの品目には
ほとんど含まれないかなど数値化したいとのことであった。
2.
水俣市の人口流動率は(あるいは転入者数は)どれくらいか?
ここ近年、人口は減り続けており、転入者は年間 100 人程度とのことであった。よって転入者に対
する啓発の度合いは高く、資料の配布や説明、分別推進委員の面談等、充分に理解を得られている
様子である。
3.
資料によると各売却益を地区ごとの排出量に応じて助成金として還元しているとのことである
が、使途を特定しない助成金はどのような費目で支払われるのか?
便宜上、売却益は売り払い収入として市の歳入になるが、意味合いとしては各地区の売却代行のよ
うな感覚であり、正確には助成金ではないとのことである。正式な項目について答弁を得ることは
できなかったが、ご当地では許容されているようあった。
4.
家庭での保管、分別など大変な手間がかかるがどのように市民の協力を引き出しているのか?
収集ステーションが 300 ヶ所、市民の推進委員が 370 人、また中学校では高齢者・障害者世帯の分
別処理を手伝うことが授業の一環である等、古いコミュニティーと様々な仕組みでこれを維持して
いるとの説明があった。売却益還元のインセンティブもうまく働いているようである。
(しかしそれ
でも可燃ごみと生ごみなど、充分な分別とは言い難い現状もあるとのこと)
4
3.
西宮市との比較(参考とすること、取り入れるべきこと等について)
都市規模が全く異なるのでご当地の仕組みをそのまま取り入れる、ということにはならないが、一部、
限定的に採用することは可能と思われる。
一つは自治会、いま一つは学校と言う単位が考えられる。
この細部にわたる分別を高いレベルで可能としているのは前記の収集ステーションと推進委員であるが、
単純計算でこの規模を本市に当てはめるとステーション 1 万ヶ所以上、推進委員 13000 人程度と現実的
ではない。コンパクトで縁の濃い土地柄ならではの施策である。
しかし、部分的にみるとこのシステムは導入可能となる。例えばモデルケースとしてのエントリーさ
れた自治会、あるいは環境学習としての学校単位で取り入れてみればどうであろうか。
自治会には特に売却益の還元と言うインセンティブが有効で、報道の取り上げ方などを工夫すれば二番
手、三番手の登場も十分に計算できよう。
また学校単位で売却益を児童・生徒のための投資に使えるようにすれば相乗効果も期待できる。
都市圏では人のつながりに頼る方法は難しい、と決めつけずに限定されたエリアを人工的につくり、試
してみる価値はあるものと思われる。
問題はその後である。一部とはいえ環境問題に熱心な取り組みがあり、取り組む方にもそれなりに実
がある、というままでもかまわないと思われるが、その他プラスティックの分別がもうすぐ始まる本市
において、将来的に分別をどうしていくのか、増やして資源化をさらに進めるのか、限界を見きるのか、
ゴミ回収の有料化なども含めて方向性をより明確にしていく必要がある。
現在の計画にも確かに示されてはいるが、総合的に網羅しているため、ゴミの分別がどうなるのかわ
かりにくいし、市民の関心もあまり関心が高いとも言えない。現計画の根本は維持しつつ、分別の将来
に特化した資料やパンフレットをも作成する必要性が感じられた。
3.地域密着共生型福祉特区について(福岡県久留米市)
(1)概 要
福祉において通常の高齢者と障害者のそれが区別されているのが現在のスタイルであり、国から地方自
治体までそのように区分され、予算もそれぞれに付き、必要な、いわゆる箱モノを含めて別々に設計さ
れている。
この壁を越え、効率的、効果的に施設の運営を可能と
するために表記福祉特区は申請された。特区、すなわち
実験的実施であるが、これが効果的で成果が立証できれ
ばやがて法改正など必要な措置を含めて恒常的に実施可
能となる可能性もある。全国の自治体で様々な行革の必
要性は高まっており、福祉予算と言えども聖域ではない
現実に鑑み、それがただの切り捨てや条件の切り下げに
終わらない施策の変更として実現できるか、が問われる
今、特区でない本市としても本施策は早めに検証しておくべき課題であることは間違いない。そこで当
地を訪問し、詳細について見聞することとなった。
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(2)感想・意見等(質問した項目など)
以上の概要と事前資料の精査、現地での見聞を交えて以下の質問をした。
(但し、視察の都合で現地
滞在時間が短かったため、施設への移動中に個別に取材した内容である)
1.
通所する障害者は就学年齢の方が多いのか?(養護学校等との関係)
まだ試行段階であるため、通所者全体数は少なく、そのほとんどは就学年齢を過ぎた方であるとの
こと。また就学年齢の方は家庭の事情で学校の無い土日を中心とした場合が多いそうである。
また比較的重度の方が多く、例えば就労支援A型などにも通えない場合が多いとのことで、呼吸管
理や痰の吸引等医療行為を必要としている方もあるとのことであった。
2.
通所する方々はおもにそれまではどういう生活をされていたのか?
大半の方が障害者施設や自宅で過ごしていたとのことで、家族の就業の都合等のほか、介護者のレ
スパイトとしての意味合いが高いようである。また、ご当地は高齢者の小規模多機能事業所が西宮
に比較して大変多く、これらの事業安定(利用者の確保)として貢献していることもあるようであ
る。
3.
(事前の書面による他者の質問)この特例措置では精神障害者の方も対象としているのか、通
所があるのであればその状況について
すべての障害者、種別を対象としており、精神障害も例外ではない。現在小規模多機能型居宅介護
施設で 1 名、高齢者デイサービス事業所で 6 名とのことで、中での過ごし方詳細は不明である。
4.(事前の書面による他者の質問2)この特区を申請された理由について
富山県等でも先進的に提供されているような障害者、子供、高齢者等様々な方が通い、宿泊等を地
域の中で共生的に展開できる事業の必要性を感じていたため、また、介護の施設は障害者施設と比
較して絶定数が多いこともあり、市内全域に比較的バランスよく立地しているので、障害者の通所
個所の拡大によるサービス利用の選択肢をふやすことになると考えられたため。
(3)西宮市との比較(参考とすること、取り入れるべきこと等について)
高齢者施設の経営者及び通所者にとってのメリットは、通所者の幅が広がって経営の安定化に寄与する
こと、さらに想像も含むが高齢者ばかりの施設に比べてやはり活気が出る、と言うことが考えられる。
また障害者及びその家族にとっては、住み慣れた地域で過ごせること、いざというときのレスパイト
機能を果たせること、また過ごし方も障害者のみの施設より日常生活に近いバラエティーがあることな
どが考えられる。
また費用についても施設には障害者自立支援法に基づく給付が受けられる
ため、当事者の負担増も抑えられている。以上、一見するとメリットばかり
のようであるが、デメリットはないのか?
この後実施中の施設を見学させていただいたが、質疑を通してご当地から
も当該施設からも懸念やデメリットは確認されなかった。特区の施策である
からあえてこの段階で考えることではないかもしれないが、想像されるもの
として不安定性と予算の確保が想像される。
不安定性とは、小規模施設が新たに障害者を受け入れる場合、既存の人員
に加えて看護師など新たな人材を必要とするケースが考えられ、小規模だけ
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に安定的確保が困難なケースも予想される、ということである。思ったほどの利用者が現れない場合、
あるいは自己都合などで退職した場合など、それぞれの状態でも雇い続けるのか、利用者を受け入れ続
けられるのか、経営側がいつ利用があるかわからない障害者をどう安定的に受け入れるのか、に課題が
あるように思われる。
また、障害者とその家族にとって利用できる先の選択肢が増えることは望ましいが、反面これが増大
した場合の給付予算を確保していくことに苦労するかもしれない。例えば障害児で養護学校に通学して
いる場合でも土日にサービスを新たに利用するケースもあり、いわゆる「福祉の社会化」を推進してい
くと費用をどうするのか、の問題を避けることはできない。
いいことだからやれ!ではあまりに無責任、大げさに言えば給付と負担の適正な割合などについてど
のくらいの市民、国民が我がこととして向き合えるか、行政や政治が信頼を勝ち得てこの選択肢を示せ
るか、税と社会保障の議論も影響してくるものと思われる。
この施策の将来はわからないが、本市としても研究やシミュレーションは着手しておくべきと感じた。
4.周南地域休日夜間こども急病センターについて(山口県周南市)
(1)概 要
周南地域休日夜間こども急病センターは純粋に新設されたものではなく、現在もある同市の周南市休日
夜間急病診療所から小児科部門が抜け、徳山中央病院内にその部門のみを移設した広域小児科一次救急
である。
この背景には、全国的にある小児科医の不足から安定継
続的に診療所を運営していくことが難しい(一部の小児
科医の負担が大きい)こと、場所が比較的不便と言う意
見があったこと、周辺地域(下松市及び光市)との共同
運用が望まれていたこと等があり、各市医師会の小児科
医グループが発案の中心となったようである。
分離したメリットとしては前述の背景の裏返し、と言
うことになるが、加えて小児二次救急も行う徳山中央病
院内としたことで重症と見られる場合はただちに同病院に搬送できること、さらに病院屋上にはヘリポ
ートがあり、近隣の三次救急(救命)へのアクセスも良いことがあげられる。
本市では今、市立病院の移転建替えも含めた今後の在り方について検討されている。病院経営のその
ものは当委員会の所管ではないが、同じく休日夜間診療所を運営する本市として、この機会に同様の問
題がないか、本市の医療環境全体を考えた議論が必要であり、診療所の所管は本委員会である。
よって当地を訪問し、その意義や効果、問題点について見聞することとした。
(2)感想・意見等(質問した項目など)
1.利便性が高まると言うことがコンビニ受診の増加につながるという懸念はないのか?
むしろ逆で、不要・不急と思われる受診は減少しつつあるとのことであった。利便性の良い場所にあ
る設備の整った一次救急、しかも二次救急と隣接され、三次救急へのアクセスも目に見える、このよう
な理想的条件を与えられると人は安心感が増し、焦って万一に備えようとする心理がやわらげられるよ
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うである。
2.センターにおける医師一人当たりの平均的負担は?
センターには小児科医 31 名の登録があり、前述の医療圏たる周南市、下松市、光市から、また病院、
医院(開業医)からそれぞれ人口割りで平等に登録されていた。
個々のローテーションは不明だが、単純割りで一人年間 12 日程度、多少のばらつきがあっても耐えられ
る負担のようである。このように充分な人数が集まるのも、元々発案が医師会の小児科医グループと言
うことが(つまり施策が先にあって動員された訳ではない)関係していると思われる。
3.設置者は徳山中央病院に変わったが、市から補助はあるのか、また収支が赤字になった場合はどこ
が負担するのか?
以前の診療所は市が設置し、医師会が管理者となっているので、必要な委託料を支払うという形と、
収支が赤字の場合も結果的に市の一般財源で補てんされる仕組みとなっていたが、センターは完全な民
営であり、現在市からの補助や支援は行われていないとのことであった。
また赤字が出た場合でも民営であるから設置者の病院負担と言うことになるが、小児科部門は診療報
酬が高く、また時間外の各技師などを病院と共有(新たな人件費なし)しているため、十分採算はとれ
るようである。
(3)西宮市との比較(参考とすること、取り入れるべきこと等について)
懸念した通り、診療報酬の高い小児科が抜けたことで元々ぎりぎりの経営であった診療所は赤字に転落
した。センターの経営は市ではないのでその診療報酬は市に入らず、その分減収となる。
しかし一方で利便性や安定性、おそらく保護者の安心感も高まっているものと考えられ、これを減収
と見るか、新たな施策のコストと見るか評価の分かれるところもあろうと思う。
本市では西宮市応急診療所を設置しており、周南市のそれとほぼ
同等の行為を行っている。またその収支は概ね均衡とも確認され
ている。例えば仮に本市の中央病院が移転したとして、その敷地
内に同様のセンターを設置する、と考えた場合、どのくらいのニ
ーズや効果があるだろうか?
今の診療所は内科と小児科の二科であり、人員はぎりぎりで運営
されているので、HPにあるように専門医以外が診療せざるを得
ないケースもある。小児科医が十分に確保されない状況で仮に別
途センター化しても安定しないであろうし、本例のように二次、
ドクターヘリ用ヘリ ポート
三次への窓口として機能しない限り十分な効果は得られないであろう。
一方で本事業はおそらく全国的にも稀な、小児救急としては最上級の安心を提供できているものと見
受けられる。同様の条件を本市に当てはめるのは無理でも、
「安心を提供できればコンビニ受診は減る」
という法則は本市でも活用できる可能性がある。医師会の方から医師がグループ化し、センターを設置
すると言う環境にはないが、市内の輪番制救急もコンビニ受診の増加で負担が増加しているという現状
を考えると、市立病院その他、あらゆる機能を動員していつ、どのような状況が発生しても程度に応じ
た適切な医療が受診できるという安心感を具体的に作り出す研究努力がなお必要であろう。
なお、北阪神医療圏で行われる小児救急の仕組みは南阪神たる尼崎市や本市からの受診が年々増え、
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対応が難しくなりつつあるという現状がある。この
責任を果たす、という別の観点から南阪神圏で総合
的な救急(特に産科や小児科)をどうしていくのか、
協議する姿勢は見受けられない。
市立病院の今後は所管ではないので記載しないが、
病院単体の赤字、黒字の話にとどまらず、仮に移転
を果たしたいのであれば広域圏における存在をどの
ようにするのか、何が望まれるのかという視点を忘
れることなく持ち込まなければならない、との意を
強くした。
院内の急病センター外観
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