1 「小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究」へご協力

「小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究」へご協力いただく方への説明書 《はじめに》
東京医科歯科大学医学部小児科では、病気の原因を探るために、探索の材料となる
細胞を保管し、遺伝子解析を行い、それによって病気の正確な診断を行い、より正し
く病気を理解し、適切な治療法を選択できるようになることを目指しています。また、
病気の成り立ちを理解するために、遺伝子産物(タンパク質)の機能について研究し、
よりよい治療法の開発を目指しています。 この研究は多施設共同研究の一環で、東京医科歯科大学院医歯学総合研究科発生発
達病態学分野水谷修紀が総括責任者として研究を行い、東京医科歯科大学医学部附属
病院、武蔵野赤十字病院、北社会保険病院、東京厚生年金病院、東京ベイ市川浦安医
療センター、横浜みなと赤十字病院、土浦協同病院、取手協同病院、川口市立医療セ
ンター、草加市立病院、その他の東京医科歯科大学と関連のある小児科診療施設で診
療する患者が対象となっています。
本文書は、あなた(注)にこの研究への協力をお願いするため、研究の内容および、
あなたが同意するための手続きについて説明したものです。 以下に、細胞保存と遺伝子解析に関する要件と、研究協力への同意に関わるいくつ
かの重要な点を説明します。 (注)患者(検査を受ける方)が 20 歳未満の未成年者であって、同意という行為に
際し、親権を有する代諾者を必要とする場合は、「あなた」とは代諾者を含みます。
この説明書では以下同様とします。 なお、未成年の方への説明に際しては、各年齢や理解の具合に応じて、できるだけ
噛み砕いて説明させていただきます。あなたや、未成年の方への説明に際しては、用
語説明参考図や参考図書を用います。また同意書も簡便なものを用意しています。 (1)研究の概要について 研究題名:小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究
90%以上の病気は、私たちの「身体の設計図」とも言える「遺伝子」によって決ま
っている、あるいは「遺伝子」によって影響を受ける、とされています。遺伝子は転
写・翻訳という作業を経て、最終的には「たんぱく質」になって身体で様々な働きを
します。
小児の病気では、数多くの病気でその原因となる遺伝子がわかってきました(この
遺伝子のことを疾患責任遺伝子と呼びます)。小児期に発症する様々な病気がありま
す。まだ原因のわからない病気も数多くある状態です。原因がわかれば、診断や治療
法の開発につながります。最終的に病気の理解や治療につながることを目的として、
あなたの血液細胞、培養細胞などを保存すること、保存した細胞や、口腔粘膜拭い液
などから核酸(DNA, RNA, あるいは両者)を保存すること、またその時点で可能な
限りの遺伝子解析を行うことを計画しました。
実際にはあなたの血液から白血球を取り出し、そのままあるいは、培養して細胞を
凍結保存します。またあなたの血液、培養細胞、口腔粘膜、唾液などから核酸(DNA,
RNA, あるいは両者)を抽出して、フリーザーで保存します。また核酸を用いて、候
補となる疾患責任遺伝子(以下、候補遺伝子)の塩基配列(文字の並び方)を自動塩
基配列決定装置(シークエンサー)で決定します(核酸や塩基配列については、別紙
の説明書をご参照ください)。この研究では次世代シークエンサーによるすべてのゲ
ノム核酸、全エクソン、あるいは RNA の塩基配列決定を行う予定にしています。RNA
についてはその量についての情報も得られます。今までは候補となる数個から数十個
1
の遺伝子を解析するだけで、相当な時間と労力を費やしていましたが、この方法によ
り、より早くより高い確率で、病気の原因が明らかになる可能性があります。
これらの作業の中で、あなたの個人情報は匿名化(番号の割り付け)、専用の媒体
でのデータ管理などによって保護されます。
塩基配列は既知の塩基配列と比べることによって、「文字が通常と異なっている部
分」を探していきます。この「文字が通常と異なっているということ」を遺伝子変異
と呼称しています。多くの場合、それは最終的にできたたんぱく質の機能に影響しな
い、個人差 (Single nucleotide polymorphism: SNP や Large deletion polymorphism)である
ことが多いのですが、それが遺伝子変異であると推察した場合には、最終産物である
たんぱく質の機能を調べる必要があります。
あなたの血縁者(例えば兄弟姉妹や両親、子供)についても、承諾をいただければ、
細胞や核酸を保存し、状況によって(検査によって原因解明への情報が多いと判断さ
れる場合)遺伝子配列検査を行いたいと考えています。これは、どの段階から遺伝子
変異が生じたのか、あるいは病気は次世代にどういう影響を及ぼすのか、あるいは、
本当にその遺伝子変異が病気と関係するのか、を理解する上で重要なことになります。
最初からすべての血縁者にご協力をお願いするわけではありません。あなたの病気が
遺伝子変異から生じている可能性が高い場合に、検査について説明させていただき、
了承をいただければ細胞や核酸を保存いたします。
このような研究によって、あなたの病気の原因が明らかになります。それによって、
これからより適切な治療法の選択や、新しい治療法の開発につながることが期待でき
ます。また同じような病気をもつ小児患者においても、早期診断、確定診断が行える
ようになり、より適切な情報や医療を提供できるようになると思われます。
研究期間:医学部遺伝子解析研究に関する倫理審査委員会承認後から 平成 28 年 3 月 31 日
実施責任者: 東京医科歯科大学医学部小児科 森尾友宏 (2)研究の意義・目的について 病気の原因を知ることは、より良い医療への第一歩です。今までに数多くの病気で
その原因となる遺伝子異常や、病気にかかりやすくなる遺伝子多型・遺伝子異常、逆
に病気にかかりにくくある遺伝子多型・遺伝子異常が明らかになってきました。この
ような情報は、一般の診療や予防医学、先端医療開発を通じて、将来的に直接的、あ
るいは間接的に患者に還元される内容です。 この研究では、小児期発症の病気の遺伝的背景、遺伝的素因を解明し、病気の成り
立ち、合併症をより良く理解することを目的としています。それによって、早期診断、
適切な診断がなされるようになり、また新しい検査法、治療法の開発にも結びつける
ことができると考えています。特に将来を担い、生存期間も長い、小児領域における
原因の解明は、疾患と闘い、つきあっていく中で、また治癒後の生活を送る中で、重
要な課題と考えています。 細胞の保存は、新しい検査技術が用いられるようになった場合、あるいは、病気の
原因について詳しく研究する場合に大切です。遺伝子における異常を見つけた後にも、
時間と労力をかけて、遺伝子異常がどうして病気を引き起こすのかを調べる必要があ
ります。この作業によって、本当の意味で病気の原因がわかり、治療の戦略が立てら
れるようになります。 血縁者など遺伝子情報を一部共有している方での細胞保存、遺伝子解析、機能解析
2
も、血縁者全員の疾患予防や、治療、遺伝などの観点からも、大切な情報を提供でき
るものと考えています。 (3)研究の方法について まず今回の研究の主目的は検体の保存と遺伝子解析です。 以前に疾患の病態解明に関する臨床研究「研究課題:免疫異常症(免疫不全症・ア
レルギー疾患)の遺伝子異常探索」、
「原発性免疫不全症の遺伝子解析」
「小児がん/白
血病の原因解明ための遺伝子解析」にご同意いただき、検体を保管させていただいて
いる方では、その検体を用いて解析をさせていただきます。 以前あなたの細胞あるいは核酸をご提供いただいたときに、疾患の病態解明に関す
る研究に利用することの同意をいただいていない場合にも、大変貴重な検体であり、
疾患の解明のために、それを用いて解析させていただいと思っています。 新しくご同意いただく方については、まず検体の保存が行われますが、同時にある
いは将来的に遺伝子解析及び、遺伝子解析から病気の背景や原因を探索する研究を行
います。遺伝子がコードするタンパクの詳しい機能解析を行う場合には、別途ご説明
申し上げます。また、これ以外の目的で使用する場合には、別途承認を得てから用い
させていただきます。 この研究では検体の採取は、各施設で、検体の保存は東京医科歯科大学大学院医歯
学総合研究科発生発達病態学分野で、検体の検査は、同検体保存施設、東京医科歯科
大学大学院免疫・アレルギー分野、かずさ DNA 研究所、理化学研究所免疫・アレルギ
ー科学総合研究センター、理化学研究所ゲノム医科学研究センター、広島大学原爆放
射線医科学研究所、国立感染症研究所、東京大学医学部、東京大学医科学研究所、順
天堂大学医学部、成育医療センター、国立長寿医療研究センター、神奈川県立こども
医療センター、国立長良医療センター、千葉県がんセンター、産業医学総合研究所糖
鎖医工学研究センターで行われます。検査結果の解析は検体検査施設で行いますが、
大規模なコンピュータ処理が必要な場合には、理化学研究所、東京大学医科学研究所、
かずさ DNA 研究所に委託して実施する場合があります。
次に検体の採取方法について説明させていただきます。検体としては、血液、頬粘
膜拭い液、唾液、生検皮膚やその他の生検材料、手術材料、骨髄などがあげられます。
原則的には血液、唾液あるいは粘膜拭い液の 2 種類の検体を採取します。
1)血液採取:あなたから 5-10ml 程度採血させていただきます。その血液は 2 つ
の目的に用います。1つは核酸(DNA、RNA)の試薬を用いて抽出(回収)です。も
う 1 つは、血液から多くの核酸検体を得るために、細胞を保存するため、またさらに
詳しく解析するための細胞培養です。実際には、血液からリンパ球を集めて、EB ウ
イルスを感染させることにより、制御なく増殖する不死化した B 細胞を得たり、T 細
胞を刺激して何百倍、何千倍にも増やしたりすることがあります。
2)唾液、頬粘膜拭い液:あなたにはうがいをしてもらった後に、専用の唾液採取
容器に 10-20mL 程度の唾液をいただきます。あるいはあなたの両側の頬の粘膜を、柔
らかい直径 1cm 程度の綿棒を用いて、20 回ずつ程度こすります。痛みはありません。
3)生検皮膚
皮膚生検が必要担った場合に一部いただくことを原則としますが、それ以外に皮膚
からの検査材料をお願いすることがあります。この場合は皮膚を 5mm 四方ほど切除
して、その皮膚から線維芽細胞を培養します。この際には局所麻酔薬を用いて痛みを
手技には痛みを伴わないように細心の注意を払います。
4)その他の生検材料、手術材料、骨髄
あなたの病気によって生検、手術、骨髄穿刺などが必要になった場合、その中の材
料の一部をいただいて、細胞培養、核酸抽出、あるいは両者を行うことがあります。
3
この場合、まず本来の目的を達することが第一ですので、あくまで余分な検体採取に
負担がかからず、また検体検査が十分に行えるように配慮できる場合にのみ説明をさ
せていただきます。
細胞の保存についてですが、上記の 1)、2)、3)でいただいた細胞は後に述べるよ
うに匿名化し、符号を記載した上凍結保存します。-135℃以下のフリーザーあるいは
液体窒素の中で保管されます。
血液などから抽出した核酸は、塩基配列の解析を行います。調べる対象は、基本的
には既知の全ての遺伝子から選択されたもの、になりますが、その数は疾患によって
数個から数千以上と大きな差が生じる可能性があります。
遺伝子解析は現有の 1 日に数十個の遺伝子配列情報が得られる検査機器から、次世
代の 1 日に数万個以上の塩基配列情報が得られる機械などが用いられることになりま
す。なお、候補となる責任遺伝子が明らかになった場合には、あなたからいただいた
血液などを用いて、機能解析を行わせていただく場合があります。その際はまた別途
ご説明申し上げます。
(4)試料等の保管と、他の研究への利用について あなたからいただいた試料は後ほど記載するように、匿名化され符号で管理される
ようになります。試料は、入退室にカードシステムが必要な、医学部附属病院細胞治
療センター内の、冷凍庫あるいは液体窒素に保管されます。解析されたデータは、同
細胞治療センター内の、ネットワークからは切り離されたコンピュータ内に保存され
ています。 あなたの血液などの試料は、原則として本研究のために用いさせていただきます。
しかし、あなたが同意していただければ、将来の研究のための貴重な資源として、研
究終了後も保管させていただきたいと思います。この場合も、符号によって個人の同
定ができないようにした上で、試料が使い切られるまで保管します。 なお、将来、試料を研究に用いる場合は、改めてその研究計画書を倫理審査委員会
において承認を受けた上で利用します。将来の研究において分かった遺伝子の新たな
情報については、その情報があなたに医学的に重大な影響を及ぼす場合に限り、倫理
審査委員会における審査を経て、さらにあなたの知りたいという希望を確認した上で、
報告致します。 あなたはいつの時点でも検体の廃棄を申請することができます。検体を廃棄する場
合は、匿名のまま、密封容器に廃棄あるいは焼却処分します。 特定の疾患において、その他の研究目的に使用する場合がありますが、その場合に
は、別途承認を得て用いるものといたします。 (5)予測される結果(利益・不利益)について 遺伝子の分析研究の結果、偶然に重大な病気との関係が見つかることがあります。
その結果を知ることは、あなたに有益である可能性と不利益である可能性があります。
的確な診断がなされること、病気の成り立ちに基づいた予防措置、より適切な生活
管理、最適な時期での適切な治療法の選択などが行える可能性があること、などが利
益としてあげられます。 不利益としては、採血の際の痛みや迷走神経反射があります。稀に皮膚細胞を採取
することがありますが、その際は局所麻酔を用いて痛みの緩和に努め。5mm 平方程度
の皮膚を薄く採取させていただきます。ごく稀に局所麻酔薬に対するアレルギー反応
が強く起こる場合がありますが、その場合は迅速に対応できるようあらかじめ準備を
しておきますし、細胞を取る際は熟練した医師が行います。また皮膚細胞以外の方法
が採れる場合は、違う方法を選択いたします。口の中の粘膜細胞を取るときには口の
4
中を滅菌した綿棒で擦るだけなので痛みはありません。
また、あなたの遺伝子に異常があることがわかった場合は、病気そのものに対する
不安、就職、結婚、妊娠や生命保険への加入などや家族内での問題など新たな倫理的、
法的、社会的問題が生じてくる可能性があります。このため、あなたの不安や疑問点
を相談したり、解決したりする手段として、東京医科歯科大学医学部付属病院では遺
伝子診療外来を設けており、あなたの不安や疑問点の軽減に努めます。 研究に参加されない場合でも治療上の不利益を受けることはありません。 (6)研究協力の任意性と撤回の自由について この臨床研究はあくまであなたの自由意志によってご協力いただくものです。この
研究にご協力いただかなかったとしても、あなたの不利益はなく、現在受けている診
察や治療に何の不利益もありません。 一旦同意していただいた場合でも、あなたが不利益を受けることなく、いつでも同
意を取り消すことができ、その場合は採取した血液や遺伝子を調べた結果は廃棄され、
診療記録などもそれ以降は研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を
取り消した時すでに研究結果が論文などで公表されていた場合などのように、遺伝子
を調べた結果などを廃棄することができない場合があります。 またあなたからいただいた検体は保管いたしますが、ご希望があればいつでも廃棄
いたします。別紙にて遠慮なくお申し出下さい。 (7)個人情報の保護について 遺伝子解析結果は数多くの情報を含んでおり、遺伝子情報が漏洩しないように、特
に慎重に取り扱う必要があります。特に今回の解析では、大量のゲノム核酸の塩基配
列情報があきらかになるため、何重もの個人情報保護策を講じます。 まずあなたの血液などの試料や診療記録は、解析する前に住所、氏名、生年月日な
どを削り、代わりに新しく符号をつけ、誰の試料かが分からないようにした上で東京
医科歯科大学医学部附属病院細胞治療センターにおいて厳重に保管します。この施設
は ID カードを保有する限られたスタッフしか出入りすることはできません。 解析は(3)で述べたように、大学外(かずさ DNA 研究所、理化学研究所免疫・ア
レルギー科学総合研究センター、理化学研究所ゲノム医科学研究センター、広島大学
原爆放射線医科学研究所、国立感染症研究所、東京大学医学部、東京大学医科学研究
所、順天堂大学医学部、成育医療センター、国立長寿医療研究センター、神奈川県立
こども医療センター、国立長良医療センター、千葉県がんセンター)で行われる場合
がありますが、その際も解析に必要なだけの検体を送り、検体は匿名化されて処理さ
れ、データは大学で一元化して管理されます。 得られたデータが大規模である場合、その解析は理化学研究所、東京大学医科学研
究所やかずさ DNA 研究所で行われることがありますが、同様に検体は匿名化されて、
厳密な個人情報保護の元で行われます。個人情報をコード化することにより、あなた
の遺伝子解析結果は、解析を行う研究者を含む誰にも、あなたのものであると分から
なくなります。 またあなたと個人情報をつなぐ情報は、別途遺伝情報管理者を定め、東京医科歯科
大学内の独立した部局に保存するものとします。遺伝子解析の結果、必要な場合には、
東京医科歯科大学においてこの符号を元の氏名などに戻す操作を行い、結果をあなた
にお知らせすることが可能になります。保存する媒体はインターネットなどの外部と
は遮断された、単独で機能するのものとします。 5
(8)研究成果の公表について あなたの協力によって得られた研究の成果は、提供者本人やその家族の氏名など、
個人情報が明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌およびデータベー
ス上等で公に発表されることがあります。その場合もあなた個人の情報は最大限に保
護されます。 (9)解析結果を知る権利について 今回の解析によって原因となる可能性が高い遺伝子が判明した場合には、あなたが
説明を希望する場合に、主治医よりあなたに知らされます。 また偶然に重大な病気との関係が見つかるなど、あなたがその結果を知ることが有
益であると判断される場合には、あなたが説明を希望する場合に、主治医よりあなた
に知らされます。 いずれの場合もあなたには、知る権利と通知を受けない権利があります。 この場合の説明は、あなたに対してのみ行い、たとえあなたの家族に対しても、ま
た、あなたが試料提供者の代諾者である場合は提供者本人に対しても、あなたの承諾
または依頼なしに結果を告げることは致しません。 あなたが未成年者(20歳未満)である場合には、あなたと代諾者に遺伝子を調べ
た結果を説明します。あなたには、あなたの理解力に応じて、わかる範囲で説明させ
ていただきます。あなたが遺伝子検査の結果について説明を受けなくとも、成人後に
その説明を希望する場合は、代諾者の承諾なしに、あなたに結果を説明します。 また、研究期間内にあなたが20歳に達した場合には、検体保存や個人データのデータ
ベース化について、可能な限り改めてあなたの同意を得るようにいたします。
あなたの遺伝子解析の結果について説明を希望される場合は、血液(あるいはほか
の検体)採取後5年以内に申し出て下さい。それ以後はその結果を保管できない場合
があります。 (10) 研究から生じる知的財産権について 遺伝子解析研究の結果として特許権などが生じる可能性がありますが、その権利は
国、研究機関、民間企業を含む共同研究機関および研究遂行者などに属し、あなたは
この特許権保有権利を申告することはできません。特許権の発生により経済的利益が
生じても、あなたはその権利を主張できません。 (11)遺伝カウンセリングについて あなた、ご家族、血縁者が、病気のことや遺伝子解析研究に関して、不安に思われ
ることや、相談したいことがあるかもしれません。その場合には東京医科歯科大学あ
るいはその他の施設において、遺伝カウンセリングを受けることが可能です。主治医、
インフォームド・コンセント担当者にその旨申し出てください。 東京医科歯科大学遺伝カウンセリング担当者: 東京医科歯科大学医学部附属病院遺伝子診療外来 吉田雅幸 東京医科歯科大学遺伝カウンセリング連絡先: 担当医師:東京医科歯科大学医学部小児科 森尾友宏 TEL&FAX :03-5803-5245 東京医科歯科大学医学部小児科 高木正稔 TEL:03-5803-5249 6
(12)費用について この臨床研究では患者さんへの費用負担はかかりません。すべて研究費(文部科学
省科学研究費、厚生労働省科学研究費、民間助成金)から支出され、あなたが負担す
ることはありません。この研究は特定の営利団体からの支援を受けておりません。ま
た、この臨床研究に際して、交通費や謝礼金などの支給は行いません。 (13)問い合わせ等の連絡先: 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野准教授(森尾友宏) 〒113-8519 東京都文京区湯島 1-5-45 電話:03-5803-5245(ダイヤルイン)(平日8:30~17:30) 7
東京医科歯科大学医学部長 殿 研究統括責任者 森尾友宏 (東京医科歯科大学医学部小児科)殿 同 意 書 私は「 小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究 」について、別紙説明文
書を用いて下記の説明を受け、その方法、危険性、解析結果の取り扱い等について十
分理解しましたので、自らの自由意思で研究協力に同意しました。 説明を受け理解した項目(□の中にご自分でチェック(レ印)をつけてください。)
□ 研究の概要について □ 研究の意義・目的について □ 研究の方法について □ 試料等の保管と、他の研究への利用について □ 予想される結果(利益・不利益)について □ 研究協力の任意性と撤回の自由について □ 個人情報の保護について □ 研究成果の公表について □ 解析結果を知る権利について □ 研究から生じる知的財産権について □ 遺伝カウンセリングについて □ 費用について 平成 年 月 日 署名 (または記名・押印) □ 同意書の控えを受け取りました 親権者/ 保護者 署名 (または記名・押印) 親権者/ 保護者 住所 代諾者 署名 (または記名・押印) 代諾者 住所 説 明 日 平成 年 月 日 説明医師署名 8
東京医科歯科大学医学部長 殿 研究統括責任者 森尾友宏 (東京医科歯科大学医学部小児科)殿 同 意 撤 回 書 私は「小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究」について、参加に同意し
ましたが、同意を撤回します。 今後、データについては解析に使用しないようにお願いいたします。 同意撤回日:平成 年 月 日 署名 (または記名・押印) 親権者/ 保護者 署名 (または記名・押印) 親権者/ 保護者 住所 代諾者 署名 (または記名・押印) 代諾者 住所 実施責任医師または分担医師確認日:平成 年 月 日 確認医師署名 9
東京医科歯科大学医学部長 殿 研究総括責任者 森尾友宏 (東京医科歯科大学医学部小児科)殿 試 料 等 の 保 管 に つ い て の 同 意 書 私は「小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究」について、別紙説明文書を
用いて説明を受け、提供する試料等については、その研究期間を超えて保存されるこ
とを理解および同意しました。 平成 年 月 日 署名 (または記名・押印) □ 同意書の控えを受け取りました 親権者/ 保護者 署名 (または記名・押印) 親権者/ 保護者 住所 代諾者 署名 (または記名・押印) 代諾者 住所 説 明 日 平成 年 月 日 説明者署名 10
東京医科歯科大学医学部長 殿 研究総括責任者 森尾友宏 (東京医科歯科大学医学部小児科)殿 試 料 等 の 保 管 に つ い て の 同 意 撤 回 書 私は「小児期発症疾患の遺伝的素因解明に関する研究」について、提供した試料
等を、研究期間を超えて保存されることについて同意しましたが、同意を撤回します。 同意撤回日:平成 年 月 日 署名 (または記名・押印) 親権者/ 保護者 署名 (または記名・押印) 親権者/ 保護者 住所 代諾者 署名 (または記名・押印) 代諾者 住所 実施責任者または分担研究者確認日:平成 年 月 日 確認者署名 11
遺伝及び研究方法についての一般的な説明 ゲノムとは
生物に固有な生命活動を維持するために必要なすべての情報を有した設計図のことで、
細胞の中にあります(用語説明参考図1をご覧下さい)。ゲノム DNA はアデニン(A)、チミン(T)、
グアニン(G)、シトシン(C)の 4 種類の核酸からなる高分子で、ヒトゲノムは約 60 億塩基対とい
う非常に多くの情報を含んでいます。父親と母親から、半分ずつ受け継いだ遺伝子という
設計図に従って、1 個の受精卵からからだの様々な部分がつくられ、最終的にヒトの
体ができあがります。ヒトでは 2 対の 22 本の常染色体と XX あるいは XY の性染色体の合
計 46 本の染色体に相当します。
検査する材料について(図 1 参照)
染色体 この中に保護された形で DNA が含まれています。
DNA 60 億個の文字が並んでいます。この 60 億個の文字の中に、25,000 個ぐらいのまと
まった部分があって、ここからタンパク質が作られます。
RNA
タンパク質が作られるまでの中間段階です。
タンパク それぞれのタンパク質は色々な働きをします。生命活動の基本となるものです。
病気と遺伝子 ほとんど全ての病気は、生来ヒトが持っている因子(遺伝因子)と病原体、環境(環境因子)
の両者が組み合わされて起こります。これらのどちらかの原因が強く影響しているもの(優性
遺伝病や染色体異常などの狭い意味での遺伝病と、麻疹などの感染症)もあれば、高血圧
や糖尿病など生活習慣病のように両者が複雑に絡み合って発症にいたるものがあります。
遺伝性の病気 遺伝性疾患とは、遺伝子の異常が主因になって起こる病気をいいます。これには、
親が遺伝子の異常をもっていて、その異常が子に伝わる(いわゆる遺伝する)場合と、
親の遺伝子に全く異常がないのに、精子や卵子の遺伝子に突然変異が生じて病気にな
る場合とがあります。また、身体の細胞の一部に遺伝子の異常が生じて、がんやその
他の病気になることもあります。 しかし、遺伝子の異常が何時も病気になるわけではありません。人間には、染色体
が 2 本(一対)ずつあり、一本の染色体の遺伝子に異常があっても、正常なもう一本
の遺伝子が機能を補って病気にならないこともあります。また、遺伝子の異常が身体
の機能異常につながらないこともあります。一方、食事などを含めた環境(外的因子)
への反応の違いが遺伝子の性質によることもあり、一見遺伝性でないように見える病
気が遺伝子の違いに起因することもわかってきました。 遺伝子検査とは 特定の病気が遺伝子の異常によるものである可能性が高く、かつその病気の原因と
なる遺伝子がわかっている場合には、遺伝子検査によって診断を確定し、治療に有用
な情報が得られる場合があります。また、原因となる遺伝子がまだ良くわかっていな
い場合には、その原因をつきとめる研究がすすむことにより、将来病気の治療や対策
がより良く行えるようになる可能性があります。 12
次世代シーケンサーとは
別名ギガシーケンサーとも呼ばれる ATGC からなる遺伝情報を読む機械のことです。従来
の DNA シーケンサーに比べて、約 100 倍の速度で遺伝情報を読むことができるので、1 台
で 1 日に数百メガベース(数億塩基対)の遺伝子情報が得られることになります。何かの変異
が見つかったときに、それが本当に病気と関係しているかどうかを明らかにするには、それか
ら長期間にわたる研究が必要になります。
RNAseq とは
全ゲノム解析や全エクソン解析では、DNA という身体の設計図を読みますが、タ
ンパクが作られる前にできるよりコンパクトな形の RNA について、その配列を読み
取ることになります。また設計図は同じでも、そこから作られる RNA の数が異なっ
ていて、その多い少ないが病気と関係していることがあります。RNA の配列を確認
すると共に、その量を数えるのが RNAseq という検査になります。
細胞株について
病気の原因をさぐる研究をするに当たって、遺伝子が設計図を書いてできあがった
最終的な産物である細胞を用いて検討することには大きな意味があります。1つには
たくさんのタンパク質や RNA を取り出すことができることであり、もう1つには細
胞の働きを調べることができることがあげられます。
いただいた血液などからとってこられる細胞の数には限りがあり、また細胞はしば
らくすると壊れてしまいますので、細胞が何回も分裂して、増えることができるよう
に、フラスコの中で操作を加えることがあります。EB ウイルスというウイルスは成
人の大半ですでに感染していて、一生体の中でともに過ごすウイルスですが、このウ
イルスを白血球のなかの B リンパ球(B 細胞)という細胞に感染させると、何回も分
裂して増える細胞ができます。これを EBV 感染 B 細胞株と言います。またフラスコ
の中で T リンパ球を刺激して、増えるようなものを加えると、何百倍、何千倍にも増
やすことができます。このようにしてできたものが体外増殖活性化 T リンパ球です。
ともに凍結して何年もの間保存することができます。必要なときに取り出して、室温
に戻して、それからもう一度増やすことができます。
13
用語説明参考図
1. 遺伝子・DNA・染色体・細胞について(図 1)
2. 遺伝形式について
常染色体優性遺伝 (図 2-1)
常染色体劣性遺伝 (図 2-2)
14
伴性劣性遺伝 (図 2-3)
15
参考図書(小さい子どもたちにはこの図書も用いながら説明します)
みんなもってる DNA ぼくらDNAたんけんたい いのちのもといでんし ぼくらDNAたんけんたい ばいきんをやっつけろ! ぼくらDNAたんけんたい からだはなにでできている? ぼくらDNAたんけんたい 岩波書店 フラン・ボークウィル文 ミック・ロルフ絵 柳沢 桂子訳 16